軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

621 クマさん、ミアたちと別れる

スライムは消え、町は静かになる。

わたしとカガリさんは、フィナとミアとくまゆると合流する。

「流石の妾も、今回ばかりは疲れたわい」

カガリさんはわたしを降ろすと、元の幼女姿に戻る。

「ほら、風邪を引くわよ。服を着なさい」

ミアが預かっていた服をカガリさんに渡す。

「本調子じゃない体で戦うのが、ここまで辛いとは思わなかったわい」

カガリさんは服を着ると、疲れていたようで地面に座り込む。

平気そうにしていたけど、相当無理をしていたみたいだ。

「フィナは大丈夫?」

フィナはくまゆるに寄りかかるようにしている。

フィナにも無理をさせてしまった。

「うん、少し休んだから。ごめんなさい。わたし最後まで」

「何を言っているの? フィナのおかげで、スライムを討伐することができたんでしょう。最後はミアにいいところを持っていかれたけど、フィナが魔道具を壊していなかったら、矢が足りないミアだけじゃダメだったよ」

「そうよ。わたしはおまけ。フィナが一生懸命に魔法を使うところを見ていたわよ。だから、胸を張りなさい。あなたは多くの人を救ったのよ」

「……ミアお姉ちゃん。ありがとう」

フィナの顔に笑顔が戻る。

やっぱり、フィナは笑っているほうがいい。

「ミアちゃん!」

キャロルが走ってくると、ミアに抱きつく。

「無事でよかったよ〜」

「心配はいらないって言ったでしょう。この子がいるんだから」

ミアはくまゆるを撫でる。

くまゆるは「くぅ〜ん」と鳴く。

「キャロルのほうが一人で危なかったわよ」

「わたしは、離れた場所だし。もし、なにかあれば、家に逃げ込むから」

クマの転移門の先は安全だけど、クマハウス自体は安全かどうかは分からない。

キャロルのところにスライムが行かないでよかった。

「じゃが、お主に、そんな弓を扱える技術があるとは思わなかったわ」

カガリさんが疲れた表情でミアを見る。

それには同意だ。

「ふふ、これでも冒険家だからね。自分の身ぐらい守れないとね」

甲冑騎士には役に立たなかったみたいだけど。

「まあ、そうは言っても、この弓のおかげなんだけどね」

ミアは持っている弓を見る。

なんでも、これも魔道具の一種だと言う。

魔石や見た事がない模様などが弓に刻まれている。

なんでも、矢が風を纏い距離を延ばしてくれるそうだ。

なにか、カッコイイ。

わたしが弓使いだったら、欲しかった。

でも、残念ながら弓は使ったことがないので、使うことはできない。

「でも、そんな凄い弓を持っていたんだね」

「わたしが小さいときにお爺ちゃんに貰ったのよ。それから、わたしはこの弓を使って、技術を磨いてきたの。弓の扱いにはちょっとした自信があるのよ。だからって、弓が凄いから、当てたわけじゃないわよ」

「それは分かっとる。どんな優秀な武器でも、扱う者が無能なら、武器の本来の力を発揮することはできぬ。あの距離を当てることができたのはお主の力じゃろう」

「分かっているなら、いいのよ。たまに弓のおかげとか言われるから」

ミアはカガリさんに褒められて嬉しそうにする。

飛距離は弓のおかげかもしれないけど、命中させたのは、間違いなくミアの実力だ。

それに、フィナもだ。あのカガリさんの上に乗り、初めての空を飛びながら、魔道具に命中させた。

2人とも、凄いと思う。

そう考えると、命中補正があるクマさん防具は自慢ができることじゃないね。

「ミアちゃん、本当に一生懸命に練習したよね」

「魔法が使えなかったし、わたしにはこれだけだったから」

ミアは弓を嬉しそうに見る。

「でも、これで、本当に終わったのよね」

「初めはどうなるかと思ったけど、ユナさんたちに会えてよかったです」

これもみんなのおかげだ。

わたしは全員を見渡して、ある存在がいないことに気づく。

……くまきゅうがいない。

わたしは慌ててくまきゅうを召喚する。

「くまきゅう?」

くまきゅうは背中を向けて、わたしのほうを見ようとしない。

間違いなく、いじけている。

初めて会ったときのことが思い出される。

「くまきゅう、ごめんね。ちょっと、出番がなかっただけだよ。くまきゅうは、もしものときのための隠し球だったんだよ」

もしも逃げることがあった場合にクマさんパペットにいてもらっていたんだけど。逃げることもなく、スライムを倒してしまい、今に至る。

くまきゅうはチラッとわたしを見るが、すぐに視線を下に向けてしまう。

わたしはクマさんパペットを合わせて、謝る。

「くまきゅう。本当にごめん。くまきゅうは、わたしが危険なときに助けてほしかったから、クマの中にいてもらったんだよ」

わたしは後ろからくまきゅうに優しく抱きつく。

「くぅ~ん」

「だから、機嫌をなおして」

わたしは一緒にいる約束をしてくまきゅうに許してもらった。

「ふふ」

そんなわたしを見てミアが笑う。

「クマがこんなに可愛いとは思わなかったわ。わたしもクマが欲しくなるわ」

「普通のクマは危険だよ」

と言っても、実際に見たことがあるクマはハチミツの木の近くに住んでいるクマとエルフの森にいるクマぐらいだ。

どちらのクマも凶暴ではない。

もしかして、この世界のクマは危険じゃないかも?

「それなら、このくまゆるを譲ってほしい」

「それって、この場で死にたいってこと?」

わたしはクマの炎を作り出す。

「ちょ、冗談よ。冗談」

ミアは逃げるように、くまゆるの後ろに隠れる。

「そういえば、このクマたち魔法が使えぬのか? シノブから使えるような話を聞いたことがあったような気がするんじゃが」

カガリさんが思い出すように言う。

たしか、風魔法を使っていたはずだ。

「使えるよ」

「なら、小さくなっても魔法は使えるのか?」

「……!?」

カガリさんの言葉でわたしとフィナが顔を見合わせる。

「くまゆる、くまきゅう、小さくなっても魔法って使える?」

小さい状態のときに魔法を使ったところを見たことがない。

それに、くまゆるとくまきゅうが戦うことはあまりない。

「えっと、ちょっと待って。小さくなるってなに? クマが魔法を使えるって?」

ミアが尋ねてくる。

うわぁぁ、面倒くさい。

結局、ミアたちにはくまゆるとくまきゅうが小さくなれることを説明する。

「か、かわいい」

ミアはくまゆるを抱きかかえる。

「ミアちゃん、わたしも」

キャロルとミアがくまゆるを取り合う。

くまきゅうはご機嫌を取るため、わたしが抱き抱えている。

「それで、くまゆる。その状態で魔法は使えるの?」

「くぅ~ん」

くまゆるは壊れかけの建物に向かって、爪を振る。

わたしの風魔法と同じような感じに風の刃が飛び、建物の一部を壊す。

「威力は低いみたいだけど。使えるみたいだね」

「それじゃ、わたしが頑張ったことって……」

フィナが落ち込み始める。

「ほら、くまゆるはミアたちの護衛だったし」

「でも、くまきゅうちゃんがいるし」

「それは忘れていたから」

「くぅ~ん」

今度は腕の中にいるくまきゅうが悲しそうに鳴く。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ。

わたしは心の中で叫び声をあげた。

それから休んだわたしたちは、街のことが気になったので探索をする。

「この建物何かしら?」

ドーム状の建物

実はスライムと戦っているときに気になっていた建物だ。

わたしたちは中に入る。

「観客席みたいなものがあるわね」

椅子だったらしきものが、円を描くように並べられており、壁には星のマークが薄く残っている。そして、

中央には何かがある。

「もしかして、プラネタリウム?」

「ぷらねたりうむ?」

フィナが首を傾げる。

「何それ?」

「昼間に星を見るとこかな?」

分かりやすいように説明する。

「昼間に星なんて見ることができるわけがないでしょう。もしかして、ユナってバカ?」

バカの子にバカと言われると、ちょっとイラッとくる。でも、わたしは大人だ。大人の対応をする。

「違うよ。本物の星じゃないよ。本当の星を見ている感じにしているだけだよ」

わたしは中央に移動する。

たぶん、これだと思うんだけど。

中央には台座があり、丸いものがある。

魔石がない。光の魔石でいいはずだ。

えっと、わたしが持っている中で、ちょうどいいのはあるかな?

わたしはクマボックスから魔石を取り出すと、穴に光の魔石を入れ、あとは光らせるだけだけど、これだけじゃダメだ

天井を見ると、天井の一部が崩れ落ちている。

わたしは崩れている天井や壁を外の光が入らないように土魔法で塞いでいく。

「ユナ、暗くしてどうするのよ」

「少し待って」

わたしは先ほど魔石を付けた魔道具のスイッチに触れる。

すると、天井に綺麗な星が映し出される。

「うゎぁ。きれい」

「本当に、夜の星空みたい」

この世界にも星座とかあるのかな。

もっとも、わたしは元の世界の星でも、あまり詳しくはない。

星座の名前は知っていても、どこに見えるかなんて知らない。その程度の知識しか持ち合わせていない。

「でも、どうして、こんな物を作ろうとしたのかしら? 夜になれば好きなだけ見ることができるでしょう」

「そんなの色々とあるでしょう。恋人同士とか、夜になると寝ちゃう子供のためとか」

「そうじゃのう、昼間に星空を見るのは贅沢かもしれぬ」

わたしたちはプラネタリウムを堪能し、休息をとった。

「眠るには最高ね」

それには同意だけど、ミアと同じ考えだと、なにかイヤだ。

それから、町の中を見回ったが、スライムも逃げ出したようで、街の中にはいなかった。

「本当にお金はいいの?」

翌日の朝、ミアたちと別れることになる。

「いいよ。ユナには何度も命を救われたし。あの杖も使い道がないみたいだし」

クリュナ=ハルクの杖は魔法陣を起動させるためだけのものだった。

価値はないと言ってもいいらしい。

どちらかと言うと魔法陣のほうに価値がある。

それも、スライムによって破壊され、ボロボロだった。

プラネタリウムは、わたしが見つけたものだと言って、譲ってくれた。

「でも、妹たちはいいの?」

「また、キャロルと頑張って、お宝を探すわ」

「まて、ここは年上である妾がプレゼントしよう」

カガリさんはそう言うと、アイテム袋から何かを取り出すと、ミアに放り投げる。

「ちょ、なにを」

ミアが受け取る。

「宝石?」

親指ほどの大きさの赤い色の綺麗な宝石だった。

「売れば、金になるじゃろう」

「も、もらえないわよ」

「小娘が気にするな」

「小娘って。そういえば、年上なのよね。だからといって、もらうわけには」

「タダとは言わん。口止め料じゃ」

「口止め料?」

「妾たちのことは、誰にも言わないでほしい」

ああ、なるほど。わたしたちのことが広まったら、面倒くさいことになるかもしれない。

「なによ。わたしたちが話すと思っているの? 黙ってほしいと言われたら、誰にも話さないわよ。わたしたちは、スライムに襲われ、一緒に戦った仲間でしょう。だから、これは必要はないわ」

ミアは宝石を持っている手をカガリさんに差し出す。

でも、その手は少し震えている。

無理をしているみたいだ。

「仲間というなら、受け取ってくれ。妾たちはクリュナ=ハルクの杖と、あの、ぷらねたりむだったか、それを譲ってもらった。その半分と思ってくれればいい」

「そ、そういうことなら」

ミアは宝石を持った手を引っ込める。

やっぱり、欲しかったみたいだ。

まあ、妹たちのために、頑張ってここまで来たんだ。ご褒美はあってもいいと思う。

「それじゃ、妾たちはいく」

「結局、どこから来たかは教えてくれないのね」

「ごめんね」

「別にいいわよ。でも、いつかはわたしたちの街には来なさいよ」

「おもてなしさせていただきます」

ミアたちの住んでいる街は教えてもらった。

時間ができたら、会いに行ってもいいかもしれない。

「そのときは、みんなで行くよ」

「絶対だからね」

ミアたちは馬に乗ると、立ち去っていく。

「騒がしい奴じゃったのう」

「そうだね。宝石の代金、わたしが払おうか?」

「お主も気にすることではない。あの程度の宝石なら、たくさん持っておる。それにお主には返しきれないほどの恩がある」

「そんなこと、気にしないでいいのに」

「なら、お主も宝石のことは気にするのではない」

「わかったよ」

そこまで言われたら、なにも言うことはできない。

「それじゃ、妾たちも帰るとするかのう」

それにはクマの転移門をどこかに設置しないといけない。

わたしはクマの転移門をクリュナ=ハルクの魔法陣があった地下室に置き、和の国に帰ってくる。

「妾は寝る。お主たちはどうする?」

1時間前まで寝ていたのに、寝る宣言をするカガリさん。

まあ、その気持ちは分かる。わたしも、帰ったら休みたい。

「帰るよ。フィナを送り届けないといけないからね」

予定よりも、長くなってしまった。

ティルミナさんたちが心配しているかもしれない。

「それじゃ、フィナ。わたしたちも帰ろう」

「うん」

わたしはクリモニアにあるクマの転移門へ扉を開き、フィナと一緒に扉を通る。