作品タイトル不明
58 クマさん、王都にクマハウスを建てる
兵舎に着くと盗賊団を引渡したときにいた門兵の人がいる。
たしか、何とか団の副団長だったはず。
名前は忘れた。
「本日はお呼びして申し訳ありませんでした」
副団長の人はグランさんとエレローラさんに頭を下げる。
「それで何用だ」
「はい。まず、ザモン盗賊団のアジト及び人数が判明しました。場所はここから西に行った山の中の洞窟だそうです。残りの人数は20人ほど。捕まっている女性も何人かいるそうです」
「それじゃ、すぐにでも救出にいかんとならんぞ」
「はい、ですが少し問題がありまして」
「問題?」
「はい、今この王都は誕生祭で人が集まってます。それで、王都の兵士も警備に当たっていまして、兵には余裕がありません」
「なら、冒険者ギルドに依頼を出せばよかろう」
「それにはグラン様と申しますか、そのユナさんでしたか?」
わたしの方を見るので頷く。
「ユナさんの許可が必要になります」
「わたしの?」
「ああ、盗賊団の宝物の私有の権利か」
グランさんが思い出したように言う。
わたしにも分かるように説明をプリーズ。
「はい、そうです。ユナさんはすでにザモン盗賊団の70人中50人を 捕(と) らえてくれました。ですが、アジトの制圧はしてません。基本、盗賊団は倒しても、魔物と違って剥ぎ取りはできません。倒すメリットは冒険者にはありません。ですから、権利として盗賊団が持っていた武器、防具、道具を手に入れることができます。それは盗賊たちが集めた宝物も指します」
「つまり、依頼を出すと盗賊団の宝物が依頼を受けた冒険者の物になってしまうってこと?」
「はい、今回の件はユナさんが一人で盗賊団を捕まえ、そのおかげで情報が得られました。なのに我々が勝手に冒険者ギルドに依頼は出すことはできません。出すにしてもユナさんの許可と報酬金額を決めなくてはいけません」
「面倒ね」
「それは仕方ないだろう。自分たちが手に入れた情報を他人に取られるような物だからのう。嬢ちゃんが盗賊退治に行けば何も問題がないのだが」
「面倒」
「ユナお姉ちゃん……」
フィナが呆れ顔で見てくる。
そんな目で見ないで。
面倒なものは面倒だ。
殺すだけならまだしも、保護する人物もいるとクマは使えないし、時間もかかる。
面倒以外に言葉はない。
「なら、わたしの方で兵を集めようか」
「エレローラ様?」
黙って聞いていたエレローラさんが案を出してくれる。
「よろしいのですか?」
「いいわよ。兵士の実戦の経験にもなるし、警備だけで飽きた人もいるでしょうからね」
「でも、それでは警備のほうが」
「大丈夫、大丈夫。そんなのわたしが書類を調整するだけだから」
「わかりました。それではエレローラ様、よろしくお願いします」
「ユナちゃんもそれでいいよね」
「わかんないけど、お願いします」
「兵士が討伐に行けば、お宝の権利はユナちゃんにあるわけ。まあ、少しはもらうけどね。それじゃ、すぐに兵を派遣させるから、わたしは行くね」
「はい、ありがとうございました」
「いいのよ。それじゃ、また夜にね」
エレローラさんは兵舎から出て行く。
「あと、ユナさんにはこちらの引取りをお願いします」
見た先には汚い剣や鎧が並び、その他いろんな物が並んでいる。
「ユナさんが捕らえた盗賊の持ち物です。先ほども申したとおり、こちらはユナさんの物になります」
えーと、どれもこれも汚いんだけど。
こんな汚い物いらないんだけど。
「処分お願いできますか」
そう、お願いしてみる。
「なら、こちらで処分して、売ったお金を用意させます。エレローラ様の家でよろしいでしょうか」
おお、処分って売ってお金にしてくれるらしい。
優しいな。
改めて盗賊の荷物を見ていると目を引くものがある。
「それは?」
巾着袋を指す。
「これですか? アイテム袋ですね」
これがアイテム袋。
クマボックスみたいな物か。
たしか、袋によって入る量が違うとか。
「この中で容量が多い物はどれですか」
「それなら、これですね。ザモン盗賊団の 頭(かしら) が持っていましたから容量は大きいです」
アイテム袋を受け取る。
大きさは手提げバッグほどの大きさ。
他のアイテム袋も似たりよったりだ。
一番小さいのはズボンのポケットに入るぐらいのサイズもある。
「やっぱり、盗賊が持っていたアイテム袋は全部貰えますか」
アイテム袋を全部持ってきてくれる。
全部で30個ほどある。
ありがたく貰いクマボックスに仕舞う。
以上でわたしの用件が終わり、付き合ってもらったグランさんに礼を言う。
「グランさん、ありがとうございました」
「いや、構わんよ。嬢ちゃんが捕まえてくれなかったら、わしは死んでおったからのう」
グランさんはこれから用があるそうなのでここで別れる。
グランさんと別れたわたしとフィナは商業ギルドで買った土地に向かう。
購入した土地の場所は地図を貰っているので分かるが、 何分(なにぶん) 王都は広すぎる。
王都の中をバスみたいに馬車が走るぐらいだ。
わたしは急ぐことも無いのでゆっくりと王都を見学しながら購入した土地に向かう。
「フィナ、大丈夫。疲れていない?」
「はい、大丈夫です。でも、すごい人ですね」
「そうね。さすが王都と言うべきなのか、誕生祭のせいか人は多いね」
「ユナお姉ちゃん、離れないように手を握ってもいいですか」
「手を……」
クマさんパペットを見る。
「これでいい?」
フィナの手を咥える。
「はい、ありがとうございます」
フィナが嬉しそうにする。
購入した土地にやってきた。
「ここで合っているよね」
地図と周りを見比べる。
「はい、たぶん」
「でかくない?」
「広いです」
地図の場所が示した土地は広かった。
街でクマハウスを建てた土地よりも4倍以上の広さがある。
つまり、クマハウスが4つ並ぶ。
4つもないけどね。
隣の家を見ると距離は離れている。
確認のため、両隣の家の名前を確認する。
「合っているね」
「はい」
「ユナお姉ちゃん、こんな大きな土地を買ったのですか」
「みたいね」
とりあえず、王都用に作っておいたクマハウスを出す。
「小さいね」
「はい」
わたしが用意した家は街にあるクマハウスと同じ大きさだ。
それが4倍以上の広さのある土地にぽつんとある。
土地の広さと家の大きさが合っていない。
違和感がありすぎる。
さらに上流地区の近くにあるためか、周りの家も大きい。
まあ、それ以前に外見がクマの時点で浮いているんだけど。
今更、気にしても仕方ないことなので、気にしないでクマハウスに入る。
「中は同じなんですね」
「まあね。違うと落ち着かないからね」
わたしはクマのくつのおかげで疲れていないが、歩き回ったフィナが疲れているだろうから、休憩がてらに冷えた果汁を出す。
「このあとはどうするんですか?」
「フィナは疲れていない?」
「少し疲れました」
「なら、一度、ノアの家に戻ろうか。こっちの家に住むことを伝えないといけないし」
「はい、ノアール様怒ってないといいですが」
「黙って出てきたからね。でも、寝てたから仕方ないよ」
果汁を飲み終えるとノアの家に向かうことにした。
翌日、いきなり現れたクマハウスに近くの住人は驚くことになる。