軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

614 クマさん、地下室を調べる

わたしはフィナと一緒に近くの家の中に入る。

埃っぽい。

歩くと埃が舞う。

フィナにはハンカチを口に当てるように言う。

クマ装備はフードを被っていると、埃が目の前まできても、目や口まではこないので、吸い込むことはない。目の前で、見えない何かで、守られている感じになっている。

見た目さえ気にしなければ本当に万能装備だ。

「はい、ユナお姉ちゃんのハンカチ」

でも、そんなことを知らないフィナは、白い綺麗なハンカチを差し出してくれる。

ここで、断るのは簡単だ。でも、せっかくフィナが差し出してくれたハンカチを無下にできないので、お礼を言って受け取る。

「ありがとう」

わたしはハンカチを口に当てて、部屋を調べる。

「ユナお姉ちゃん。何を探せばいいの?」

「わたしも分からないけど。見たことがない、怪しいものかな?」

流石に目の前にあるような壊れかけたタンスや本棚のような一般的なものに擬態するようにクリュナ=ハルクが作っていたら分からないけど。地下にいた研究者が見つけることができたものだ。たぶん、見れば分かると思う。

……でも、家の中を探すが、それっぽいのは何もない。

「本当にクリュナ=ハルクさんが作ったものがあるかな?」

フィナも一生懸命に探すが見つからない。

「あの地下室にいた研究者が守ろうとして、甲冑騎士を近くに置いていたんだから、近くにあると思うよ」

一つ目の家には、それらしいものがなにもなく、わたしとフィナは隣の小さい家に移動する。

ここも一軒目と同じように埃っぽい。

わたしとフィナは一部屋ずつ確認していく。

「うん?」

部屋に入ると違和感を覚えた。部屋の真ん中にベッドがある。

それだけなら問題はないけど、壁にあったのを引きずってできた傷が床にある。

今までに、たくさんのアニメや漫画を見たり、ゲームをしてきたわたしの直感が怪しいと囁いている。

「ユナお姉ちゃん、どうかしたの?」

「そのベッドが怪しいと思ってね。フィナ。ちょっと、ベッドを移動させるから離れていて」

フィナが部屋の入口まで下がるのを確認すると、ベッドの端を掴むと壁際に押す。それと同時に埃が舞う。

わたしは風魔法を使い、木の窓枠を壊し、そのまま、窓の外に埃を逃がす。

「フィナ、大丈夫?」

ハンカチで口と鼻を守っても、目に埃が入ったら大変だ。

「うん、大丈夫だよ。ユナお姉ちゃん、ベッドの下に扉が」

ハンカチを口に当てながら、フィナが床を指差す。

ベッドの下には隠されるように、床に扉があった。

「ユナお姉ちゃん。ベッドの下に扉があるって、分かっていたの?」

「ふふ、この手の隠す方法は定番だからね」

ベッドを引きずった痕があったのが決め手となった。

「そうなの?」

ゲームだと、絨毯を剥がすと地下室が出てきたり、本棚を移動させると隠し扉や隠し通路が出てきたものだ。逃げ道になっていたり、お宝が隠されてたりする。漫画やゲームでは、何度も使われてきた手法だ。今回は、その知識が役に立った。

「それじゃ、開けるから、フィナは後ろに下がっていて」

罠がある可能性もある。クマ装備があるわたしは大丈夫だけど、近くにフィナがいたら危ない。

「うん」

フィナは頷くと、後ろに離れる。

フィナが後ろに下がったのを確認したわたしは、床の扉を持ち上げる。

隠し階段がでてくる。

予想通りだ。

「フィナは……」

「ユナお姉ちゃん!」

わたしが「待っていて」と言おうと、フィナを見ると、フィナは光の魔法を作り出していた。

どうやら、一緒に来るつもりみたいだ。

くまゆるとくまきゅうがいない今、一人で部屋に残すのも危険かもしれない。

少し考え、わたしと一緒にいたほうが安全だと思い、一緒に連れていくことにする。

「わたしの近くから離れちゃダメだからね」

「うん!」

わたしを先頭に階段を下りていく。

それほど深くない。

「ここは? フィナ、周囲を全体的に照らして」

フィナの光魔法が周囲を照らす。

階段を降りた先にあったのは、ちょっとした地下室だった。

「ユナお姉ちゃん。床に」

わたしが部屋の周りを見ていると、フィナが床を指差す。

「魔法陣?」

床には円形や複雑な模様が彫られており、魔石なども嵌められている。

だけど、壊れている。

魔法陣が彫られた床が、ひび割れ、魔法陣の役目を果たせていないことは見れば、すぐに分かった。

「修復は無理だよね」

土魔法で床を補強しても、場所によっては完全に崩れている場所もある。床を修復したからといって、魔法陣が修復ができるわけではない。

「これは、カガリさんに相談かな?」

その前に、地下室に何かないか確認する。

ここがクリュナ=ハルクが残したものなら、何かがあるかもしれない。

だけど、すぐに何もないことが分かった。地下室には魔法陣があるだけで、机はおろか本棚もなく、紙切れ一つなかった。

でも、この家がクリュナ=ハルクが使っていたものなら、他の部屋にも手がかりがあるかと思い、フィナと一緒に、他の部屋を確認するが、地下室と同様になにも見つからなかった。

諦めて、家から出ようとしたとき、外から声がする。

「ユナ~、フィナ~、どこにいるの~」

家の外からわたしたちを呼ぶミアの声がする。

「ここだよ」

「そこにいたのね」

わたしとフィナが家の外に出ると、すでにミアとカガリさんは戻っていた。

「ユナ、お主たちのほうは何かあったか? 妾たちのほうは何もなかったが」

「わたしたちのところなんて、クモの巣だらけだったわよ」

「ミアちゃん、動かないで、クモの巣が取れないよ」

キャロルがミアの髪の毛に付いたクモの巣を取っている。

「まだ、付いているの? 早く取って!」

相変わらず、仲が良い二人だ。

「わたしたちのほうは、クリュナ=ハルクが作ったと思われる地下室を見つけたよ」

カガリさんたちに魔法陣があった地下室を見つけたことを説明する。

わたしはカガリさんを連れて、地下室がある家の中に入り、地下室がある部屋に向かう。

「ベッドの下に隠された地下室か。よく見つけたのう」

「それは、今までの経験からね」

リアル経験ではなく、アニメ、漫画、小説、ゲームといった知識からだけど。

わたしたちが階段を降りようとするとくまゆるとくまきゅうが「「くぅ〜ん」」と鳴く。

どうやら、自分たちが通れないため、鳴いたらしい。

小さくすれば連れていくことはできるけど。

「2人は待っていて」

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうは寂しそうに鳴く。

「入口を見張ってくれていると嬉しいかな。二人が入口を守ってくれると安心だし、お願い」

「「くぅ〜ん」」

わたしがお願いすると、くまゆるとくまきゅうは納得したように、周囲の確認をするように階段の左右に座る。

「本当に、凄いクマね。人の言っていることを理解するし、速いし、わたしたちを乗せて走り続けられるし」

「あと、可愛いし、柔らかいし」

「何を言っておる。狐のほうが凄いに決まっておるじゃろう」

ミアとキャロルがクマを褒めるので、カガリさんが反論する。

「3人とも、地下に行くんでしょう。早くしないとスライムが来ちゃうよ」

わたしもクマに一票だけど。そんなことを言えば、カガリさんがいじけるかもしれないので、話を進ませるため、階段を降りていく。

わたしの後をフィナが付いてくると、3人も黙って階段を降りてくる。

「ほう、こんなところに地下室があったのか」

「たぶん、この魔法陣はクリュナ=ハルクが作ったんだと思うんだけど」

わたしはひび割れている床にある魔法陣をクマさんパペットで指す。

「ちょ、壊れているじゃない。これじゃ、クリュナ=ハルクの杖を使っても」

ミアが絶望的な表情をする。

その気持ちは分からなくはない。

スライムを止める方法と思われていたことが、ダメだったんだから。

「まだ、わからん。数日前までは、効果はあったのは確かじゃ。他の場所にあるものが無事で、一つぐらい壊れても大丈夫なのかもしれぬ」

効果は薄れるけど、止まる可能性は、確かにある。

こればかりは、やってみないと分からないのが本当のところだ。

「部屋には、何かないの? 魔法陣を修復する方法とか?」

「紙切れ一つなかったよ」

ミアとキャロルも部屋を見回して、わたしの言葉通りだと知ると落胆する。

「この魔法陣が何かを分からないようにするため、何も残さなかったかもしれぬ。もしくは、あの地下室にいた研究者が処分した可能性もある」

この地下室の魔法陣のことを秘密にしたいなら、クリュナ=ハルクが残した物があったとしても、処分したかもしれない。ベッドで隠すぐらいだ。

個人的には魔法で埋めちゃえばいいかと思ったけど、研究のために何度も来ていたのかもしれない。

「それじゃ、あの研究室を調べれば」

「それらしき物はなかったじゃろう」

「うぅ」

研究者の地下室で、見つけられた目ぼしいものはノートが2冊と杖だけだった。

「とりあえず、カガリさんの言うとおりに、ここと同じような場所があるなら、他の場所を確認してみたらどうですか? もしかすると、他の部屋には手掛かりがあるかもしれませんよ」

キャロルが提案する。

「そうよ。お爺ちゃんのメモには、甲冑騎士がいた場所が他にも書かれているわ」

「そうじゃな。ここで答えが出ないことで、話し合っても仕方ない。他の場所を確認してから、今後のことを話し合うべきじゃろう」

わたしたちは地下室から出て、くまゆるとくまきゅうと合流すると、ミアのお爺ちゃんのメモを見ながら、次の場所に向かった。