軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

589 クマさん、フィナにプレゼントする 和の国編 その5

翌日、わたしたちは城に行くと、男性が待ち構えていた。

「サクラ、待っていたぞ」

この城の主、スオウ王だ。

「どうして伯父様が?」

「ユナが来ると聞けば、挨拶は必要だろう?」

いや、別にいらないよ。

ほら、スオウ王が話しかけてくるから、周りにいる人たちに「あの娘たちはなんだろう」的な目で見られている。でも、反応からすると、大蛇の件とわたしたちのことは知らないみたいだ。騒ぎになっても困るから、こっちは助かるけど。

そして、スオウ王はサクラから、わたしたちに視線を変える。

「一人、知らない者がいるが、あのときの娘たちか。それでユナはいないのか?」

目の前にいるよ。

このやり取りも何度も行われてきたけど、クマの格好じゃないと、そんなにわたしって分からないものなのかな?

まあ、それだけわたしの顔が地味で印象に残らないってことなんだろうけど。

それとも、クマの格好のイメージが強すぎて覚えられていないほうが、可能性が高いかもしれない。

「何を言っているんですか。ユナ様ならいますよ」

サクラはそう言ってわたしに視線を向ける。

「……あのクマの中身がこれだと?」

これだよ。

文句ある?

「ほほう」

「なによ」

「その格好も似合っているぞ」

「ありがとう」

いちいち反論する必要もないので、素直にお世辞を受け取っておく。

「俺は付き合えないが、俺の指示で、城の者には言付けてある。だから、城の中は自由に見回って構わない。だが、サクラと一緒には行動してくれ。それから昼食は用意させるから、食べていってくれ」

スオウ王はそれだけ言うと、離れていく。

「それじゃ、わたしたちも行きましょうか」

「はい」

「うん」

「早く、いこう!」

「シュリ、離れちゃダメだからね」

今にも走り出しそうなシュリに言う。

「離れないよう~。なんで、いつもわたしに言うの?」

「勝手にあっちこっちに行きそうだから?」

「うぅ」

わたしの言葉にシュリは頬を膨らませる。

まあ、実際問題、シュリは言いつけは守る子だ。でも、目の前に興味があると、一人で行動する可能性も持っている。逆に注意をしていないと、何をするか分からないってことでもある。

「シュリ、お姉ちゃんと一緒に行こう」

「うん」

フィナが手を差し出すと、シュリはその手を握る。

そんな二人を羨ましそうに見ている人物がいる。

「わたしも、シュリちゃんみたいな妹が欲しいです」

「分かります」

ルイミンとサクラは、フィナとシュリの仲が良い姿を見て、そんな感想を呟く。

「わたしはサクラ様が妹みたいなものっすからね」

「わたしもフィナとシュリが妹みたいなものかな?」

わたしとシノブは温かい目で妹たちを見る。

そして、わたしたちはお城の中を歩く。

すれ違う人には、サクラとシノブのおかげなのか、スオウ王の言う通りに止められることもなかった。

王都の城と違って、木材が多い日本風の城だ。

やっぱり、日本人としては、こっちの城のほうが親しみやすい。そんな和の国の城と王都の城が全然違うことに、フィナたちは驚いたりしていた。

「うわぁ、綺麗です」

フィナとシュリが歩みを止めて、池や綺麗な石などが並べられている日本庭園っぽいのを見ている。

「大きな水溜まり?」

「小さな池だよ。そこで魚を飼ったりしているんだよ」

「食べるの?」

「食べないよ。観賞用だよ」

わたしはシュリに説明してあげる。

「ユナ様は詳しいですね」

「わたしの国も、似たようなものがあったからね」

でも、 鹿威(ししおど) しは無かった。

それからも城の中の散策をしていると、ジュウベイさんに会い、わたしの格好に驚かれた。そして、練習試合を申し込まれたが丁重に断った。

だって、クマ装備じゃないから、ジュウベイさんの一撃を受けたら大変なことになる。ジュウベイさんの実力を知っているから、余計に戦いたくはない。

なので、代わりにシノブがジュウベイさんと試合をしたり、武器なしの組手を見せてくれた。

ジュウベイさんの動きも洗練されてて凄かったが、シノブもそれに負けじと凄かった。

シュリたちはシノブを応援したが、ジュウベイさんには勝てなかった。

それから、シノブはクナイ投げを披露してくれ、わたしに勝負を持ちかけてきた。クマさんパペットがなければ、わたしに勝ち目はないけど、逆にクマさんパペットがあると、わたしが勝つことが分かりきっているので断った。でも、シノブが「負けるのが悔しいんっすね」「まあ、クナイ投げに関してはユナには負けないっすからね」とか「誰も恥はかきたくないから仕方ないっすよね」と言われて、ちょっとイラッとしたので、クマさんパペットチート全開で、シノブを叩きのめした。

シノブはショックを受けていたけど、わたしは悪くない。わたしはちゃんと断ったからね。

まあ、わたしも大人げなかったけど。

それからもいろいろな場所を見て歩き、最後にお城の上から城下町を見渡した。

「うわぁ、凄い」

「王都のお城から見た景色も綺麗だったけど、この城から見た景色も綺麗だね」

「はい。町の建物が違うだけで、こんなに違うんですね」

フィナの言う通り、まったく別の景色だ。

フィナだけではなく、シュリもルイミンも目を開いて景色を見ている。

「ユナさんに会えなかったら、こんな景色は見ることはできなかったんですよね。ユナさんの家の前で倒れてよかったです」

いや、女の子が外で倒れちゃダメでしょう。

危険だし、拐われる可能性だってある。まして、ルイミンは可愛いエルフの女の子だ。自分の身は自分で守らないと。

「ふふ、そうですね。ユナ様がいなかったら、この景色は壊されていたかもしれません。人もいなく、建物もなくなっていたかもしれません」

景色を見ていたサクラがわたしに視線を向ける。

「ユナ様、本当にありがとうございました」

「お礼なら、何度も聞いたよ。だから、もうお礼の言葉はいらないよ。もし、お礼がしたかったら、頑張って生きて、人生を楽しんで」

自分の人生は自分のものだ。それに一度しかない人生は、楽しんだほうがいい。

「はい!」

サクラは笑顔で返事をした。

そして、お城の上から景色を堪能したわたしたちは、スオウ王がお昼に用意してくれた豪華な料理を食べたりした。

「もう、お腹がいっぱい」

「もう、食べられません」

「苦しいです」

「お腹がいっぱいだよ」

「って、いうか量が多すぎだよ」

「伯父様もユナ様にお礼をしたかったんですよ」

だからといって、量が多いわ、豪華だわ、でフィナたちは圧倒されていた。でも、最終的にはお腹いっぱいに食べていたけどね。

そして、和の国を堪能したわたしたちは、翌日に帰ることにした。

「本当にいいのですか?」

ルイミンをエルフの村に送り返し、カガリさんを迎えに行く。そのついでに、サクラとシノブも一緒にエルフの村に連れていってあげることになった。

「契約魔法をしているし、サクラが誰かに言いふらしたりする子じゃないことは知っているからね。言ったりはしないでしょう?」

「はい、もちろんです」

「シノブは怪しいけど」

「言ったりはしないっすよ。墓の中まで持っていくっすよ」

まあ、言ったら本当に笑い死んで、墓まで持っていくことになるけど。

そんなわけで、わたしたちはカガリさんが住んでいる家に帰ってくる。

「ふふ、楽しみです」

「サクラちゃんの国を見てから、わたしの村を見られるのは、少し恥ずかしいです。サクラちゃんの街と違って、わたしの村は何もないから」

「何かがあるから、見に行くのではないですよ。ルイミンさんが住んでいる村を見たいんです。それにカガリ様がいずれ、住むかもしれない場所です。この目で見ておきたいんです」

そこまで言われたら、ルイミンもダメとは言えない。

「それじゃ、開けるよ」

わたしはエルフの村の森にあるクマの転移門に向けて扉を開き、わたしを先頭にクマの転移門を通る。

サクラはキョロキョロと周りを見ている。

「部屋にあった扉の先が森の中って不思議です」

「うん、わたしも初めて扉の先を見たときは驚いたよ」

「わたしも~」

「はい、わたしもです。初めてユナお姉ちゃんに、この扉のことを教えてもらったとき、信じられなかったです」

フィナに教えたときは、転移門の存在がどれほどのものか知らなかったから仕方ない。

魔法陣や魔道具があるかもと思っていた。

あのときは、まだゲームっぽい世界かと思ったりしたけど、似ていることもあるけど、基本は違うと知った。

わたしたちは周りの景色を見ながら、エルフの村に向かう。

「ここがルイミンさんが住んでいる村なんですね」

「なにもないでしょう?」

「落ち着いた、とても良い村だと思いますよ」

静かで、なにもないという。

でも、こういう落ち着いた雰囲気が好きな人もいる。

「それで、どうする? カガリさんのところに行く?」

「その前に、ルイミンさんのご両親に挨拶をしたいです」

「わたしの両親に会うの!?」

「ご迷惑ですか?」

「そんなことはないけど。なにか恥ずかしい」

わたしたちはルイミンの家に行き、ルイミンの両親のアルトゥルさんとタリアさんに挨拶をした。

「それじゃ、あのカガリちゃんと同じ場所から来たのね」

「カガリ様はご迷惑をお掛けしてませんか?」

「お義父さんのところにいるから、分からないけど。凄い呑みっぷりだったわね」

話を聞くと、子供にお酒を飲ませているムムルートさんを叱ろうとしたとき、カガリさんから年齢のことを聞いたらしい。

「うぅ、恥ずかしいです。カガリ様、なにをやっているんですか?」

それから、挨拶を済ませたわたしたちは、カガリさんを迎えに、ムムルートさんの家に向かう。

そして、いつも通りに住んでいる人の許可をもらわずに、ルイミンを先頭に家の中に入っていく。サクラとシノブは躊躇うけど、ルイミンの「大丈夫ですよ」の言葉で一緒に家の中に入る。

「あら、ルイミン、帰ってきたのね」

ムムルートさんの奥さんが、わたしたちに気づく。

「ただいま、お婆ちゃん。ここにカガリさんって、小さい女の子が来ていると思うんだけど」

「ええ、来ているけど、今はムムルートと出ているわよ」

入れ違いだったみたいだ。

「どこに行ったか分かる?」

「村の外に行くとか言っていたわね」

「お婆ちゃん、ありがとう」

「ありがとうございます」

わたしたちはお礼を言って家を出る。

「でも、外ってどこにいるのかな?」

「場所なら、くまゆるとくまきゅうがわかるよ」

わたしは、くまゆるとくまきゅうを召喚して、二人のところに案内してもらう。

くまゆるとくまきゅうは、任せてと言わんばかりに、森の中を進んでいく。そして、小さく「くぅ〜ん」と鳴く。

「この先にいるみたいだよ」

「この先は湖があります」

ルイミンの言う通りに湖があり、二人が楽しそうに話している姿があった。

「カガリ様?」

サクラは不安そうに名前を呼ぶと、カガリさんは振り返る。

「おお、来たのか?」

「迎えに来ました」

「そうか。それじゃ、帰ることにするかのう」

「ムムルート様と、何を話していたのですか?」

「酒は旨いし、静かな場所もある。そして、人恋しいと思えば人がいるから、いい村だと話していただけじゃ」

「……もしかして、この村に住みたくなりましたか? それなら、ここに残っても……」

サクラが一生懸命に堪えながら言う。

そんなサクラに、カガリさんはゆっくりと近づき、サクラの胸に抱きつく。

「何度も言っておるじゃろう。妾はお主が大きくなるまで見守ると。妾が出ていくとしたら、妾の代わりにお主の傍にいてくれる夫ができるときじゃ」

「それじゃ、わたしが結婚をしなければ、和の国に残るってことですか?」

「それも悪くはないが、お主ほどの 女子(おなご) を男が放っておかぬじゃろう」

「……カガリ様」

「まあ、あと10年は先のことじゃ。妾にとってはあっという間のことでも、お主にとっては先の長い話じゃ。それに、もしかするとお主の子供を見たら、離れたくないと思うかもしれぬぞ」

「カガリ様」

「だから、そんな悲しそうな顔をするな」

「はい」

良い話のはずなんだけど、慰めているほうが年下の幼女だから、見ているほうは違和感がある。

これがギャップ萌えなのかもしれない。

「わたしは、まだ子供ですね。本当はカガリ様がここに残りたいと言ったら、残ってもいいと思いました。でも、カガリ様を前にしたら、いなくなると思うと悲しくなってしまいました」

「お主は、他の子供と比べると大人っぽいが、まだ子供じゃ。妾はお主の母親代わりのつもりじゃ、妾を頼ってくれていい」

「カガリ様」

そして、短い時間だけど、エルフの村の中をサクラとシノブに案内する。ルイミンは何もないことに恥ずかしそうにしていたが、見るものが初めての二人は楽しそうにしていた。

「それじゃ、世話になった」

「ユナ様、ありがとうございました。ルイミンさんの村を見られて嬉しかったです」

「貴重な経験をしたっす」

クマの転移門の前で、サクラたちと別れの挨拶をする。

「フィナちゃん、シュリちゃんもまたね」

「はい」

「うん」

3人は和の国に繋がるクマの転移門を通っていく。

そして、お辞儀をするサクラを見ながら、クマの転移門が閉まっていく。

「それじゃ、わたしたちも帰ろうか」

「はい」

「うん」

「それじゃ、ルイミン、またね」

「はい。今度は、ユナさんたちの街に行ってみたいです」

「今度ね」

「楽しみにしています」

クマの転移門をクリモニアのわたしのクマハウスに向けて開く。フィナとシュリは先に入ると、扉を閉め、クマの転移門を回収する。

「それじゃ、わたしも行くね」

「はい。また来てくださいね」

わたしは神聖樹のところにあるクマの転移門を使って、クリモニアにあるクマハウスに戻ってくる。わたしはクマの転移門がある部屋から居間に移動すると、ソファにフィナが座っていて、シュリがフィナに寄りかかるように寝ていた。

「疲れていたみたいです。座ったら寝ちゃいました。すぐに起こしますね」

「いいよ。わたしがおんぶして家まで運ぶよ」

わたしは、背中にシュリを乗せて、フィナの家に向かう。

「楽しかった?」

「はい。とても楽しかったです」

「それはよかったよ」

「でも、不思議です。どこにあるかも分からない場所の人と知り合って、お話をして、友達になって。また会う約束をする」

フィナは楽しそうに話す。

「ユナお姉ちゃんに会うまで、こんな経験ができるとは思いもしませんでした。あのときはお母さんが、いつ死ぬか不安で、自分とシュリのことしか考えられませんでした」

フィナは背中で気持ちよく寝ているシュリの横顔を見て微笑む。

「ユナお姉ちゃん。ありがとうね。わたし、ユナお姉ちゃんに会えてよかった」

「わたしも、フィナに会えてよかったよ」

「今回の誕生日は魔法を教わって、いろいろな場所に行って、忘れられない誕生日になると思います」

「嬉しいけど。そう言われると、来年はもっと、忘れられない誕生日にしたくなるね」

「これ以上、ユナお姉ちゃんにもらったら、ユナお姉ちゃんにお返しができなくなります」

「フィナからはたくさんもらっているよ」

元の世界じゃ一人でいることが多かった。でも、この世界に来て、フィナと出会い、それを切っ掛けにいろいろな人と出会うことができた。わたしこそ、フィナに感謝だ。

そんな話をしているとフィナの家が見えてくる。

そして、預かっていた娘二人をティルミナさんに返す。

フィナとシュリを送り届けて、帰ろうと思ったら、ティルミナさんに夕食を誘われ、ご馳走になることになった。

昔は一人で食べることが多かったけど、今ではいろいろな人と一緒に食べることが多くなった。

さて、明日はどうしようかな。

一部完