軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

588 クマさん、フィナにプレゼントする 和の国編 その4

わたしたちは城下町までやってくる。

くまゆるとくまきゅう、それからハヤテマルを送還し、城下町の中に入る。

スオウ王に貰った許可証やサクラとシノブのおかげですんなりと入ることができた。

まあ、クマの格好じゃないし、怪しまれないよね。

「それでは皆様、どこか行きたいところはありますか?」

サクラが尋ねる。

「お城!」

シュリがお城を見ながら答える。

本当にお城が好きだね。

まあ、大きく、一番目立つから仕方ない。

「そうですね。大丈夫だと思いますが、伯父様に確認をとってからになりますので、明日でもいいですか?」

「うん、いいよ」

「フィナちゃんやルイミンさん、それからユナ様は、どこかに行きたいところはありますか?」

「わたしは、フィナの行きたいところでいいよ」

今回はフィナの誕生日プレゼントで来ている。だから、今回はフィナが行きたいところが、わたしの行きたいところになる。

「えっと、サクラちゃんとシノブさんのおすすめの場所なら、どこでも」

まあ、フィナも和の国について詳しくはないから、そうなるよね。

「はい。わたしもそれで構いません」

ルイミンもフィナに同意する。

オススメスポットが書かれたパンフレットや、ネットの前情報で和の国のことを知ることができるわけではない。

最終的には地元民のオススメスポットを聞いたほうが早い。

「それでは城下町については、わたしはあまり詳しくないので、シノブにお任せします」

「わたしっすか?」

「わたしが、あまり外に行かないことは知っていますよね?」

「そうっすが」

わたしと同じで、引きこもりだったんだね。と言っても、わたしとは理由は違うと思うけど。

「わたしも修業や訓練とかで、気分転換に美味しいものを食べに来るぐらいっすよ」

「それじゃ、シノブがおすすめする食べ物を食べながら、適当に歩きましょう」

サクラの言葉に反対意見もなく、適当に歩くことになった。

チラチラ。チラチラ。

おかしい。

なにか、見られているような気がする。

さすがにクマさんパペットと靴だけでは、ジロジロと見られることはないと思ったけど、視線を感じる。

これは制服のときにも思ったけど、自意識過剰ってやつなのかもしれない。

いつも、クマの格好で見られているから、普通の格好でも自分が見られていると思ってしまう。

それとも、クマの格好じゃないから、おかしいとか?

いや、クリモニアじゃないんだから、それはないよね?

わたしが心の中で疑問にしていることをシノブが答えてくれる。

「ふふ、可愛い子をたくさん連れているから、目立つっすね」

やっぱり、見られていたらしい。

でも、シノブの言葉で納得だ。

可愛い姉妹のフィナとシュリ。それからエルフ特有の可愛らしさを持っているルイミン。それに和装が似合うサクラを連れていれば、視線を集めるのも納得だ。

さらにシノブも、ニコニコと笑っている笑顔が魅力的だ。

わたしが男だったらハーレムだね。

「わたしが男だったら、ハーレムだったっすね」

わたしが思っていることと、シノブが思っていることが、被った。

「シノブ。あなた、自分の容姿を確認したほうがいいですよ」

サクラの言葉に同意。

シノブって、いつも笑顔でいるから、可愛らしい女の子に見える。それに、戦っているときは、カッコ良さもある。

視線を惹きつけるのも分かる。

「そんなことはないっすよ。わたしの顔なんて、ユナと違って標準っすよ。どこにでもある顔っすよ」

「どうして、そこでわたしの名前を出すかな。シノブに言われると、嫌味にしか聞こえないよ」

シノブの顔が標準なんてありえない。

もし、本当にそう思っているなら、鏡でちゃんと見たほうがいいと思う。

「自分こそ、ユナに言われると嫌味に聞こえるっすよ」

「鏡だそうか?」

「自分こそ、鏡を出すっすよ」

そんな、わたしたちのやり取りに、フィナたちがため息を吐く。

なんでだろう?

まあ、そんなことは気にせずに、わたしたちは城下町を散策し、美味しい物を食べたり、大道芸を見たりした。

「面白かったです」

「うん、凄かった」

「ボールをくるくると回したり、凄かったです」

歩きながら、先ほど見た大道芸の感想を漏らすフィナたち。

そんな楽しそうに話すフィナたちにシノブが反応する。

「あのボールを回すのだったら、わたしもできるっすよ」

「ほんとう?」

「本当っすよ」

そういうとシノブは立ち止まると、周りを確認しながら懐からクナイを出すと、「よっと」と言いながら、上に向けて投げる。一本や二本じゃない。四本ほどのクナイがお手玉のように回り始める。

「すごい!」

シュリが騒ぎ、フィナとルイミンも目を大きくして見ている。

「こんなものじゃないっすよ」

シノブはそう言うと、お手玉のように扱っているクナイを高く放り投げると、体を回転させながらクナイを全てキャッチする。

その瞬間、周りから拍手が沸き上がる。

どうやら、シノブの芸を見ていた人たちが拍手したみたいだ。

「どうもっす」

シノブは頭を下げて、お辞儀をする。

「何をやっているんですか。離れますよ」

サクラがシノブの手を握って歩きだし、この場から離れる。

「目立ってどうするんですか。ジュウベイに知られたら、怒られますよ」

「それなら、大丈夫っす。師匠にも見せたことがあるっすから」

「……だからと言って、子供たちが真似をしたら困りますから、クナイでやるのはやめてくださいね」

それには同意だ。柔らかいものでやるのはいいけど。実際に、シュリが石を拾ってやろうとするのを、フィナが止めている姿がある。

でも、サクラは自分が子供だということを分かっているのかな?

それから、わたしたちはお茶屋さんで、お団子やお饅頭を食べる。

「美味しいよ」

「それは良かったっす。このお店は自分のおススメっすから」

「もしかして、たまに持ってきていたお団子は」

「このお店の団子っす」

「どうりで、食べたことがある味だと思いました」

「それにしても、いろいろな美味しい食べ物があるから、どれを食べたらいいか悩みます。あまり食べると、他のが食べられません」

ルイミンは団子とお饅頭が乗っているお皿を見ながら言う。

それはフィナとシュリも同様だけど、仲良く半分こずつにして食べている。

「それは、わたしも同じなので、半分にして食べませんか?」

「はい、わたしもいろいろと食べたいですので」

サクラとルイミンはお饅頭を半分にして、仲良く食べあう。

それを見たシノブがわたしを見て、「わたしたちもするっすか?」と聞かれたが、丁重に断った。

わたしに、そんな百合展開はいらないよ。

それにお腹が一杯だったら、クマボックスに入れて、後で食べればいいだけだしね。

お茶屋を後にしたわたしたちは、それからも散策を続ける。そんなわたしの目の前に見覚えのある屋台を発見した。

「あれは?」

屋台では飴細工を売っていた。

飴細工は配ったり、たまに甘いものが食べたくなるときに食べていたせいで、在庫はなくなっていた。

また補充しておこう。

「ちょっと、飴細工買ってくるね」

「ああ、わたしも食べたい」

「久しぶりに、わたしも食べたいです」

わたしの言葉に、シュリ、サクラが反応する。

「フィナも食べる?」

「はい」

というわけで、わたしたちは屋台の前にやってくる。

その屋台にいたのは、前回飴細工を買ったおじさんだった。

でも、前回買ったのは、港がある街だったはずだ。

「おじさん、この街でも商売しているの?」

「うん? 嬢ちゃんは誰だ?」

あっ、そうか。クマの格好をしていないから、分からないんだ。

それに、あれから、時間も過ぎている。わたしのことを覚えていなくても仕方ない。

「前に、全部の飴細工を買ったことがあるけど、覚えていない?」

わたしはクマさんパペットを、おじさんの前でパクパクさせてみせる。

「ああ、あのときのクマの嬢ちゃんか? そんな綺麗な格好しているから分からなかったぞ。

それで、まさか、今回も全部とは言わないよな?」

わたしはニカっと微笑んで、「全部」と言った。

フィナたちには食べたい飴細工を選んでもらい、わたしはおじさんに話しかける。

「それで、どうして、おじさんがここに?」

「たまにこっちの城下町でも売っているんだよ。同じ場所で売り続けても、売れなくなるからな」

たしかに、そうかもしれない。

わたしは100個ほどあった飴細工を購入した。

そして、フィナたちは、全員クマの飴細工を選んで、美味しそうに食べていた。

みんな、クマが食べたいってわけじゃないよね?

そして、城下町を一日中歩き回ったわたしたちは、サクラのお屋敷に泊まることになった。

「くまゆる様とくまきゅう様は、大きくても小さくても可愛いですね」

サクラは子熊になったくまゆるとくまきゅうの頭を撫でる。

「そういえば、体の調子はどう? 魔力とか?」

聞こうかと悩んでいたことを尋ねてみる。

「はい。体調のほうは見ての通り、なんともありません。魔力のほうは、成長してみないと分からないと言われました」

「……」

皆が黙ってしまう。

「でも、後悔はしてませんから、大丈夫。魔法が使えない人は多くいます。魔法が使えないからといって、落ち込んでいましたら、魔法が使えない人たちに失礼です」

サクラはニコっと微笑む。

まあ、魔法が無くても生きてはいける。それに、サクラの立場なら、魔物と戦うこともないと思う。

それに、側にはシノブがいるし、大丈夫だと思う。

くまゆるとくまきゅうと一緒に寝たいというサクラの願いもあって、わたしたちは同じ部屋で寝ることになった。

広い畳部屋に6つの布団が並べられる。

「ベッドじゃないところで寝るのは、不思議です」

「ベッドがある部屋もありますが、そちらの部屋を用意しますか?」

フィナの言葉にサクラが尋ねる。

「大丈夫です。あまり、このようにして寝ることはなかったので、これも楽しいです」

たしかに、わたしも元の世界でも物心ついたときにはベッドで寝ていた。畳の上でふとんを敷いて寝ることはほとんどない。

記憶にあるのは、祖父の家に泊まったときぐらいだ。

「そういえば、お城から連絡があって、明日はお城の中に入れることになりました」

「ほんとう!?」

シュリが喜ぶ。

「フィナ、よかったね」

「はい。少し楽しみです。でも、わたしがお城なんて入っていいのかな?」

「伯父様の許可をいただいていますから大丈夫ですよ。伯父様に文句を言う人はいませんし。もし、文句を言われても伯父様の名前を出せば大丈夫です。ですから、なにも心配することはありません」

「サクラちゃんのおじさんって、国王様だよね?」

「はい。ですから、安心してください」

フィナの顔が微妙にひきつっている。

「ふふ、そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫っすよ。わたしも一緒に行くっすから、フィナたちに手を出す人がいたら、わたしが守るっす」

「……シノブさん」

「それに、フィナたちに手を出す者がいたら、そこのクマさんが、わたし以上に守ってくれるっすよ」

シノブがわたしを見て、微笑む。

今日は歩き回って疲れているので、和装は脱いで白クマになっている。

ちなみにフィナたちは浴衣を着て、可愛らしい。

「まあ、フィナとシュリに手を出したら、この国がどうなるか分からないけど」

「冗談に聞こえないのが怖いっす」

「だから、しっかりお願いね」

「了解っす。国が救われたのに、国が壊れたら困るっす」

「あのう、わたしも守ってくれるんですか?」

ルイミンが自分の名前が入っていないことが気になったみたいだ。

「もちろん、ルイミンさんもですよ。ルイミンさんはムムルート様の大切なお孫さんです。この国にいる間は、わたしの命に替えても守ります」

「守ってほしいけど、サクラちゃんの命なんていらないよ」

ルイミンの言葉にみんな笑う。

「ムムルート様といえば、カガリ様が、ご迷惑をお掛けしていないか心配です」

「大丈夫じゃない?」

試しに、クマフォンを使ってカガリさんに連絡をしてみたら、酔っ払いが出たので通話を切った。