軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

570 クマさん、フィナにプレゼントする エルフの村編 その1

それから、ルイミンの案内で川に行き、滝を見に行く。

「たくさんの水が落ちています」

「音が大きい」

滝は50mほどの高さから落ちている。(あくまで、感覚的な長さだ)

水の量も、音も大きい。

「上からの景色も綺麗だよ」

「でも、上って」

岩肌になっており、簡単には登れそうもない。

「それじゃ、わたしが運んであげるよ」

わたしはそう言うと、サッとフィナの後ろに回り込んで、軽く足払いをする。フィナはバランスを崩して、横に倒れる。わたしは腕を伸ばして、フィナを抱きかかえる。

「ユナお姉ちゃん!?」

お姫様抱っこだ。

クマの転移門を設置して、移動する方法もあるけど、なんとなく、フィナを抱っこして、運びたい衝動に駆られた。

「しっかり掴まっていてね」

「えっ、ちょっと待って」

待たない。

わたしはフィナを抱えたまま、岩山を登っていく。腕の中でフィナが叫んでいるが気にしない。ほんの数秒だ。わたしは滝の上に到着する。

「もう、大丈夫だよ」

わたしはフィナを地面に下ろすと、フィナは膝を落として、座ってしまう。

「待って、って言ったのに」

フィナが口を尖らせながら、少し怒った表情をする。その怒った顔も可愛い。可愛い女の子は得だね。わたしが怒ったら、間違いなく怖がられる。

「ごめん。でも、こういうのは一気に行ったほうが怖くないんだよ」

バンジージャンプと一緒だ。上でウダウダと飛ぶのを躊躇うと、余計に怖くなり、飛ぶタイミングを逃す。

「それじゃ、シュリを連れてくるね」

わたしは降りて、同様にお姫様抱っこで、シュリを運ぶ。

「怖かったけど、楽しかった」

どうやら、シュリには喜んでもらえたみたいだ。

そして、くまゆるとくまきゅうも、わたしの後を登って、滝の上に到着する。滝の下にルイミンが残される。

「ユナさん! わたしは」

滝の下からルイミンが叫ぶ。

「ルイミンは登ってこれるでしょう?」

「わたしも、ユナさんに運んでもらいたいです」

いや、自分で登れるなら、登ろうよ。

結局、ルイミンまで運ぶことになった。

わたしは、ルイミンを滝の上に運ぶと、フィナとシュリが景色を堪能していた。

「綺麗です」

「遠くまで見えるよ」

「あそこに、村が見えます」

「わたしの村だよ」

ルイミンは村を見ながら説明をする。

そんな三人を後ろから、くまゆるとくまきゅうと眺めていると、くまゆるとくまきゅうが反応する。

魔物?

とっさに探知スキルを使うと、わたしの後ろにある木辺りから、人の反応がある。

思い至ることが一つある。

「えっと、ラビラタ?」

名前を思い出しながら、木に向かって声をかける。

ほんの少し、静かな時間が流れる。もう一度、声をかけようかと思ったとき、長身の綺麗な顔をしたエルフが木の後ろから出てくる。

出てきたのは、わたしの想像通りの人物、サーニャさんの婚約者のラビラタだ。

「今度は気づかれないと思ったんだが」

どうやら、初めて会ったときに、わたしに尾行を気づかれたことをリベンジしたかったみたいだ。

「この子たちが気づいたからね」

わたしの左右にいるくまゆるとくまきゅうに手を伸ばす。

「クマに気づかれるってことは、俺もまだまだってことだな」

たぶん、気づかれないことは無理じゃないかな?

隠密魔法とか、なにか特別な技能がないと無理だと思う。

「それで、なにか用?」

「ここにいたら、おまえたちが来ただけだ」

どうやら、ラビラタのほうが先客だったみたいだ。

「邪魔だった?」

ラビラタは首を横に振る。

「おまえなら歓迎する。ゆっくりしていってくれ」

それだけ言うと、ラビラタは後ろの森の中に消えていく。

歓迎されているのかな?

わたしはフィナたちのほうを見ると、ラビラタがいたことも知らずに風景を眺めていた。

「とても綺麗でした。ルイミンさん、ありがとうございました」

「ルイミン姉ちゃん、ありがとう」

「喜んでもらえてよかったです」

二人が喜んでくれて、ルイミンは嬉しそうにする。

「それじゃ、そろそろお爺ちゃんも待っていると思いますから、村に案内しますね」

また、お姫様抱っこで、滝の下に降りる。

今度はちゃんと、許可をもらったよ。

そして、わたしたちは、村にやってきた。

「ユナさん、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんがいると、子供たちに捕まって大変なことになると思うから、手袋の中に戻したほうがいいかも」

たしかにルイミンの言うとおりだ。くまゆるとくまきゅうは子供たちに人気がある。

下手に捕まれば、ムムルートさんのところに行けなくなる。わたしはルイミンの忠告に従って、くまゆるとくまきゅうを送還することにした。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、またね」

シュリは手を振る。

くまゆるとくまきゅうを送還したわたしたちは、村の中に入る。

フィナとシュリはクリモニアとも王都とも違う、村の風景を眺めている。木でできた家が並び、住民は美男美女が多い。

だって、エルフだもん。

ムムルートさんの家に向かっていると、前の方で女の子が3人遊んでいるのが見えた。

「ああ、クマのお姉ちゃんだ!」

一人の女の子が気づく。

一人が反応すれば、他の子も気づき、わたしのところにやってくる。

「こんにちは」

「「「こんにちは」」」

わたしが挨拶をすると、女の子たちも挨拶を返してくれる。

「黒いクマさんと、白いクマさんは?」

女の子たちは、くまゆるとくまきゅうを尋ねてくる。

うぅ、困った。くまゆるとくまきゅうがいなくても、捕まってしまった。

どうしようかと思っていると、ルイミンが助けてくれる。

「ユナさんはこれから、お爺ちゃん……、長のところに行くから、邪魔しちゃダメだよ」

「おさ?」

「そう、長のところに案内するところだからね? それに、そろそろお昼の時間でしょう。家に帰らないとダメだよ」

ルイミンはお姉ちゃんっぽく、子供に話す。ルイミンの説得もあって、女の子たちは素直に帰っていく。

大事にならなくてよかった。

「ルイミン、ありがとう。流石、長の孫だね。次期、長?」

「長なんてならないですよ。長は、お姉ちゃんか、弟のルッカです。わたしは大きくなったら、お姉ちゃんみたいにいろいろなところに行ってみたいです」

放浪癖はムムルートさんの若い頃にそっくりなのかな? そう考えると、ルイミンはムムルートさんに似ているってことだね。特にサーニャさんなんてそうだろう。血筋ってやっぱり似るんだね。

わたしたちは他の子どもたちに捕まらないように、急いでムムルートさんの家に向かう。

ルイミンの助言のこともあり、くまゆるとくまきゅうがいなかったので、大きな騒ぎにはならずにムムルートさんの家に着くことができた。

「お爺ちゃん! ユナさんを連れてきたよ」

ルイミンは返事も待たずに、「それじゃ、中に入ってください」と言って、わたしたちを家に招き入れる。家の中に入り、いつもの部屋に移動すると、ムムルートさんが絨毯に座っていた。

「よく来た。待っていた」

「今日は、いきなりの訪問で」

「前にも言ったが、嬢ちゃんならいつでも歓迎する。好きなときに来るといい」

礼儀正しく挨拶をしようとしたら、笑いながら止められた。

まあ、そのほうがわたしも気が楽だ。

「ありがとう」

お礼を言って、フィナとシュリを紹介する。

「フィナは会ったことがあったよね」

「ああ、あのとき、嬢ちゃんと一緒にいた娘だったな」

「フィナです」

「こっちは、妹のシュリ」

「シュリです」

二人はちゃんと、名前を名乗る。

「そっちの嬢ちゃんは知っていると思うが、わしはルイミンの祖父、この村の長をしているムムルート。話はルイミンから聞いているから、ゆっくりと村を楽しんでいってくれ」

わたしたちがムムルートさんと挨拶をしていると、奥さんのベーナさんがやってくる。

「ユナちゃん、いらっしゃい」

「お世話になります」

わたしは挨拶してから、フィナとシュリを紹介する。

二人は軽くお辞儀をする。

「可愛い子たちね。料理も作ったから、食べていってね」

「ありがとうございます」

ベーナさんの厚意に甘え、昼食をいただくことになった。

「美味しかったです」

野菜が嫌いな子もいるけど。フィナもシュリも、苦労して育ったためか、好き嫌いがない。だから、普通に食べられるものは、なんでも美味しそうに食べる。見ているほうは嬉しくなる。料理を作ったベーナさんも美味しそうに食べる二人を見て、嬉しそうにしていた。

そのベーナさんは洗い物に行ってしまう。

フィナが手伝おうとしたが、お客様ってことでやんわりと断られていた。

わたしはベーナさんが片付けをしているのを確認して、ムムルートさんに話しかける。

「ムムルートさん、さっきも話したけど。この子の誕生日で、いろいろな所に連れていってあげようと思っているんだけど。ムムルートさんも一緒に行きます?」

「わしもか?」

いきなりのことで、ムムルートさんは驚いた表情をする。

「このあと、王都や和の国、ドワーフの街、それから、最後には砂漠にあるデゼルトの街にも行こうと思っているんだけど」

王都、ドワーフの街、和の国、デゼルトの街に行く予定だ。ミリーラの町はクリモニアから近いので、予定に入れていない。でも、フィナが行きたいと言えば入れる予定だ。

その辺りは、別に予定があるわけでもないし、自由に決められる。

「王都ならサーニャさん、和の国ならカガリさん、ドワーフの街に知り合いがいるか分からないけど、久しぶりに会いたい人がいれば会えるし、デゼルトの街は、昔の冒険者の子孫がムムルートさんに会いたがっているから」

それに、前に話したときに、連れていってあげると約束している。なにより、和の国のときの、お礼をしていない。

「いいのか? 邪魔にならないか?」

「もし、気になるようだったら、別々に行動すればいいよ。王都なら、サーニャさんに会っている間は、わたしたちは王都見物をするし、カガリさんに会っている間も、和の国を散策する感じで、分かれて行動すれば気にならないと思うよ」

わたしの言葉にムムルートさんは考える。ムムルートさんには和の国の大蛇を討伐するときにお世話になった。そのお礼もある。本当はフィナの誕生日プレゼントと別々のほうが良かったかもしれないが、遠くの街を何度も行き来すると、怪しまれる可能性がある。まして、デゼルトの街となると、クマの転移門のことを知っている人物は一人もいないので、口裏を合わせることもできない。

「フィナも、いいかな。ムムルートさんには和の国でお世話になったから、連れていってあげたいし、分かれて行動すれば、大丈夫だと思うんだけど」

「はい、大丈夫です」

「嬢ちゃん、ありがとう。それじゃ、嬢ちゃんたちの邪魔はしないように、一緒に連れていってもらおうか」

ゲームだったら、「ムムルートさんが仲間になった」と表示がでそうだね。ムムルートさんが仲間になると、話を聞いていたルイミンも仲間になりたそうにしていた。

「わ、わたしも、サクラちゃんやお姉ちゃんに会いたいです。あと、そのお爺ちゃんが昔に行ったデゼルトの街も見たいです。それから、ユナさんやフィナちゃんの街にも行ってみたいです」

もちろん、わたしは問題はない。

「フィナ、ルイミンも一緒でいい?」

もう一度、確認をする。

「もちろんです」

「フィナちゃん、ありがとう」

ルイミンはフィナの手を取って、お礼を言う。

「でも、両親の許可は自分でもらってきてね」

誘拐犯にされたら、困るからね。

「許可をもらってきます」

ルイミンはそう言うと、もの凄い速さで、部屋から飛び出していく。