軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

560 クマさん、髪飾りに気づく & ティルミナさん視点

結婚はともかく、フィナには幸せになってほしいものだ。わたしは先ほどから気になっていることをフィナに尋ねる。

「フィナ。髪飾り、持ってきたの?」

フィナは学園祭の出し物で手に入れた髪飾りを付けている。それはフィナだけでなく、シュリとノア、それからミサも同様に付けている。

「その、せっかく貰ったけど、あまり付ける機会がないので、付けようかと思って」

フィナは少し恥ずかしそうに髪飾りに触れる。

「似合ってませんか?」

「似合ってるよ」

わたしが付けるより似合っている。

「ユナ姉ちゃん、わたしも付けているよ」

わたしがフィナを褒めると、シュリも褒めてほしそうにするので褒めてあげる。

ちなみにシュリは、わたしがプレゼントした大きな髪飾りでなく、ミサと一緒に自分で取った小さな髪飾りを付けている。わたしが取った髪飾りでは、誕生日のフィナより、目立ってしまうから、小さいほうにしたのかもしれない。

「シュリのドレスを選ぶときに、髪をどうするかの話になったんです。そうしたら、フィナが学園祭の髪飾りのことを思いついたのです。それで、みんなで付けることにしたんです」

「わたしも、お手紙で聞いて、付けることにしました」

食事をしながら話を聞いていたノアとミサが教えてくれる。そして二人は、髪飾りがよく見えるようにわたしのほうに向けてくれる。

貴族である二人なら、有名な職人が作った高価な髪飾りを持っていてもおかしくはない。

フィナは気にしないかもしれないが、もし二人が高価な髪飾りをしていたら、わたしやティルミナさんが気にしたと思う。

笑い者にするつもりがなくても、貴族と平民との差が出てしまう。二人はそれを分かっているのか、同じ髪飾りを付けたのかもしれない。

もし、そうなら心が温まる話だ。

「二人とも優しいね」

ノアとミサが頭をこちらに向けているので、二人の頭を撫でる。二人は訳が分からない感じだが、嬉しそうにみえる。

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ティルミナ視点

初めは来るのは気が重かったけど、娘たちのドレス姿を見ることができて、来てよかったと思う。

娘たちのドレス姿を見て、年甲斐もなく泣いてしまった。涙もろいのは、歳を取ったせいかもしれない。ゲンツの言葉ではないが、ロイにも見せてあげたかった。

「本当に、わたしの娘とは思えないぐらい、似合っているわ。ドレスを用意してくださったノアール様には感謝しないといけないわね」

「フィナとシュリは大切なお友達です。気にしないでください」

わたしの言葉を聞いていたノアール様が優しく微笑む。

初めの頃は、領主様の娘さんと一緒にいて、フィナのことを心配に思うこともあったけど、ユナちゃんや娘たちから話を聞き、ノアール様が優しいことを知った。そして、お店にも来るようになり、顔を合わせることもあった。初めは緊張したけど、お店が混んでいてもちゃんと並ぶし、我儘を言ったりして、周りに迷惑をかけたりするようなことはしない。

今回のこともノアール様に誘っていただけなければ娘たちのドレス姿を見ることはできなかった。

ノアール様には感謝だ。

娘たちのことを見ていると、クリフ様がわたしのところにやってくる。

「今日は娘が無理を言って、来てくれて、感謝する」

「…いえ、誘っていただき、ありがとうございます。娘のドレス姿を見ることができましたので、感謝の言葉もありません」

とっさのことで、一瞬、言葉がでないが、感謝をしている旨は伝えることができた。

「一度、ちゃんと話して、礼が言いたかった」

「……お礼ですか?」

「うちの娘が、そちらの娘さんに迷惑をかけてすまないと思っている。いつも娘の我儘に付き合ってくれていることに感謝している」

「お父様、酷いです。わたし、フィナに迷惑はかけていませんし、我儘も言っていないです」

近くで娘たちと料理を食べているノアール様が頬を膨らませて、クリフ様に可愛らしく抗議する。

どうやら、クリフ様の声が聞こえていたらしい。

「一緒にフィナ嬢とパーティーをすることが、我儘だということを理解したほうがいい。身分が違う者にとって、それは強制になる。普通の者は断れない」

「フィナ、そうなのですか?」

ノアール様が驚いた表情で、フィナに確認する。フィナは困った表情をする。

「それは……」

「もし、おまえが、ティリア王女に一緒に誕生日パーティーを行いたいと言われたら、どうする?」

クリフ様の言葉にノアール様は少し考え込む。

「……遠慮したいです。でも、わたしはフィナが楽しめるように身内だけのパーティーにしました。何も考えていないわけではありません」

「そうだな。だから、今回のことも許可をした。でも、もっと相手の気持ちを考えて行動をするようにしないと、フィナ嬢に嫌われてしまうぞ」

「うぅ、分かりました。気をつけます。フィナ、嫌なときは嫌と言ってください。わたしは一緒に、フィナと祝いたかったんです」

ノアール様はクリフ様に注意され、少しだけ暗い表情になる。

「ノア様、そんな顔はしないでください。その、初めは少し嫌だったけど、一緒にプレゼントを作ったり、楽しかったです。それにお母さんとお父さんにドレス姿を見せることができたのはノア様のおかげです。それにシュリのドレスも貸していただけました。ノア様には感謝しています」

母親だから分かる。フィナは嘘を言っていない。心から感謝している。人との出逢いは大切だ。もし、フィナがユナちゃんに出会っていなかったら、ここにいなかったと思う。そして、ユナちゃんがノアール様に出会っていなかったら、フィナのドレス姿を見ることはできなかった。人は繋がっている。

「これからも、娘が迷惑をかけることもあると思うが、良い友人として、付き合ってくれればと思う」

「ありがとうございます。そう言っていただけると幸いです」

貴族様との縁、それが良い方向に進むか、悪い方向に進むかは、今のわたしには分からない。でも、それを決めるのはフィナ。フィナがしたいようにさせてあげるつもりだ。何か問題が起きれば、家族で相談すればいい。それが家族であり、親の役目だ。

それにノアール様はフィナのことを考えてくれているし、ユナちゃんもいる。悪いほうには行かないと思う。それは娘たちの笑顔を見ていれば分かる。このまま成長してほしいものだ。

それから、わたしはクリフ様に、お店の話や孤児院の話を聞かれ、お話ししたりする。

「お互いにクマに苦労をかけられていると思うが、なにかあれば相談に乗るから、気兼ねなく言ってくれ。直接、俺に言いにくいことがあれば、冒険者ギルドのギルドマスターか商業ギルドのギルドマスターに伝えてくれてもいい」

ユナちゃんには、たまに大変な仕事を頼まれるが、嫌になったことはない。あの苦しく、ベッドの上で寝ていて、娘に迷惑をかけていたときのことを考えれば、楽しいぐらいだ。

「そういう話は本人がいないところでするもんだと思うんだけど」

いつのまにか、わたしたちの近くにいたユナちゃんが、クリフ様にいつもの口調で文句を言う。

「聞こえるように話しているんだ。おまえさんは他人を巻き込んで、話を大きくするからな。やるなとは言わない。前もって相談はしろ」

「別に、悪いことはなにもしていないと思うけど」

「分かっている。おまえさんは悪くない。良いことをしている。でも、一般人には対応ができないかもしれない。そのときに相談を聞くと言っている」

クリフ様の言葉ではないけど、ユナちゃんの行動には本当に驚かされることばかりだ。今までのことを思い返すと、笑みがこぼれる。どれも大変だったけど、楽しいことばかりだった。

「ティルミナさん。何、笑っているんですか?」

「なんでもないわ。ユナちゃんに会えてよかったと思っていただけよ」

わたしの言葉に怪訝そうな表情を浮かべていたけど、ノアール様に呼ばれて、ユナちゃんは行ってしまう。

ここにいられるのもユナちゃんのおかげだ。感謝してもしきれない。本当に不思議な女の子だ。

それから、クリフ様はゲンツとも冒険者ギルドについての話をしたりする。わたしはグラン様と話したり、時折、ユナちゃんや娘たちと会話をする。

話していると徐々に当初の緊張もほぐれ、クリフ様にも普通に話せるようになってきた。娘もこうやって、経験して、成長していったのかもしれない。経験は人を成長させる。でも、ゲンツは緊張しっぱなしだった。成長しない人もいるみたいだ。

そして、料理も終わり、ノアール様へのプレゼントを準備することにする。

数日前、ノアール様のプレゼントをどうしたらいいかユナちゃんに相談したら、初めは無くても大丈夫って言われた。でも、そうもいかないから、案がないか尋ねたら、ケーキを用意をしたらどうかと言われた。

ただ、ノアール様がケーキを用意する可能性があったので、ケーキはわたしたちが用意することをノアール様には伝えてもらった。

ユナちゃんにケーキをお願いすると、ユナちゃんは左手の白いクマのアイテム袋から、ケーキをテーブルの上に出してくれる。そこにノアール様たちが集まってくる。

「これは、クマさんです」

「くまさんだ~」

テーブルの上に乗っているのは、いつもお店で販売しているようなケーキではなく、カップほどの大きさのケーキだ。

これはカップケーキと言い、カップの形をしたケーキにクッキーや果物、それからクリームを使って、クマの形を表現してある。

ノアール様がクマが好きなことは知っていたので、エレナさんに頼んで作ってもらった特別仕様のクマのケーキだ。一人用なので、食べやすくなっている。

良い出来になっているので、今度、お店に出そうかと話になっていたりする。

「その、わたしたちはノアール様になにも用意することができませんので、喜んでもらえるものを作りました」

一応、わたしとゲンツからとなっている。

「ありがとうございます。とっても嬉しいです」

ノアール様はカップケーキを手にすると嬉しそうにする。

「可愛いです。でも、食べるのがもったいないですね」

ミサーナ様も娘たちも嬉しそうにしている。クリフ様とグラン様は笑みを浮かべ、ゲンツは喜んでもらえたことに安堵している。

ユナちゃんは知っているので、何も言わない。

実はこのカップケーキはユナちゃんが考えてくれたものだ。初めは渋っていたけど、諦めた感じで教えてくれた。それをわたしとエレナさんが工夫して、可愛らしいクマさんを作り上げた。

全員にクマのカップケーキが行き渡ると、皆は美味しそうに食べてくれる。ノアール様たちは、初めは食べるのを勿体なさそうにしていたけど、食べ始めると、あっという間に食べ終えてしまう。

「美味しかったです。ですが、無くなってしまいました」

「その、まだありますので、お召しあがりになりますか?」

ケーキを、どれほど用意したら良いのか分からなかったので、多めに用意してある。

ユナちゃんに残りのクマさんのカップケーキを出してもらい、自由に食べてもらう。

「えっと、フィナのお母様。このクマさんのケーキはお店に出すのですか?」

「ノアール様たちに好評でしたら、その予定です」

わたしの言葉に、ノアール様は嬉しそうにする。

「本当ですか? とても素晴らしいケーキでした。また、食べてみたいです」

「それでは、ケーキを作ってくれる料理人に伝えておきますね」

「楽しみにしています」

わたしの言葉にノアール様は嬉しそうにする。でも、ミサーナ様は羨ましそうにしている。

「うぅ、ノアお姉様、ズルいです。わたしも食べたいです」

「その、ミサーナ様。もし、よろしければ、街にお戻りになるときに、お土産として作らせていただきますが」

「本当ですか? ありがとうございます」

ミサーナ様は嬉しそうにする。

これは、エレナさんに至急、相談しないといけなくなりそうだ。