軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

554 クマさん、リーデントを捕まえる

話も終わり、わたしたちも退出しようと思い席を立とうすると、ギルドマスターがわたしに視線を向ける。

「失礼ですが、そちらのクマの格好したお嬢さんの名前はユナさんでしょうか?」

「わたしを知っているの?」

名前を呼ばれて、少し驚く。

「領主であるレオナルド様と、その父親であるグラン様から、あなたの話は聞いています。サルバード家に捕らわれたファーレングラム家の令嬢を、たった一人で屋敷に乗り込んで取り返し、サルバード家を潰した、クマの格好をした女の子。あなたが街に来たら、丁重に扱うようにと仰せつかっています」

もしかして、さっきの男の人も、部屋に案内してくれた職員も、領主であるレオナルドさんと元領主であるグランさんに言われていたから、なにも言ってこなかったのかな?

そう考えると、やっぱり、街の門のときの対応も、二人が関わっていたんだね。

「商業ギルドの腐敗を未然に防いでくれたことに、新しいギルドマスターとして、お礼を申しあげます」

「別に商業ギルドのために、したわけじゃないから」

あれはミサが攫われ、フィナとノアが殴られたから怒っただけだ。商業ギルドのためにしたことではない。だから、商業ギルドからお礼を言われるようなことではない。

「それと、ギルドマスターの職に就けたのも、ユナさんのおかげです」

「わたし?」

「わたしが推薦したことも忘れないでくださいね」

「もちろんです。ミレーヌさんにも感謝しています」

話によれば、ギルドマスターには、なりたくても簡単にはなれないらしい。

それはそうだ。

新しい街(町)ができなければ、新しいギルドマスターは増えない。

代わるにしても、現在のギルドマスターが辞めなければ、代わることもできない。

だから、そのギルドマスターが代わる原因を作ったわたしに感謝ということらしい。

でも、分からないね。

主に、わたしのせいかもしれないけど、忙しそうに仕事をしているミレーヌさんを見ていると、ギルドマスターなんて面倒くさいと思うんだけど。

クリフにしても、この世界の住民は地位が高いほど、忙しく仕事をしている。そんな地位になりたいと思う気持ちは分からない。

だからといって、高い地位にあぐらをかいて、部下に全て仕事を押し付けて、遊んでいる上司よりはいいけど。

自分で言って、自分の胸に突き刺さった。

お店をモリンさんに、コケッコウのお世話を子供たちに任せて、いろいろな場所に遊びに行っているわたしは、悪い上司になるのかな?

「ミレーヌさんは驚かないけど、もしかして知っていたの?」

「クリフから信頼がおける人物をシーリンの街のギルドマスターにできないかと相談を受けましたからね。わたしとしても、近隣の街の商業ギルドマスターが使えない者より、使える者がいいですから、彼をギルドマスターにすることにしたんです」

それで、先ほどの推薦状の話になるわけか。

「まあ、いろいろと面倒でしたが、ユナちゃんがサルバード家を潰してくれましたのでやりやすかったですよ」

ミレーヌさんはにっこりと微笑む。

その笑みが怖いから。

それから、わたしたちは商業ギルドの空いている部屋を借りて、一泊することになった。

夜にはブリッツたちがやってきて、リーデントの店の場所を教えると、そのまま見張りに向かった。

そして、翌日、わたしたちは日が昇る前には街を出て、ジェイドさんたちがいる森に向かう。

「眠い」

わたしはくまゆるの背中に倒れる。早起きは苦手ではないけど、流石に日が昇る前に起きると眠い。

「くまゆる、着いたら起こして」

「くぅ~ん」

「ユナちゃん、落ちますよ」

くまきゅうに乗っているミレーヌさんが心配そうに注意する。

くまゆるとくまきゅうは寝ていても落ちないから大丈夫だ。

そんな注意をするミレーヌさんの横に、馬に乗っているシーリンの街のギルドマスターがいる。

リーデントを捕まえたとき、あれこれ言い訳をされて、逃げられないようにするためだ。ギルドマスターが二人もいれば逃げることもできないだろうってことだ。

そこまでやる必要はないと思ったけど、ガマガエルの恩恵を受けていた商人で、新しい領主のやり方に反感を持つ者もいるとのこと。だから、この手の悪人は徹底的に潰すらしい。

「どのあたりかしら」

「くまゆる、分かる?」

待ち合わせの森にやってくる。たしか、森を少し入ったところに大きな岩があると言っていた。

でも、その岩を探すより、簡単に合流する方法がある。

くまゆるは「くぅ~ん」と鳴くと、迷うこともなく、森の中に入り、ジェイドさんたちがいる場所に歩き出す。しばらくすると、大きな岩が見えてきて、その岩の傍にジェイドさんたちの姿もある。

「ミレーヌさんにユナ、待っていたよ。そっちの男性は?」

「……ギルドマスター」

ミレーヌさんが紹介するよりも先に、盗賊の監視役だったミゲールが口を開く。

クリモニアのギルドマスターの顔は知らなかったけど、シーリンの街のギルドマスターの顔は知っていたようだ。

「わたしはシーリンの街のギルドマスター、ローコチと言います」

ギルドマスターはジェイドさんたちに名乗り、ミゲールのほうを見る。

「あなたがリーデントという商人と一緒に盗賊行為をしていたミゲールですね。あなたはわたしのことを知っているようですね」

「ああ、新しいギルドマスターの顔ぐらいは知っている」

「それでは話が早い。今回のこと、クリモニアの商業ギルドのミレーヌから話を聞きました。今回、リーデントを捕まえるのに協力してくれたら、刑罰を軽くすることを、シーリンの商業ギルドのギルドマスターのわたしが約束します」

「本当か?」

「信じるか、信じないかはあなたの自由です」

「いや、信じる。このままではリーデント様と一緒に落ちるところまで落ちることになる。それなら、二人のギルドマスターが約束してくれるなら、信じる。もし騙されたなら、恨んで死んでやる」

「約束は守ります。あなたのような小物を処罰しても意味がありません。大物を捕まえることができるなら、あなたなんてどうでもいいというのが、わたしたちの考えです」

「小物……」

「店も持っておらず、リーデントの言いなりのあなたは小物です。もし、小物と言われたくないのでしたら、しっかりと働き、自分の店を持ち、商業ギルドに貢献してください。そうしたら、あなたを小物呼ばわりしたことは謝罪します」

「ふっ、約束だからな。それで、俺はどうすればいいんだ?」

ギルドマスターの言葉にミゲールは笑い、気持ちを入れ替え、真面目な表情をする。

「なにもしなくてもいいです。下手に何かをすると、勘ぐられる可能性がありますから、普通に会話をしてくれるだけで十分です。あなたが、今でもリーデントのことを信用している部下という立場が必要です」

「分かった。それなら簡単だ」

それから、リーデントが、いつ来てもいいように準備する。わたしは綿が入った袋を置く。

わたしの綿だけど、リーデントの商人が受け取るのを見届けないといけないとのことだ。

まあ、当たり前だけど。現行犯で捕まえることは、証拠になる。そして、用意を終えたわたしは岩の後ろに身を隠す。

「隠れる場所があって助かるわね」

「引き渡しているところを、見られたくなかったんだろう。それがあだになるとはリーデントも思いもしないだろう」

わたしとくまゆるとくまきゅう、それからミレーヌさんにギルドマスター、メルさんにセニアさんは岩の後ろに隠れ、ジェイドさん、トウヤは左右の離れた木の裏に隠れる。

わたしじゃ、隠れるには難しいからね。

決して太っているからではない。服装のせいだ。

そして、しばらく待っていると、くまゆるとくまきゅうが「「くぅ〜ん」」と鳴く。探知スキルで確認すると、人の反応がある。

「もしかして、来たの?」

「みたいです」

「本当に、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは凄いわね」

「うん、助かる」

ミレーヌさんは腕を上げて、ジェイドさんたちに合図を送る。その合図を見たジェイドさんたちも腕を上げて合図を送り返す。

わたしたちは身を潜めて待つ。

しばらくすると、草木を踏む音がする。

「リーデント様、お待ちしていました」

ミゲールがやってきた人物に話しかける。

「それで、今回はなんだ?」

岩の後ろにいるので、会話だけが聞こえてくる。

「高級な綿です。クッション、布団、貴族様に売れるかと思います」

それはわたしの物だからね。汚したらただじゃおかないよ。

「よくやった」

「ありがとうございます」

わたしの物を盗ませておいて、よくやったじゃない。

「それで、盗賊たちに支払うお金のほうは?」

「それは必要ない」

「それはどういうことですか?」

「冒険者ギルドと商業ギルドが動いた。討伐されるだろう」

「それじゃ、わたしの役目も終わりですね。これで約束通りに店を持たせていただけるのですね」

「そうだな。お前さんには、店で頑張ってもらおう」

あれ? 盗賊は見捨てるけど、ミゲールの約束は守る?

ミレーヌさんは裏切られて、殺されるかもと言っていたけど、予想は外れたみたいだ。

殺人容疑でも捕まえ、逃げられないようにすると言っていたけど、失敗に終わりそうだ。

そう思っているわたしの横では、メルさんとジェイドさんがなにかしら、合図を送っている。

「危険みたいだから、近づくって」

小声でわたしたちに説明する。

危険って、なに?

わたしが尋ねようとしたとき、岩の反対側から声があがる。

「なんだ!」

「リーデント様、俺を殺そうとしたんですね」

リーデントがミゲールを殺そうとした?

ここからでは、状況が分からない。

わたしが疑問に思っていると、ミレーヌさんが歩き出すので、わたしも付いていく。

「ミゲール、どういうことだ。俺を裏切ったのか?」

ジェイドさんが30代後半の男の腕を捻りあげている。地面を見るとナイフが落ちている。

もしかして、ナイフでミゲールを殺そうとした?

「違うわよ。彼はわたしと取引をしたの」

「どうして、商業ギルドの職員がここに」

リーデントはミレーヌさんを見て、疑問を持つ。

「取引現場、先ほどの言動、全て聞かせてもらいました」

「どういうことだ。ミゲール!」

「彼と取引をして、今回の引き渡し場所を教えてもらったのよ」

「ミゲール!」

リーデントはミゲールに襲いかかろうとするが、ジェイドさんがリーデントの腕を捻り上げると、リーデントは痛そうに顔を歪める。

ミレーヌさんは動けないようにジェイドさんに縛るように指示を出すと、トウヤと一緒に男を縛る。

「裏切りやがって」

リーデントは睨むようにミゲールを見る。

「裏切ったのはリーデント様です。もし、リーデント様が盗賊を逃がすように指示をだし、俺に店を任せるように言ってくれたら、情状酌量をしてくれるはずでした」

まあ、そのように約束したけど、ミゲールは落ちているナイフを見る。これは情状酌量の余地はないね。

でも、リーデントは今回のことをミゲールの責任にしようとする。

「何を言っている。全て、おまえが考えたことだろう。おまえたちも、盗賊をしていた奴の言葉を信じるのか!」

リーデントは周りにいるわたしたちに訴える。

だけど、それを信じるほど、わたしたちは馬鹿ではない。

「もちろん、彼のことを信じるわよ。あなたの評判と最近の現状を知っているからね」

「一職員の小娘が何を言っている」

「自己紹介をしていませんでしたね。わたしはクリモニアの商業ギルドのギルドマスターのミレーヌ」

「クリモニアのギルドマスター? 嘘を吐くな」

「それは、わたしが保証しますよ」

タイミングを見計らっていたシーリンの街のギルドマスターが登場する。

「ギ、ギルドマスター」

ミゲールが知っていたんだから、リーデントも知っているよね。

「流石に、わたしのことは知っていたようですね。新しいギルドマスターだから、知らないかと思いましたよ。あなたの店と家を、わたしの権限で調べさせていただきます」

ギルドマスターはニコッと笑う。