軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

553 クマさん、シーリンの商業ギルドに行く

日が沈む前にシーリンの街に到着する。

「流石、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんね」

くまゆるとくまきゅうが本気を出せば、こんなものだ。でも、今日は山とクリモニアを往復させ、シーリンの街まで走らせてしまった。平気な顔をしているけど、落ち着いたら、労ってあげないとダメだね。

わたしとミレーヌさんが乗る、くまゆるとくまきゅうが街の門に近付くと、門に立つ門番は、わたしと、くまゆるとくまきゅうを見て驚く。そして、「もしかして、領主様が言っていたクマか?」と独り言が聞こえ、くまゆるとくまきゅう、それからわたしの格好についても、尋ねられることもなく、街の中に入ることができた。

もしかして、グランさん? それとも、息子のレオナルドさんが、門番にわたしのことを伝えてくれたのかもしれない。

前に来たときは、くまゆるとくまきゅうが街の中を走り、住民を驚かせてしまった。だから、気を利かせてくれたのかもしれない。

でも、門番が言っていた「クマ」とはわたしのことなのか、くまゆるとくまきゅうのことなのか、気になるところだ。

「ユナちゃん。急ぎましょう」

街の中に入ったわたしとミレーヌさんは、商業ギルドに向かう。もちろん、くまゆるとくまきゅうは送還したので、ここからは走っていく。「くま?」「クマ?」「くまさん?」「あのときのくまさん?」

クリモニア以外だと、こういう反応をされるよね。

「ユナちゃんの格好は目立ちますね」

ミレーヌさんはそう言うと、人通りの少ない道を走り出す。

「ミレーヌさんはシーリンの街に詳しいんですか?」

「クリモニアの周辺の街には行きますから、ある程度を知っているぐらいですよ」

そう言うわりには迷うこともなく進み、どこかの建物の裏口に到着する。

「商業ギルドの裏口よ。ここから入りましょう」

ミレーヌさんは自分の部屋に入るようにドアを開けて、建物の中に入る。

建物の中に入ると、商業ギルドの制服を着た女性がいて、いきなり入ってきたわたしたちに驚く。

「あなたたちは?」

驚くギルド職員に、ミレーヌさんはギルドカードを見せ、「ギルドマスターに会いたいのだけど」と言うと、ギルド職員は「クリモニアの」と一瞬驚くが、すぐにギルドマスターのところに案内してくれる。

流石、ギルドマスターだと知ると、話も早い。

ただ、ギルド職員がジッとわたしのことを見ていたけど、気にしないことにする。

「ギルドマスター、クリモニアのギルドマスターのミレーヌ様がいらしてます」

ギルド職員が声をかけると、部屋の中から驚いた声があがる。

「ありがとう。あとは大丈夫だから」

ミレーヌさんはギルド職員にお礼を言うと、中から許可がでる前に部屋の中に入る。わたしも部屋の外にいるわけにもいかないので、ミレーヌさんについていく。

部屋の中には30歳ほどの細身の男の人がいた。

男性はミレーヌさんが部屋に入ってくると、驚いた表情をして立ち上がる。

この人が新しいギルドマスターなのかな? 聞いた話では、ガマガエルの貴族と繋がりがあった商業ギルドのギルドマスターは辞めさせられ、新しいギルドマスターに代わったとのことだ。

「ミレーヌさん!? ど、どうして、シーリンに? 呼んでいただければ、自分がクリモニアまで行きましたのに」

ミレーヌさんのほうが若いのに、なにか男性のほうが立場が低いように見える。年齢でなく、ギルマス歴が長いと短いの差とかあるのかな?

そもそも、この若さでクリモニアのギルドマスターをやっているのは、クリモニアの謎の一つだ。

「ミレーヌさん。新しいギルドマスターと知り合いなの?」

やっぱり、ギルマス繋がりで知っているのかな?

「昔、彼が大きなミスをしたときに助けたり、シーリンの街のギルドマスターが交代するとき、推薦状を書いてあげたぐらいですよ」

ミレーヌさんの言葉に驚く。まさか、推薦状を書いていたとは思わなかった。

シーリンのギルドマスターはお茶の用意をしようとするが、ミレーヌさんが断る。

「時間がないから、お茶はいいです」

わたしたちはここに来た理由を説明する。

盗賊のこと、リーデントと言う商人がこの街にいること、罠に嵌めること、を簡潔に話す。

「話は分かりました。つまり、冒険者と商業ギルドが動いたことをリーデントという商人の耳に入るようにすればいいのですね?」

「ええ、できれば、今日中にリーデントの耳に入れるようにしてほしい」

明日、荷物の引き渡しをする。今日、もしくは明日の朝までには、リーデントの耳に入れさせないといけない。

そうでないと、普通に捕まえるだけで終わってしまう。

ミレーヌさん曰く、いろいろと逃げられないように追い込むらしい。

「あと、冒険者が動くのが早いと接触を避けるかもしれないから、三日後ぐらいに動く感じで伝えて」

ミレーヌさんとギルドマスターは話を詰めていく。

そして、話が纏まると、ギルドマスターは一人の職員を呼ぶ。

「なにか、御用でしょうか?」

部屋に入ってきたのは20代半ばぐらいの男性だ。

「至急、頼みたいことがある」

「彼は?」

「彼は信用できる者なので安心してください」

「マランと言います」

マランと名乗った男性は、わたしのことをチラッと見るが、何も言ってこない。

ギルドマスターはマランにミレーヌさんと話し合ったことを説明する。

「分かりました。リーデントという名の商人を知っていますので、上手に噂を流すことができます」

マランは心強いことを言う。

「急ぎだけど、大丈夫?」

「はい。大丈夫です。お任せください。あと、信憑性をもたせるために、冒険者ギルド職員にも手伝ってもらうのは大丈夫でしょうか?」

「ええ、もちろん。あなたに任せるわ」

「ありがとうございます」

「頼もしいわね」

「引き抜かないでくださいよ」

「そんなことはしないわ」

本当に優秀っぽい。これが味方なら頼もしいけど、敵だったら怖いね。漫画や小説、ゲームだと、よく味方だと思っていた人物が敵だったりする場合がある。

もちろん、そんなフラグはいらないから、味方でいてほしいものだ。

マランを見ると、微笑まれた。

馬鹿にされているのか、子供と思われているのか、判断がつかない表情だ。

「リーデントを知っているようだけど、リーデントってあなたの目から見てどんな商人?」

「強い者にはへつらい、自分より弱い者には強気にでる小物です」

マランはミレーヌさんの質問に簡潔に答える。

「なら、なにも問題はないみたいね」

「そうですね」

ミレーヌさんとマランは笑う。

なに? このコンビ。怖いんだけど。

久しぶりにミレーヌさんの商業ギルドのギルドマスターとしての顔を見た気がする。

いつもは優しいけど、敵に回したら怖い人だ。そういえば、クリフに卵を売らないでほしいと頼んだら、普通に了承して、本当に領主であるクリフに売らなかった人だ。

ミレーヌさんを敵に回すのだけはやめよう。

「あと、確認ですが、リーデントのお店を見張るんですよね」

逃げた盗賊が来るかもしれないってことで、ブリッツたちが見張ることになっている。

「ええ、クリモニアで雇った冒険者が見張りをする予定。夜に到着すると思うけど」

ブリッツたちが馬で向かっている。くまゆるとくまきゅうが速いといっても、距離はそれほどないので、差は付いていないはずだ。

「冒険者ギルドに頼むこともできますが」

マランの提案にミレーヌさんは少し考える。

「そうね。いつ、到着するか分からないから、見張りをお願いしようかしら。でも、信用がおける冒険者にお願いね」

確かに重要だ。どこで情報が筒抜けになるか分からない。

わたしはシーリンで信用できる冒険者を知っている。

「それなら、マリナって女性冒険者が率いるパーティーは信用ができるから、彼女たちがいたらお願いをしてみて。わたし、ユナからのお願いだって言えば、引き受けてくれると思う」

マリナたちはグランさんの護衛を何度もして、信頼されている。命がけでグランさんを守ったこともある。ガマガエル派ではないはずだ。

シーリンの冒険者で、もっとも信用ができる冒険者だ。

「マリナですね。分かりました。彼女がいましたら、依頼をお願いいたしましょう」

マランはわたしの言葉を素直に受け入れる。

クマのわたしのことをなんとも思っていないのかな?

ギルドマスターもそうだけど、マランもクマの格好について尋ねてこない。初対面だと、絶対に聞かれるんだけど。

それから、ブリッツたちが商業ギルドにリーデントの商人のお店の場所を尋ねに来るから、その対応もお願いする。

「それでは、わたしはリーデントの耳に入るように仕掛けてきますので、これで失礼します」

マランは頭を下げると、部屋から出ていく。

「あんなギルド職員がいたのね」

「信頼が置ける部下です」

自慢そうにギルドマスターは答える。

「彼が目を光らせているので、かなり仕事がしやすくなっています」

少し前まで、シーリンの街の商業ギルドはガマガエルに侵されていた。新しいギルドマスターや、新しい体制になれば、不満も出るだろう。

どこまで、商業ギルドの腐敗が進んでいたか分からないけど、頑張ってほしいものだ。

でも、これでリーデントへの包囲網が作られていく。あとは証拠を集めて、逃げられないようにするだけだ。