軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

522 クマさん、クマを作られる

水魔法の出し物は終わり、今度は風魔法が行われる。

風魔法は水魔法と違って、形を作り出すことはできない。だから、湖に向かって風の刃を放つ。風の刃は1本の線を作り出す。2本、3本。上手な学生は円を作ったり、小さいながらも渦を作ったり、湖のキャンバスに絵を描いていく。

「これは少し、後ろから見たほうがいいかな?」

後ろのほうは高くなっているので、湖の表面が見やすい。ほかの人たちが移動を始める。それにならって、わたしたちも移動する。

「上手です」

素早く描かないと、描いた線が消えてしまうので、素早さが重要になる。主に、図形を描く生徒が多い。まあ、複雑な絵は無理だろう。風は飛ばした後、方向を変えるのはほぼできない。飛ばす瞬間に曲げることによって、カーブみたいなことはできる。それを応用して、円を描く。一周は無理なので、左右の腕を振って、半円を描き、綺麗な円が出来上がり、最後には風魔法同士がぶつかって、水しぶきがあがる。それも演出となって、綺麗だ。

それからも生徒たちが考えた図形のアートが湖のキャンパスに描かれる。

グラウンドでもできるけど、水の上だから綺麗に見えるね。

湖にいる生物にはいい迷惑だね。

まあ、こんだけ魔法を使っていれば、魚は逃げていくだろう。

ユーファリアの生徒は湖があるから練習できるけど、王都の生徒はプールで練習したのかな?

「面白かったね」

「はい」

火は形にするのが難しいのか、苦労している生徒が多い。円を作ったり、手を動かして、文字を書いたりする。魔法によって用途が違うってことだね。

「お姉様、出ませんでしたね」

「うん、違う魔法で出るんじゃないかな?」

火の魔法にシアは出なかった。でも、出ないとは言っていなかったので、次の土魔法で出てくるはずだ。

最後に、土魔法が行われる。土魔法はどうするのかと思ったら、湖の前でやるらしい。

土魔法は今回のメインらしく、学生が一斉に横に並ぶ。その中には、シアの姿もある。

「お姉様です」

それぞれの学生が一斉に思い思いに土魔法で作り上げていく。生徒が一斉に作るので、周囲は盛り上がる。

「あっ、お姉様、クマさんを作っています」

本当だ。土魔法でいろいろな物を作る学生の中、シアはクマの置物を作っていた。

しかも、リアルクマでなく、わたしが作ったような愛嬌があるクマだ。

「うぅ、ズルいです。クマさんはわたしが作ろうと思っていたのに」

先ほど宣言したばかりなのに、先にシアにクマを作られて、ノアは口を尖らせる。

意外と好評なのか、シアのクマの前には人が集まっている。

全員がそれぞれ、土で作った物を完成させると拍手が起きる。

そして、最後には壊され、残念がる声があがる。

これで、湖での製作による魔法が終わり、グラウンドに移動することになる。わたしたちもグラウンドに移動しようとしたとき、シアがやってくる。

「お姉様、酷いです。どうして、先にクマさんを作っちゃうんですか!?」

「えっ、なにが?」

いきなり、ノアにそんなことを言われて、シアは戸惑う。

わたしは先ほどのノアとの会話を、シアに説明する。

「ノアが魔法を覚えたら、作るつもりだったのを、先にシアが作ったから」

「お姉様はズルいです」

「でも、どうして、クマなの?」

「実は、学園祭でユナさんが作ってくれたクマを見てから、練習をしていたんです」

学園祭のときに、綿菓子を売れるように宣伝のため、クマの置物を作ってあげたことを思い出す。

「それで、ノアが来るから喜んでもらえるかなと、思ったんだけど、ごめんね」

シアはノアの頭を撫でながら謝る。

だから、今まで内緒にしていたんだね。

「そんなことを言われたら、怒れません。お姉様が作ったクマさん、可愛かったです」

「つまり、二人とも、似たもの同士ってことだね」

「ユナさんに影響されただけだと思います」

そんなことを言われても困る。

でも、ノアがクマ好きになったのも、シアがクマの置物を作ったのもわたしの影響じゃないと、言い切れないところが辛い。ノアがクマ好きになったのは、間違いなく、わたしの影響だ。

わたしは話を逸らすため、違う話を振る。

「それで、次はなにをするの?」

「次は団体戦です。学園のみんなが集まって、試合をするんです」

昨日、言っていたやつだね。

魔法の交流会の最後の出し物になるらしい。

シアの話によると、自分の陣地に旗を立て、それを魔法を使って、燃やす、切る、ぶつける。どんな方法でもいいから、魔法で旗を倒すこと。そして、相手側はその旗を、魔法を使って守るらしい。

そんなシアの説明を聞きながら、グラウンドにやってくる。

グラウンドの両端には旗が6本ずつ立っている。

その6本の旗と旗の間は離れており、旗の周りには円形の白線が引いてある。

シアの説明によると、守備側は円の中に一人入り、攻撃側から旗を守るらしい。

「それじゃ、攻撃側全員が一つずつ攻撃をしたら、攻撃側が有利じゃ」

「ルールがあります。攻撃側も一人で旗を狙わないといけない。二人以上で攻撃をしてはいけません。ただ、それには例外があります」

なんでも、攻撃側が旗を倒すことができたら、その者はグラウンドから出ないといけない。そして、旗を取られた守備側の生徒は攻撃側に回ることができ、二人で攻撃を仕掛けることができるとのこと。

そして、二人で攻撃を仕掛け、旗を倒した場合、攻撃をした二人の生徒はグラウンドから出ないといけない。

つまり、旗が倒れるたびに、人数が減っていく。

学園の主力を攻撃側に置くと、守備側が弱くなる。逆にすると攻撃側が弱くなり、旗を倒すことができなくなる。

さらに、旗を倒すとグラウンドから出ていかないといけない、というのがくせ者だ。防御が弱い生徒に攻撃の強い生徒を当てれば、攻撃の強い生徒を追い出すことができる。

ゲームで似たようなものがあったのを思い出す。

いかに小さな力の差で勝つかが勝負の分かれ道になる。

これは、意外と考えられたゲームだね。旗を取られた学生が、どの生徒に加勢するかによっても変わってくる。

交流会の最後には面白い出し物だ。

説明を終えたシアは学生たちのところに行ってしまう。わたしとノアは見学する場所を確保するため、移動する。

「でも、こんな実戦的なこともするんだね」

「実戦的ですか?」

「守る方は旗を護衛する人。攻撃する方は敵のリーダーを倒すってところかな?」

「そう考えると、確かにそうですね」

わたしとノアはグラウンドの全体が見られる場所を確保する。

グラウンドを見ると、お互いの学園の先生が、話し合っている。

ちょっと、なにか揉めているみたいだ。揉めているというよりは、どうするか相談している感じだ。

「どうしたんでしょうね?」

ここからでは、何を話しているのか分からない。

先生がシアたち女子生徒がいる場所に移動して、話を始める。すると、シアが先生を連れて、他の生徒から少し離れる。シアが先生と話し始め、わたしたちのほうをチラッと見る。先生も見る。

なんだろう?

「お姉様、わたしたちのほうを見ていますね」

確かに見ている。先生と話したシアが、わたしたちのところにやってくる。

そして、口を開く。

「えっと、ユナさん。この団体戦の試合に参加してくれませんか?」

「わたしが?」

「はい」

その団体戦の試合は男女に分かれてやる。そして、女子12人対12人の試合をすることになっている。

攻撃側6人、守備側6人の計12人。

でも、先ほどの製作する魔法で、魔力の使い過ぎで、参加できなくなってしまった子がいるらしい。

それで人数をどうするか相談をしているらしい。

王都の学園の人数に合わせるか、王都が1人少ない人数で試合を行うか、話し合っているとのことだ。

ユーファリアの学園としては、人数を減らしたくない。参加することができる生徒が参加できなくなるのだ。それは避けたい。でも、一人少ない王都の学園と戦うのも礼儀に欠ける。

「それで、ユナさんに参加してくれないかと思って」

シアが申し訳なさそうにする。

「シア、わたしのことを知っているよね?」

「はい。でも、これしか方法が思いつかなくて。その、ユナさんは適当にしてもらえれば……」

そう言われても困る。

参加したら、適当ができない。

元ゲーマーのわたしはこういうゲームみたいなことが好きだ。昨日から、やってみたいという気持ちが出ている。参加したら、真面目に遊ぶわたしがイメージできる。

何より、負けず嫌いのわたしが、手加減して負けるようなことはできない。間違いなく、むきになって、魔法を使うと思う。

「でも、わたし、学園の生徒じゃないよ。すぐにばれるんじゃ」

それが一番の問題だ。

「それは大丈夫です。学園にはたくさんの学生がいます。全ての顔と名前を憶えている学生はいませんよ。あと、先生はシューグ先生だから、ユナさんのことを知っています」

「シューグ先生?」

名前を言われても、記憶にはない。

「ユナさん、一度会ってますよ」

なんでも、シアたちを実習訓練したときに、挨拶をした先生だと言う。

グラウンドを見ると、あのときの先生かもしれない。

「お母様より、ユナさんが何かした場合、先生に相談するように言われてました」

「……エレローラさん」

わたしが何かをすると思って、保険を掛けていたらしい。

ありがたいけど、人をトラブルメーカーと思っているのかな?

「だから、シューグ先生はユナさんのことを知っていますから、大丈夫です」

「それだと、余計にわたしが生徒じゃないことを知っているんでしょう?」

冒険者として、挨拶をしている。

「大丈夫です。知ってて、許可をもらいました」

先ほど、先生と話していたのが、それだったみたいだ。

「でも」

わたしの力はチートだ。一生懸命に練習してきた学生の中に混じっていいのか。

「ユナさん、わたしもユナさんとお姉様が一緒に頑張る姿が見たいです」

ノアまでそんなことを言い出す。

わたしだって、昨日からシアたちの競技を見て、やってみたいと思っていたよ。

「ユナさん、お願いします」

シアは手を合わせる。

断るのは簡単だ。でも、交流会の最後がしっかり終わらないのもシアたちが可哀想だ。

「分かったよ。でも、わたし、手加減が分からないから、旗を守る側にして。下手に攻撃側で、大きな魔法を使ったら、大変だから」

旗を守るだけなら、相手に合わせることができる。攻撃側に回り、手加減した魔法を防がれでもしたら、意地になって、強力な魔法を使ってしまいそうだ。

「ユナさん、ありがとうございます」

シアは嬉しそうにする。

「それで、ユナさん。名前はどうしますか?」

「名前?」

「学園祭のときみたいに、ユーナって名乗りますか? 先生は名前を知っていますが、生徒たちは知りませんから」

確かにシアの言う通りだ。でも、改めて聞いても、その名前って、偽名になっていないよね。

いきなり考えたとはいえ、センスがない。

「そうだね。ユーナでお願い」

学生服を着ているわたしはユーナにしておくことにする。

「分かりました。それじゃ、ユーナさん、行きましょう」

「お姉様、わたしも近くに行っていいですか?」

「いいよ」

「ありがとうございます」

わたしとノアはシアについていき、グラウンドに向かう。