軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

521 クマさん、シアを応援する。その3

午後の交流会が始まる。

グラウンドには距離も高さもバラけた的が立っている。

先生の説明を聞くと、学生は馬に乗りながら、左右にある的を魔法で当てていくらしい。その的の隙間には、当ててはいけない的も立っている。つまり、大きい魔法で一掃はできないってことだ。しかも、馬に乗りながら一定時間で走り、正確に魔法を使わないといけない。想像するだけで、難しいことが分かる。

「ノアは馬に乗れるの?」

隣の椅子に座っているノアに尋ねる。

「馬ですか? それほど上手ではありませんが、乗れますよ。もしものことがあれば、馬に乗れないと困りますので」

流石、貴族の令嬢ってことかな。乗馬の教育になるのかな?

「でもわたし、馬に乗るより、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗るほうが上手です。馬は落ちそうになりますが、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは落ちそうになりません」

ああ、それはくまゆるとくまきゅうの能力だからね。わたしもそれがなかったら、乗れなかったかもしれない。乗れたとしても落ちる可能性が高い。

ノアと話していると、準備が整い、1人目が始まる。

生徒は馬を走らせながら、右手を左右に振り、的に当てていく。

多くの魔法使いは利き手で魔法を発動させる。わたしも利き手の右手で攻撃魔法を使うことが多い。

箸を持つ手、ボールを投げる手、殴る手、武器を持つ手、なんでもそうだけど、利き手のほうがしやすい。それは、魔法でも言えることだ。

的は片手では難しい配置にある箇所がある。同時に放たないと命中しない的もある。

先生もそれが分かっているから、あのように配置したのだろう。嫌らしい配置であり、面白い配置だ。

一番初めにやった生徒は片方しか命中しなかった。

二人目は杖を持っている。

ああ、そうか。指輪や腕輪だけじゃないんだ。自分が杖を使わないから忘れていた。

生徒は左右に杖を振りながら、的に当てていく。思っていたよりも、命中する。学生が凄いのか、杖が扱いやすいのかわからないけど、これは予想外だった。

この魔法の交流会に参加する生徒たちは馬に乗る練習をしていたのか、馬の扱いも上手だ。

でも、この馬って、王都から連れて来たのかな? ユーファリアの学園が用意した馬だったら、その馬で練習しているユーファリアの学生が有利になる。

動物にだって、癖や性格に違いがある。それを知っているか知らないかでは、乗り方も変わってくる。

でも、見た感じ、それぞれの学園が用意した馬に乗っているように見える。

そして、次々と生徒が挑戦し、シアの番になる。

「お姉様です。お姉様、頑張ってください!」

シアは馬に乗り、手綱を握る。

おお、カッコいい。身内びいきかもしれないけど、様になっている。

シアはスタート位置に立つ。そして、先生の合図で走り出す。

馬を走らせ、シアは土魔法で的に当てていく。

「シア、馬に乗るの上手だね」

「クリモニアにいるときから、お姉様は馬に乗るのは上手でした」

シアは両手で魔法を放ち、確実に的に当てていく。

「上手い」

そして、シアはほぼパーフェクトでゴールする。

残念ながら一発だけ、当ててはいけない的に当ててしまっていた。

あれがなければ、パーフェクトだったのに残念だ。

それから、セレイユも登場し、上位の成績を収める。

悔しいけど、やっぱり、セレイユも上手だ。

馬に乗った競技は進み、的が当たるたびに歓声があがり、的を外せばため息が出る。そして、最後の生徒も終わり、馬に乗って的に当てる競技は終了する。

これで1日の競技が終わり、それぞれの部門の総合上位3名が表彰される。シアは残念ながら、その3名の中には選ばれなかった。

セレイユは火、土、風の3属性の魔法の3名の中に選ばれていた。水魔法は苦手なのか、他の魔法より劣っていた感じだ。

セレイユは攻撃魔法が得意って感じだ。水魔法が攻撃魔法に使えないってわけではないが、通常の敵には他の魔法のほうが有利だ。

「シアは残念だったね」

「はい」

シアは優秀な成績を収めた競技もあったけど、成績が悪かったものもあった。見た感じ、あと一歩届かなかった感じだ。

セレイユはどの競技でも良い成績を収めていたこともあって、火魔法は1位、風魔法は2位、土魔法では3位だった。

総合的には、表彰された人数は王都のほうが多かった。

そして、両方の学園は、表彰された生徒を称えていた。

「もし、ユナさんが参加していたら、どうだったんですか?」

クマ装備があれば、好成績を取れたと思う。ただ、問題は、馬に乗って的に当てる競技だ。馬に乗ったことがないわたしには、馬に乗りながら的に当てることはできない。

「馬に乗れないから、微妙だね。それ以外なら、勝てそうだけど」

くまゆるとくまきゅうに乗っていいなら間違いなく、1位独占はできる。

「馬に乗るのは難しいですからね。でも、ユナさんが参加するところを見てみたかったです」

わたしもやってみたかったけど、魔力はチートだし、命中補正もついている。そんなわたしが参加して優勝でもしたら、真面目に練習してきた学生たちに悪い。

シアは同じ王都の学生たちと称えあうと、わたしたちのところにやってくる。

「シア、残念だったね」

「もう少し頑張れば、3番ぐらいになれたんですが。来年は頑張ります」

来年は王都だから、今度はフィナも連れてきてあげたいね。

「そういえば、最後に試合みたいなことをするって言っていたけど」

そんな試合みたいなものはなかった。

「それは明日ですよ」

「明日?」

「はい、明日です」

「明日もあるの?」

「ありますよ。言ってませんでしたか?」

シアは言い切った。わたしは隣にいるノアを見る。

「ノアも聞いていないよね?」

「手紙に書いてありましたから、知ってますよ」

どうやら、知らなかったのは、わたしだけみたいだ。

一日目は競技みたいな個人種目をして、二日目は別のことをするらしい。

これから反省会と明日についての話があるというシアと別れると、入れ違いにセレイユがやってきた。

「シアは戻ってしまったんですね。少し来るのが遅れてしまいました」

セレイユは水魔法以外で表彰されていた。そのせいもあって、学生たちに囲まれて、中々抜け出せずにいた。

「一応、おめでとうって言わせてもらうね」

「セレイユ様、おめでとうございます」

「ありがとう。でも、負けた試合もありますからね。専門に強い人には勝てませんね」

流石に全ての競技で勝つのは難しい。わたしも馬に乗って的に当てる競技は、勝てない。くまゆるとくまきゅうに乗っていいなら、勝てるけど。人には得意、不得意はある。得意な、1つのことに取り組んできた者に、勝つのは難しい。大きく横に広げるよりは、1つのことを伸ばすほうがいいのかもしれない。

「お姉様に勝ってほしいですが。セレイユ様も来年は頑張ってください」

「来年……、そうね。来年に向けて、もっと練習をしないといけませんね」

セレイユは少しだけ、何かを考えた後、ノアの言葉に微笑む。

「どうかしたのですか?」

「いえ、なんでもありませんよ。目指すは、全てで1位です」

セレイユは来年に向けて宣言をする。

「それでは、わたしも行きますね。明日も見に来てくださいね」

セレイユはユーファリアの学生がいるところに戻っていく。

観客たちも帰り始めるので、わたしたちも宿屋に帰ることにする。

「面白かったね」

「はい。いろいろな魔法が見ることができて、勉強になりました」

魔法の形にもいろいろとある。自分がもっともイメージしやすい形にして、放つ。それができないと、威力が上がらない。新人冒険者の女の子も苦労していた。

そして、交流会2日目。

わたしは着ることはないと思っていた制服にもう一度、袖を通し、学園に向かう。

学園の前の入口に、シアとセレイユの姿があった。

「ユナにノアール、おはようございます」

「ユナさん、ノア、おはよう」

「お姉様、セレイユ様、おはようございます」

「二人とも、待っててくれたの?」

「今日は、場所が違うことを伝えるのを忘れていたので、待っていたんです」

「わたしはシアがいるのを見かけたので、一緒に待たせてもらったんです」

なんでも、今日は学園内にある湖の畔でやるらしい。それで案内するため、待っていてくれたらしい。

「湖でなにをするの?」

「製作魔法です」

「製作魔法?」

「簡単に言えば、魔法で形を作って、皆に見てもらうんです」

「それを誰かが判断して、優劣を決めるの?」

「いえ、今回は優劣はありません。純粋に自分の考えたものを作り、見ている人に楽しんでもらうんです」

どうやら、勝負とかではなく、魔法で作り出せるものをお披露目するらしい。

「お姉様はなにを作るのですか?」

「それは、見てからのお楽しみだよ」

湖の畔に向かうのは、わたしたちだけでなく、学生たちや観客たちも同じ方向に向かう。

昨日のグラウンド横を通り、湖の畔にやってくる。

「それじゃ、わたしたちは行きますね。楽しんでくださいね」

シアとセレイユはそれぞれの学園の学生たちがいる場所に行ってしまう。

わたしたちは見学する場所を見つけると、椅子を出して陣取る。

それからしばらくして、先生がこれから行うことの説明をする。内容はシアとセレイユに聞いたとおりだった。魔法で好きなものを作るらしい。

湖には小さな桟橋があり、一人の生徒が移動する。

生徒は湖の水を利用して、水魔法を使う。自分の魔力を水に変換することもできるが、それだと、多くの魔力を消耗する。でも、近場の水を使用すれば、魔力を抑えることができる。それは、土魔法でも同様だ。地面の土を使用して壁を作るのと、自分の魔力で土の壁を作るのでは違う。

学生は水を浮かび上がらせると、形を作っていく。水は形を変え、動物っぽい形になる。周りからは拍手が起きる。

「えっと、あれはウルフでしょうか?」

ノアが水で作られた動物の形を見る。確かにウルフっぽい。魔法はイメージで作ることができる。形が鮮明なほど、イメージ力が高いことになる。

水魔法でウルフを作った学生は頭を下げて桟橋から離れる。そして、二人目、三人目と水魔法による芸術作品のお披露目が行われる。

優劣をつけるなら、まず、大きいことだ。当たり前だけど、水の量が増えれば、それだけ、魔力量も多くなる。そして、形が鮮明なほど、イメージ力が高く、魔法の扱いが上手ってことになる。

その両方を兼ねたものが優秀な魔法使いと言える。

人の形を作る学生、蛇のように水を扱う生徒、魚の形を複数作って、空に飛ばした学生もいた。あれは少し綺麗だった。でも、なんで魚? 鳥でいいと思うんだけど。

「水だから、魚でいいと思いますよ」

確かに水なら鳥より魚のイメージのほうが強い。でも、空を飛ぶとなると、鳥のイメージが強い。

それからも水魔法を使った芸術のようなものが行われた。

「あの水がクネクネしたのが、不思議でした。ああ、早くわたしも魔法が使いたいです。そしたら、ユナさんみたいにクマさんを作りたいです」

わたしはクマさんパペットに魔力を集め、小さな水球を作り出し、クマの形に変化させる。

「ふふ、可愛いです」

ノアが水で作られたクマに触る。でも、クマ水に触れた瞬間、クマ水は壊れ、水となって地面に落ちる。

「ああ、水に戻ってしまいました」

まあ、固くしていないし、触れば壊れる。