軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

488 クマさん、フィナたちを呼ぶ

とりあえず、温泉は後にして、クマの転移門の置く場所を決めることにする。

三階を確認したわたしたちは二階に降りる。

「二階は使用人たちの部屋になります」

「料理人や護衛の人たちが泊まる部屋っす。わたしとかはここに泊まるっす」

「でも、三階同様に景色の見晴らしはいいですよ」

サクラも来ることがあるみたいだけど、サクラはどっちに泊まるんだろう? スオウ王の態度を見れば三階になるのかな? そう言えばスオウ王の家族ってどうなっているんだろう?

二階の部屋は三階ほど広くはないが、部屋数が多い。6畳ほどの広さの部屋がいくつもある。

二階を見回ったわたしたちは一階に降りる。ジュウベイさんの姿もスオウ王の姿もない。帰ったみたいだ。

一階は調理場や倉庫がある。当たり前だけど、倉庫の中は空っぽだ。逆にいろいろと荷物があっても困るけど。

あと、一階には使用人が使う温泉がちゃんと用意されていた。やっぱり、上にあるのは王族専用の温泉だったんだね。

建物の中を一回りしたわたしは自分の使う部屋を決め、そこにクマの転移門を置くことにした。

倉庫でもと思ったけど、温泉に入ったりするなら、三階にあったほうが便利だ。

「それじゃ、この部屋をわたしの部屋にしようかな」

三階のある一つの部屋に決めた。

「一番広い部屋じゃないのか? てっきり、そこにするかと思ったんじゃが」

「ここも十分に広いよ」

10畳以上はある。1人なら十分だし、ここで暮らす予定もない。

「あの広い部屋はカガリさんが使っていいよ」

スオウ王の部屋だったかもしれないし。

「よいのか? それじゃ、あの部屋は妾が有難く使わせてもらうかのう」

わたしは壁際にクマの転移門を出す。

「この扉の先に別の場所が繋がっているかと思うと不思議じゃのう」

カガリさんはクマの転移門を見ながらそんなことを口にする。

「そう言えばカガリ様は、あちらのユナ様の家にいたんですよね。どんな街でしたか?」

サクラが何気なく尋ねる。でも、カガリさんは即答できない。

「……見ておらん」

カガリさんは小さな声で答える。

「カガリさんは大蛇の戦いのあと、疲労で、ずっと寝ていたんだよ」

少し可哀想なので、助け舟を出す。本当に体の回復に専念するために、動物のように食べては寝てを繰り返していた。

「そうだったのですね。ごめんなさい」

「いや、気にしないでよい。魔力と体力の消耗、さらに心も疲れておったみたいじゃ。いくら寝ても足らなかった。それに久しぶりに、安心して眠れたせいもあった。あの家はなぜか温かく安心感があった」

クマハウスの力でも感じ取ったのかな?

「それで、もう体のほうは大丈夫なのですか?」

「大丈夫じゃ」

カガリさんはサクラを心配させないように笑う。

元の大人の姿になれない以外は問題はなさそうだ。

「だから、今度はゆっくりと見物させてもらうかのう」

「わたしも見てみたいです」

「そうだね。今度、連れていってあげるよ」

「本当ですか!? 楽しみです」

サクラが嬉しそうに微笑む。そんなわたしたちをシノブが見ている。そんな視線を、わたしはゆっくりと外す。

「どうして、わたしから目を逸らすっすか?」

「逸らしていないよ」

「嘘っす。わたしの目は誤魔化せないっす。この目でユナが目を逸らしたのを見たっす」

「シノブは連れていかないから」

「ど、どうしてっすか!」

「なにかしそうだから」

「酷いっす。イジメっす。横暴っす。差別っす」

シノブが泣きマネをするけど、スルーする。

別に連れて行ってもいいけど、わたしのお店に連れていったら、絶対にシノブは笑うのが目に見えている。連れていくのは遠慮したい。

わたしがそんなことを考えていると、カガリさんが口を開く。

「それにしてもお腹が空いたのう」

さっき、一日ぐらい食べなくても大丈夫みたいなことを言っていなかったっけ?

まあ、食べ物ならクマボックスに沢山入っている。調理場もあるから、料理も作れる。

でも、せっかく目の前には湖がある。

「それじゃ、あの湖のところでバーベキューでもしようか?」

わたしは窓を開けて、湖を見る。

近くで湖を見たいし。あとで行こうと思っていた。それなら、湖の側でバーベキューだと思った。

元引きこもりのわたしが、外でバーベキューとか変わったね。これも、この世界に来て、いろいろと旅をしたおかげかな。

「バーベキューですか?」

「それはなんじゃ?」

「外で肉や野菜を焼いて、みんなで食べることだよ」

「おお、それはいいのう」

「でも、食材はどうしますか?」

「ほれ、それはシノブに街にまで行ってもらえばいいじゃろう。ほれ、行ってこい」

「えっ、一人でっすか? それなら、ユナの門を使えばいいじゃないっすか! そっちのほうが早いっすよ」

「食材なら、わたしが持っているから大丈夫だよ」

食材から調理道具も持っている。

「あのう、それなら、ルイミンさんとフィナちゃんを呼ぶっていうのはどうでしょうか? 食事をしたあとに呼ぶのもあれですので」

「そうだね。ルイミンとフィナに聞いてみるよ」

わたしはクマフォンを取り出すと、ルイミンに呼び掛けるように軽く魔力を流す。

しばらくすると、クマフォンからルイミンの声がしてくる。

『ユナさん?』

「ルイミン、お昼ごはん食べた?」

『まだですが、それがどうかしたんですか?』

「それじゃ、今からこっちで、みんなで食事をするんだけど、来れる?」

『こっちって、たしかユナさんは国王様に会うために和の国にいるんですよね。その、サクラちゃんに会いたいけど、国王様と食事をするのは』

そういえば、スオウ王に会うことを話したら、断られたんだっけ?

「ルイミンさん、大丈夫ですよ。伯父様とのお話は終わりました。食事はわたしたちだけです。だから、来てくれませんか?」

サクラがわたしが持っているクマフォンに顔を向けて話しかける。

『サクラちゃん!?』

「あと、お話もしたいです。フィナちゃんも呼ぶ予定です」

『フィナちゃんも。……分かりました。今から行きますね』

「ああ、それじゃ、来るときはキノコをお願いね」

『キノコですか?』

「うん、美味しいところをお願いね」

バーベキューにはキノコも必要だからね。せっかくなので、持ってきてもらうことにする。

『分かりました』

「転移門の近くに来たら、連絡をちょうだいね」

通話が切れる。

次にわたしはフィナのクマフォンに繋げる。

『ユナお姉ちゃん?』

「今、大丈夫?」

『はい、大丈夫です』

『ユナ姉ちゃん?』

後ろからシュリの声も聞こえてくる。どうやら、一緒にいるらしい。

「食事は食べちゃった?」

『いえ、まだです』

「それじゃ、今からわたしの家に来れる? こっちでみんなで食事をしようって話になったんだけど」

『あら、ユナちゃん。また、わたしの娘を連れ出すの?』

今度はティルミナさんの声が聞こえてくる。

「ティルミナさん? うん、フィナと一緒に食事でもしようと思ったんだけど。ダメですか?」

『ふふ、そんなことはないわ。もちろん、いいわよ』

『わたしも行きたい!』

シュリの声も聞こえてくる。

わたしはクマフォンから、顔を離して。皆に尋ねる。

「フィナの妹も一緒でいい?」

「妾はいいが、お主の扉のことを知っておるのか?」

「うん、知っているよ」

「お主がいいのなら、妾は問題はない」

「もちろん、わたしはいいですよ」

「わたしもっす」

わたしはクマフォンに顔を近づける。

「シュリもいいよ。あと、ティルミナさん。今日、帰りが遅くなったり、わたしの家で泊まるかもしれないけど、いい?」

『ユナちゃんと一緒なら安心だからいいわよ。もちろん、娘がキズモノになったら、責任をとってもらうけど「お母さん!」』

ポコポコと叩く音が微かにクマフォンから聞こえてくる。

たぶん、フィナがティルミナさんを叩いているのだろう。

『ふふ、それじゃユナちゃん、二人をお願いね』

『うぅ、ユナお姉ちゃん、今から行きます』

「うん、待っているよ。それでお願いがあるんだけど、アンズのお店に行って、サザエみたいな大きい貝を貰ってきてもらえる。全部で7人分ね」

せっかくなので、サザエなども焼いて食べることにする。

これで、準備はOKだ。

それから、先にやってきたルイミンを迎え入れる。

「ああ、ルイミン、靴は脱いで」

「ごめんなさい」

ルイミンは急いで靴を脱ぐ。

ちなみにこのお屋敷は土足厳禁だ。

「あのう、それで、ここはどこですか?」

ルイミンが靴を持ちながら、部屋を見回す。

「和の国のわたしがもらったお屋敷だよ」

「ユナさん、お屋敷をもらったのですか?」

「まあ、一応。断るのもあれだったからね。ルイミンのおかげでもあるから、ゆっくりしていってね」

それからまもなくして、クマフォンが鳴り、フィナがやってくる。

「ユナ姉ちゃん、ここはどこ?」

「ここは和の国っていう場所だよ。遠い国だよ」

シュリはキョロキョロと部屋を見たり、カガリさんたちを見ている。

「お主がフィナの妹か?」

「可愛いっすね」

「フィナちゃんに似ていますね」

シュリはフィナの後ろに隠れてしまう。

「だれ?」

「妾はカガリじゃ。ユナとは魔物と戦った友じゃな」

カガリさんは胸を張って自己紹介をする。

間違っていないけど。自分より小さいカガリさんが魔物と戦ったと聞いてシュリは驚いている。

「わたしはサクラと言います。ユナ様はわたしの命の恩人です」

サクラは手を前に合わせて、軽くおじぎをする感じで、丁寧に自己紹介をする。

「わたしはルイミンです。ユナさんとフィナちゃんの友達です」

ルイミンは明るく元気に自己紹介をする。

そういえばルイミンとシュリが会うのは初めてだっけ?

「わたしはシノブっす。ユナの奴隷っす」

とりあえず、殴っておいた。

「痛いっす」

「シノブはただの知り合いだから、気にしないでね」

「酷いっす」

どっちが酷いのか。

「シュリも挨拶を」

「シュリ。お姉ちゃんの妹です」

フィナの手を握りながら自己紹介をする。

「ユナ姉ちゃんは……」

シュリはわたしを見ながら、困っている。

どうやら、わたしとの関係を考えているみたいだけど、分からないみたいだ。確かに、シュリとわたしの関係を説明するのは難しい。わたしからしたら、命の恩人の妹になるのかな?

それを言ったら、フィナに怒られるから、言うのはやめておく。

「それで、ユナお姉ちゃん。ここで食事をするのですか?」

「あそこで、食べるつもりだよ」

わたしは窓の外を指す。

「うわぁ~~」

「凄いです」

窓から広がる景色に2人は身を乗り出すように見る。

「あそこで食べるの?」

「うん、綺麗でしょう。それじゃ、みんな揃ったし、行こうか」

わたしたちはお屋敷を出て、10分ほど歩くと湖に到着する。