軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

485 クマさん、お礼をもらう

「それじゃ、ユナ。約束していた件だが、一ついいのがあった。確認してもらえるか。嫌だったら、断ってくれてかまわない」

「もう、用意してくれたの?」

「ああ、礼もできない王とは思われたくないからな」

大蛇の後始末がある中、用意してくれているとは思わなかった。

忙しいだろうに。

「妾の酒は?」

「元の姿になったら、用意してやる。何度も言っているが、その姿で飲ますわけにはいかないだろう」

「待て、それはいつになる? それに妾はこんな格好だが、お主より年上だぞ」

「見た目の問題だ。それと、カガリがいつ大きくなるかなんて俺が分かるわけがないだろう」

「むむ」

カガリさんは頬を膨らませる。

子供が駄々をこねているようにしか見えない。

やっぱり、見た目って大切だよね。

カガリさんを見ていると、本当にそう思う。

「そのクマは海の上を走れるんだよな?」

スオウ王はくまゆるとくまきゅうに軽く目を向ける。

「うん」

すでにシノブから報告を受けているスオウ王は知っていることなので頷く。

「ユナたちを連れて一緒に船に乗ると説明が面倒になる。悪いが、向こうで落ち合ってもらえるか?」

確かに、島に降りたのはスオウ王とサクラにシノブの三人だ。くまゆるとくまきゅうを送還するにしても、カガリさん(幼女)とわたし(クマ)が一緒に現れたら、不思議に思われる。まして、大蛇が現れた場所だ。そんな場所にわたしたちがいたらおかしい。

「いいけど。家も片付けていいんだよね?」

「ああ。こっちにあるより、向こうのほうがいいだろう」

わたしたちは落ち合う場所を決めると別れる。

スオウ王とシノブとサクラは船着き場に向かう。わたしとカガリさんはクマハウスを片付けたあと、くまゆるとくまきゅうに乗って海の上を走る。

「本当に海の上を走ることができるんじゃのう」

「でも、カガリさんは空を飛べるんでしょう?」

個人的には新しく覚えた水中遊泳より、空を飛べるスキルのほうがよかった。

「この姿では飛べぬ」

「そうなの?」

「空を飛べるのは、あの姿のときだけじゃ」

「あの姿にはなれないの?」

「大蛇と戦ったときほどの大きさは無理じゃが、狐だけならなれる」

そう言うと、くまゆるの上にいたカガリさんの姿が服を残して消える。わたしは慌ててくまゆるを止める。

「カガリさん?」

声をかけると、カガリさんの服がもぞもぞと動き、服の下から子狐が顔を出す。

「ふう、今はこのぐらいの大きさじゃな」

「もしかして、さっき石像を作ったせいで魔力が無いから?」

「いや、それは関係ない。肉体的な問題かも知れぬ。もしくはクマの呪いかも」

「それはないから」

子狐(カガリさん) はくまゆるの上で浮かんでみせる。

「飛べるが、こんなもんじゃ」

子狐(カガリさん) はくまゆるの上に降りると服の中に潜り込んで、元の幼女姿に戻ってしまう。

でも、飛べるだけ羨ましい。

魔法が使えるんだから、空を飛べてもいいと思うんだけど。

その辺り、融通がきかないよね。

そして、わたしとカガリさんは待ち合わせの場所にやってくるとスオウ王を待つ。

お城がある都から少し離れた街道だ。カガリさんはくまゆるの上で気持ち良さそうに寝そべっている。やっぱり、まだ疲れているのかな? 元の姿に戻れないし。

しばらく待っていると、馬(たぶん、ハヤテマル)に乗ったシノブとサクラ、スオウ国王。あと、ジュウベイさんがこちらに向かってくる。

「お待たせしたっす」

「ユナ様、遅くなって申し訳ありません」

「サクラも来てくれたんだね」

「はい、ご迷惑でなければ、わたしも案内します」

「迷惑ってことはないよ。お願いね」

「はい!」

サクラはシノブが乗るハヤテマルの上で嬉しそうに返事をする。その後ろではスオウ王とジュウベイさんがわたしのことを見ている。

「ジュウベイさんも来たんだね」

「スオウ王より、護衛を任されました」

「流石にシノブ1人に護衛を任せて1人で都を出るのは止められた。仕方なく、ジュウベイに頼んだ。ジュウベイなら、ユナのことも知っているからな」

ジュウベイさんは馬から降りると、わたしの前にやってくる。

「まだ、国に残っていたのだな。スオウ王とシノブにユナのことをお尋ねしても教えてくれなかったので、心配した」

まあ、契約魔法をしたから、クマの転移門で帰ったなんて言えないよね。

「師匠、ユナのことを心配していたっすよ。でも、スオウ王に口止めされていたから話せなかったっす」

「ユナのことは秘密だったからな」

一応、わたしのことは秘密になっているからね。

「怪我もしていないようでよかった。スオウ王が会わせてくれなかったから心配した。お礼を言わせてくれ。国を救ってくれて感謝する。ありがとう」

当たり前だけど、ジュウベイさんはわたしが大蛇と戦って、大蛇を倒したことは知っているんだね。

わたしはくまきゅうから降りて、ジュウベイさんに言葉を返す。

「倒せてよかったよ」

「大蛇を見たが、あれほどの大きな魔物を嬢ちゃんみたいな子が倒したことに驚愕した。俺が嬢ちゃんに負けたのも納得した」

「ジュウベイさんがいたら、楽ができたんだけどね」

「そんなことはない。俺がいても足手まといになっただけだ」

ジュウベイさんは強かった。大蛇相手には分からないけど、ワイバーンやヴォルガラスと戦うときにはいてほしかったのは本当の気持ちだ。もし、居てくれれば、シノブが怪我をすることも、サクラが危険なことをすることもなかった。

「それとシノブとサクラ様を救ってくれたことに感謝する」

ジュウベイさんは軽く頭を下げる。

真面目にお礼を言われるとムズかゆくなるから困る。

「守れてよかったよ」

ジュウベイさんは笑みを浮かべると、スオウ王の傍に戻っていく。

それから、わたしたちは温泉が出る場所に向かって出発する。出発するときにサクラがくまきゅうに一瞬目を向けるが、「はい、行きましょう」って声をかけた。

もしかして、くまきゅうに乗りたかったのかな?

でも、乗り換えるとハヤテマルが可哀想と思ったのかもしれない。あとで、くまきゅうと一緒にいる時間を作ってあげようかな。

「それで、どこまで行くの? 街だと思ったんだけど」

お城がある都から離れていく。

「街の外だが、そんな遠くはない」

「ユナが見たら、きっと驚くっすよ」

「そうなの?」

シノブは意味深なことを言って、目的地を教えてくれない。サクラのほうを見ると「秘密です」と言う。

「カガリさんは知っているの?」

「お主とずっと一緒にいた妾が知るわけがなかろう」

確かにそうだよね。この数日間一緒にいて、ここに来るのも一緒だ。カガリさんが知っているわけがなかった。

いったい、どこに連れていかれるのかな。

しばらく進むと森が見えてくる。

もしかして、森の中?

確かに森の中なら、クマハウスも目立たないけど。もしかして、クマさん、森の中に捨てられる?

「まさか、嬢ちゃんにあれをあげるのか?」

行き先が分かったのか、カガリさんがそんなことを口にする。

「カガリさん。もしかして、わかったの?」

「妾の記憶に間違いがなければな」

「ああ、カガリ様。黙っていてくださいっすよ」

カガリさんが教えてくれそうになったのにシノブが止める。

カガリさんの口ぶりからすると、もの凄いものみたいだけど。

「そろそろ、教えてくれてもいいと思うんだけど」

「秘密です」「秘密っす」「行けば分かる」「いらないなら、妾が貰おうかのう」「…………」

カガリさんが変なことを言っていたけど、どうやら到着するまで教えてくれないらしい。

まあ、行けば分かると言うなら、行けばいい。嫌なら、断ってもいいって話だし。

わたしたちは森の中に入っていく。

森の中は、ちゃんと道は舗装され、道が続いている。さっき、ちらっと看板が見えたけど、「この先、立ち入り禁止」と書かれていた。その下には王家の紋章みたいのもあった。

この先になにかがあるのは確かだ。

道を進むと、大きなお屋敷が見えてくる。

わたしたちは門をくぐり、屋敷の前に到着する。

「やっぱり、ここか」

カガリさんがお屋敷を見る。

「まさか、このお屋敷をプレゼントとか言わないよね」

「なんだ。このお屋敷ではダメか? 中を確認してからでもいいと思うが」

「いやいや、大きすぎるでしょう」

クリフのお屋敷ぐらいある。

3階建ての日本風のお屋敷だ。

「大蛇から国を救い、人は誰も死なず、国への損害はなく、大蛇の魔石と素材も譲ってくれた。もし、大蛇が国にやってきたときの損害を考えれば、十分な報酬だ」

「わたしもお話を聞いたときは初めは驚きました。でも、ユナ様は大蛇を倒し、国を救ってくださいました。そのことを考えれば、わたしもおかしくはないと思います」

「確かに、そうじゃのう。国が破壊されたことを考えれば安いものじゃろう」

三人は当たり前のように言う。

確かに大蛇の魔石、素材の金額。大蛇が国に来たときの損害を考えれば、お屋敷1つぐらい安いかもしれない。

でも、大きすぎるような気がする。

だって、大きなお屋敷だよ。

「でも、どうして、こんな森の中にお屋敷があるの?」

「俺が休むために俺が建てた。だから、ここは王家の敷地内になるので人は来ない。それと希望どおりにお風呂は温泉になっている」

……人が来なくて、温泉付きの大きなお屋敷。

なに? その優良物件。

「ユナのクマなら、街まで簡単に行き来できるから、移動も問題はないだろう」

くまゆるとくまきゅうがいれば、街までの移動も簡単だ。転移門で来たとしても、誰かに見られるわけでもない。

誰も使っていないと思っていた家からクマの格好をした女の子が出てきたら驚かれる。でも、ここなら安心だ。

都には温泉はでないのかな?

「もしかして、温泉のためだけにお屋敷を建てたの? 都に温泉が出ないかは知らないけど、隣の街でもよかったんじゃない?」

「ユナ様、それは中に入れば分かりますよ」

サクラが含みがある言い方をする。

まだ、なにかあるのかな?

わたしたちはお屋敷の中に入る。