軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

476 クマさん、フィナとシノブに説明する

わたしはフィナに説明をして、さらにシノブが知らないところをカガリさんとサクラが説明する。

この国で大蛇という大きな魔物を倒すことになったこと。そのときにワイバーンが現れ、戦いでシノブが負傷したこと。ムムルートさんとルイミンの力を借りて、大蛇を倒したことを話した。

「それじゃ、本当に自分が寝ている間に終わったんっすね。しかも、サクラ様とルイミンには危険なことをさせてしまったっす。寝ていた自分が情けないっす」

シノブは少し落ち込む。

「そんなことはありません。シノブがどれだけ頑張っているか知っています。シノブ、いつもありがとう」

「……サクラ様」

そんな二人のやり取りを見ていたフィナが小声で尋ねてくる。

「ユナお姉ちゃん。シノブさんとサクラちゃんって」

「えっと、巫女って言っても分からないよね。う~ん、サクラの母親が元王族で、シノブはサクラに仕えているのかな?」

シノブの立ち位置は分からないけど、そんな感じだ。

「……王族」

フィナは驚いたようにサクラを見る。その視線に気付いたサクラがわたしたちのほうへやってくる。

「フィナ様、このたびはシノブの世話をしていただきありがとうございます。フィナ様がシノブを見ていてくださったおかげで、わたしたちは安心して大蛇と戦うことができました」

サクラはフィナの手を握ってお礼を述べる。

それに対して、フィナはいきなり敬称付きで名前を呼ばれて慌てる。

「フィ、フィナでいいです。わたしはそんな偉くはありませんから、フィナと呼んでください」

フィナは手を大きく振って、名前の呼び方を変えてもらう。

「それではフィナとお呼びいたしますね。わたしのこともサクラとお呼びください」

「えっと、サクラ様?」

母親が元王族って説明したので、フィナは敬称付きでサクラの名前を呼ぶ。

「ユナ様のご友人。できれば、わたしのことはサクラとお呼びください」

「えっと、それは……」

フィナが助けを求めるようにわたしのほうを見る。元とはいえ、王族に関わりがある者を呼び捨てにはできないようで困っている表情だ。

「フィナには元王族であるサクラを呼び捨てにはできないみたいだから、他の呼び方でいいかな?」

「伯父は国王ですが、わたしは王族ではありません。フィナと同じ一般人です」

詳しいことは分からないけど、嫁ぎ先によっては一般人になる。現にサクラは巫女として、暮らしている。

でも、フィナにとっては王族と変わらない。

「呼び捨てに抵抗があるなら、『サクラちゃん』でいいんじゃないかな? ルイミンもそう呼んでいるし」

ルイミンがサクラを呼ぶとき、そう呼んでいる。

あまり、目上に対しての呼び方じゃないけど。呼び捨てより、「ちゃん」付けのほうが呼びやすいかもしれない。それにまだ、お互いに子供だ。そんなに深くは考えないでいいと思う。

「サクラちゃんですか? はい、それなら、サクラちゃんとお呼びしてもいいですか?」

「フィナがそれでいいのでしたら、そうお呼びください」

サクラは少し嬉しそうにする。

それから、シノブが大蛇を確認したいと言い出したので、クマの転移門を片づけて、大蛇のところに戻ってくる。

ムムルートさんとわたしは帰るタイミングを逃す。

「この目で見ても信じられないっすね。あの伝説の大蛇が倒されたなんて」

「大きいです。ユナお姉ちゃんとルイミンさんはこんなに大きな魔物と戦ったんですか?」

フィナは倒されて、動かなくなった大蛇を見上げる。

「ちょっと、成り行きでね」

「わたしは戦ったわけじゃないですよ。お爺ちゃんのお手伝いで魔法陣に魔力を流しただけです」

ルイミンはなんでもないように言うが、ルイミンがいた場所は風の大蛇から一番近く、その戦闘の影響を受け、建物は壊れ、危険な場所だった。

「いえ、ルイミンさんが手伝ってくれなかったら、大変なことになっていました。危険な中、魔力を流し続けてくれたことに感謝します」

わたしと同じことを考えていたサクラが口を開く。

「そんなことはないよ。ただ、魔力を流していただけだよ」

「わたしには分かります。地面は何度も揺れ、外では大きな音が響き、1人で魔力を流し続けることは怖く、不安でした。くまきゅう様がいてくださらなかったら、わたしは怖くて、不安で押し潰されていたと思います。ただ、わたしの心が弱いってことかもしれませんが」

「うん、わたしもくまゆるちゃんが一緒にいてくれたから、頑張れたんだよ。だから、サクラちゃんの気持ちは分かるよ」

2人の言葉にくまゆるとくまきゅうは嬉しそうに「くぅ~ん」と鳴く。

くまゆるとくまきゅうが2人の支えになったみたいだ。帰ったら、ねぎらってあげないといけないね。

一緒にお風呂に入って、体を洗ってあげて、ハチミツでも食べさせてあげようかな。

シノブは確認するように大蛇に近づく。

「動いたりはしないっすよね?」

「大丈夫じゃよ。魔石も取り、生命活動は停止しておる。復活することはない」

「でも、こんな大きな魔物をユナとカガリ様のお二人で、よく倒すことができたっすね。弱かったんっすか?」

「なにを言っておる。強かったに決まっておろう。大蛇の吐く炎で木は燃え、大蛇の巻き起こす風で木々が切れる。岩の大蛇は口から岩を吐き出し、水の大蛇が吐く水で木々が倒れている。島の状況を把握すれば、かなりの被害状況じゃ」

まあ、水の大蛇のおかげで、燃えていた木は消えたけど、それはそれで被害がでている。大蛇がいた場所や、攻撃を受けた場所は酷いものだ。

「倒せたのは嬢ちゃんの力じゃ。初めはこんな小娘が希望の光かと思ったが、間違いなく、希望の光じゃったな」

「はい、ユナ様は希望の光でした」

「うぅ、わたしもユナの戦いを見てみたかったっす」

気を失っていたんだから仕方ない。

フィナのほうを見ると、大蛇を見ている。もしかして、解体したいとか思っているのかな?

「フィナ。解体したいの?」

「えっ、解体ですか?」

「大蛇を解体したことはないでしょう?」

「ないです。お父さんだって、ないですよ。それにこんな大きなもの解体できないです」

「そもそも、大蛇を解体した者がいるのか? いないじゃろう」

この世界は広い。大蛇が何体もいてもおかしくはない。

もしくは、倒したことでどこかで復活するとか? 考えただけで、嫌だね。

でも、蛇単体と考えればブラックバイパーに近い。

「フィナが欲しいなら、お願いして、もらっておくけど」

頼めば頭の一つぐらいはもらえるかもしれない。

でも、フィナの返答は「い、いらないです」だった。

どうやら、おみやげにはならないみたいだ。

わたしも蛇なんていらないので、放置かな。カガリさんの尻尾みたいにふかふかの毛皮だったら欲しかったけど。

「お主、なぜ妾のお尻をみる?」

どうやら見ていたのを気付かれたらしい。

「それで、わしたちは帰ってもよいか。そろそろ夕食の時間だしな」

「あっ、わたしもお母さんのお手伝いしないと」

なんか、緊張感がない会話が聞こえてくる。

2人とも大蛇と戦ってくるなんて、言ってきてないだろうし、帰らないとダメなのかもしれない。

「それじゃ、フィナ。わたしたちも帰ろうか」

「だから、帰るなと言っておる。お主に帰られたら、妾が困る。絶対に逃がさんぞ。もし、帰ると言うなら、妾も付いていくぞ」

カガリさんが怒る。子供が駄々をこねているように見える。

自然な流れで帰れると思ったけど、ダメだったみたいだ。

「ダメです。カガリ様までいなくなったら、わたしはどうしたらいいのですか!?」

確かに、サクラ1人に押し付けるのは可哀想だ。

「それなら、サクラも一緒に行くか?」

カガリさんは良いことを思いついたように言う。

「いったい、なんのことっすか?」

1人? フィナを入れれば2人はわたしたちの会話が分からないのがいる。

シノブにわたしとムムルートさんはこのまま帰りたい旨を伝える。

「ああ、帰られたら、困るっすね。国王陛下に怒られるっす。主にわたしが」

この中で国王が叱ることができるのはシノブだけかもしれない。

「そうだ。いっそのこと、シノブが倒したことにすればいいんじゃない?」

「ちょ、なんでそうなるっすか!?」

「シノブ、英雄になれるよ。人気者になれるよ。今なら、大蛇の素材も付けるよ」

わたしはセールスマンのように言う。

「いらないっす! 英雄になんてなりたくないっす。自分は主の影っす。目立ってはいけないっす」

なにか、忍者っぽいセリフを吐き出した。あれだけ目立っておいて、今更感がある。

「確かにそうじゃな。シノブが倒したことにすれば、丸く収まるな」

わたしの案にカガリさんも乗ってくる。

「なっ、カガリ様まで、何を言うんすか。自分、気を失っていて、目を覚ましたら、全てが終わっていたっすよ。どうやって倒したかなんて、説明することなんてできないっす!」

「そんなの口裏を合わせればいいだけじゃ」

「ダメっす! イヤっす! 絶対に断るっす!」

世の中には他人の手柄を自分のようにする人もいるのに、シノブは違うみたいだ。

まあ、大きな手柄は自分の身の丈を超えれば、扱えなくなるからね。

「それじゃ、そうじゃのう。ここはスオウに契約魔法をさせて、全てを話すしかないな」

「国王陛下に契約魔法っすか?」

「ふふ、あやつの弱みは握っておるからのう。そのぐらいは可能じゃ。ユナもムムルートもそれでいいな。大騒ぎにさせないことを約束させる。だから、もう少し付き合え」

国王に契約魔法。確かにできれば、いろいろと口止めができる。でも、国王だよ。普通に考えれば、危険かもしれない契約魔法なんて、しないと思うけど。

「でも、国王が断ったらどうするの?」

「そのときは、妾を含めて、この国を出る」

「カガリ様!」

「妾がこの国に残る理由はなくなったからな」

「そんな」

「だから、あくまでスオウ次第じゃ。ほれ、シノブ。あやつに連絡しろ」

「待ってくださいっす。実は魔物と戦う前にピースケを国王陛下に連絡に行かせたっすから、すぐにはできないっすよ」

シノブがポケットから、なにかを取り出す。

それを口に咥えると吹く。

笛?

「これで、しばらくしたら、ピースケが戻ってくるっす。そしたら、あらためて国王陛下に連絡するっす」

「ピースケって?」

「シノブの鳥の名前です」

どうやら、鳥笛だったみたいだ。