軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

465 クマさん、ムムルートさんに連絡をする

―――― サクラ視点 ――――

封印をする魔法陣と封印を強化する魔法陣が描かれた絨毯が用意される。

「本当にこのようなものでできるのですか?」

「簡易版だが大丈夫だ。ただ、問題があるとしたら、魔力を注ぎ続けなければならないことだ」

なんでも、魔法陣を発動し続けるには、魔力を込め続けないといけないとのことです。

でも、ムムルート様が言うには複数の魔法使いを集めれば大丈夫だと言います。魔力の量次第で、時間を稼ぐことができます。

伯父さまに伝えれば魔法使いを集めることはできます。一時的に封印を強化して、その間に大蛇の頭を一つずつ倒すことができれば国は救われます。希望がでてきました。

「だが、問題はある」

「問題ですか?」

「封印を強化する魔法陣が3つしかない」

大蛇の封印の場所は体を含めると5つあります。でも、頭は4つですから、3つでいいのでは?

ですが、ムムルート様が言うには体を封印している箇所が一番大切なのだということです。

頭が復活し、それが胴体に伝わって、他の頭に魔力などが伝わり、連鎖的に復活すると言います。

胴体を抑えつつ、他の頭も抑えないといけません。

そうなると、最悪、大蛇の頭2つと戦うことになります。でも、体をふくめ、頭4つと戦うよりはいいはずです。

「サクラ。お主は国王の姪だと言っていたな」

「はい。今は巫女という立場ですが」

「それは構わぬ。国王に伝えることができれば問題はない」

「お伝えすることはできますが」

「それじゃ、なにかあったときのために、この魔法陣の使い方をお主に説明しておく」

「わたしにですか!?」

「お主は、なにかしたいのだろう。もし、わしになにかあれば、誰かがお主たちの国に伝えなければならない」

「……」

なにか、あったとき。その言葉を聞いたとき、夢で見たことが思い出されます。皆が死ぬ光景が。

そうです。まだ、大蛇を倒せると決まったわけではありません。何が起きるか分かりません。

「分かりました。ムムルート様、わたしに魔法陣の使い方を教えてください」

ムムルート様は魔法陣を広げると、魔石を乗せて、魔法陣の使い方を教えてくれます。

「こんな大きな魔石まで」

「あとで、請求するから気にしないでいい」

「はい、必ずわたしが国王にお伝えしますので、あとで請求してください」

両親が遺した財産を全て渡してでも、恩に応えるつもりです。

わたしが真剣に応えると、ムムルート様は笑いだします。

「冗談だ。いらんよ」

「ですが」

「これは、わしが昔にやり残したことをやるだけだ。だから、気にするな。カガリに会わせてくれただけでも感謝だよ」

「……ムムルート様」

「時間がない。一度しかしないから、しっかりと覚えるのだぞ」

「はい」

わたしはムムルート様から魔法陣の扱いを教わりました。

そして、魔法陣の絨毯を片づけ、アイテム袋に仕舞う。あとは戻るだけです。

家を出たとき、ルイミンさんが持つ可愛らしいクマの形をした人形が「くぅ~ん、くぅ~ん」と鳴き出します。遠くの人と会話ができる魔道具です。

ルイミンさんが一瞬慌てますが、すぐに手の平に乗せます。

すると、ユナさんの声がしてきました。

―――― ユナ視点 ――――

ワイバーンを倒し、もう一体のワイバーンがいる建物に視線を向ける。

シノブが命を賭けて守ろうとした封印がある建物は崩れ落ち、建物の中ではワイバーンが暴れている。

間に合わないかもしれないけど、このままにしておくわけにはいかない。

「もう少し待っていて」

気を失っているシノブに声をかけてから、建物に向かって走る。わたしは崩れかけている建物に入る。床は崩れ落ち、地下にはワイバーンがいる。

ワイバーンは魔法陣に吸い寄せられるように魔法陣の上で暴れている。

魔法陣は赤黒く点滅している。

分かっていたことだけど、封印が壊されている。

でも、その魔法陣はシノブが命をかけて守ろうとしたものだ。魔法陣の上で暴れていいものじゃない。

わたしは地下に飛び降りると、クマ魔法とミスリルナイフを使って、暴れるワイバーンを倒す。ワイバーンは魔法陣の上に倒れ、血が流れ、地面に染み込む。

魔法陣の一部は壊れ、赤黒く点滅し、目のようなものが動く。さきほど、カガリさんが抑え込んだのに、目を覚ましている。

守れなかった。

わたしがそう理解したとき、地面が揺れる。

復活する? と思ったが、揺れはすぐに収まる。

まだ、猶予がある?

だけど、また地面が揺れだし、建物が地下に崩れ落ちてくる。

わたしはすぐに地下から脱出する。

大蛇が復活する兆しなのは間違いない。ただ、時間がどれほどある?

他の場所は? ムムルートさんは?

確認するため、クマフォンを取り出すと、クマフォンが鳴り出す。わたしはクマフォンに魔力を流すと、すぐにカガリさんの声がしてくる。

『嬢ちゃん、どうなってる! さっきの揺れはなんじゃ!? まさか、大蛇が復活したのか?』

「ごめん、間に合わなかった。たぶん、復活する」

『なんじゃと』

わたしが、手間取ったせいだ。

カガリさんにクマフォンを渡さずに、すぐにシノブのところに向かっていれば防げたかもしれなかった。

くまゆるとくまきゅうとのんびりと会話をしていなければ。

もっと、早く、自分が担当した場所の魔物を倒していたら。

いや、一番初めにシノブとカガリさんにクマフォンを渡しておけば、こんなことにはならなかった。

もっと、考えて行動するべきだった。完全にわたしのミスだ。

『ムムルートはどうした? あやつは戻ってきていないのか』

「今から、確認する」

わたしはカガリさんとの通話を切り、ルイミンの持つクマフォンに通話する。

『ユナさん?』

「ルイミン、そっちはどうなっている?」

『準備が終わって、そっちに向かうところです』

「それじゃ、急いでこっちに来て! ワイバーンによって、封印の一つが破られた。大蛇が復活しようとしている」

『…………!』

わたしが簡単に説明すると、クマフォンから声は聞こえないけど、驚いたことが伝わってくる。

『ユナ様! みんなは大丈夫なんですか!?』

話を聞いていたと思われるサクラの声がしてくる。

「シノブがワイバーンと戦って、気を失ったけど。大丈夫だよ」

『シノブが……』

『嬢ちゃん。まだ、封印が解かれたのは一つなんだな』

「うん」

『なら、少しでも時間を稼ぐ。今から向かうから、扉を開けておいてくれ』

「わかった。急いで来て」

クマフォンの通話を切る。

地面が、また揺れる。今度は大きい。地面がヒビ割れる。

わたしはシノブを抱きかかえて、その場を離れる。

復活はもう少し待ってほしい。

お願いだ。

願いが通じたのか揺れがとまる。

少し離れた位置にやってくると、シノブを地面に置き、クマの転移門を取りだす。そして、エルフの森へと扉を開けてムムルートさんを待つ。

わたしはムムルートさんがやってくるまでの間に、怪我をしているシノブの治療をする。傷ついた顔にクマさんパペットを当て、擦り傷を治し、血を拭いてあげる。顔が綺麗になる。

次に血が滲んでいる左肩の服をナイフで切る。服の下から鎖かたびらが出てくる。どうやら、鎖かたびらのおかげで致命傷にはならなかったみたいだ。

わたしは鎖かたびらの上から、傷ついた左肩の傷を塞ぐ。出血はこれで止まった。これで出血で死ぬってことはないはず。他の血が流れているところも治療する。

シノブはチートでもなんでもない、普通の女の子だ。

シノブは傷付きながらもワイバーンを倒している。この年齢でワイバーンを倒すって、凄いことだと思う。もし、このまま強くなったら、かなりの実力者になる。

天才って、きっとシノブのことを言うんだろうね。

そして、シノブの治療が終わるころ、扉からムムルートさん、ルイミン、サクラの声がしたと思ったら、三人がこちらにやってくる。

サクラは地面に倒れているシノブに気づく。

「シノブ!」

サクラが駆け寄ってくる。

「さっきも言ったけど、気を失っているだけだから」

「でも、こんなに血が」

破いた血が付いた服を見て、うろたえる。

「応急処置をやっておいたから、大丈夫だよ」

「本当ですか?」

サクラはシノブの手を握って、安堵の顔を浮かべる。

その瞬間、また大きく、地面が揺れる。

「揺れています」

ルイミンがバランスを崩す。

そんなとき、カガリさんが尻尾を揺らして、やってくるのが見えた。

「なんじゃ、ムムルート。戻ってきていたのか?」

「今、来たところだ」

「それで、結界の強化のほうはどうなっている」

「準備はしてきた。ただ、問題がある。準備ができた封印を強化できる魔法陣は三ヶ所分」

「三ヶ所だと?」

大蛇は体を含めて、五ヶ所ある。

でも、頭を3つ抑えれば。

「えっと、頭が4つだから、3つでいいのでは?」

「体を抑えないとダメだ。頭が1つ復活すれば、胴体を辿って他の頭も復活する。胴体だけは絶対に封印の強化をしないとダメだ。時間があれば、手作業で他の場所もできたんだが」

「時間など、ないぞ! 最悪、二つの頭と戦わないといかぬか」

「こんなに早く、封印が解かれるとは思っていなかった」

「ごめん」

全てわたしのせいだ。

もっと、やりようがあった。

「別に嬢ちゃんのせいじゃなかろう。元々、時間が迫っていたのじゃ」

「それと、問題がもう一つ」

「なんじゃ」

「魔法陣を発動させる魔法使いが足らん。まだ、猶予があると思っていたから、この国の魔法使いに手伝ってもらうつもりだった」

ここにはわたし、カガリさん、ムムルートさんの3人しかいない。

「時間がない。妾たちでやるしかないじゃろう」

「ダメだ。魔法陣を発動させるには魔力を注ぎ続けなければならない。大蛇が復活したら、どうする!? 戦えるのは嬢ちゃんとカガリ、お前たちしかいないんだぞ」

ムムルートさんの言う通り大蛇と戦う人物も必要になる。もちろん、わたし、カガリさん、できればムムルートさん。封印を強化する魔法陣を発動させる人物が誰もいない。

「そんな使えない魔法陣なんぞ。用意しよって」

「だから、一時的と言っただろう。それだって、この国の魔法使いが数人いれば、できると思っていた」

あと、数日。いや、一日あれば、国王に話して、魔法使いを集めることができた。

でも、今はその時間がない。

話している間も地面が揺れる。徐々にその揺れは大きくなっていく。

いつ復活してもおかしくはない。

「わたしがします」

黙って話を聞いていたサクラが真剣な眼差しでわたしたちを見る。