軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

463 クマさんとシノブのそれぞれの戦い

わたしは確実にヴォルガラスとワイバーンを倒していく。

たまに探知スキルを使って他の場所も確認する。

状況把握は大切だ。今更だけど、契約魔法をしたのだから、全員にクマフォンを渡しておけばよかったかもしれない。

そうすれば、もしなにかあってもすぐに連絡することができた。

魔物が現れたことで、封印を守ることや、魔物を倒すことばかりに頭がいって、そこまで頭が回っていなかった。

探知スキルで状況を確認すると、くまゆるとくまきゅうのところは順調にヴォルガラスとワイバーンの数が減っている。

ちゃんと、仲良く戦っているのかな?

少し不安になるけど、喧嘩をする子たちではないので、大丈夫だと思う。

でも、心配なので、早く片づけて駆けつけたい。

カガリさんが向かった封印の場所も、魔物の数を減らしている。

流石、昔にムムルートさんと一緒に大蛇と戦っただけのことはある。

強い人の戦いって、あまり見たことがない。カガリさんが戦っているところ見てみたかったな。

そして、もう一ヶ所。シノブが向かった場所。

シノブが向かった場所はヴォルガラスの数は多かったが、ワイバーンはいなかった。だから、シノブがわたしたちとは反対側の場所を選んだとき、なにも言わなかった。

だけど、今、探知スキルで確認すると、ワイバーンの反応があった。

シノブの実力はジュウベイさんとの戦いで見た。クリモニアでわたしに喧嘩をふっかけてきた、デボなんとかの冒険者よりは間違いなく強い。

でも、ワイバーンと戦える実力があるかまでは分からない。

ただ、シノブがワイバーンを見たときの反応を見れば、戦えるっぽかった。ワイバーンを見ても弱気な言葉はなかったから、多分戦えると思う。

今はシノブの実力を信じて、封印がある建物を守る。

それにしても、建物に張り付くのはやめてくれないかな。

わたしは建物の中に入ろうとするヴォルガラスを空気弾で弾き飛ばし、建物から離れたところでクマ魔法で確実に倒す。

たまに、建物に空気弾が当たって、建物が壊れてしまったりしたけど、仕方ないよね?

―――― シノブ視点 ――――

「はぁ、はぁ」

建物は半壊し、ワイバーン一体の片翼は斬り落とし、地面に叩き落とした。とどめを刺したいが、他のワイバーンが邪魔をする。

一体は空を飛び、もう一体はわたしに片目を潰されて、目の前でわたしを睨むように唸っている。

これはきついっすね。

1体ぐらいなら戦える自信はあった。でも、3体同時にワイバーンを相手にして、ヴォルガラスまでとなると、わたし1人じゃキツイ。

攻撃は避けているので致命傷はないけど、体のあちこちから血が流れている。

助けは絶望的っすかね。

初めはカガリ様やユナが助けに来てくれるかと思ったりしたが、他の場所でも同様に戦っていることを考えると、難しいかもしれない。

初めのうちはワイバーンの攻撃はかわしていた。

でも、何度も走り、何度も高く跳べば運動量は多くなる。

休みたいけど、相手は休ませてくれない。

体の疲労も激しいが、魔法で攻撃を仕掛けたり、攻撃を防いだりするようになり、魔力もかなり消耗している。

もう少し、鍛練をしておけばよかったっすね。

今さら悔やんでも仕方ない。生き残ったら、真面目に鍛練をすることを決める。それには、この場にいる魔物を倒し、封印を守らないといけない。

もう少し頑張るっすか。

わたしは血が付いた短刀を握りしめ、怒り狂っている片目のワイバーンの相手をする。ワイバーンはわたしを見て、唸っている。

そんなに怒らないでほしいっす。

まあ、自分が目を潰されたら、怒るか、逃げるかのどちらかだと思う。

できれば、ワイバーンは後者であってほしかった。

わたしは懐からクナイを数本だし、魔力を込める。そして、ワイバーンの死角になるほうから走り出す。

師匠相手に戦った経験から、死角からの攻撃は有効的だ。

クナイをワイバーンに向かって投げる。ワイバーンは翼を羽ばたかせ、数本のクナイを落とすが、全てを防ぐことはできず、数本のクナイは体に刺さる。だが、ワイバーンの動きは止まらない。

倒れてほしいっす。

風の魔法を飛ばし、牽制しながら片目のワイバーンを相手にしていると、後ろから衝撃を受ける。

なに!?

左肩に激痛が走り、自分になにが起きたのか、すぐに理解する。

空を飛んでいたワイバーンに、後ろから襲われたのだ。

目の前のワイバーンに集中し過ぎて、空を飛んでいるワイバーンから注意を逸らしてしまった。他のワイバーンのことを、一時的にでも忘れたわたしの頭を殴ってやりたい。

ワイバーンに肩を掴まれたわたしの体が浮かぶ。

やばいっす。

体を動かすが、ワイバーンの爪が肩に食い込んで逃げることができない。それに体を動かすと摑まれている左肩に激痛が走る。鎖かたびらを着ているおかげで、奥まで食い込んでいないのがせめてもの救いだけど、痛いのには変わりない。

さらにワイバーンの爪に力が入る。歯を食いしばって耐える。

「お、女の子の柔らかい肩をそんな強く摑むもんじゃないっすよ。女の子の肩は優しく抱き寄せるものっす。そんなことをしたら、女の子に嫌われるっすよ」

ワイバーンが 雄(オス) なのか 雌(メス) なのか分からないけど、教えておく。

わたしは右手に握っている短刀で、肩を摑んでいるワイバーンの足を斬る。

ワイバーンの悲鳴とともに、肩を摑む爪が緩む。落ちそうになるが、ワイバーンの足を摑み、腕を伸ばして下腹を切り裂く。

ワイバーンは激しく暴れ、振り落とされる。

高さは建物より、高い。

地面に落ちる瞬間、風魔法を使って、上手く衝撃が和らぐように着地する。でも、着地の衝撃で左肩に痛みが走る。

「うぅ」

痛い。

上を見ると足と腹を斬られたワイバーンが逃げていく。

残りは片目を失ったワイバーン、片翼を失って、怒っているワイバーンだけになる。

片翼のワイバーンはわたしが肩を押さえて、ジッとしていると、獲物を見つけたように走ってくる。

少しは休ませてほしいっすよ。

重い足に力を入れ、ナイフを構える。

ワイバーンは長い首を伸ばして、口を開く。

わたしはギリギリでかわし、短刀で喉笛を斬る。

ワイバーンの首を斬ることはできたが、ワイバーンの勢いは止まらず、弾き飛ばされ、地面に転がる。

体が痛い。

でも、これであと一体っす。

わたしは戦うために立ち上がろうとするが、足、腕に、力が入らない。

足が震える。わたしは力が入らない腕で、足を叩いて、足の震えを止める。

もう少し、動いてほしいっす。

もう一度、足に力を入れて立ち上がる。

どうにか、立ち上がることができたが、足に力が入らない。

膝を叩くと、少しは動くようになった。

あと、もう少しは動けそうだ。

わたしは額から流れる血を拭きとり、空で旋回している片目のワイバーンを見上げる。

どこかに行ってくれると助かるけど、行ってくれそうもない。

建物の上を中心に回っている。

やっぱり、目当ては封印っすかね?

せめて、誰かが来てくれるまで、空を飛んでいてほしいっす。

そんな願いは聞き届けられることはなく。ワイバーンは建物に向かって降りてくる。

悲鳴を上げる体を動かして走る。

封印は壊させないっす。

短刀に魔力を流しながら風の刃を飛ばす。威力はないがワイバーンに命中する。

風の刃が当たったワイバーンは建物ではなく、目標をわたしに変える。

自分でワイバーンを呼び寄せて、自分を危険な状態にするのは、馬鹿な人だけっすよね。

わたしに魔力は残されていない。

足に力を入れて、短刀を構える。

これで、最後っす。

わたしはワイバーンの突進の直撃を受ける。

それと同時にもう片方の目に短刀を突き刺す。これで両目を潰した。

暴れるワイバーンの、無造作に開く口がわたしの腕を噛もうとする。

残り少ない魔力を短刀に集めて、ワイバーンの口を切り裂く。

これが致命傷になる。

……倒した。

だけど、空中から降りてきたワイバーンの勢いは止まらず、弾き飛ばされ、地面に転がる。

地面に仰向けに倒れる。

空が青い。

もう、動けないっす。

でも、封印は守った。

もう、休んでいいっすよね。

このまま目を閉じようとしたとき、黒い影が通る。

ワイバーン。

夢であってほしかった。このまま、見なかったことにして、目を閉じたかった。

でも、そうはいかない。

ここで封印が解かれたら終わりだ。

ユナが来て、ムムルートさんが来て、大蛇に対抗する手段が見えてきた。希望が見えた。

それにはムムルートさんが戻ってくるまで、封印を守らないといけない。

他のみんなも封印を守るために戦っている。

体を起こそうとする。

体の全てが悲鳴をあげる。

短刀を持つ手も力が入らない。

わたしは体を半回転させ、うつ伏せになり、腕に力を入れて、立ち上がる。

ワイバーンが降りてくる。

1体はわたしに、もう1体は封印がある建物。

でも、今のわたしには立つのが精一杯だった。ワイバーンと戦う力は残っていない。

一体が建物を壊し、建物の中に入るのを見ていることしかできなかった。

そして、もう一体がわたしに襲いかかってくる。

封印も守れず。自分もここまでっすか。

短い人生だったけど、楽しかったっす。

心残りは封印を守れなかったことだ。

サクラ様、ごめんなさいっす。

ワイバーンが迫ってくる。

わたしは全てを受け入れるため、目を閉じた。

その瞬間、大きなぶつかる音がした。

何が起きたかと思って目を開けると、そこには可愛いクマの格好をした女の子がいた。

「シノブ、大丈夫?」

ユナが声をかけてきた。