軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

459 クマさん、封印を守る

封印されている場所に向かって走っていると、くまゆるに乗っているカガリさんが上を見て声をあげる。

「あれは、ワイバーンか?」

空にはワイバーンが何かを探しているように旋回している。

「それも一体じゃないっす」

探知スキル範囲内だけでも、10体はいる。

「それにあの小さい黒い鳥のようなものはなんっすか?」

「あれはヴォルガラスじゃな」

遠くで肉眼では黒いカラスのような鳥が飛んでいるようにしか見えないけど、カガリさんの目にはちゃんとヴォルガラスを認識できるみたいだ。狐って目がいいのかな? それともカガリさんだから?

「数が多いっすよ」

どこから来たのか、ヴォルガラスの群れが島に集まってきている。探知スキルにはワイバーンの数倍以上の反応がある。

「ワイバーンと争っている感じっすね」

空ではワイバーンとヴォルガラスが縄張り争いのように威嚇し合っているようにも見える。ワイバーンとヴォルガラスは争いながら大蛇が封印された場所に移動している。

「くぅ~ん」

くまゆるとくまきゅうが止まる。

「なんじゃ、クマはなんて言っておる?」

「それぞれの封印の場所に魔物が集まっているから、どっちに向かうのって」

「5ヶ所全てか!?」

「理由は分からないけど、頭が封印されているところだけみたい」

探知スキルで確認したが、体が封印されているところには集まっていない。

「食糧かのう」

それはわたしも思った。

「食糧と言っても、封印されているんじゃ食べることなんてできないっすよ」

「封印が解かれるのが近付いているのかもしれぬ」

「あと数日はあるんじゃ?」

封印が解かれるのは近付いていたが、わたしが来ていきなりだ。

わたしのせいじゃないよね?

でも、カガリさんの口から出た言葉は違った。

「ムムルートのせいかもしれぬ。あやつが封印を確認したとき、大蛇の目がムムルートを向いていたような気がした」

あの気持ち悪い目か。思い返すと、確かにムムルートさんに反応していたような気がする。

「考えられることは、大蛇があやつの魔力に反応したのかもしれない。自分を長年封印した魔力と同じ者が来た。もしかすると、封印の中では怒り狂っているのかも知れぬ。その影響で封印が弱まり、魔物を呼び寄せた」

カガリさんは魔物が島にやってきた可能性の1つを言う。

「それじゃ、ムムルートさんが来なければ、魔物は来なかったっすか!?」

「それは解らぬ。でも、遅かれ早かれ、封印は解かれることになっていた。それが早まっただけじゃ」

「そんな簡単に言うっすが、準備もなにもしていないっすよ」

「ムムルートが来なければ、封印強化の話もなかった。どっちでも同じじゃ。それなら、やってきた魔物を討伐して、封印を守り、ムムルートに封印の強化を頼めばいいだけじゃ」

簡単に言うが、カガリさんの言う通りだ。

ムムルートさんが居なければ封印強化の話は無く、対応策もないまま封印が解かれるのを待つだけだった。

でも、ムムルートさんのおかげで封印の一時的強化をすることができるようになった。

デメリットもあるが、全体的に見ればメリットのほうが大きい。

ただ、それにはここにいるわたしたちだけで、集まってくるワイバーンとヴォルガラスを討伐して封印を守らなければならない。

「だが、4ヶ所となると面倒じゃな。妾たちは3人しかおらぬ」

カガリさんはわたしとシノブに視線を向ける。

わたしの実力も知らないのに、ちゃんと戦力の1人に入っている。

サクラとムムルートさんの言葉を信じたのかな?

「もしかして、1人でワイバーンとヴォルガラスと戦うっすか?」

シノブは嫌そうな表情をする。

「戦わなければ封印が解かれ、大蛇が復活することになる」

「そうっすが、4ヶ所もどうするっすか。1人一ヶ所守るとしても、3人じゃ守れないっすよ」

「だから、困っておる。だが、考えている時間はない。終わった者が駆けつけるしかないじゃろう」

「「くぅ~ん」」

シノブとカガリさんの言葉にくまゆるとくまきゅうが鳴く。

「なんじゃ?」

「自分たちがいるって」

くまゆるとくまきゅうを1人と考えれば、4ヶ所守ることができる。魔物はヴォルガラスとワイバーン。過去に、くまゆるは戦ったことがある相手だ。戦えない相手ではない。

くまゆるとくまきゅうと離れるのは不安だけど、今は大蛇の復活だけは阻止をしないといけない。

「右側の二つはわたしとくまゆるとくまきゅうが受け持つよ」

近くなら、すぐに駆けつけることができる。

「クマを戦わせるのか?」

「普通の魔物程度なら、問題はないよ」

「普通の魔物って、ワイバーンっすよ」

「過去にワイバーンと戦ったことがあるから大丈夫だよ。それにわたしのほうを片付けたら、すぐに駆けつけるよ」

さっさと倒して、くまゆるとくまきゅうに合流すればいいだけだ。

「まあ、このクマが戦えると言うなら、任せるしかないじゃろう。今は時間がない」

「そうっすね。考えても人数が増えるわけじゃないっす。今は一刻も早く魔物を討伐するべきっすね。それじゃ、わたしは一番左側に行くっすね」

シノブはくまきゅうから飛び降りると、もの凄い速さで走っていく。

忍者っぽい。

「なら、妾は残った左から二番目じゃな。くまゆるとくまきゅうじゃったな。妾のほうが早く片付いたら駆けつけるゆえ、無理はするのでないぞ」

カガリさんはくまゆるとくまきゅうに声をかけてから、走り出す。

後ろ姿の服の下から尻尾が揺れていた。

「くまゆる、くまきゅう。ヴォルガラスとワイバーンがいるけど、ヴォルガラスの嘴の毒には気を付けるんだよ。ワイバーンの爪も鋭いからね。2人で協力し合って戦うんだよ」

「「くぅ~ん」」

「それから……」

わたしが心配そうにすると、くまゆるとくまきゅうの首にあるリボンが光りだす。

クマモナイト?

2人は「クマモナイトがあるから大丈夫だよ」と言っているようだ。

「強くなったのは分かるけど、無理はしちゃダメだよ」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうが「分かっているよ」って感じに鳴く。

親が子を心配する気持ちだ。

「わたしのほうを片づけたら、すぐに駆けつけるから」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは返事をすると仲良く走って行く。

最後、残ったわたしも自分が担当の封印の場所へと向かう。

くまゆるとくまきゅうにはすぐに駆け付けると言ったけど、わたしの場所が、一番多く魔物が集まっている。流石に探知スキルで見て、魔物が一番少ない場所を選ぶことはできなかった。シノブとカガリさんの実力も分からない状況で、押し付けるわけにもいかなかったし、わたしが受け持つことにした。

封印の場所にやってくると、建物に群がるヴォルガラスとワイバーンが飛んでいる姿があった。

自分で選んだとはいえ、貧乏くじだよね。

わたしが現れると、ヴォルガラスは特徴である赤い嘴を開けて、鳴き始める。

数十羽のヴォルガラスが一斉に鳴くと、うるさい。

わたしは黙らせるため、風の刃を飛ばす。

それが合図となり、戦いが始まる。

ヴォルガラスはわたしを敵と認識して、襲いかかってくる。さらにそこにワイバーンまでもが参加する。ワイバーンの数は4体。ヴォルガラスも含め一番わたしのところが多い。

でも、ワイバーンの2体は上空に飛んでいるだけなので、他に行く可能性もある。

本当なら、全てわたしに引き付けたいが、上空にいるワイバーンはどこにも行かないように願う。

わたしは地上付近にいるヴォルガラスとワイバーンが建物に近付かないように気を引きつつ、ヴォルガラスを風の刃で倒していく。

建物に気を使わないといけないから、少し面倒な戦いになる。

建物になにかあり、封印が解けでもしたら大変なことになる。

わたしは封印がある建物に気を付けながら、ヴォルガラスを倒していく。時折、近くにいるワイバーンに攻撃を仕掛け、わたしに引き付ける。

ただ、やっぱりと言うべきか、ヴォルガラスもワイバーンも建物から離れようとはしない。

建物から引き離しても、他のヴォルガラスとワイバーンが建物の縄張り争いを始める。

建物を気にしなくていいなら、大型魔法で一掃するのに。

建物に集まってくるヴォルガラスを風の刃で対処していると、ヴォルガラスの後ろでワイバーンが翼を羽ばたかせ、風の刃を飛ばしてくる。

ヴォルガラスともどもわたしに攻撃を仕掛けてきた。

わたしは土の壁を出して、防ぐ。土の壁で見えない先ではワイバーンの攻撃でヴォルガラスが地面に落ちる音がする。わたしはくまゆるナイフとくまきゅうナイフを握り締め、壁の横から飛び出す。

ワイバーンは出てきたわたしに向かって、風の刃を飛ばしてくる。わたしは左右に体を振り、風の刃をかわす。地面に風の刃の跡が刻まれる。

一気にワイバーンとの間合いを詰め、くまゆるナイフとくまきゅうナイフで斬る。

まずは一体。

そう思ったとき、建物の近くで別のヴォルガラスとワイバーンが争い、ワイバーンの攻撃が建物に当たり、一部を破壊する。

「ちょっ」

わたしはとっさに空気弾を放って、建物からワイバーンを離すが、別のワイバーンがヴォルガラスに代わって、建物の屋根の上に立つ。

まるで、ここは自分のものだと言わんばかりに、大きな声で鳴く。

封印にどんな影響が起きるか分からない今、これ以上建物に衝撃を与えたくない。だけど、魔物を一刻も早く討伐して、くまゆるとくまきゅうのところに向かいたい。