軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

458 クマさん、大蛇、復活の兆しを感じる

わたしたちは5つ目の封印の確認を終える。それぞれの封印の距離のことを考えると、大蛇はかなり大きい。

クラーケン並みと考えたほうがいいかもしれない。

「それでムムルート、封印の一時的強化は可能か?」

全ての封印の確認を終えたムムルートさんにカガリさんが尋ねる。

「魔法陣の設置、それに必要な魔石があれば一時的な強化は可能だ。だが、先ほども言ったが、どれほど時間が稼げるかは分からない」

「ふふ、1や2が少しでも増えれば、御の字じゃな。それが0じゃないことを祈るだけじゃ」

確かに0では討伐できる可能性は低くなる。でも、封印できる時間を少しでも稼ぐことができれば、討伐できる可能性も高くなる。

「わしは村に戻って準備をしてきたいが、嬢ちゃん、頼んでいいか?」

わたしはクマの転移門を出し、エルフの村に向けて扉を開ける。

「それじゃ、行ってくる」

「頼む」

「わたしも、お爺ちゃんのお手伝いをしてきますね」

ルイミンがムムルートさんの後を追いかけようとすると、サクラが声をかける。

「ルイミンさん。お会いできて嬉しかったです。その、また、来てくれますか?」

ルイミンがチラッとわたしのほうを見る。

「そうだね。大蛇の件が落ち着いたら、ルイミンを連れてくるよ」

わたしの言葉にサクラは嬉しそうにする。

「ルイミン。扉は一度閉めるから、準備ができたら連絡をちょうだい」

「分かりました」

ムムルートさんを先頭にクマの転移門の中に入っていく。ルイミンはサクラに向かって小さく手を振る。サクラも手を振り返す。2人が移動するのを確認するとわたしは扉を閉じて、クマの転移門を仕舞う。

「本当に不思議な扉です」

「本当じゃ、妾にも扉を開けることができれば、欲しいぐらいじゃ」

「わたししか開けられないからね」

正確にはクマさんパペットじゃないと開けられない。

「それじゃ、開けっ放しにしておけばいいんじゃないっすか?」

「開けっ放しは魔力を消耗するから、無理だよ」

「まあ、これだけのことじゃ、魔力も相当消耗するじゃろう」

「残念っす」

まあ、実際は力の消耗は大きくないが、無期限で開けっ放しはできない。

「それじゃ、妾たちも行動に移すことにしようか。シノブ。おまえさんはサクラを連れて戻れ。そして、今回のことをスオウに報告に行け」

「了解っす。でも、報告はどうするっすか? 国王陛下にムムルートさんが強化結界を張ってくれることの説明をするっすよね? でも、移動できる扉のことは秘密っすよね。ムムルートさんがここに居る説明ができないっす。扉のことを話したら、わたし死んじゃうっすから」

「確かに、そうじゃな」

カガリさんは先ほどまであったクマの転移門の場所を見る。

確かにムムルートさんが強化結界を張るなら、国王に報告は必要になる。いつ戦うか。戦力はどうするか? どうやって戦うか、どれもわたしたちだけでは決められないことばかりだ。

国によっての大掛かりな戦いになる。

ただ、大蛇との戦いで、どれほどの戦力になるかが問題だ。

わたしとしては、戦力になるならいいけど、足手まといになるなら、いないほうがいいと思っている。

目の前で人が死ぬところは見たくない。だからと言って、わたし1人で戦うわけにもいかない。

最悪の場合、本当に船で誘導して、国から離すしかないのかもしれない。もしかすると、誰も住んでいない未開の地に行ってくれるかもしれない。

「とりあえずは、ムムルートのことは偶然に来たってことにしとけ」

カガリさんは考えるのが面倒になったのか適当なことを言う。

実際問題、契約魔法のことを考えると、ムムルートさんのことを説明するのは難しい。

「そっちのクマの嬢ちゃんも偶然にこの国に来たのじゃろう。そのぐらいの偶然が重なったとしても、問題はないじゃろう。もしくは絶世の美女の妾に数百年ぶりに会いたくなったとでも、言っておけ」

確かに、カガリさんは美人だけど。自分で言うのは凄いね。いろいろな人から、何度も言われているんだろうね。わたしには遠い世界の話だ。

わたしは自分の胸とカガリさんの胸を比べる。

やっぱり、男は大きな胸が好きなのかもしれない。

「それじゃ、もし問い詰められたら、カガリ様が説明してくださいっすよ」

「とりあえず、ムムルートのことはスオウだけに伝えておけ。奴を言いくるめておけば、なんとでもなる。あやつの弱みの100個や200個、知っておるから、安心しろ」

それって、安心していいのかな?

それに100個や200個って、国王、弱味を握られ過ぎだよ。

でも、国王の小さいときから知っているなら、そのぐらいあってもおかしくはないかもしれない。

そんな不安を残して、シノブとサクラは帰ることになる。

「それじゃ、送るよ」

ここにはくまゆるとくまきゅうに乗ってやってきた。帰るときもわたしが送らないといけない。

「申し訳ありません」

ムムルートさんが戻ってくるまでには、まだ時間がある。連絡があってから戻ってきても、遅くはない。

「それじゃ、サクラを送り届けてくるけど、すぐに戻ってくるよ」

「本当に不思議な嬢ちゃんじゃな。そんな変な格好しているのに」

「カガリさんだって、狐の格好しているから、格好についてはお互い様だよ」

「妾は本物の狐じゃ」

耳がピンと立つ。

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうが張り合うように鳴く。

「お主たちのことはクマじゃないとは思っておらん」

周りから笑いが起こる。

くまゆるとくまきゅうを見てクマじゃないと思う人はいないよね。

「ふふ、それじゃ、行こうか」

「妾も途中まで行こう」

サクラとシノブはくまきゅうに乗り、わたしとカガリさんはくまゆるに乗る。

「なかなかの乗り心地じゃな」

「くぅ~ん」

「なんじゃ?」

「当たり前だって」

「生意気なクマじゃのう。じゃが、モフモフなら、妾の尻尾に勝てないじゃろうがな」

「くぅ~ん」

「なんじゃと」

「くぅ~ん」

「妾のほうが上じゃ」

「くぅ~ん」

そんなくまゆるとカガリさんの言い合いを聞きながら、海岸沿いに向かう。

そして、海岸が見えてきたとき、くまゆるとくまきゅうが頭を上げて「「くぅ~~~ん」」と鳴く。

「なんですか!?」

くまきゅうに乗っているサクラが驚く。わたしはくまゆるとくまきゅうの反応を見て、すぐに探知スキルを使う。

ヴォルガラス?

探知スキルにヴォルガラスが周囲を飛んでいる。さらに離れた場所だけどワイバーンの反応まである。

タールグイのときといい。この世界、こんなにワイバーンがいるの?

そして、ワイバーンの反応以上より、別の表示に驚く。

これはなんなの?

大蛇の反応が、チカ……チカ……チカとゆっくりと点滅している。消えては表示され、消えては表示されている。

これって封印されているから? それとも封印が解けかけているの?

どっち?

今のわたしには判断できる材料は持ち合わせていないし、考えている時間がない。

「くまきゅう様、くまゆる様、どうかしたのですか?」

「魔物が近づいている」

「なんじゃと」

こっちには向かってきていないけど、どこかに集まっている感じがする。

「この方角は……」

大蛇が封印されている場所?

魔物が集まっている方角を見る。間違いなく大蛇の封印がされている場所だ。

「カガリさん、確認だけど。当時、大蛇が現れたとき、他の魔物も集まったりした?」

「ああ、確かに他の魔物も現れたな。まるで大蛇に引き寄せられるように集まっていた。大蛇は、自分に寄ってきた魔物を喰っておった」

もしかして、食事として魔物を呼び寄せている?

「どうしたんじゃ?」

「魔物が大蛇の封印箇所に集まっている」

「なんじゃと!?」

しかも、一か所だけじゃない。

嫌な予感しかしない。

今すぐに、魔物を討伐に向かったほうがいい。

でも、サクラをここに置いていくわけにはいかない。

くまきゅうに頼んで陸まで運んでもらう方法もあるが、海の上で襲われでもしたら、背中に乗せたままじゃ戦えないし、危険だ。

考えるまでもなく、安全な場所はクマの転移門の先だ。

「サクラは扉を使ってルイミンのところに向かって」

わたしは再度、クマの転移門を出して、エルフの村へと扉を開ける。

「ユナ様?」

いきなりのことでサクラは戸惑いを浮かべる。

「魔物を討伐して、安全が確認とれたら、送ってあげるから。今はごめん」

わたしは押し込む感じでサクラをクマの転移門の中に入れる。

「シノブは?」

「わたしも手伝うっす。ユナの話だと封印箇所に向かっているっすよね。それなら、少しでも手が多いほうがいいっすよ」

クマの転移門の先に行かせるのはサクラだけになった。

「ルイミンに迎えに行かせるから、そこから動かないでね」

「わ、わかりました。皆さん、無理はしないでください」

サクラも自分がここにいても足手まといになることが分かっているので、残るって馬鹿なことは言わなかった。

わたしは扉を閉め、クマフォンを取り出して、ルイミンに通話する。すぐにルイミンの声が聞こえてくる。

『ユナさん?』

「ルイミン、サクラをそっちに行かせたから、迎えに行って」

『なにかあったんですか?』

「魔物が集まってきたの。討伐するまでの間、安全確保のため、サクラをそっちに行かせたから」

『魔物が!?』

「もしかすると、封印が解ける前兆かもしれないから、ムムルートさんに準備を急いでもらって」

『分かりました』

クマフォンの通話を切る。

「それで、嬢ちゃん。魔物の状況は分かるのか?」

「一番始めに行った封印付近に集まっているみたい」

他も集まっているが、そこが一番集まっている。

「それじゃ、急いで向かうぞ」

わたしとカガリさんはくまゆるに乗って、シノブはくまきゅうに乗って駆け出す。

「くそ、ムムルートが来て、どうにかなると思った矢先に魔物が集まってくるとは」

「でも、ユナがいてくれたおかげで、魔物にすぐに気づけたっす。サクラ様も安全な場所に逃がすことができたっす。魔物の襲撃を防げばいいだけっすよ。そうすればムムルートさんが、封印の強化をしてくれるっす」

「そうじゃな。さっさと魔物を討伐すればいいだけじゃな」

わたしたちの目的は魔物を討伐する。

そして、ムムルートさんが封印の強化を行なって、わたしたちが大蛇の頭を一つずつ倒せばいいだけだ。