軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

429 クマさん、試合を終える

「うぅ、疲れました」

シアは地面に倒れながら、息を切らしている。

もう、下はスカートなんだから、危ないよ。近くにマリクスだっているんだから。

わたしは起きるように言って、コップに水を入れて渡してあげる。シアはお礼を言って、コクコクと水を飲む。

「ユナさんはわたしとマリクスと試合したのに、どうして、そんなに元気なんですか?」

「これでも冒険者だから、鍛えているからね」

はい、嘘です。

中身は鍛えていない貧弱ボディーです。太ってはいないけど、筋肉でなく脂肪です。二の腕とかぷよぷよです。クマ装備を脱げば、マリクスやシアみたいに動くことはできない。

「これでも、鍛えているんだけどな」

「わたしだって、鍛えているつもりだったよ」

マリクスのぼやきにシアも賛同する。

でも、ゲーム時代にはレベル上げとかして鍛えていた。だから、全てが嘘ではないはず?

「ユナさんが強いことは分かっていたけど。こんなに差があるとはな」

「剣だけで、この実力で。さらに魔法まで使えるんだよね」

「魔法ありの試合なんて、考えただけでも怖いぞ」

「わたし、前に魔法ありの試合をしたんだよね。今、思うと無謀なことをしたんだと思うよ」

でも、あれは妹のノアのことを思ってのことだ。初めは気分は悪かったけど。妹の護衛にわたしを付けたクリフに対して、怒っていたのかもしれない。

試合を終えたわたしは簡単に2人に感想を伝える。

あくまで、わたしの主観だけど、2人の良いところと悪いところを教えてあげる。

「マリクスは力はあるけど、攻撃の仕方がワンパターンだね。同じ動きが多いよ。あと、攻撃ばかり考えているから、隙が多い。わたしがナイフだからって、弾き飛ばせると思ったでしょう。ナイフでも受け流すことはできるよ」

「そんなことは普通はできない」

まあ、普通に考えて、お互いの実力差がなければ、剣とナイフが正面から戦えば、剣のほうが強い。

「でも、避けることができれば、ナイフでも相手を倒すことはできるよ」

剣より、ナイフのほうが切り返しが速い。この辺りは武器の扱いより、体の動かし方なんだろうね。

「シアはマリクスより動きはいいけど、剣が重いんじゃないかな。剣に振り回されていたよ。もう少し軽いのを選ぶといいよ」

「はい、少し重たかったです。もう少し軽いのを選べば良かったです。でも、ユナさんも同じ剣ですよ」

まあ、わたしはクマさんパペットのおかげで、重い剣でも木の剣のように扱える。クマさんパペットがなければ振るうこともできない。

「やっぱり、ユナちゃんは強いわね」

「だが、そっちのマリクスもシアも、学生ならそれなりの実力だろう」

おお、国王が2人を褒めている。

でも、2人はあまり嬉しそうにしてない。

「2人とも、国王様が褒めているよ」

「褒めていると言われても、ユナさんに手も足もでなかったからな」

「手加減されて、この状況だからね。息切れさせることもできなかったし」

2人はそんな理由で国王に褒められても、素直に喜べないようだ。わたしもチート装備のおかげで強いので、喜ぶことはできない。

「まあ、あのルトゥムが負けるぐらいだからね。2人とも頑張ったと思うよ」

「くまさん、つよい」

くまゆるの上に乗るティリアが2人を慰め、フローラ様がくまきゅうの上でわたしを褒めてくれる。

マリクスとシアは、ティリアの言葉に納得する。

「くそ、暑い」

マリクスは防具を脱ぎ始める。

「わたしも、汗が酷いことになっているよ」

まだ、暑い季節だ。そんな中、動けば汗もでる。

「ユナさんは、そんな暑い格好しているけど、大丈夫なんですか」

「前に言ったかもしれないけど、温度管理をしてくれる服だから、暑くないよ」

夏は涼しく、冬は暖かい、服としては最高の素材で作られている。難点はクマの着ぐるみってことだけだ。これがカッコいい装備だったらといつも思う。

わたしがゲーム時代に手に入れたレア素材で作ったカッコいい防具とかたくさんあったのに。それがクマさんである。わたしはクマさんパペットをパクパクさせる。

「それじゃ、冷たい物を作ってきたから、シアたちも食べる?」

「冷たいものですか?」

「フローラ様に持ってきたんだけど、みんなの分もあるよ」

「あら、ユナちゃん。もちろん、わたしの分もあるのよね?」

食べ物の話をするとエレローラさんが反応する。

「俺の分もあるんだろうな」

さらに国王まで反応して。

「ユナ、わたしの分もあるのよね」

ティリアまで伝染する。

フローラ様のために作ってきたものだけど、国王やエレローラさんの分を含め、たくさん作ってきたので、マリクスとシア、ティリアの3人が増えたぐらいなら大丈夫だ。

「多めに作ってきたから、大丈夫だよ」

「良かった。いつも、お父様、お母様、フローラの3人だけでズルかったから」

それは仕方ない。そもそも学園祭のときまで、ティリアの存在を知らなかった。国王の年齢を考えれば、ティリアぐらいの子供がいるだろうと思っていたけど、調べようともしなかった。だから、王子がいることも会うまで知らなかった。

もっとも、存在を知っていたからと言って、会ったこともない人の分まで食べ物は用意しなかったと思う。

「くまさん、おいしいの?」

「冷たくて、美味しいですよ」

フローラ様が尋ねてくるので、優しく答えると嬉しそうにする。

「おまえは、本当にフローラに甘いな」

それを言われると、なにも言えなくなる。

わたしが持っていない純真な心に弱いのかもしれない。わたしの心は汚れているからね。

「でも、冷たい食べ物ね。ユナちゃんの食べ物は美味しいから楽しみね」

「それじゃ、ありがたく頂くとしよう。そうだな、場所は庭園でいいだろう。2人も汗を拭いてから、来るように」

国王陛下は座り込んでいるシアとマリクスに向かって言う。

「それじゃ、先に行って準備をしておくわね」

国王とエレローラさんは言うだけ言うと、訓練場を出ていく。

国王陛下の言葉にシアとマリクスの2人は口をパクパクさせて、顔を見合わせると、急いで動き出す。

マリクスとシアは汗を拭き、防具や武器を片付ける。その動きは速かった。

その間、わたしはくまゆるとくまきゅうを送還するため、ティリアとフローラ様を説得することになった。

2人はくまゆるとくまきゅうに乗ったまま庭園に行こうとしたのだ。

「このまま出ると、他の人が驚きますからね。ここからは歩いていきましょうね」

フローラ様はくまきゅうにしがみついて、離れようとしない。そのためにぬいぐるみをプレゼントしたけど、偽物は本物には勝てないみたいだ。

「うぅ」

「もし、くまきゅうが危険視されて、兵士たちに攻撃されたら大変でしょう」

まあ、実際にくまきゅうやくまゆるの上にフローラ様やティリアが乗っていたら、攻撃なんてしないと思うけど、助けようと思って、攻撃を仕掛ける馬鹿がいるかもしれない。

「くまきゅうが剣で刺されたら嫌でしょう」

「……うん」

よし、フローラ様の説得が成功したと思った瞬間、ティリアが余計なことを言いだす。

「それじゃ、小さくしたらどう? それなら大丈夫だと思うよ」

それだと、先延ばししただけになる。

「ちいさいくまさん? うん! ちいさいくまさんでいいよ」

ああ、フローラ様も小さいクマを希望し始めた。こうなったら、送還させることは無理そうだ。

まあ、滅多に王都に来ないから、今日はもう少しくまきゅうと一緒にいさせてあげることにする。

「それじゃ、フローラ様。約束してくれますか? 帰るときはちゃんと、離れてくれるって」

「うん、やくそくする」

わたしはフローラ様と約束すると、くまきゅうを小さくさせる。フローラ様は小さくなったくまきゅうに抱きつく。

そして、必然的にティリアが抱いている、くまゆるも子熊にすることになった。

「大きいクマも可愛いけど、小さいクマも可愛いわね」

くまゆるとくまきゅうを子熊化すると、マリクスとシアが戻ってくる。

子熊になったくまゆるとくまきゅうを見ると二人は驚くこともなく、頭を撫でる。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、海以来だね」

「あのときはありがとうな」

シアはミリーラに行ったときだけど、マリクスはくまゆるとくまきゅうに会うのは護衛のとき以来かもしれない。

片づけを終えたわたしたちは庭園に向かう。

くまゆるはティリアに抱かれ、くまきゅうはフローラ様の横を一緒に歩いている。

そんな中、マリクスとシアの話し声が聞こえてくる。

「これから、俺たちは国王陛下と一緒に食事をするんだよな?」

「そうみたい」

「国王陛下と食事……」

「緊張するね」

「ああ」

マリクスがお腹を押さえる。

どうやら、国王陛下と一緒に食事をすることが緊張するらしい。なにか、懐かしいね。

「ユナさん、なに笑っているんですか?」

昔のことを思い出していたら、笑みが出ていたらしい。

「2人を見ていたら、フィナが国王陛下と一緒に食事をしたときの話を思い出してね」

「たしか、フィナちゃんって、お母様にお城に連れていかれて、国王陛下と食事をしたことがあるんだっけ?」

「フィナって、ユナさんと一緒にいた小さな女の子だろう。貴族なのか?」

「違うよ。普通の女の子だよ」

「エレローラ様、鬼畜なことをするな。普通の子を国王陛下の前に連れていくか? 俺だったら、緊張するぞ」

「わたしだってそうだよ」

「シアでも緊張するんだ?」

「当たり前だよ。国王陛下だよ。国で一番偉い人だよ。平然と会話をしているユナさんがおかしいんですよ」

わたしも初めてのときは緊張したけど、なんとなく慣れてしまった。

「でも、ティリアは平気なんでしょう?」

「ティリア様とは学園で一緒にいることも多いし、親しみやすいから」

「シア、それって褒めているの?」

前を歩く、ティリアが後ろを振り返る。

どうやら、話を聞いていたらしい。

「もちろん、褒めていますよ」

まあ、わたしと初めて会ったときから、呼び捨てで呼ぶように言ってきた。そういうところが親しみやすいのかもしれない。