軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

416 クマさん、戻って来る

わたしは森の中に数体のビッグボアの反応を見つけた。

トウヤのことも気になるが、ビッグボアが他の人を襲っても危険だ。本当ならトウヤの目の前にいるビッグボアをサクッと倒してから、他のビッグボアのところに行きたいが、トウヤが手出しは不要と言う。

ゲームでも他のプレイヤーが戦っている魔物を横取りするのはマナー違反だ。助けを求められれば戦うけど、断られたら魔物に攻撃することはできない。でも、トウヤのことはセニアさんから頼まれている。トウヤに何かあればそれはそれで問題だ。頼まれた身としては見守りたいが、他のビッグボアも放っておくわけにはいかない。

わたしは考えた結果、くまゆるにトウヤのことを頼む。くまゆるは任せてって感じで「くぅ~ん」と鳴く。わたしはくまゆるにトウヤのことを任せ、1人で他のビッグボアを倒しに向かう。

探知スキルを使って、ビッグボアを見つけると目の前に出る。トウヤみたいに後ろから攻撃をしても良かったんだけど、赤い角が気になる。わたしはビッグボアの前に出て、軽く魔法を放って挑発する。ビッグボアは唸り、角が赤くなり始める。魔力が溜まって硬くなるんだよね。

わたしはクマボックスから、くまゆるナイフを取り出す。そして、ビッグボアが突進してくるところを横にかわし、赤い角目がけて、くまゆるナイフを振り下ろす。赤い角はスパッと斬れ、地面に転がる。そして、走り抜けたビッグボアは止まり、振り返る。口から怒りのような唸り声を発する。足を闘牛のように蹴る仕草をして、わたしに向かって突進してくる。でも、先ほどの力強さはない。可哀想だけど、わたしは魔法を放って止めをさす。狂暴な魔物は放置することはできない。

わたしは赤い角を拾い、次のビッグボアのところに向かう。そして、同じ様な感じで残りのビッグボアをサクッと倒してくる。もちろん、赤い角はゲットした。手に入るものは手に入れておくのがわたしのモットーだ。

初めはティルミナさんへのお土産になるかもしれない。と思ったけど、いらないよね?

お肉のほうが喜ばれそうだ。

わたしは探知スキルで周囲にビッグボアがいないことを確認すると、トウヤのところに戻ってくる。そこには別れたはずのセニアさんがトウヤを手当している姿がある。

「嬢ちゃん、無事だったか」

「トウヤは無事なの?」

なにか、別れたときより、傷ついているんだけど。

「ああ、嬢ちゃんの置いていってくれたクマのおかげで助かった」

くまゆるはわたしのところにやってくる。ちゃんとわたしが頼んだことを守ってくれたみたいだ。わたしはくまゆるの頭を撫でる。

「ありがとうね」

「くぅ~ん」

「それで、他のビッグボアはどうしたんだ?」

「周辺に三体いたから、倒してきたよ」

わたしはクマボックスからビッグボアを取り出し、ビッグボアの赤い角を見せる。すると、トウヤは自分の持っている赤い角へ視線を向ける。トウヤもちゃんと赤い角を手に入れることができたみたいだ。

「三体だけか?」

「わたしが分かる範囲はね」

探知スキル外は倒していないし、いるかも分からない。

「魔物の場所が分かるって、クマかよ」

「くぅ~ん」

「おまえのことじゃない」

くまゆるが鳴くとすぐにトウヤが否定する。

「それじゃ、一応冒険者ギルドには報告をしたほうがいい」

本来は街の近くには魔物はいないらしい。だから、子供たちの遊び場になっているとセニアさんが教えてくれる。それに魔物報告は冒険者の役目でもあると言う。

その冒険者の役目の報告をしないで、ヘレンさんに怒られたのは懐かしい思い出だ。

「それにしてもボロボロだね」

トウヤはセニアさんにぐるぐると包帯を巻かれている。

「ちょっと、ミスって弾き飛ばされただけだ」

「ちょっと?」

セニアさんは包帯がしてある場所を指で突っつくと、トウヤは痛そうな顔をする。

「……ちょっとだ」

誰が見てもわかるような痩せ我慢をする。セニアさんが言うには打ち身だけらしい。

「体だけは頑丈。うらやましい」

セニアさんは包帯の上からツンツンと指で突っつく。そのたびにトウヤは歯を食いしばって我慢をしている。痛いなら、痛いってやせ我慢せずに言えばいいのに。

「ビッグボアはセニアさんと一緒に倒したの?」

「1人で倒した」

「くぅ~ん?」

「……2人だ」

くまゆるが鳴いたら、トウヤが言い直した。

なんだろう?

「嬢ちゃんのクマに少し手伝ってもらった」

なんでも、くまゆるのおかげで赤い角を斬ることができたらしい。

「トウヤ、くまゆるに抱きついていた」

「セ、セニア!?」

「くまゆるに抱きつく?」

「くまゆるは渡さない」

セニアさんはくまゆるに抱きつく。

「誰も取ったりしない」

くまゆるは困ったように「くぅ~ん」と鳴く。

「そもそも、くまゆるはわたしのくまゆるだよ」

わたしが宣言するとくまゆるは嬉しそうに鳴き、くまきゅうが悲しそうに鳴く。「もちろん、くまきゅうもわたしのものだよ」と言ってあげると、くまきゅうも嬉しそうにする。

それから、トウヤの手当ても終え、わたしはくまきゅうに乗り、セニアさんがくまゆるに乗って街に戻ってくる。一応怪我人だからトウヤにも乗るか尋ねたら。物凄く悩んだ顔をしたかと思ったら、「大丈夫だ。自分で歩ける」と断った。

でも、街に行く間、チラチラとセニアさんのほうを見ていた。

どうしてかな?

わたしたちが街に戻ってくると、ジェイドさんとメルさんが走ってくる姿があった。

「トウヤ、大丈夫か?」

「なに、そんな心配そうにしているんだ」

「だって、フィナちゃんやルイミンちゃんから話を聞いて」

どうやら、フィナとルイミンから話を聞いて、駆けつけてくれたみたいだ。

「ビッグボアぐらい大丈夫だ」

「その割には怪我をしている」

「トウヤ、大丈夫なの?」

「ちょっと、弾き飛ばされただけだ。それにクマの嬢ちゃんのくまゆるに助けてもらった」

「「くまゆる?」」

ジェイドさんとメルさんが首を傾げる。

たしかに違和感があったけど、トウヤがくまゆるの名前を呼んでいるんだよね。

全員がトウヤに視線を向ける。

「嬢ちゃんの黒いクマだ! セニア、さっさと冒険者ギルドに報告しに行くぞ」

トウヤはなにかを誤魔化すように、セニアさんと一緒に冒険者ギルドのほうに歩き出す。

冒険者ギルドにはビッグボアの報告をしに行く。わたしも一緒に行かないといけないのかな。と面倒くさそうにしたら、トウヤとセニアさんがわたしが倒したビッグボアもついでに報告をしてくれると言う。

トウヤ曰く「クマの嬢ちゃんがビッグボアを倒したと言っても誰も信じない」

セニアさん曰く「逆にユナのことを説明するのが面倒」

と言われた。報告しにいかないで済むのは楽でいいけど、なにか悲しい。

あとで聞いた話では冒険者によって周辺の探索が行われたそうだ。原因は不明だったが、食べ物を探しにやってきた群れだったのではとセニアさんは言っていた。

宿屋に戻ってくるとフィナとルイミンが出迎えてくれる。2人はわたしを見ると安心するように駆け寄ってくる。

「ユナお姉ちゃんが強いのは知っているけど、やっぱり心配です」

「くまゆるちゃんと、くまきゅうちゃんがいても、魔物と戦うのは危険だから」

二人には心配させたみたいだ。

いろいろとあり、戻ってきたわたしは部屋で休むことにする。フィナとルイミンには出かけても良いと言ったけど、子熊化したくまゆるとくまきゅうと遊んでいる。

部屋でのんびりとしていると、ドアがノックされ誰かがやってくる。ドアを開けるとツボを持ったトウヤがいた。冒険者ギルドに報告して戻ってきたらしい。

「なに?」

もしかして、ビッグボアの討伐に参加しろなんて言わないよね。

一応、街の周辺は確認したつもりだ。いるとしても街から離れないといけない。面倒だから断りたい。でも、トウヤの口から出た言葉は違った。

「ハチミツだ。クマにあげてくれ。今日の礼だ」

トウヤは手に持っていたツボをわたしに差し出す。

どうやら、くまゆるにハチミツを持ってきてくれたみたいだ。

「くまゆるに?」

「白いクマもだ。セニアを連れてきてくれたからな。それに片方だけじゃ可哀想だろう。今日は助かったと言っておいてくれ」

トウヤはそれだけを言うと自分の部屋に戻っていく。

「くまゆる、くまきゅう、トウヤがお礼だって」

わたしは子熊になって、ベッドの上でフィナとルイミンと遊んでいるくまゆるとくまきゅうに声をかける。わたしがハチミツが入ったツボを持ってベッドに近寄ると、くまゆるとくまきゅうが近寄って来る。

「トウヤさん、なにを持ってきたんですか?」

「ハチミツだね。くまゆるとくまきゅうにお礼みたい。くまゆる、くまきゅう、食べる?」

「「くぅ~ん」」

食べると言うのでわたしはスプーンを取り出して、ハチミツをくまゆるの口に運ぶ。

「美味しい?」

「くぅ~ん!」

美味しいみたいだ。

次にハチミツをスプーンですくい、くまきゅうの口に運ぶ。

くまきゅうも美味しそうに食べる。

「ああ、ユナさん、わたしもやりたいです」

「わたしも」

わたしがくまゆるとくまきゅうにハチミツをあげているところを見ていたフィナとルイミンが自分たちもやりたいと言い出す。

「それじゃ、ベッドの上でこぼしたら大変だから、テーブルでね」

「「はい!」」

フィナはくまゆるを、ルイミンはくまきゅうを抱えてテーブルに向かう。わたしはテーブルの上にツボを置き、もう一つスプーンを取り出して、フィナとルイミンに渡す。

2人は膝に抱えたくまゆるとくまきゅうに、ひな鳥に餌をあげるようにハチミツを食べさせる。

「なにか、癒されます」

「くまゆるちゃんと、くまきゅうちゃんは可愛いです」

「あまり、食べさせ過ぎないでね」

まあ、大丈夫だと思うけど、注意だけはしておく。

食べ終わると、くまゆるとくまきゅうの口元は大変なことになっていた。送還しようとしたが、今日のお礼を兼ねてお風呂で洗ってあげることにした。