軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

409 クマさん、フィナを救うために頑張る

まさか、自分と戦う羽目になるとは思わなかった。

一戦目は魔力で硬化されたゴーレムとの一対一の試合。

二戦目は5体の甲冑騎士。複数の相手の戦い。

三戦目はオオトカゲ。大型魔物。

四戦目は予想外の三試合までの自分自身のコピー。

でも、最後の試練ってなんだろう。想像も付かないけど、大きな魔物かな。わたしが複数、現れるのだけはやめてほしい。赤クマ、青クマ、黄クマ、緑クマ、黒クマ、白クマ、とか戦隊クマが出てきたら、魔法を使って、暴れるかもしれない。

「嬢ちゃん大丈夫か?」

わたしが変な想像をしているとロージナさんが声をかけてくる。

「うん、大丈夫だよ。三戦目ぐらいのわたしのコピーだったみたいだし、それ以上の力で倒せば問題はなかったよ」

「それはつまり、オオトカゲを倒したときは、本気じゃなかったってことか?」

「まあ、それは……」

わたしが言い難そうにしていると、奥のほうの地面が光りだす。最後の五戦目が始まるみたいだ。地面には魔法陣があったようで、円形に光り、薄白い壁が現れる。次の試練はこの薄白い壁?

魔力で作られたような壁だ。クマさんパペットで触れてみる。薄いような厚いような、壁の厚みはわからない。でも、体は通り抜けることはできない。

わたしは壁に手を触れながら、壁をぐるっと回って、大きさを確認する。壁は四畳半ほどの大きさがある。壁の奥を見ると、薄白い壁の先に壁が見え、さらにその奥にも壁が見える。

一、二、三、四、五。はっきりとわからないけど。たぶん、壁は五枚ある。五重の防壁だ。

この五枚の壁を壊せばいいのかな?

「ロージナさん、これを壊せばいいの?」

「ああ、それを武器で壊せば終わりだ。でも、ただの壁じゃないぞ。嬢ちゃんの力、そして、その持っているナイフの力を全て出し切らないと、斬ることはできないぞ」

ロージナさんの代わりにギルマスが答える。最後は簡単みたいだ。てっきり、もっと凶悪な相手が出ると思ったけど、思いのほか、簡単な試練だった。

純粋に武器の力とわたしの力を試すってことなのかな?

まあ、クマレンジャーが出なかっただけ、よしとする。

わたしは壁からナイフが届く間合いに離れようとしたとき、壁の内側の地面が動く。よく見ると人が倒れているように見える。それが、ゆっくりと動く。

「……ここはどこ?」

壁の中から聞き覚えのある声がする。

わたしは薄く光った、薄白い壁に近づく。薄白い魔力の壁のせいで、ハッキリと分からないけど、わたしがよく知っている輪郭で、よく知っている声だ。

「フィナ?」

防壁の中にいるのはフィナだ。

「ユナお姉ちゃん?」

やっぱり、フィナだ。

「ユナお姉ちゃん。ここはどこ? それにこの壁は?」

「ここは試練の門の中だよ。フィナはどうして、自分がここにいるのかわかる?」

「えっと、さっきまでルイミンさんと一緒にいて……それから、うぅ、思いだせないです」

フィナは頭を抱えてる。自分がここにいる理由がわからないようだ。

でも、どうやって、フィナをここに? 一緒にいたルイミンは大丈夫なの?

考えられることは魔法で、強制的に転移だけど、そんなことができるの?

一年分の魔力を使えばできるってこともあり得るかもしれないけど。

「ユナお姉ちゃん。どうして、わたしはここにいるんですか?」

「たぶんだけど、わたしの試練に巻き込まれたみたい」

「試練ですか……」

壁の中にいるフィナが立ち上がり、壁を触れる姿がある。

声が不安そうにしている。

「うん、最後の試練のときに、フィナが現れたんだよ」

「そうなんですね。でも、どうやって出るんですか?」

フィナは壁の中をウロウロと歩いて、出口を探すが、見つからないようだ。わたしも、一周したが、出入り口はなかった。考えられることは、これが試練で、わたしが、魔力で作られた壁を壊して、フィナを救うみたいだ。

わたしは魔力で作られた壁を見る。

壁は薄白い壁のようで、壁の向こうにはうっすらとフィナの姿が見えている。

簡単にフィナを救い出す方法がある。

「ロージナさん、魔法を使えば、試練は終了するんだよね」

「ああ、クリアできずに試練は終わる。嬢ちゃんが自由に決めて構わない。でも、危険がなければ、挑戦してほしい」

「ユナお姉ちゃん、試練なの?」

「フィナをこの壁から救うのが試練みたい。でも、魔法は禁止されているから、魔法を壁に当てれば、すぐに試練が終わって、壁は無くなるよ」

それが一番早くフィナを救いだす方法だ。

こんな訳がわからない茶番に付き合うこともない。

「ユナお姉ちゃん、わたしは大丈夫だから、試練を続けて。ユナお姉ちゃんなら、できるよ」

「フィナ……」

「別に危険はないみたいだし、ユナお姉ちゃんの邪魔はしたくないし、手伝いができるならうれしいから」

「いいの?」

「はい。ユナお姉ちゃんを信じています」

わたしは考え、フィナの気持ちをありがたく受け取ることにする。

「わかった。試練もクリアして、フィナも助けてあげるから。少し待っていてね」

「はい」

「それじゃ、危ないから壁から少し離れて」

フィナが壁から離れるのを確認すると、くまゆるナイフとくまきゅうナイフを握りしめる。そして、魔力を込めて左右に振る。一枚目の壁が壊れる。フィナに一歩近づく。

「ユナお姉ちゃん」

「大丈夫だよ。すぐに助けてあげるから」

フィナを不安にさせないように優しく言う。

早く、この壁を壊して試練をクリアして、フィナも救いだす。

わたしは二枚目の壁も斬り捨てる。

そして、すぐに三枚目の壁に向けてナイフを振り落とす。でも、魔力の壁に弾かれる。

「嬢ちゃん、慌てるな。時間はある。落ち着け」

ロージナさんが慌てるわたしに注意をする。

たしかに、フィナを早く助け出そうという気持ちが先走って、ナイフの扱いが適当になっていたかもしれない。わたしは一度、下がって間合いを確認して、くまゆるナイフとくまきゅうナイフを交互に振り落とす。三枚目の壁も消える。

あと二枚だ。徐々に壁が強くなっているようだけど、このまま落ちついて挑戦すれば大丈夫なはずだ。

わたしが落ち着きを取り戻したとき、壁の中にいるフィナが慌てる。

「えっ、なに? 水?」

「フィナ、どうしたの!?」

「地面から大量の水が出てきて」

視線を下に向けると薄白い壁の下のほうから水のようなものが湧き出ているのが、わたしのほうからもわかった。

「ユナお姉ちゃん!」

もう、試練どころじゃない。

水が増えればフィナが溺れるかもしれない。2mほどの天井まで水が行けば、フィナが危険になる。

もう、試練は終了だ。ここまで、付き合うことはない。

「魔法を使って、すぐに助けてあげるから」

「ユナお姉ちゃん。まだ、大丈夫だよ。だから、頑張って」

水は膝ぐらいまで来ているのに、フィナはわたしに試練を続けるように言う。自分のことより、他人を大事にする気持ちは大切だけど。わたしだって、自分の試練より、フィナのほうが大切だ。

「ユナお姉ちゃん……」

わたしは考える時間ももったいないので、クマさんパペットに魔力を集める。試練より、フィナを怖がらせるほうが嫌だ。わたしはクマさんパペットに集めた魔力で、火の玉を飛ばす。これで、試練は終わる。クリアはできなかったけど。これでいい。フィナを怖がらせてまで、やるようなことではない。

火の玉が壁をぶつかろうとしたとき、予想外のことが起きる。火の玉は壁を通り抜けて、フィナの横を通り抜けていく。

「フィナ!」

「だ、大丈夫です」

わたしは安堵する。そして、フィナには右の壁に移動してもらう。わたしは反対側のフィナに危険が起きない程度に風の刃などを放つ。でも、風の刃も通り抜けていく。

魔法は通り抜けるが、壁は壊れないし、試練も終了しない。

魔法を使えば反則負けで、試練は終了するんじゃなかったの!?

クマ魔法を使っても同様のことになる可能性もある。炎のクマを使えば、フィナを焼き殺す恐れもある。

「ロージナさん! ギルマス!」

「わからん」

「嬢ちゃん、魔法がダメなら、ナイフで斬るんだ。嬢ちゃんなら、できるだろう」

「ユナお姉ちゃん!」

そうだ。武器の試練なら、武器で壊すしかない。

わたしはナイフを握る。そして、魔力を込めて、四枚目の壁を壊す。

よし、あと一枚だ。

わたしはそのまま、時間をかけずに最後の五枚目の壁に斬り掛かる。でも、五枚目の壁にくまゆるナイフが弾かれる。さらに左に持つくまきゅうナイフを振り下ろすが、同じように弾かれる。

硬い。硬いっていうよりは、ゴムのような壁に弾かれるって感触だ。

わたしは何度もナイフを振り落とす。

どうして、斬れないの。壊せないの?

壁はさらに魔力で増幅されたように白くなり、壁の中にいるフィナの様子がわからなくなる。でも、水が増えているのがわかる。

「嬢ちゃん、落ち着くんだ。そんな乱れた心でナイフを振っても、斬れるものも斬れないぞ」

そんなことを言ってもフィナが。

「まだ、時間はある。深呼吸して落ち着け、そして、ガザルの作ったナイフを信じろ。そして、嬢ちゃんのナイフの扱いを信じろ。そのどちらが欠けても駄目だ」

わたしは体の力を抜く。そして、深呼吸する。

水かさは増えている。でも、まだ大丈夫だ。

フィナ。今助けるからね。

左右の持つくまゆるナイフとくまきゅうナイフに魔力を込める。足に力を入れる。クマさんパペットの咥えるナイフを力強く握る。ナイフを構える。踏み込む足に力を、ナイフを振るう腕に力を、腰に回転を、ナイフの角度、最高の攻撃を壁に向けてナイフを振り下ろす。壁に ×(クロス) の字が刻まれる。

弾かれる感触はない。壁を切り裂いた。

壁は壊れる。

「フィナ! ……えっ?」

壁は壊れ、水も消え、そして、フィナと思っていた物も消える。壁の先には何もなかった。

どういうこと?

もしかして、騙された?

落ち着いて考えれば、魔法陣にナイフを刺せば終了したんだよね。

なにか、いろいろと騙された気分だ。