軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

406 クマさん、試しの門に挑戦する

わたしは他の参加者たちやギルド職員が来る前に試しの門に挑戦させてもらうことになった。時間もないので、ギルマスが淹れてくれたお茶を一気に飲み干し、席を立つ。それに 倣(なら) うようにフィナとルイミンも椅子から立ち上がる。でも、そんなフィナとルイミンにギルマスが声をかける。

「そっちの嬢ちゃんたちは悪いが、一緒に中に入ることはできないから、ここで待っていてくれ」

まあ、そうなるよね。基本、関係者以外入れないってことになっているし。

「うぅ、そうなんですか。ユナさんが試しの門に挑戦するところを見てみたかったです」

「フィナもルイミンも少し待っていて、すぐに戻ってくるから」

「うぅ、わかりました」

「ユナお姉ちゃん、頑張ってください」

2人は残念そうにするが、我儘を言ったりしない。

フィナとルイミンには部屋に残ってもらい、わたしはロージナさんとギルマスと一緒に部屋をでる。そして、建物の入口から正面にある両開きの扉に向かって歩き出す。

やっぱり、あの扉の奥がそうだったみたいだ。

ギルマスは扉を開ける。そこから先は人工的に作られたのではなく、地表が剥き出しになっている。洞窟の中って感じだ。中は光が灯してあり、明るくなっている。その光は先に進む通路へと続いている。

「ここが試しの門の中?」

「ああ、中と言えば中だ。ここから先は鍛冶職人と武器を扱う者しか入れない」

なんでも、試しの門はこの中で武器を試すために作られた。初めの頃は入り口が門構えになっていた。そして、門を通るので、試しの門と呼ばれるようになったらしい。そして、ギルドが試しの門を管理するようになって今の建物が作られたそうだ。

「えっと、ギルマスが試しの門の中に入ってもよかったの?」

「問題ない。基本的に誰でも入れる。武器を作った武器職人と武器を扱う者だけと規則があるだけだ。それに誰もかも中に入れていたら混乱になるし、試練は見世物じゃないからな」

それには同意だ。一生懸命に作った武器や、それを扱う者。冷やかしで見られても困る。

話をしながら通路を進むと、途中から階段になっている。ここから下っていくみたいだ。ギルマスに足元を気をつけるように言われるが、クマ靴を履いているわたしは大丈夫だ。ギルマスを先頭に階段を降りていく。

「それで試しの門って、結局なにをするの?」

「鍛冶職人と、その武器を扱う者の実力を計ることは知っているな」

「うん、でも、なにをするかは知らない」

「簡単に言えば、魔力で作り上げられたものを相手にする」

「魔力で作られたもの?」

いまいちピンとこない。魔力で作られたものってなに?

「それは魔物であったり、物だったりする。武器によって異なり、武器の性能によって変わる。だから、嬢ちゃんの試練がどのようになるかはわからない。見習いが作った剣だと、弱い魔物が多い」

「ウルフとかだな」

ギルマスの言葉にロージナさんが言葉を付け足す。

確かにウルフなら初心者用になるかな。

「そして、倒すことによって、相手は強く、硬くなっていく。武器の性能、それを扱う者の実力が 伴(ともな) わないと倒せない」

「倒すごとって、何度も戦うの?」

「最大5回だ。一回目はそれほど難しくない。武器が最低限の性能があり、武器を扱う者が最低限扱えればクリアできる。二回目から徐々に難しくなる」

まあ、武器をまともに扱えない人が使えばウルフだって倒すことはできない。例えば、フィナやノアがミスリルの剣を持ったとしても、ウルフを倒すイメージが湧かない。そもそも、剣を振るうこともできそうもない。

「魔物はなんとなくわかるけど、物ってなに?」

「魔力で硬化した物だ。ハンマーで挑戦したときは魔力で硬化された岩山、槍だと魔力で硬化した壁などが現れたことがある。それでも、毎回違うから、必ず出るとは限らないがな」

そんな試練も出てくるんだ。

そんな話を聞くとハンマーや槍でも挑戦したくなる。でも、ゲーム時代、ハンマーや槍はあまり使ったことはないんだよね。だけど、多少は使えるはずだ。

「今回、わたしが使うのはナイフだけど、ちなみにナイフだとどんな物(魔物)が現れるの?」

「基本、ナイフで参加する者はいない。基本、剣が作れないと師匠が参加をさせないし、本人たちも参加しようとも思わない」

「剣が叩けるようになって、一人前の入り口だからな」

「それと、実力がある鍛冶職人はナイフで参加はしないからな」

ギルマスとロージナさんが鍛冶職人の参加する最低基準を教えてくれる。

実力がある鍛冶職人ほど、剣や槍などの武器になる。そのほうが強い武器が作れる。最強のナイフを作ろうと思う鍛冶職人は、いないらしい。

でも、ナイフだって、ちゃんとした武器なのに酷い。ゲームでもナイフはメインにならないし、初心者用の武器や初期装備だったりする。ラスボスを剣士がメインでナイフを持って戦っている姿を見たことがない。使うのは盗賊やアサシンぐらいだ。ゲームだってラスボスを倒すときは剣が多い。ナイフを使うことはない。

でも、少なからずメインで扱う者だっている。セニアさんだって実力があるナイフ使いだ。

「まあ、過去に数人いたが、ナイフは大した試練にならないはずだ」

そんなフラグが立つことは言わないでほしい。でも、この場合は大したことがない試練より、大きな試練のほうが楽しいのかな?

「でも、ガザルが作ったミスリルナイフなら、それなりの相手がでてくると思っておいたほうがいいぞ」

それはもちろんだ。甘く見るつもりはない。なんでも、真面目に楽しまないとつまらない。

「ちなみに確認だけど、その物(魔物)って魔法で倒してもいいの?」

クマ魔法やクマパンチがある。

わたしの質問にギルマスがバカの子を見るような目でわたしのことを見る。

「ダメに決まっているだろう。武器を試す試練だぞ」

わかっていたけど、魔物って言うと魔法で倒したくなる。体が勝手に反応して魔法を使ってしまいそうだ。

「嬢ちゃんは魔法を使えるのか?」

「使えるよ」

「それじゃ、試練の門についての規定を教えないとダメか。まず、魔法は禁止。魔法を対象物に当てた瞬間、試練は強制的に終了となる。ただし、武器に魔力を付加した攻撃は可だ。武器に魔力を込めて、威力をあげる剣もあるからな」

「魔法で土の壁を作ったりして、防ぐのは?」

「駄目だ。同じように対象物が触れた瞬間に終わる。対象物に剣以外の魔力が触れれば終わりと思ってもらえればいい。あくまで武器と武器を扱う者の試練だからな」

試しの門のルールを纏めると次の通りみたいだ。

その1、魔法による攻撃、防御は不可。対象物が触れた場合、試練は終了となる。

その2、武器に魔力を付加して攻撃をするのは可。

その3、防具の使用は可。

その4、一定のダメージを受けると終了。大きな怪我を負うことはない。

その5、試練は5回で終了となる。

でも、ここにわたしの攻撃手段で、当てはまらないことがある。

「手で殴るのは?」

わたしはクマさんパペットをパクパクさせる。

クマパンチだ。クマパンチは魔法でない。まあ、魔力を込めることもできるけど。

「……」

「……」

でも、2人は呆れたようにわたしのクマさんパペットを見ている。

「嬢ちゃん。今更ながら、なんの試しの試練か、わかっているよな?」

わかっているよ。武器だよね。武器で攻撃しないとダメなんだよね。

「そもそも、手で殴った者なんて、過去に一人もいない」

ですよね。武器の試練でクマパンチは普通はしないよね。

結局、クマパンチがアウトなのか、セーフなのか、分からなかった。まあ、クマパンチをして、試練が終わっても困るので、クマパンチは封印することにする。

ロージナさんとギルマスと話しながら階段を降りていくと、階段を降りた先に円形の図形が描かれているのが見えた。ゲームや漫画に出てきそうな。円形の中にいろいろな図形が描かれている。魔法陣だよね。

「この下で武器が試される」

階段を降りると広い空間が広がる。山の中と思われる中に学校の校庭ほどの広さがある。山の中にこれだけの広さがあるのは驚きだ。

上を見上げれば、天井も高く、光が灯っていて暗くない。これも魔力ってことになるのかな。

わたしたちは魔法陣の近くまでやってくる。

「嬢ちゃん。その魔法陣の中心にナイフを突き刺せ。魔力を付加させる武器だったら、置いた武器に魔力を流せば、その武器の材質、強度、切れ味、魔力の吸収率などの性能が把握される。それに見合った相手が現れる」

本当にゲームみたいだね。

わたしはクマボックスからくまゆるナイフとくまきゅうナイフを取り出す。そのときにナイフが二本あることを思い出す。

「っと、ナイフを二本使うんだけど」

わたしは両手に持つナイフを見せる。

「かまわない。ナイフなら二本とも突き刺せば大丈夫だ」

わたしは魔法陣の中心まで歩いていき、言われた通りに魔法陣の中心にくまゆるナイフとくまきゅうナイフを突き刺す。そして、ナイフを握り締めながら魔力を流すと魔法陣が光りだす。

おお、この演出はゲームみたいだ。ラスボスが現れるシーンやお宝が現れる感じだ。魔法陣が光るとテンションが上がる。フィナたちにもこの光景を見せてあげたかったね。魔法陣の光が消える。それと同時にロージナさんが叫ぶ。

「嬢ちゃん、前を見ろ!」

言われるがままに前を見ると、土が盛り上がり始め、形を作り出していく。

「なんだ。あれは……」

「……ゴーレム」

「どうして、一回目から、そんな相手が現れるんだ」

ロージナさんとギルマスが驚きの声をあげる。たかが、ゴーレムでそんなに慌てなくてもいいのに。

でも、鉱山で倒したときのゴーレムより大きいかな。わたしの倍ぐらいの高さぐらいある。

ゴーレムは地面を叩く。空間に地響きが響く。破壊力もありそうだ。

「嬢ちゃん、おかしい。逃げるんだ!」

わたしを心配してくれるけど、大丈夫だよ。わたしはナイフを抜き取る。

「ゴーレムぐらい倒せるよ」

「嬢ちゃん、魔力で硬くなっているはずだ。土と思って攻撃をしかけると、弾かれるぞ!」

それでもアイアンゴーレムよりは硬くないはずだ。でも、初めから手加減をするつもりはない。クマさん防具があるとは言え、ダメージを受けたら、一回で終了って可能性もある。

わたしはくまゆるナイフとくまきゅうナイフを握りしめると、ゴーレムに向かって走る。動きは遅い。わたしが近づくと腕が振り上がる。わたしは左右に持つナイフに魔力を流し、数回切り刻み、ゴーレムの腕、足を切り落とす。

「う~ん、初めだとこんなものなのかな?」

「嬢ちゃん?」

「……」

おっさん二人が呆けているようにわたしを見ている。とりあえず、わたしは止めを刺すようにゴーレムの体を斬り刻み、首を切り落とす。

「そんなに動きにくそうな格好で、そんな速い動きが」

見た目はあれだけど、一応チート防具だからね。

「しかも、そんなに簡単にゴーレムを斬るなんて」

過去に倒しているし、慌てるような相手ではない。それに前回は無かったけど、今回はガザルさんが作ってくれたミスリルナイフがある。魔力で強化されているといっても、アイアンゴーレム以上の硬さはなかったみたいだ。