軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

401 クマさん、社会科見学をする

翌日、くまゆるとくまきゅうに起こされたフィナとルイミンに起こされる。相変わらず、くまゆるとくまきゅうは2人に取られている。なにか寂しい。今日の夜は、くまゆるぬいぐるみとくまきゅうぬいぐるみでも出して、寝ようかな。

宿屋の食堂で朝食を食べていると、メルさんとセニアさんがやってくる。

「3人ともおはよう」

メルさんが声をかけ、セニアさんが手を上げて挨拶をする。それに対して、わたしたちも挨拶を返す。

「ユナちゃん、昨日はごめんね。ロージナさんに会えた?」

「会えましたよ」

まさか、武器屋でなくなっていたのは驚いたけど。

「それで、メルさんたちは買い物は終わったんですか?」

「ええ、ひととおり買ったけど。まだ、回らないといけないのよ。あと、作ってもらう物も数点あるしね」

それから、わたしはトウヤのことを尋ねる。

「う~ん、今回はお調子者のトウヤも真面目に落ち込んでいるわね。別に他の鍛冶屋で作っても良いと思うんだけど。トウヤはクセロさんのところ以外で作る気はないって言い出して、困っているのよ」

「でも、約束させた」

セニアさんが言うには、試験まではトウヤの好きなようにさせる。もし試験に不合格だった場合は他の鍛冶屋で作ることを約束させたと言う。

数日で技術が上がるとは思えないけど、大丈夫なのかな。

「トウヤは実力はあるわよ。ただ、本番に弱いのよね。いつもはお調子者のようなことを言っているのも、自分の本音を隠すためでもあるのよね。それを知られていないと本人は思っているようだけど」

そうなんだ。普通にお調子者だと思っていた。

「だから、今回はトウヤの好きなようにさせるつもり。買い出しはトウヤがいなくても大丈夫だからね。それで、ユナちゃんたちは今日はどうするの?」

「今日もロージナさんのところに行きますよ」

「昨日、行ったんでしょう? もしかして、武器でも作ってもらうの?」

やっぱり、メルさんはロージナさんが武器を作らなくなったことを知らないみたいだ。わたしはロージナさんが武器を作るのを止め、鍋などを作っていることを話す。

「嘘や冗談じゃないのよね」

「今は鍋やフライパンを作っていますよ」

「なんか、鍋やフライパンが強そう」

そのセニアさんの言葉に同意してしまう。

「それで、今日はロージナさんのところで、鍋やフライパンを作るところを見学させてもらうことになっているんですよ」

まあ、社会科見学みたいなものだ。

フィナとルイミンが昨日の食事のときに、作るところを見てみたいと言い出し、ロージナさんが了承してくれた。わたしとしては剣を作るところを見てみたかった。

朝食を終えたわたしたちはロージナさんのお店にやってくる。お店の中に入るとリッカさんが出迎えてくれる。

「待っていたよ。お父さん、もう仕事しているから、奥に行っていいよ」

リッカさんに許可をもらい、奥の仕事場に向かう。奥からカンカンと鉄を叩く音が聞こえてくる。

「うぅ、暑いです」

「こんなに暑い中で仕事をしているんですね」

フィナとルイミンが仕事場に入るなり、暑そうにする。わたしはクマの着ぐるみを着ているおかげで、暑さは感じない。着ぐるみを着て暑くないって、自分で言っていて意味がわからなくなってくる。

「本当に来たのか? 昨日は冗談だと思っていたのに。こんな鉄を叩くところを見て楽しいか?」

鍋を作っているロージナさんが、来た早々にそんなことを言い出す。

「はい、鉄の形が変わっていくのが不思議で、楽しみです」

「エルフの村には鍛冶屋はないから、わたしも新鮮です」

「まあ、見るだけなら、勝手に見ていけ。でも、危ない物もあるから、勝手にその辺りの物を触るんじゃないぞ。あと、あまり近づき過ぎるなよ。嬢ちゃんたちの柔肌がやけどをしても困るからな」

ロージナさんは注意事項を言うと鉄を叩きだす。

「ロージナさんはもう武器は作らないんですか?」

「……………」

わたしの言葉が聞こえたのか聞こえないのかは分からないが、ロージナさんは無言で鉄を叩く。わたしは答えたくないと受け取り、鉄を叩くところを見る。ロージナさんが鉄を叩くと、どんどん形が変わっていく。

その様子をフィナとルイミンが額に汗を流しながら見ている。

わたしは脱水にならないように、喉が渇いたら言うように2人に言う。

鉄の板だったものが形を変え、鍋が出来上がる。職人技だね。

そして、鍋が1つ出来上がると、ロージナさんは隣の部屋で休憩を取る。暑い中での長時間の労働は危険だからね。

「見てて楽しいか?」

ロージナさんは水を飲みながら、ずっと見ていたフィナとルイミンに尋ねる。

「はい。硬い鉄が叩く度に形が変わっていくのを見ているのは、不思議な感じがしました」

「鉄は熱いと形を変えやすい。そして、冷えると硬くなる」

「ロージナさんの手が魔法のようでした」

「これぐらい、簡単だ」

ロージナさんはフィナとルイミンに褒められて、嬉しそうにする。

「剣を作るのと、鍋を作るのはどっちが簡単ですか?」

「……それは剣を作るほうが難しい。剣は強度を強くするだけでなく、叩く、切る、防ぐことを考える。作るときは鉄の温度、叩く力加減、いろいろと考えないといけない。そして、同じように作っても、同じ剣は作れない。最高の剣を作ったとしても、同じ剣が作れることはない」

ロージナさんは小さな声でフィナの問いに答える。

「別に鍋やフライパンや調理道具が簡単だからと言って、作っている職人を馬鹿にするわけじゃない。鍋を作るにも苦労はある。ただ、武器には際限なく上があり、求められる。鍋は一定期間持てば交換すればいい。数打ちの武器なら、同じように交換すればいいが、最高の武器は強い敵と戦うのに必要だ。もう少し切れ味があれば倒せたかもしれない。もう少し頑丈なら、折れなかったかもしれない。もう少し軽ければ使いやすかったかもしれない。武器にはそのもう少しが際限なく続く。そのもう少しが使い手の命を救う。武器を使う者の命を預かっている。だから、武器を作るのは大変なことだ」

クセロさんも似たようなことを言っていた。

「まあ、そこらは鍛冶職人の心がけで変わってくる。あくまで俺の考えだからな」

それから、小休憩したロージナさんは新しい鍋を作っていく。

フィナとルイミンは長い間、暑い部屋の中にいることができず、途中で仕事場から出ていく。

「みんな、大丈夫。仕事場は暑かったでしょう」

リッカさんがわたしたちにお茶を出してくれる。

「はい、暑かったです」

「音もうるさかったです」

2人はコップに入ったお茶を一気に飲み干す。

「暑いのもキツイけど。音もうるさいよね。前は3人で作っていたから、音も三倍で大きかったよ」

リッカさんは懐かしそうにする。

ゴルドさんとガザルさんもいつかは故郷に戻ったりするのかな。わたしが帰れる故郷はない。あえて言うなら、クリモニアが故郷になりつつある。

翌日、わたしたちはトウヤに差し入れを持っていくために、街の外れに来ている。

「トウヤの特訓は順調なの?」

一緒に来ているセニアさんに尋ねる。

「頑張っている。偶然や奇跡的に、数十回に一回は斬れるようになった」

偶然や奇跡的にって、そこは実力がついたって言ってあげようよ。

「そうなの? それじゃ、一応合格はもらえるんじゃない?」

「トウヤは納得してない。それにクセロから、チャンスは三回と言われている。三回のうちに一回もできなければ、剣は作ってもらえない」

「厳しいね」

「そんなことはない。甘いぐらい。対象物は動いていない。集中する時間も、斬りかかる間合いも自由。魔物も敵も動いている。本当は動いている敵を相手にしないといけない。だから、このテストは甘い」

たしかに言われてみればそうだ。止まってる対象物を斬るだけだ。踏み込む距離もタイミングも自由、深呼吸して、心を落ち着かせることもできる。でも、本来なら魔物は動くもので、心を落ち着かせる時間を与えてくれない。間合いも、斬りやすいように相手が合わせてくれるわけじゃない。離れていれば剣は届かない。近づきすぎれば振ることはできない。本当なら、動いている魔物を倒さなければならない。

そう考えると、セニアさんの言葉通り、甘いテストなのかもしれない。しかもチャンスは三回もある。

「止まっている対象物を切ることができて、半人前。動いている対象物を切ることができて、一人前」

セニアさんは無表情で口にする。

そして、わたしたちはトウヤがいる場所にまでやってくると、トウヤの剣を振っている姿がある。

「トウヤ、食べ物持ってきた」

「助かる」

トウヤは剣を振るうのをやめて、わたしたちのほうを見る。

「なんだ。嬢ちゃんたちも来たのか?」

「頑張っている?」

「まあな。クセロのおっさんに絶対に認めさせて、作らせてやるからな」

トウヤは剣を鞘に納め、近くの座りやすそうな岩に腰を下ろす。そして、わたしたちが持ってきた差し入れのパンを食べる。

「調子はどうなの。セニアさんからは、たまに、偶然に、奇跡的に、何度か斬れたって聞いたけど」

「偶然でも奇跡でもねえよ。俺の実力だ。……ただ、数十回に一回ってだけだ」

「それって、偶然と言うよね」

「でも、もう少しで、感覚が分かる気がする。上手に斬れたときは感覚が手に残っている。あの感覚がいつでもできるようになれば」

トウヤは自分の手をジッと見つめる。

「ジェイドやセニアに聞いても、普通にできるから、参考にならないし」

「天才と凡人の差」

「ふん! 凡人だって、やればできることを証明してやるよ」

この世に天才はいる。教えればなんでもできる。見ただけでできる者もいる。

「傍に天才がいると凡人はつらいよね。わたしもその気持ちがわかるよ」

「……」

「……」

「……」

「……」

フィナ、ルイミン、セニアさん、トウヤの4人が、呆れたような「なにを言っているの?」的な表情で、わたしのことを見る。

「なに?」

「嬢ちゃん、それは嫌味ってやつだぞ。あれだけの強い魔物を倒しておいて。その魔力も才能のうちだし、武器の扱いもできるんだろう」

「ユナは天才。そして、モコモコ」

「ユナお姉ちゃんは凄い人です」

「わたしもそう思います」

どうやら、わたしは天才だったらしい。

他の人から見ると天才らしいけど、わたしの場合は、天才ではなくチートなんだけどね。