軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

389 クマさん、ジェイドさんと話をする

馬車からメルさんとセニアさん、ジェイドさん、トウヤの順番で降りてくる。メルさんとセニアさんは真っ直ぐにくまゆるとくまきゅうのところにやってくると、抱きつく。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、いつ見ても可愛いね」

「可愛い」

「それで、どうしてメルさんたちがいるんですか?」

くまゆるとくまきゅうを撫でているメルさんとセニアさんに尋ねる。

「それはこっちのセリフよ。馬車の運転をしていたら、目の前に黒と白のクマが歩いているし、その上には黒いのが乗っていれば、遠くからでも、ユナちゃんだって分かったわ。どうしてユナちゃんがこんなところにいるの? しかも、女の子を2人も連れて」

メルさんはフィナとルイミンに視線を向ける。

「たしかフィナちゃんだったよね。学園祭以来かな。覚えている?」

「覚えています。そっちのジェイドさんも一緒にいました」

「覚えてくれていて嬉しいよ」

フィナの言葉にジェイドさんは嬉しそうにする。

フィナはタイガーウルフの討伐の依頼を受けるときに冒険者ギルドで会い、学園祭の魔物や動物の解体する出し物のところでジェイドさんとメルさんに会っている。

「そっちのエルフの子は初めてかな?」

「ルイミンです。ユナさんにはお世話になっています」

ルイミンは頭を軽く下げて自己紹介をする。

「ユナちゃん、また新しい女の子を増やしたの?」

「人聞きの悪い。なんですか。その新しい女の子って?」

「だって、学園祭のとき、可愛い女の子をたくさん連れていたでしょう」

メルさんは思い出すように答える。たしかに、あのときはフィナ、シュリ、ノア、ティリアを連れていた。シアとミサは見られていないはず?

「それにカリーナちゃんにも好かれていたようだし」

それを言われると何も言えなくなる。

フィナが小さな声で「カリーナちゃん?」と口にしていた。

「それで、どうしてユナはこの子たちを連れて、ここにいるんだ」

ジェイドさんが尋ねてくる。

「それは……」

わたしは言いよどむ。

クマモナイトのことを話してもいいんだけど。詳しく聞かれても面倒だ。そうなると、返答は限られてくる。

「ドワーフの街の見学と鍋を買いに……」

「街の見学?」

「鍋を買いに?」

「しかも、フィナちゃんを連れて?」

ジェイドさんを含む、全員が呆れたような目でわたしをみる。

分かっているよ。街を見学するためや、鍋を買うためにクリモニアからルドニークの街に行く人なんていないよね。だから、そんな目でわたしを見ないで。

「そう言うジェイドさんたちは、どうしてここにいるんですか? 王都を中心に仕事をしているんですよね」

「俺たちはトウヤのミスリルの剣を買いにルドニークの街にいくところだ」

そういえば砂漠で会ったときに、トウヤのミスリルの剣を買うと言っていたね。でも、ミスリルの剣は王都だって買える。わざわざ、こんなところまで買いに来なくても良いと思うんだけど。

そのことについて尋ねると、トウヤが慌てだす。

「ああ、それはね」

「待て、言わないでくれ」

トウヤは話そうとするメルさんを止めようとするが、メルさんは面白がるように話し始める。

「えっと、ユナちゃんがミスリルナイフを作ってもらったガザルさんって鍛冶屋があるでしょう。そのガザルさんにトウヤが『俺の武器も作ってもらう』って言い出したのよ。まあ、トウヤの剣を作る予定だったから、そこまでは問題は無かったのよ。でも、ガザルさんに断られたのよ」

「うわあああ、言わないでくれって言ったのに」

頭を抱えるトウヤ。

「ガザルさんが? わたしのナイフを作ってくれたけど、断る人には思えないんだけど」

普通に頼んで、ミスリルの材料を持っていったら作ってくれた。別に見た目で断ったりはしないと思うんだけど。

「正確にはガザルさんに追い出されたんだけどね」

「追い出された?」

意味が分からない。追い出されたってことは、つまり作るのを断られたってことと同意だよね。

「トウヤが店内の入口にあったゴーレムの置物にびびって」

「びびっていない。驚いただけだ」

「どっちも同じよ。それで、ゴーレムに驚いたトウヤは後ずさって、後ろにあった武器や防具を倒しちゃったのよ」

そんなマンガみたいなことを、リアルでやる人がいるとは。

「それでガザルさんが『冒険者がゴーレムに驚いてどうする!』って言って怒って」

「そんなことを言われても、あんなところにアイアンゴーレムが立っていれば驚くだろう」

そのアイアンゴーレムって間違いなく、わたしがプレゼントしたものだよね。

ガザルさんに聞いたときは冒険者に好評って、聞いていたんだけど。トウヤみたいに驚く冒険者もいるんだね。

「ガザルさんは、驚いたのはトウヤだけだって言っていたわよ」

「うぅ、それは店に置いてある剣に目を奪われていたからであって……いきなり、目に入って……」

「周囲に気を配るのも冒険者には必要な資質」

「うぅ」

「あと、ガザルさんは優秀な職人で有名だから、人を選んだのかもしれないわね」

「きっと、トウヤを見た瞬間。ダメと思った」

言い訳をするトウヤをメルさん、セニアさんは面白がるようにトウヤをいじる。トウヤは言われるたびに落ち込んでいく。

「どうして、俺が駄目で、このクマの嬢ちゃんはいいんだよ」

トウヤはわたしを指差す。

「トウヤ、現実をしっかり見たほうがいい。ユナちゃんは優秀。トウヤの実力は悲しい」

セニアさんが悲しい表情をする。どうやら、トウヤの実力を顔で表現しているらしい。

「悲しいってなんだよ。俺の実力は悲しくはない」

わたしはトウヤが可哀想になったので、少しフォローすることにする。

「たぶん、ガザルさんがわたしに作ってくれたのはクリモニアにいる鍛冶屋さんの紹介状があったからだよ」

「それだ! それが俺との差だ」

「違うと思うぞ」

「違うと思う」

「違う」

わたしがせっかくフォローしたのに、ジェイドさん、メルさん、セニアさんが速攻で否定する。

まあ、わたしも違うと思うけど。

「でも、ガザルさんのところじゃなくても、他にも鍛冶屋はあるよね。わざわざ、ここまで来ることはないと思うけど」

わたしはガザルさん以外の鍛冶屋は知らないけど。王都ぐらい広ければ、鍛冶屋がガザルさんのお店1つの訳がない。

「まあ、あることはあるけど。ミスリル鉱石の扱いは難しいから、ミスリルの武器を作れる職人は少ない。他の鍛冶屋に頼んでも良かったんだが、知り合いの商人にルドニークの街に仕入れを頼まれて、ついでだからルドニークの街で作ることにしたんだ」

それでジェイドさんたちはここにいるわけか。

「それに俺の剣とセニアのナイフはルドニークの街で作ったからな」

ジェイドさんは自分の腰にある剣に視線を向ける。

ジェイドさんたちから経緯を聞いていると、くまゆるとくまきゅうが小さく鳴く。周囲を確認すると馬車がやってくるのが見える。そのことにジェイドさんたちも気づく。

「そろそろ、移動するか。宿屋の確保もあるし、話なら街でもできるからな」

「わたし、くまゆるちゃんに乗っていく」

「わたしはくまきゅうに乗る」

「ユナちゃんたちは馬車に乗って」

メルさんとセニアさんがそんなことを言って、くまゆるとくまきゅうに乗ろうとする。

いや、無理だから。

「ユナに迷惑をかけるな」

「そのことなんだけど」

わたしはくまゆるとくまきゅうに乗って行くか、歩いて行くか、相談していたことを話す。

「確かに目立つな」

ジェイドさんはくまゆるとくまきゅう、それからわたしを見る。どうやら、今の言葉にはわたしも含まれているみたいだ。

だから、近くに村や町があれば歩いて行くつもりでいたことを話す。

「たしか村は近くにあるから、歩いて行く者もいる。でも……」

ジェイドさんは今度はフィナ、ルイミン、わたしと見る。どうやら、わたしはこっちのグループにも入っているみたいだ。

まあ、10歳の女の子、エルフの女の子、クマの女の子(大人)。村から来たようには見えないよね。

「なら、俺たちの馬車に乗っていけばいい」

「いいの?」

「ああ、ユナには世話になったからな」

わたしはジェイドさんの厚意に甘え、馬車に乗せてもらう。くまゆるとくまきゅうはここまで乗せてくれたお礼を言って送還する。

メルさんとセニアさんは名残惜しそうにくまゆるとくまきゅうを見送る。後ろを振り返れば、フィナもルイミンも少し悲しそうにしている。

なんか、クマ好きが増えていない?

わたしたちは他の馬車が近づいてくる前に出発し、ルドニークの街に向かう。