軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

344 クマさん、ルリーナさんを誘う

ついに明日の早朝にミリーラに出発する。

グランさんにも挨拶をして、ミサをちゃんと預かる約束をした。まあ、わたしがしなくてもマリナがちゃんと護衛をしてくれるはず。

ミサやマリナたちの水着もシェリーが頑張ってくれたおかげで、無事に間に合わせることができた。

それから孤児院に様子を見に行くと、鳥のお世話をしてくれる人がすでにいて、子供たちと一緒に鳥のお世話をしている姿があった。ちゃんと来てくれたみたいで良かった。

もし、来てくれなかったら、いろいろと考えないといけなくなるところだった。

そして、ティルミナさんに頼まれた食材を、くまさん食堂に取りに行くと、アンズたちはお土産を買いに出かけるところだった。お店は昨日からお休みになっている。ティルミナさんがトンネルの通行日を気にかけてくれたため、早めに休みになっている。

くまさんの憩いの店に行くと、モリンさんとカリンさんは、明日食べる朝食と昼食の準備をしていた。

ミサはノアとフィナ、シュリの四人でクリモニアの街を探索している。わたしの家にも遊びに来たりした。目当てはくまゆるとくまきゅうだ。くまゆるとくまきゅうと一日中遊ぶ。本当に子供は元気だ。

そして、出発は明日になるけど。結局、ルリーナさんとギルの二人は戻ってこなかった。子供たちが寂しがるかもしれないけど、仕方ない。二人だって、仕事をしている。

ミリーラに行く人数も決定したことなので、わたしはクマバスを改造するために街の外に出る。そして、一人で街を離れ、前回フィナとシュリと一緒にクマバスを作った場所までやってくる。

ここなら、人目に付かないから大丈夫なはずだ。わたしは、そう思ってクマボックスからクマバスを出す。

「な、なに、この変な物は?」

わたしの後ろから声がした。後ろを振り向くと、そこには予想もしない人物がいた。

「シア?」

わたしの目の前にはシアがいる。さらにその横にはルリーナさんの姿もある。

状況がつかめない。どうして、二人がここにいるの?

そもそも、なんでわたしの後ろにいるの?

「えっと、なんでシアがクリモニアにいるの? それにルリーナさんまで。それ以前にどうしてわたしの後ろにいるの?」

とりあえず、疑問になっていることを並べてみる。

「ここにいる理由はユナさんが歩いているのを見つけたからです」

「それじゃ、なんでクリモニアにいるの?」

「王都からやってきたからです」

「なんで、王都からやってきたの?」

「ユナさんとミリーラの町に行くためです」

「…………」

わたしの質問にシアは淡々と答える。でも、シアと一緒にミリーラの町に行く話は聞いていない。

「わたし約束したっけ?」

「してませんよ」

していないよね。そんな記憶はない。

この前、水の魔石を届ける報告をしたあと、エレローラさんにドナドナされた。そのときにノアと海に行くようなことを話した記憶はある。でも、羨ましがったシアの記憶はあるけど、一緒に行く話はしてない。

「生徒でしょう? 学園は?」

「長期の休みに入ったんですよ。だから、こんなぎりぎりになって。だから、馬車じゃ間に合わないと思って馬に乗ってやってきたんですよ。でも、ユナさんがいるってことは間に合ったみたいですね」

確かに間に合ったけど。

「こないだ会ったときは何も言っていなかったよね」

「ユナさんとノアを驚かせようと思って。それに学園が休みに入るまでお母様が許してくれなかったんです」

「ちなみに、エレローラさんは?」

わたしはキョロキョロと周囲を確認する。

「いませんよ。お母様は仕事です」

いないのか。ちょっと安堵する。

エレローラさんがいたら、大変なことになっていたかもしれない。

まあ、シアがここにいる理由は分かった。

「言ってくれれば、日にちの変更ぐらいしたよ」

別に数日ぐらいの変更は問題はない。宿屋を予約しているわけでもないし。馬車を頼んでいるわけでもない。問題があるとすれば、鳥のお世話をしてくれる人ぐらいだ。

「それじゃ、ユナさんとノアを驚かすことができないじゃないですか」

驚かせるために、そんなに頑張らなくてもいいのに。

「それで、どうしてシアとルリーナさんが一緒にいるの?」

「それは、たまたまわたしが王都にいて、シアちゃんの護衛の依頼を受けたからよ」

わたしの質問にルリーナさん本人が答える。

ルリーナさんの話によると、ルリーナさんとギルの二人は仕事で王都に行っていたらしい。それで、仕事を終えたルリーナさんとギルはクリモニアに行く仕事を探していたら、依頼を頼みに来たシアに会ったとのことだ。

それでルリーナさんはシアの依頼を受けてクリモニアまで護衛してきたと言う。

でも、ルリーナさんとギルは王都に行っていたんだ。どうりで、なかなか戻ってこないわけだ。

「それで、ルリーナさんと話してみると、ユナさんと知り合いだって言うから、驚きました」

「クリモニアの冒険者でユナちゃんと仲良くしている冒険者は少ないからね」

そ、そんなことない、はず?

わたしだって、仲が良い冒険者ぐらい、たくさんいるはず。

ジェイドさんたちは王都中心の冒険者。ブリッツは決まった拠点を持たずに放浪する冒険者。マリナたちはシーリンの街の冒険者。地元の冒険者で仲良くしているのはルリーナさんとギルぐらいだ。

あとは新人冒険者の四人が追加されるぐらいになる。

あらためて考えると、一緒にパーティーを組んだり、依頼をこなしていないから、親しい冒険者がいないことに気付いた。

でも、今さらだ。ボッチは慣れているし、クマの装備があるからパーティーは必要はない。

強がっているわけじゃないよ。

「クリモニアに戻るときに、ルリーナさんからユナさんのお話がいろいろと聞けて楽しかったですよ」

なに、そのわたしの話って、個人情報を話すのはよくないことだよ。でも、ルリーナさんが知っていることってクリフも知っている気がするんだけど。そうなると、エレローラさんも知っていることになる。

「ユナさん、ルリーナさんの元仲間をボコボコに殴ったそうですね」

なるほど、そっちの話か。

たしかにデボラネ関係や冒険者ギルドの話ならルリーナさんの方が詳しく知っている。

「それから、冒険者ギルドの話も楽しかったです」

もしかして、ブラッディベアーのことかな? なにか、わたしが知らないことも話されている気がする。

あとで何を話したかルリーナさんを問い詰めないといけない。

「それで、ユナさん。これは乗り物ですか? もしかして、これに乗ってミリーラまで行くんですか?」

さっきから、気になっているのか、シアはクマバスの周りをぐるぐると回っている。

「そうだけど」

「それにしては大きくないですか?」

「そうね。いったい何人乗れるのかしら?」

そうかな? 荷物を運ぶ大型の馬車ならこのぐらいの大きさの馬車はあると思うんだけど。でも、馬が何頭も必要になる。

「孤児院の子供たちやお店で働いている人を全員連れて行くからね。これぐらい大きくないと全員乗れないから」

「でも、こんなに大きな物を、どうやって動かすんですか?」

シアが疑問を問う。シアがクマバスをぐるっと回り、ルリーナさんは正面からクマバスの顔を見ている。

「もしかしてくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが引っ張るんですか?」

やっぱり、そう思うの?

くまゆるとくまきゅうが聞いたら泣くよ。

「違うよ」

「それじゃ、馬なの? 何頭必要なのかしら?」

「それなら、馬車を数台用意した方がいいような」

ルリーナさんの言葉にシアが常識的なことを言う。まあ、同じ馬の数を使うなら、普通の馬車を使った方が使い勝手がいい。

でも、誰も魔力で動かすとは思わないんだね。

「わたしの魔力で動かすゴーレム馬車だよ」

「ゴーレム馬車? ユナちゃんの魔力で動かすの?」

「普通のゴーレムを動かすのと一緒だよ」

わたしは普通の土のクマゴーレムを作り、動かす。クマゴーレムはクマバスの周りを走る。

「これと一緒。かなり魔力を使うけど」

「かなり魔力を使うって、普通はゴーレムを作るのも難しいのに。なのに、こんなに大きい物を動かすって」

ルリーナさんは信じられないようにわたしとクマバスを見る。

そういえばマリナたちはわたしが大きなクマのゴーレムを作ったことは知っているけど、ルリーナさんは知らないんだよね。

「でも、相変わらず、ユナちゃんが作るのはクマなのね」

それは仕方ない。クマだとイメージが簡単で作れるし、同じ物を作った場合、魔力を抑えることもできる。さらにクマハウス同様に強度が高くなる。クマにするメリットが大き過ぎて、クマにしない理由がない。わたしが我慢さえすれば、魔力は抑えられ、子供たちの安全も得ることができる。

「ユナちゃん、ちょっと乗ってもいい?」

「ルリーナさんが、ミリーラに一緒に付いてきてくれれば、乗れますよ」

「あら、付いていっていいの?」

「今回の旅行にルリーナさんとギルも誘うつもりで、二人がクリモニアに戻ってきたら、冒険者ギルドから伝えてもらうことになっていたんですよ」

「そうなの?」

「なのに、全然戻ってこないし」

「ごめんね」

別に謝ることじゃないけど。一言、言いたくなる。

「でも、ユナちゃんの関係者が行く旅行なんでしょう?」

「ルリーナさんとギルの二人なら、子供たちも知っているし、問題はないですよ。それに誘ってもいない人もいますし」

わたしはチラッとクマバスを見ているシアを見る。

「それに子供たちも二人が来れば、喜びますよ」

「ふふ、そうね。わたしはともかく、ギルは男の子たちに人気があるよね。無口だけど、何だかんだで、面倒見がいいからね」

ギルは嫌がる様子もなく無表情の顔で子供たちと遊んでいる姿がある。

たまに頼んでもいないのに、孤児院に来ている。

「それで、ギルは一緒じゃないんですか?」

「一緒よ。わたしたちがユナちゃんの後を付けるって言ったら、ギルは『俺は戻る』って言って、街に帰ったわよ」

ギルらしい。でも、大きな体のギルがわたしの後を付けていたら、気づいていたかもしれない。

「だから、ルリーナさんとギルも行きませんか?」

「そうね。別に護衛ってわけじゃないんだよね」

「依頼料は出ないけど、泊まる場所と食事は出しますよ」

「泊まる場所って、あのでかいクマの家ね」

「見たんですか」

「ミリーラに行けば目立つから、誰でも知っているわよ。うん、いいわよ。付き合うよ。ギルにはわたしから言っておくわ」

ルリーナさんが来てくれるのは嬉しいけど、水着がない。今から作るにしても間に合わない。わたしがそのことを言うと。

「海で泳ぐ服装? 水着よね。去年ユーファリアに行ったときに買った水着を持っているから大丈夫よ。たぶん、体型も変わっていないはずだし」

ルリーナさんは自分の体を軽く触る。大人らしい体付きをしている。わたしも、ルリーナさんぐらいの年齢になればなれるから、慌てる必要はない。

あと、水着も気になったけど、聞きなれない地名が出てきた。

「なんですか、そのユーファリアって」

「ユナちゃん知らないの?」

はい、異世界から来ましたから、知りませんよ。そんなに驚かなくてもいいのに。

「ユーファリアは水の街とも呼ばれている。大きな湖がある街よ」

「とっても、美しい街なんですよ。お金持ちや貴族が暑い季節などに行ったりします」

ルリーナさんたちの話をまとめると、湖を中心に街が作られたみたいだ。

「たまたま、去年仕事でいくことになってね。そのときに水着を買ったのよ」

でも、そんな街があるんだ。一度は行ってみたいね。でも、水着になることに抵抗があるわたしが行くことはないだろう。