軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

335 クマさん、アンズのお店に向かう

わたしとティルミナさんは一緒にアンズのお店に向かう。『くまさんの憩いの店』からも見えるほど近くにある。

「そういえば、クマの馬車を作ったの? フィナとシュリの二人から話は聞いたんだけど、意味があまり分からなかったんだけど。シュリなんて『大きなクマさん』としか言わないし。フィナも『くまさんの乗り物です』って言うし。ユナちゃん、何を作ったの?」

たしかに、その説明だと意味不明だ。分かるのはクマの乗り物ってことぐらいだ。

「まあ、その、二人が言う通りです」

「クマなのか、馬なのかよく分からないんだけど。結局はどっちなの?」

「えっと、クマです」

「それじゃ、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが、荷台を引っ張るの?」

ティルミナさんはシュリと同じことを言う。さすが親子と言うべきか。

「引っ張りませんよ。わたしの魔力で動かすんですよ」

「そんなことができるの?」

ティルミナさんはわたしの言葉に驚いて立ち止まる。

「魔法みたいなものです」

「本当にユナちゃんは、不思議な女の子ね」

ティルミナさんは一瞬呆れるが、すぐに微笑む。

「それで、そのクマ馬車だっけ? そのクマ馬車はどのくらい速いの?」

クマ馬車って、クマなのか馬なのかよく分からない乗り物になっている。

「速さですか?」

「ベアートンネルに間に合うか、間に合わないかによって、ベアートンネルの前で泊まることになるでしょう」

今まで、避けてきたけど、あらためてティルミナさんの口からベアートンネルと聞くと、恥ずかしさが湧き上がってくる。

くそ、これも全て、ベアートンネルって名前を付けたクリフのせいだ。

時間を戻すスキルがあれば、戻って止めるのに、残念ながらそんなスキルは覚えていない。

フィナの話によればトンネルは片側交互通行になっている。夜は通行が禁止になる。それで翌日にはトンネルの行き来を逆にするって。つまり、トンネルが使用できる間にトンネルに到着しないと、ティルミナさんの言うとおり、トンネルの前で一泊、または二泊するはめになる。ちゃんと考えて出発しないといけない。

ミリーラはトンネルが近いから、クリモニアに来るのはいいけど、クリモニアからミリーラに行くとなると不便だね。

「それで、どうなの? それによっては出発時間や日にちを変えることも考えるけど」

昨日の乗った感じでは馬車よりは速い。でも、くまゆるやくまきゅうよりは遅い。はっきり言えばわたしの魔力次第だ。魔力次第で速度は変わる。

前にフィナとシュリとくまゆるとくまきゅうに乗って、ミリーラに行ったときは、4~5時間ぐらいだった。それよりも半分の速度としても、8~10時間ぐらいになる。

そもそも、くまゆるとくまきゅうが何キロで走っているかも分からないし、クマバスの速度も分からない。実際にくまゆるたちの半分の速度かも分からない。

これが車やバイクに乗って居れば体感的に分かったかもしれないが、免許も持っていないわたしは分かりようがない。

「はっきりはわからないけど、日の出に出発すれば、夕方にはミリーラに着くと思いますよ」

「そうなると、トンネルが通れるのはギリギリになるかしら?」

「間に合わせますよ」

間に合わなそうになれば、速度をあげればいい。最終手段は白クマ姿になる方法もある。

「大丈夫?」

「頑張ります」

「それじゃ、ユナちゃんを信じて、出発は日の出にしましょう」

出発はトンネルが通行日の日の出と同時となった。

話がまとまると、わたしたちはアンズのお店に向かって歩き出す。

「それと、ユナちゃんにお願いがあるんだけど」

ティルミナさんが少し言い難そうにする。

「なんですか?」

「街の領主の娘さん、ノアール様も一緒に行くのよね」

少し、不安そうにする。

「良い子だから、大丈夫ですよ」

「うん、それは分かっている。何度か会っているからね」

「それじゃ、どうかしたんですか?」

「その、ノアール様への連絡はユナちゃんにお願いしてもいい? フィナと一緒に会話をするのはいいけど。その、あのお屋敷に行くのはちょっと」

なるほど、領主であるクリフには会いたくないわけだ。

まあ、普通の感覚からしたら、クリフは領主様で、貴族様で、偉い人なんだよね。一般人は領主のお屋敷には行きたくはないだろう。

「いいですよ。わたしからノアには伝えておきます」

「ありがとうね」

話が終る頃にはアンズのお店に到着する。

昼食時間も終わっているので、「くまさんの憩いの店」と違ってお客さんはいない。「くまさんの憩いの店」はケーキやパンケーキなどのおやつがあるから、食事時間が終わっても、お客さんがいなくなることはない。

「ユナさんにティルミナさん?」

「あら、本当」

お店の中に入ると、テーブルを拭いているセーノさんとフォルネさんがわたしたちに気付く。

「二人そろって、どうしたんですか?」

「わたしはみんなに確認することがあって」

「わたしは食材の仕入れの件で話すことがあって、アンズちゃん、今大丈夫?」

それぞれが来た理由を答える。

「ちょっと待って、今確認してきます」

セーノさんが小走りでキッチンに向かう。しばらくすると、奥からアンズとペトルさんがやってくる。

「ユナさん、ティルミナさん、お話があるって聞いたんですが、なんですか?」

「今、大丈夫?」

「はい、見ての通り、お客様はいませんので」

「それじゃ、少しいいかしら」

「はい」

わたしたちは近くのテーブルに集まる。

話は忙しいティルミナさんからする。なんでも、話の内容は仕入れの件だそうだ。

「日持ちするもの以外は、注文しないで。あと、ミリーラから魚介類などの食材が届けられたら、休みの間は仕入れは忘れずに止めてもらって」

たしかに、誰もいないのに魚介類を届けられても困る。

「そうですよね。そうなると、最終日あたりは、大した料理をお出しすることができないね」

まあ、それは仕方ない。無駄に食材を余らせるよりはいい。

「あと、逆に余った食材があったら、わたしのアイテム袋に入れて運ぶから、ミリーラに行ったら使って」

「ユナちゃん。それなら、『くまさんの憩いの店』の食材もいいかしら? 卵に関しては商業ギルドで買い取ってくれることになっているから大丈夫だけど、他の食材がどうなるか分からないの」

「いいですよ。なんなら、卵もわたしがもらいますよ」

卵はいくらあっても無駄にならないからね。

「そのときはお願いね」

ティルミナさんが席を立つ。

「それじゃ、わたしは商業ギルドに行くけど。ユナちゃんは?」

「わたしはアンズたちに話があるから」

ティルミナさんは忙しそうに店を出ていってしまう。

「それで、ユナさんの話ってなんですか?」

わたしはお店を手伝ってくれているセーノさん、フォルネさん、ペトルさんの三人を見る。

「みんながミリーラに本当に帰るかの確認だよ。もし、嫌だったらクリモニアに残ってもいいよ。って、言いに来たの」

「ユナちゃん……」

わたしが言いたいことを理解した三人は真面目な表情でわたしを見つめ返す。

「その、ミリーラで嫌なことがあったでしょう。だから、無理に帰らなくてもと思ったの」

「ユナちゃん、心配してくれてありがとう」

「そのことは四人ですでに話し合って決めてあるから、大丈夫よ」

アンズを抜かした三人がお互いの顔を見て頷く。どうやら、四人とはアンズではなく、ここにいないニーフさんのことみたいだ。

「ミリーラの町に行くよ」

「嫌なこともあったけど、生まれ育った町だしね。それに知り合いもいるし、わたしたちが元気な姿も見せてあげたいしね」

三人の顔に嫌々な感じには見えない。本当に大丈夫みたいだ。

「無理はしていないんですよね」

三人は「うん」「ええ」「もちろん」と返事をする。

孤児院にいるニーフさんを入れれば四人はミリーラの町に行くそうだ。嫌なことはあったけど、その存在はクリフが排除してくれた。戻っても嫌なことにはならないはずだ。

「それにしてもユナちゃんは小さいのに優しいね」

小さいは関係ないよね。

「普通はそこまで気にかけないよ」

「そもそも、お店を休みにしてまで、全員を連れていくのがおかしい」

「普通は一人ずつよね」

「まあ、今回は働いているみんなで旅行だから。でも、みんなは住んでいた場所だから帰郷になるのかな? それにアンズをたまにデーガさんのところに帰すのも約束だからね。アンズは全然、休みを欲しいって言わないし」

「ユナさん。まだ、クリモニアに来て数ヶ月ですよ。普通はそんなに早く帰ったりしません。もし、そんなに早く戻ることがあれば、逃げ帰ったと思われます」

「そうなの?」

「修業で何年も帰れないこともあります。まして、ユナさんに自分のお店を任せられているのに、休みをくださいなんて言えません」

「それに6日に一度、休みをもらっているしね」

「それは疲れを取るための休みだよ。もしかして、アンズが男の人とデートするかもしれないでしょう」

「デート!?」

わたしの言葉にアンズが驚く。

「デーガさんに、婿を捜してくれって頼まれたけど。わたしじゃ、捜すことはできないから。せめて、休みをあげて、アンズに頑張ってもらう意味もあるよ」

「そんな、気遣いいりません!」

「もしかして、いるの?」

それなら、デーガさんに報告をしないといけない。でも、その男の人大丈夫かな?

デーガさんに殺されないかな?

でも、アンズの返答は違うものだった。

「い・ま・せ・ん!」

「そうなの?」

結婚したら、小さな可愛らしい家をプレゼントしようと思ったのに、残念だ。