軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334 クマさん、冒険者ギルドに行く

昨日は無事にミリーラに向かう乗り物、クマバスを作ったわたしは冒険者ギルドに向かっている。

よくよく考えたら、子供たちを守る護衛が必要と思ったためだ。わたしが24時間、子供たちを見ていられるわけじゃない。別々に行動するかもしれない。はっきり言って、旅行メンバーは子供や女性の割合が多い。大人の男性はゲンツさんぐらいだ。ゲンツさんはティルミナさんやフィナ、シュリと一緒にいたいだろうし、子供たちや女性陣の面倒を見てもらうわけにはいかない。

アンズやエレナさん、カリンさんリズさんといった若い女性もいる。変な男が近寄ってきても困る。親御さんから預かっている大事な従業員だ。そう考えると、子供たちだけでなく、女性陣の護衛も必要になってくる。

それで、思いついたのがギルだ。

ギルに変な男たちが近寄らないように威嚇してもらおうと思っている。ギルが近くに立っていれば、バカな真似をする者もいないはずだ。それは前にお店の護衛を頼んだときに実証済みだ。

それにギルなら子供たちも知っているし、お店にもよく来てくれるから適任だ。

冒険者ギルドに入り、周囲を見る。何組かの冒険者が椅子に座って雑談をしている姿はあるが、ギルとルリーナさんの姿が見当たらない。

仕事かな?

昼過ぎのこともあって、冒険者ギルドは暇そうだ。冒険者ギルドは朝と夕方が忙しい。

残っている冒険者は情報収集したり、新規でやってきた依頼を待っていたりする。

「ユナさん、どうかしたんですか?」

周りを見渡していると、受付に座っているヘレンさんが声をかけてくる。

「ルリーナさんとギルに会いたかったんだけど」

「ルリーナさんとギルさんですか? たしか、少し遠出しているはずですが」

「そうなの?」

それじゃ、一緒に海に行くのは無理かな?

「お二人に用事でしたか?」

「ちょっと、お願いしたいことがあって」

「それでは戻ってきましたら、お伝えしましょうか?」

いつ、戻ってくるか分からないなら、頼んだ方がいいかな。

出発するまでに戻ってきたら、お願いすればいいし。戻ってこなかったら、無かったことにすればいいだけだ。

「う~ん、それじゃ、お願いします」

わたしは孤児院の子供たちと一緒にミリーラの町に行くことを話す。それで、ルリーナさんとギルに護衛を頼む。

でも、実際は護衛も兼ねているけど、一緒に遊ばないかのお誘いだ。

仕事にすると真面目なギルだから、遊ばずに護衛をしそうな気がする。

「そういえば、ユナさんは孤児院の子供たちを連れて、ミリーラの町に行くんでしたね」

「あと、お店で働いているみんなもね。でも、なんで知っているんですか?」

お店にある告知とか見たのかな?

たしか、早々とティルミナさんがチラシを貼るとか言っていたし。

「ゲンツさんがミリーラの町に行くから、ギルマスに休暇のお願いをしていましたから知っています。それでゲンツさんは休みを貰うために、休みの日も仕事をしていますから、ギルド職員なら誰でも知っていますよ」

なるほど、ゲンツさん経由か。

「ゲンツさん。体とか、大丈夫?」

疲労なら神聖樹のお茶を持っていかないといけない。神聖樹のお茶は疲労回復の効果があるからね。せっかくの旅行の前に倒れでもしたら大変だ。

「それは大丈夫だと思いますよ。毎日、嬉しそうに仕事をしていますから」

なら、大丈夫かな。

「それにしても羨ましいです。わたしも海に行きたいです」

「それなら、ヘレンさんも一緒に行く?」

わたしがヘレンさんを誘うと 後ろでガタと音がするので、振り向くと男性冒険者たちがあからさまに視線をそらす。口笛を吹いて誤魔化す冒険者もいる。

鈍感のわたしでもわかる。どうやら、冒険者たちはヘレンさんに好意を持っているらしい。ヘレンさん美人だもんね。

「ヘレンさんなら歓迎しますよ」

別に数人増えてもクマバスの胴体を伸ばすだけだから、問題はない。

「ふふ、ありがとうございます。お言葉だけ貰っておきますね。今回はみなさんで楽しんできてください」

それは残念だ。いつもヘレンさんにはお世話になっているから、お礼ができればと思ったんだけど。

わたしはヘレンさんにルリーナさんとギルに伝言をお願いすると冒険者ギルドを後にする。

それから、わたしは「くまさんの憩いの店」に向かう。今日はお客様としてではなく、様子を見に行くので、裏口から入る。キッチンに入ると、皆が仕事をしている姿がある。昼食の時間も過ぎているので、 慌(あわただ) しさはない。それでも仕事は少なからずある。

子供たちがわたしに気付く。わたしに近寄りたそうにするが、我慢している。子供たちも成長しているみたいだ。なので、わたしの方から近寄って、「頑張ってね」と声をかけてあげる。

そんな感じで、キッチンをうろうろしているとモリンさんがやってくる。

「ユナちゃん、いらっしゃい。ティルミナさんから聞いたけど、本当に10日も休みにするのかい?」

「まあ、予定です。早く戻ってくるかもしれないし、余裕を持ってです」

早めに戻って、遊び疲れを取るために休んでもいいし。そもそも、わたしが休みを欲しい。

最近のわたしは仕事のし過ぎだと思う。少しぐらい休んでも良いはずだ。

「でも、10日も休むと、売り上げが……」

モリンさんもティルミナさんと同じ心配をする。

「大丈夫ですよ。みんなのお給金を減らしたりしませんから、楽しんでください」

「わたしはそんな心配をしているんじゃないけど……」

それじゃ、なんの心配だろう?

「ユナちゃんにメリットがあるのかい? お店を休みにすればお金は入ってこない。しかも、休んでる間もお給金を出す。わたしにはユナちゃんの考えが分からないよ」

普通に考えるとそうなるのかな?

しかも、モリンさんは休みなく働いてきた職人だから、そう思うのかもしれない。

「みんなが、頑張って働いているお礼ですよ」

「働かせてもらっている時点で、わたしは感謝しているよ」

「あと、モリンさんが引き抜きに合わないようにするためです。もし、引き抜きの話があったら言ってくださいね。それ以上の良い条件を提示しますから」

「ふふ、ここ以上に良いところはないよ」

モリンさんは笑う。

「でも、ティルミナさん、来ていたんですね」

「昨日も来たし、今も来ているよ。なんでも、エレナちゃんに話があるみたいで、今は休憩室でエレナちゃんと話しているよ」

「エレナさんと?」

わたしは気になったので、モリンさんと別れると、休憩室に向かう。休憩室に入るとモリンさんの言う通り、ティルミナさんとエレナさんがいる。

「ユナちゃん?」

「二人でどうしたんですか?」

なにを話しているか単刀直入に尋ねる。

「エレナちゃんに宿屋のことをお願いをしていたの」

「宿屋?」

「前に話したでしょう。前に鳥をお世話に来た人は、わたしたちが教える立場で、商業ギルドのお願いってこともあって、泊まる場所は商業ギルドが用意したけど。今回はわたしたちがお願いして呼ぶから、泊まる場所はわたしたちが確保しないといけないわねって、話したでしょう」

したっけ? もしかするとしたかもしれないけど、覚えていない。

ティルミナさんが言うんだから、そうなんだろう。

「それでエレナちゃんに宿屋の確保をお願いしていたの」

エレナさんの実家は宿屋だもんね。

「人数は聞いていた通り、四人でいいんですね?」

「ええ、あとは商業ギルドの方でも手伝ってくれることになっているから」

「それじゃ、今日、帰ったらお父さんに伝えておきますね」

「おねがいね」

ティルミナさんは慌ただしく席を立つ。

「それじゃ、わたしはアンズちゃんのお店に行くから」

なにか、ティルミナさんは忙しそうだ。ティルミナさんはモリンさんに挨拶をして、お店から出ていく。わたしも、ティルミナさんに続いて、お店を出る。そして、ティルミナさんの後を追いかける。

決して、暇だからじゃないよ。ミリーラの町に行く前にアンズに話すことがあるからだよ。

「ティルミナさん、忙しそうですね」

わたしがそう言うと、わたしに視線を向ける。その目は「誰のせいだと思っているの?」と語っている。言葉を口にしないでも伝わってきた。

「ごめんなさい」

「ふふ、なに謝っているの?」

ティルミナさんの表情が笑顔に変わる。

だって、「目は口ほどに物を言う」って言うし。

「わたしのせいで、迷惑をかけているみたいだから」

「確かにユナちゃんのおかげで大変だけど。忙しいのは楽しいから」

「そうなんですか?」

わたしは暇の方が嬉しいけど。

もしかして、ティルミナさんってM?

「知っていると思うけど。わたしは病気のせいで、長い間、ベッドの上で動けなかったでしょう。だから、こうやって動けるのが嬉しいし、みんなのために頑張れるのが楽しいの。だから、ユナちゃんがバカなことをするお手伝いするのは楽しいから」

バカなことってなに?

バカなことをした記憶はないよ。

「それに海なんて二度と見ることなんて、できないと思っていたし、ユナちゃんには感謝しているのよ。だから、少しぐらい忙しくても大丈夫よ」

「わたしが言うのもなんだけど、無理はしないでくださいね。また、倒れでもしたらフィナやシュリが悲しみますから」

「ふふ、そうね。ユナちゃん、心配してくれてありがとうね」

ティルミナさんは、横を歩くわたしの頭を撫でる。