軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

320 クマさん、水晶板を手に入れる

地上に出たわたしは辺りを見渡す。

「えっと、ここは?」

後ろを見ると、ピラミッドがある。でも、入り口はない。どうやら、ピラミッドの裏側に出てしまったみたいだ。

みんなは居るかな?

探知スキルを使うと、ピラミッドの入口辺りに人の反応がある。

せっかく、スコルピオンを倒したのに、誰もいなかったら寂しいからね。

わたしは登ってきた穴を塞ぐ。そして、くまゆるに乗ると、ピラミッドの入口に向かう。

トコトコとくまゆるが砂漠を走る。探知スキルには人の数が5人しか反応が無かった。周囲を見てもウラガンの姿は見えない。

解体は終わって、街に帰ったのかな?

くまゆるに乗ってピラミッドをぐるっと周りを走っていると、前方から凄い速さで白いものがやってくる。

クマだ。いや、くまきゅうだ。

カリーナを乗せたくまきゅうが砂煙を立てながらやってくる。カリーナが一生懸命に振り落とされないようにしている姿がある。まあ、そんなにしがみつかなくても落ちないけど、今のカリーナはそれどころじゃないみたいだ。

わたしはくまゆるから降りる。このままだと、くまゆるとくまきゅうがぶつかってしまう。

「くまきゅう。ストップ。ストップ。止まって!」

くまきゅうは速度を落として、わたしに擦り寄ってくる。

「くぅ~ん、くぅ~ん」

「くまきゅう、ただいま」

くまきゅうの頭や顎などを撫でてあげる。くまきゅうは嬉しそうにする。

「ちゃんと、カリーナを守ってくれたんだね。ありがとうね」

「くぅ~ん」

わたしがくまきゅうを構っていると、くまきゅうにしがみついていたカリーナが顔を上げる。

「ユ、ユナさん!?」

カリーナはくまきゅうから降りてくると、わたしに抱き付いてくる。

「ユナさん、無事だったんですね。わたし、心配したんですよ」

「くぅ~ん」

負けじとくまきゅうも擦り寄ってくる。

さらにカリーナも押してくる。

「二人とも、落ち着いて」

「ユナさん!」

「くぅ~ん」

わたしは耐え切れなくなって、後ろに倒れてしまう。もちろん、踏ん張れば押し返すことはできたけど、カリーナやくまきゅう相手にそんなことはできない。

倒れたわたしに二人は伸し掛かってくる。

そんなわたしをくまゆるが覗き込む。

「くまゆる、タ・ス・ケ・テ」

くまゆるに助けを求めると、「くぅ~ん」と鳴くだけで、助けようとしてくれない。

ヒドイ。

とりあえず、二人にはどいてもらい、立ち上がる。

どうやら、かなり心配をかけたみたいだ。

「無事で良かった」

カリーナは涙目になっている。

頭を撫でて、慰めていると、ラガルートに乗ったジェイドさんたちがやってくる。

「ユナ!?」

「くまきゅうちゃんがいきなり走り出すから、なにごとかと思ったわよ」

「くまきゅうが走り出して驚いた」

ジェイドさんにメルさん、セニアさんがやってくる。

でも、トウヤの姿は見えない。

「えっと、ただいま戻りました」

「それで、どうしてユナが外にいるんだ。俺たちは入口で待っていたんだぞ」

「戻るのが面倒だから、魔法でちょちょいっと穴を掘って」

「ちょちょいって」

メルさんたちが呆れた表情になる。

なにか、前にも同じようなやりとりをしたような気がする。

「それで魔物は倒せたのか?」

「まあ、一応」

その言葉で全員が驚く。

「それでジェイドさんたちにお願いがあるんだけど、解体をお願いしてもいいですか? もちろん、お礼をしますので」

わたしには解体はできない。クリモニアに持って帰ってフィナに頼むわけにもいかない。

一度、街に戻ってバーリマさんに解体できる人を頼むこともできるけど。それだと、スコルピオンを見られることになる。それだと、いろいろと面倒になる。それならスコルピオンのことを知っているジェイドさんたちに頼んだ方がいい。

「別にお礼はいらないよ。あの魔物の解体の経験ができるだけでも十分だ」

「経験をしたとしても、今後わたしたちがあの魔物を解体することがあるか、わからないけどね」

ジェイドさんたちは快く解体を承諾してくれる。

わたしたちは解体するためにピラミッドの入口まで移動することになった。わたしがくまゆるに乗ろうとするとくまきゅうが悲しそうに「くぅ~ん」と鳴く。

くまきゅうがわたしから離れようとしない。どうやら、わたしに乗ってほしいみたいだ。

「くまきゅうちゃん。初めの頃は大丈夫だったけど途中から寂しそうにしていたからね」

今日はくまきゅうにはカリーナの護衛をお願いをして、乗ってあげていないからね。

「カリーナ、今度はくまゆるに乗ってもらえる?」

「は、はい。わかりました。くまゆるちゃん、お願いします」

「くぅ~ん」

くまゆるも素直に従い。カリーナを乗せる。

うん、ここでくまゆるが我儘を言わないでよかった。二人がわたしに乗ってほしいと言っても、体は1つしかないからね。

くまゆるもくまきゅうも気が利くから助かる。わたしがくまきゅうに乗るとくまきゅうは嬉しそうに走り出す。

「ま、待ってください」

くまゆるに乗ったカリーナが追いかけてくる。そのあとにジェイドさんたちも追いかけてくる。

ピラミッドの入口にやってくると、トウヤが寂しそうに一人で立っていた。

「みんな、ひでえよ。俺を置いて行くなんて」

「だって、いきなりくまきゅうちゃんが走り出すから」

「寝ているのが悪い」

トウヤはメルさんとセニアさんに邪険にされる。

でも、人が戦っているときに寝ていたの? もっとも、わたしもさっきまで寝ていたから人のことは言えないけど。

「仕方ねえだろう。解体で疲れたんだから」

「それはみんな一緒」

「ジェイド~」

トウヤは助けを求めるようにジェイドさんを見る。

「すまない。忘れていた」

「ジェイド~~~~~~」

トウヤの叫びが砂漠に広がった。

まあ、そんなトウヤは放っておくことにして辺りを見る。

「えっと、ウラガンさんたちは?」

探知スキルでいないことは分かっているけど、一応確認する。

「解体が終わったから、街に戻ったわよ。初めはユナちゃんのことを待つみたいなことを言っていたけど、解体で疲れたみたいでね」

「俺たちも解体を手伝ったんだぜ」

それでトウヤは疲れて寝てしまったと。

まあ、その前には魔物と戦ったり、緊張で疲れていたこともあるかもしれない。

そう考えると、ジェイドさんたちは凄い。

「それで、どこで解体をする? ユナ、持っているんだよな?」

わたしはジェイドさんの言葉に頷く。すでにブラックバイパーや今回のワームの件でわたしが大きなアイテム袋を持っていることは知っている。

「外だと砂が付くし、あのピラミッドの中でいいんじゃないか?」

「そうね。あそこは安全確認したし、広さも十分にあるしね」

わたしとしても問題はない。

ジェイドさんの提案に頷き、解体場所は迷宮の入口の空間となった。

わたしは迷宮の入口に移動すると、クマボックスから大きなスコルピオンを出す。

「本当に倒したんだな」

「大きいわね」

全員がスコルピオンの周りを一周する。

「尻尾がないな。切ったのか」

「背中にもナイフで切った跡がある」

スコルピオンの背中に乗っているセニアさんが答える。

でも、それはダメージを与えることはできなかったんだよね。

「でも、致命傷はなに?」

「尻尾じゃないか?」

「尻尾を切ったぐらいで、倒せるなら、誰も苦労はしない」

「それじゃ、どうやって倒したんだ?」

全員の視線がわたしに向く。

「そこはちょちょいと」

「「「「…………」」」」

みんなの視線が痛い。

クマの転移門を使って、海水で溺れさせたとは言えない。

クマボックスに入ったときに海水は取れているみたいで、スコルピオンは濡れていない。でも、体の中に海水が入っている可能性もある。

そこまで考えていなかった。どうか、海水は出てきませんように。

わたしは神様に祈る。

頭にわたしをこの世界に連れてきたと思われるクマ神様が頭に浮かぶ。

凄く、当てになりそうもない。

「でも、本当にユナさんがこんなに大きな魔物を……」

カリーナは恐る恐る、小さな手でスコルピオンに触れようとする。

その姿を見るとイタズラ心が湧いてくる。わたしは、そっと静かにカリーナの後ろに移動する。そして、耳元で。

「うわっ!」

「きゃ!」

カリーナは驚いて腰を落とす。

「大丈夫?」

「ユ、ユナさん……」

カリーナはわたしのことを涙目になりながら訴えるように見る。

ちょっとやり過ぎたかな。

「ゴメンね」

「ユナさん、ヒドイです。わたし、死ぬかと思いました」

「ゴメン、ゴメン。恐る恐る触れようとしているカリーナを見たら、可愛くて、ついね」

「ついじゃありません。本当に驚いたんですよ。死ぬかと思ったんですよ」

「もしかして、漏らした?」

小さい声で尋ねる。

カリーナはわたしの言葉にみるみると頬を赤めていく。

「も、漏らしていません! もう、ユナさんなんて知りません!」

どうやら、怒らせてしまったみたいだ。

お遊びだったんだけど、見事に失敗してしまった。

「カリーナ、ごめんね。カリーナが可愛かったから」

「そんな可愛い格好をしているユナさんに言われたくありません」

カリーナがわたしの方を向いてくれない。

10歳の女の子の扱いは難しいね。わたしの10歳のときはどうだったかな?

思い出してみる。うん、可愛らしい女の子だったね。本当だよ。

「そろそろ解体を始めたいんだがいいか」

ジェイドさんたちが呆れた顔でわたしたちを見ている。

「「すみません」」

わたしとカリーナはジェイドさんたちに頭を下げて謝る。

「それで、カリーナの探し物を取り出すだけでいいんだよな?」

「わたしはそれで構いません」

カリーナがわたしの方を見る。

たしかにスコルピオンの解体は今回の依頼に入っていない。

「時間がかかるから、いいですよ。クリモニアに帰ったときにでもしますから」

本当はお願いをしたいところだ。

フィナに頼むにしても、一人じゃできそうもない。ゲンツさんや冒険者ギルドに頼むと、いろいろとスコルピオンについて聞かれると面倒だから、ジェイドさんたちにお願いしたい。

でも、さすがに大きなスコルピオンを解体することになれば時間がかかる。だから、今日は水晶板を手に入れることを優先する。

「カリーナ。どの辺りにあるか、分かるか?」

ジェイドさんに尋ねられたカリーナはスコルピオンに近づく。そして、ぐるっと一周する。

「ここの辺りです」

スコルピオンの後ろ、尻尾に近い箇所を指す。

「ここか、この甲殻を外さないと駄目だな。トウヤ、ここの甲殻を外すぞ」

スコルピオンは甲殻がザリガニやエビが尻尾が反り返るように甲殻は繋がるようになっている。そして、繋ぎ目には溝がある。

ジェイドさんは後ろから二番目の甲殻を外すように指示を出す。ジェイドさんとトウヤはナイフを取り出すと、溝にナイフを入れる。

「硬いな」

「セニア、メルも頼む」

「仕方ないわね」

4人がかりで、甲殻の一部を外す。

改めて、甲殻を見ると10cm近くの厚みがある。これは、軽くナイフを刺した程度じゃ駄目だね。

ジェイドさんはカリーナの指示通りの箇所を解体すると、青色の水晶板が出てくる。

「そ、それです!」

カリーナは嬉しそうに駆け寄って、水晶板を受け取る。

もちろん、メルさんが綺麗に水で洗ってから渡したよ。

海水も出てこなくて良かった。出てきたら説明が面倒だったからね。

「これで依頼も終わりだな」

「それにしても、この甲殻は硬いな」

トウヤがコンコンと叩く。

「そうね。鉄より軽いし、防具に最適かもね」

ゲームだと違和感なく、倒した魔物の素材で防具を作ったりするけど。いざ、目の前にすると、どうやって防具にするのかな?

「そうだな。鎧は好きじゃないから、籠手にいいな」

「軽くていいかもな」

「それじゃ、その剥ぎ取った甲殻、ジェイドさんたちにあげますよ」

「いいのか!?」

ジェイドさんでなく、トウヤが喜ぶ。

わたしには必要はないからね。

「いや、こんなものを貰うわけにいかない。これはユナが倒したんだ」

「ジェイド、せっかく嬢ちゃんがくれるって言うんだからよ」

トウヤは欲しいみたいだ。

「それじゃ、お願いを聞いてくれませんか?」

「お願い?」

「わたしがこのスコルピオンを倒したことは誰にも言わないでもらえますか」

「どうしてだ。冒険者ギルドに報告しないのか?」

「しませんよ。報告したら、いろいろと面倒なことになりますから」

「わからないぜ。俺なら自慢気に言うけどな」

「別に取り引きをしなくても、ユナちゃんが言ってほしくないなら、誰にも言わないわよ」

「しない」

全員がトウヤを見る。

「俺だって、そんな甲殻を貰ったりしなくても、話したりしないぜ」

「…………」

なんだろう。ジェイドさんたちと違ってトウヤの言葉に信用がないのは。

ジェイドさんは考え込んでいる。

「でも、それならウラガンたちにも頼まないといけないな」

「ウラガンもスコルピオンのことを知っているの?」

「ああ、ユナがいないことを聞かれて、戦っていることを話した」

たしかにそうなると、口止めが必要かな?

「まあ、そのことについては帰ってから話そう」

わたしは外した甲殻を含めて、スコルピオンをクマボックスに仕舞う。

あとは水晶板の地図を使って、魔石の交換だけど、水晶板のことは秘密になっている。それに時間もそろそろ、日が沈む頃だ。

一度、バーリマさんに報告を兼ねて戻ることになった。