軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

318 クマさん、チートスキルを活用する

スコルピオンの背中に乗るわたしにめがけて、尻尾が襲いかかってくる。わたしは跳んで躱す。でも、中途半端に跳んだのが失敗だった。尻尾が振り子のように戻ってきて、空中にいるわたしを襲う。

わたしは振り戻ってきた尻尾に弾き飛ばされる。吹っ飛ばされたわたしは壁の近くまで転がった。

気を抜いたわけじゃないけど。まだ、ゲーム感覚でいるのかな?

ゲームならダメージを喰らっても、回復アイテムがある。だから、多少、強引な戦い方になっても問題はない。逆にダメージ覚悟で戦う場合もある。

この世界には回復薬なんてものはない。(今のところ見たことがない)

だから、もしものことを考えれば、もう少し慎重に戦わないといけない。

普通に考えて、吹っ飛ばされるところを他の人が見て、無傷だったら怪しまれるものね。

カリーナだって、ワームに吹っ飛ばされたときは泣くほど 喚(わめ) いていた。これから、慎重って言葉を心に刻むことにしよう。

どことなく、「すぐに忘れるんだろう」って神の声が聞こえてきそうだけど。一時は忘れても心に刻んでおけば思い出すかもしれない。

クマさんパペットを地面に手を付けて立ち上がろうとする。手の先には水溜りがあり、クマさんパペットが水溜まりに入る。どうやら、わたしは水溜りに吹っ飛ばされたみたいだ。

これが神様から貰ったクマの着ぐるみじゃなかったら、白いお腹が真っ黒に汚れていたよ。

でも、水?

わたしは周囲を見る。周囲には水溜まりがあちらこちらにできている。初めの頃には無かったものだ。

たぶん、わたしが水魔法を放ったことでできた水溜まりだ。

どうやら、ここの地層は岩盤になっている。土や砂みたいに水が吸い込まない。水捌けが悪く、水溜まりができたみたいだ。

なにか、良い方法が頭に浮かんでくる。

でも、あれを魔法でやるには疲れる。白クマに着替えるのも面倒だ。それにどれほど時間がかかるかわからない。でも、あれを使えば……。

うん、これならできそうだ。

わたしは土のクマのゴーレムを5体ほど作り出す。目の前にクマのゴーレムが並ぶ。そして、スコルピオンに向けて、クマのゴーレムを放つ。ゴーレムには攻撃はさせずに、スコルピオンの周囲を走らせ、注意を引いてもらう。その間にわたしは壁沿いを走る。

壁沿いを走るわたしは、壁に空いている穴を土魔法で埋めていく。たまに小さなスコルピオンの姿が見えたりして驚くけど、気にしないで穴を塞いでいく。

その間もクマのゴーレムがスコルピオンの周りを走って注意を引いてくれるが、クマのゴーレムは硬い鋏に叩きつけられたり、尻尾の攻撃によって破壊されていく。わたしはクマのゴーレムが破壊されるのを見ながらも洞窟内の穴を埋めていく。

そして、最後のクマのゴーレムが鋏に掴まり、握り潰される。

土で作ったとはいえ、クマが破壊されるのは気分が悪いね。

でも、クマのゴーレムのおかげで、この洞窟の部屋を一周することができた。これで、スコルピオンを倒す準備は整った。

このままスコルピオンを倒す作業に取り掛かってもいいけど、それだとわたしの気が収まらない。さっき吹っ飛ばされたお返しがすんでいない。それにクマのゴーレムも破壊されたしね。その分はしっかりと利子を付けて、返してもらうことにする。

わたしは再度、土のゴーレムを作り、スコルピオンの目の前を走らせる。スコルピオンの注意がクマのゴーレムにいっている間に、死角からスコルピオンに近付く。そして、動くスコルピオンの背中に乗る。背中に乗られたことに気付いたスコルピオンは尻尾を振り下ろすがわたしは躱し、尻尾の付け根のところまでやってくる。

ここじゃ、尻尾で攻撃することも鋏で攻撃することもできないよね。

握り締めるくまゆるナイフをスコルピオンの尻尾の付け根に向けて突き刺す。これだけじゃ太くて切り落とすことはできない。ナイフを一度引き抜き、もう一度突き刺そうとした瞬間、スコルピオンが体を回転させて、わたしを振り落とそうとする。

とっさに、くまゆるナイフを突き刺して、振り落とされないようにする。

スコルピオンは回転を止めない。左手に持つくまきゅうナイフも突き刺し、体の手前にナイフを引く。尻尾の付け根部分が切り開かれる。

ナイフで切り裂いた場所に右手のクマさんパペットを入れる。気持ち悪いが我慢する。

スコルピオンは「ギギギギギギ」と鳴きながら、逆回転をしてわたしを落とそうとする。でも、左手のクマさんパペットで尻尾を掴み、振り落とされないようにする。

そして、右手のクマさんパペットに魔力を集めてベアーカッターを放つ。

ベアーカッター、ベアーカッター、ベアーカッター、ベアーカッター、ベアーカッター。

スコルピオンから「ギギギギギギ」と悲鳴のような声が口から漏れる。そして、回転が止まると同時に、尻尾が切れ、遠心力の力もあって、わたしは尻尾と一緒に壁まで飛ばされる。

尻尾を切られたスコルピオンは口を高速でカチカチカチカチと鳴らし、目をギョロギョロとさせる。

ちょっと、怒らせちゃったかな。

でも、さっきのお返しはした。

本当なら、2ラウンド目に突入しても良かったんだけど。水晶板のことを考えると、攻撃はここまでとする。

怒ったスコルピオンは体を一度起き上がらせると、わたしめがけて凄い速さで迫ってくる。クマ靴に力を入れて、天井近くまで飛び上がる。

スコルピオンは壁にぶち当たる。

そうとう、頭に血が上っているみたいだ。

わたしは天井付近の壁際に土魔法で足場を作って、着地する。

スコルピオンはわたしを見付けることができずに怒り狂っている。残っていたクマのゴーレムを破壊するが、気が収まらないのか、周囲を見てわたしを捜している。

たとえ、上にいるわたしを見つけることができたとしても、尻尾がないから、針を飛ばすこともできない。

それじゃ、討伐の準備をしますか。

わたしは土魔法で足場を広げる。そして、クマの転移門を作り出す。それも一個ではない。並べるようにクマの転移門A、クマの転移門B、クマの転移門C、クマの転移門D、クマの転移門Eとする。そして、転移門Aを使って、ミリーラの町にあるクマハウスに転移する。

久しぶりのミリーラの町だ。

長居をしている暇はないので、すぐにクマハウスを出る。

外に出ると、いろいろと開発が始まって、建物が建っている。でも、クマハウスの周辺だけは開発がすすんでいない。まるで、わたしのクマハウスを避けるように建物が建っている。

もしかして、避けられている?

まあ、今はそんなことを考えている場合じゃない。クマハウスを出たわたしは海岸を目指して、走り出す。クマハウスを出てしばらくすると、トンネルとミリーラの町を繋ぐ道に出る。わたしは道を越え、海岸に出る。そして、海岸沿いの人が来ないところまで移動する。

ここまで来ればいいかな?

ここに来るまでに数人の人に見られたけど。気にしないでおく。今はそれどころじゃないからね。

わたしは海岸の近くに2メートルほどの深さの溝のような穴を掘る。その溝の穴にクマの転移門a、クマの転移門b、クマの転移門c、クマの転移門dを設置する。クマの転移門eは溝の上に普通に設置する。

そして、AaとBbとCcとDdとEeのクマの転移門を繋げる。

わたしは転移門eを使って洞窟に戻ってくる。そして、下を見る。

まだ、怒っているね。これは頭を冷やしてあげないと駄目だね。

わたしは海に戻ってくると、ダムの壁を壊すようにクマの転移門と海の間にある、溝の壁を取り外す。すると、大量の海水がクマの転移門に向けて流れ込んでくる。

わたしはクマの転移門Eを使って洞窟に戻る。

大量の海水がクマの転移門ABCDから、滝のように流れ落ちていく。

海水はスコルピオンの体に降り注ぐ。これで、少しは頭が冷えたかな?

上から様子を見ると頭が冷えるどころか「ギギギギギギ」と唸り、さらに怒りが増したようにも感じる。

でも、これでお仕舞いだ。スコルピオンには海水の中に沈んでもらうことにする。

あとの不安はスコルピオンが壁を登ってくることだ。

小さなスコルピオンは登っていたが、大きなスコルピオンはウロウロと動き回るだけで、壁を登ろうとはしない。もしかして、大きすぎて壁は登れないのかな?

もし登ってくるようだったら、撃ち落そうと思ったけど、その心配も無さそうだ。

クマの転移門から滝のように水が流れ、水位が上がっていくがまだ時間がかかりそうだ。

わたしはくまゆるに監視をお願いするために召喚する。すると、くまゆるはすぐにわたしに擦り寄ってくる。「くぅ~ん」「くぅ~ん」「くぅ~ん」と怒っているような、文句を言っているようにも感じる。

「心配かけてごめんね」

「くぅ~ん」

「もう、大丈夫だから」

「くぅ~ん」

くまゆるを撫でたり、抱きしめてあげると、やっとのことでくまゆるが許してくれる。

心配してくれるのは嬉しいけど、わたしの気持ちも分かってほしいな。

「それじゃ、しばらく休むからスコルピオンがなにかしてきたら教えて」

頼まれたくまゆるは嬉しいのか「くぅ~ん」と嬉しそうに鳴く。

わたしはくまゆるのお腹に寄りかかって、滝のように流れる落ちる海水の音を聞きながら休むことにする。

くまゆるに抱きついて横になっていると、気持ちよくなっていく。滝のように落ちる水音も意外と悪くない。

う~ん、くまゆるのお腹が気持ちいい。

長い間、夢と現実の間でウトウトしていると体が揺れる。

なに?

目を開けると、くまゆるがわたしの体を揺すっていた。

「くまゆる?」

「くぅ~ん」

未だに「ざ~~~~~~~」と滝のように流れ落ちる音がしている。よく、こんなところで半分寝ていたと思う。疲れていたのかな?

「なにかあった?」

「くぅ~ん」

わたしは立ち上がり、スコルピオンの様子を窺う。

洞窟の底ではスコルピオンが動かずにいる。死んだかな?

わたしは探知スキルで確認する。洞窟の底と探知スキルに出ている魔物の位置を確認する。反応はない。討伐完了だ。

教えてくれたくまゆるにお礼を言う。

そして、海水の流れを止めるため、クマの転移門Eを使って海岸に転移する。海岸に転移したわたしは、土魔法で防壁を作ってクマの転移門に流れる海水を止める。海水を止めると転移門の門を閉めて、転移門abcdeを回収する。

面倒だけど、ミリーラのクマハウスまで戻り、クマハウスにあるクマの転移門を使って洞窟に転移する。そして、洞窟にあるクマの転移門も回収して、終了だ。

さて、あとの問題はどうやって、スコルピオンを回収するかだけど、それは考え済みだ。

横穴を掘ると海水を出すには時間がかかる。それにどこかに海水を逃がす空間がないと流すこともできない。だから、海水はこのままにして、スコルピオンだけを回収することにした。

わたしは自分の周りに風魔法でシャボン玉のような空気玉を作る。

前にクラーケンを討伐しようとして考えた方法の1つだ。

これなら、戦うことはできなくても、短い間なら水の中に潜ることができる。

「それじゃ、ちょっと回収してくるから、待っててね」

くまゆるに待つように言って、わたしは海水の中に入っていく。わたしが入った空気玉はゆっくりと下がり、大きなスコルピオンのところまで降りてくる。そして、到着するとスコルピオンに手を伸ばしてクマボックスに回収する。

これで任務完了。ついでに初めの頃に倒した小さなスコルピオンや切った尻尾も回収しておく。

「ただいま」

あとはカリーナのところに戻るだけだ。

でも、帰り道がないことに気付く。わたしが入ってきた通路は海水の中だ。

まあ、出口が無ければ、地上に向けて掘ればいいだけだ。わたしは登り階段を作るように、掘ることにする。

岩を掘り、砂を掘り、上にあがっていく。途中で空間に出たが、気にせずに階段を作り上に向かう。

面倒だからね。

そして、ついに地上に出る。

おお、眩しい。わたしはクマさんフードを深く被り、光を遮断する。

無事に出られた。

海水はあのままにして戻ってきたけど、良いよね。

のちに、この海水は冒険者によって発見され、研究者がこのピラミッドの地下に海水や、魚がいたことの研究をしたのは別のお話。

…………わたしのせいじゃないよね。