軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

314 クマさん、迷宮をクリアした者の名を聞いて驚く

「それにしても、話は聞いていたけど本当に凄い数ね」

メルさんが無数にある迷宮の入口を見る。

確かに多い。もし、ゲームに実装されたらクレームの嵐だ。ネットで炎上するのは間違いない。

「これじゃ、誰も迷宮に挑戦しようとは思わないわね」

「それに数百年前に攻略されているらしいから、余計に挑戦する者もいないだろう。中にお宝が残っていると言う者もいるが、メリットが無さ過ぎる。もし、迷宮をクリアしてもなにも無ければ、無駄骨だからな。そんな可能性が低いことに挑戦するバカはいないしな」

たしかに、これだけの迷宮をクリアしても、何もなかったら無駄骨だ。時間の無駄だし、なんの得にもならない。そこまでして、迷宮に入ってお宝を探そうと思う者はたしかにいない。

もし、そこに大きな魔石があったとしたら、挑戦する冒険者はいたかもしれない。でも、クラーケン並の魔物討伐を考えれば迷宮の方がいいのかな?

わたしが普通の冒険者なら、どっちも割りが合わないような気がする。

「ユナ。俺たちは少し調べてくるから、待っていてくれ」

ジェイドさんたちは安全を確認しに周辺の見回りに行ってしまう。探知スキルで確認したけど、魔物はいない。でも、危険な物があるかもしれないのでジェイドさんにお願いをする。わたしじゃわからないこともある。

「それにしても、カリーナのご先祖様はよく迷宮を突破することができたね」

わたしは見上げて無数にある入口を見る。

カリーナのご先祖様凄すぎだ。そもそも、よくこんな鬼畜なピラミッドの迷宮に挑戦しようと思ったものだ。

もし、わたしがクリアを目指すとしたら、通路を破壊して目的地を無理やり探していたかもしれない。もちろん、ピラミッドの形は保証しない。跡形も無くなっている可能性が高い。お宝だけを手にいれるなら、それでもいいんだけど。

水の魔石を増幅する力が、このピラミッドにあることを知っている。だから、ピラミッドを破壊してクリアをするわけにもいかない。

「それは同じパーティーにいたエルフのムムルート様って方が、迷宮をクリアするのに凄く貢献したと聞いています」

「ムムルート? エルフ?」

どこかで聞いたことがあるような。

……う~ん、ちょっと思い出せない。どこだったかな?

「罠はドワーフのコディルコ様が、解除して進んだと聞いてます。もちろん、わたしのご先祖様も迷宮をクリアするのに貢献をしたと聞いています」

ドワーフのコディルコは聞いたことはないけど、ムムルートはどこかで聞いたことがあるような。どこだったかな?

絶対に聞いたことがあるはずなんだけど。

ムムムム。口をへの字にして考える。

「どうかしたのですか?」

「いや、そのムムルートって名前に聞き覚えがあって」

「ムムルート様ですか? もしかして、他の迷宮でも活躍しているとかですか?」

そんなんじゃないと思う。そもそも、昔の冒険者の伝説やお話は何も知らない。どっか、別のところで聞いたはずだ。

エルフと言えばサーニャさんだよね。それからルイミンに。母親がタリアさん父親が……。

「……あっ! 思い出した」

わたしは手をポンと叩けないけど叩く。

お爺ちゃんだ。

サーニャさんのお爺ちゃんで、エルフの里の村長のムムルートさんだよ。やっと、思い出してスッキリする。

別に忘れていたわけじゃないけど。ちょっと、物忘れをしただけだ。誰だって、名前の1つや2つ思い出せないことぐらいあるよね。

誰かに言い訳をするように自分に言い聞かせる。

「なにか、思い出したのですか?」

「そのムムルートさんってエルフなんだよね」

「はい」

「男の人?」

「はい。男性と聞いています」

「もしかすると、知っているエルフかも」

「えっ…………」

わたしの言葉にカリーナが信じられなそうな表情をする。

そりゃ、数百年前にこの迷宮をクリアした人物と知り合いと言えば驚くよね。

「ちょっと、エルフに知り合いがいるんだけど、その人がムムルートさんって言うの。エルフの里の村長をしているし、孫もいるから、年齢的に合っていると思うんだけど」

確か数百歳のはずだ。

でも同姓同名同種族ってこともある。でも可能性は高い。

クマの転移門もあるし、今度ちょっと行って、話を聞いてみようかな?

もし覚えていたら、当時の話を聴けるかもしれない。ムムルートさんが覚えていればだけど。なんと言っても数百年前のことだ。忘れている可能性もある。

「今度、会ったときに聞いてみるよ。本当なら凄いからね」

わたしがそう言ったとき、カリーナの表情が一瞬暗くなったような気がした。でも、もう一度見たときには、笑顔で「はい、お願いしますね。わたしもお話が聞いてみたいです」と返事をした。

どうやら、表情が暗く見えたのは気のせいだったみたいだ。

そして、周囲を見回っていたジェイドさんたちが戻ってくる。

「とくに危険はないみたいだな」

「それで、わたしたちは下に行くのでいいのよね」

わたしたちの目的は迷宮のクリアではなく。地下に落ちた水晶板を見つけることだ。

だから、地下に行くことになる。

もちろん、上の迷宮に興味無いかと問われれば、あると答えるけど。水晶板の地図を見つければ、どっちにしろ行くことになる。行くなら、地図があった方がいい。

わたしたちは水晶板を求めて階段を下りていく。

階段を下りると、ピラミッドの人工物から自然に作りあげられた洞窟へと変わる。階段から降りた場所は広い空間が広がり、青白く光るものが洞窟を明るくしている。どうやら、ここも光の魔法は必要はないみたいだ。

周辺を見る。大きな自然でできた柱などがあるけど。壊したら、崩れるかな?

魔法を使う場合は気をつけないといけないね。

「それで、どっちに行けばいいんだ?」

全員がカリーナに視線を向ける。ここから先はカリーナの案内で進むことになる。

カリーナは目を数秒閉じる。そして、目をゆっくりと開く。

「あっちです」

カリーナは前方を指す。

「でも、下の方から感じられます」

「つまり、もっと下に行かないといけないわけか」

前にカリーナが言ってた通りだね。

穴を掘りたくなる。方角と距離がわかったら、土管のような物を作って、目的地まで一直線に繋いで、滑り台のように滑って行きたい。

まあ、その先が魔物の巣だったり、溶岩があったり、どんな物が待ち構えているか分からないので、自重する。

わたしたちはカリーナが指を差した方向に進んでいく。移動する順番はピラミッドに入ったときと変わらない。

探知スキルを使うと、どこから入り込んだかわからないけど、サンドウルフがいる。でも、こちらに近寄ってきたりはしない。まあ、こっちにはくまゆるとくまきゅうがいるおかげで、数匹程度では襲われることはない。

「ユナさん、本当に見つかるでしょうか?」

「カリーナが場所さえ教えてくれれば、見つかるよ」

不安そうにするカリーナに答える。いざとなれば、土管方法がある。

「魔物もいないな」

いるよ。近寄ってこないだけだよ。

大きな空洞が続く、自然に出来た空洞のため、岩肌があり、小さな穴らしきものもある。あの穴にサンドウルフは身を隠しているみたいだ。

「でも、冒険者が魔物を狩りに来るって聞いたが、いるのか?」

「たぶん、この先ね」

メルさんが紙を見て答える。

「この先に魔物が落ちてくる場所があるみたいね」

「落ちてくる? どういう意味だ?」

「知らないわよ。冒険者ギルドで聞いたけど、魔物が落ちてくるから、そこが狩場になっているって」

向かう先も、その魔物が落ちてくる場所も同じ方向らしいので進む。

「地図によれば、この先ね」

探知スキルを使うと確かに魔物がいる。サンドワームの反応がある。

先頭を歩くジェイドさんが腕を横に伸ばして、止まるように指示を出す。

「ワームがいる」

くまきゅうにカリーナを守るように頼み、わたしはくまゆるの上から様子を窺う。

確かにワームがいるね。10匹ほどのワームがクネクネと動いている。

でも、地面が砂じゃないから、潜ることもできないみたいだ。

「でも、落ちてくるってどういうことかしら?」

そうメルさんが呟いた瞬間、なにかが上から降ってきた。

サンドワームだ。サンドワームが落ちてきた。もしかして、砂を潜って落ちてきた?

上を見るが、天井は結構高く、どうなっているかわからない。

落ちてきたワームは地面に落ちると、なにもなかったようにクネクネとしている。

「たしかに、ワームが落ちてきているな」

「でも、問題はここは冒険者だけの狩場じゃないみたいね」

奥の方でわたしたちのことを窺っているサンドウルフがいる。

「どうやら、獲物を捕りに来たと思っているようだな」

「カリーナ、探し物はどっちだ」

ジェイドさんの問いにカリーナはサンドウルフがいる方を指さす。

「それじゃ、倒して先に進むしかないな」

ジェイドさんの言葉に全員が武器を構える。

「メル。ワームは任せて大丈夫か?」

「砂に潜らなければ、ただの置物よ」

「それじゃ、サンドウルフは俺とトウヤ、セニアの3人で対処するぞ」

「えっと、わたしは?」

「ユナはカリーナを守っていればいい。それが仕事だろう。雑魚の魔物ぐらい、こっちで処理をするさ」

そういうと、ジェイドさんは仲間に指示をだして、ワームとサンドウルフの討伐に向かう。メルさんは安全な距離から魔法で攻撃をしてワームを倒す。

そして、ジェイドさんたちの実力ならウルフ討伐は簡単に終わる。ちなみにメルさんが戦っている間もワームが落ちてきていた。

もしかすると、ここは無限素材集めの場所に最適かもしれない。

魔物を倒したわたしたちは奥に進む。

少し下り、さらに進むと分かれ道がある。全員がカリーナに視線を向ける。

「こっちから感じます」

カリーナの指示通りに進んでいく。メルさんは分かれ道のたびに地図に書き込んでいく。

どんどん、坂を下っていく。たまに遭遇する魔物はジェイドさんたちが処理する。

楽でいいね。くまゆるに乗っているだけで進んでいく。

前を歩いていたジェイドさんが足を止める。

「橋が壊れているな」

木とロープで作ったと思われる橋が半壊している。下は崖になっているのかな?

壊れた橋を見ていたメルさんが下を見る。その瞬間、少し体を引く。

「これはさすがに気持ち悪いわね」

メルさんが橋の下を見て言う。わたしは、なんだろう、と思って、橋の下を見る。

うん、これは見てはいけないものだった。ワームがすし詰め状態でうごめいていた。釣りの餌とかでみるミミズ状態だ。無性に魔法で燃やしたくなる。クマの炎を撃ち込めば、きっとよく燃えるはずだ。

そう思っていると、上からワームが落ちてきて、餌の仲間入りをする。こうやって溜まっていったんだね。

もしかして、砂漠に集まったワームがここに落ちたとかなのかな?

「どうやら、ワームが落ちてきたせいで橋が壊れたみたいだな」

「どうする?」

「わたしが橋を作るよ」

わたしはくまゆるから降りると、15~20mほどの橋を作り上げる。さらにおまけとして、屋根つきだ。上から落ちてきたときに、そのまま橋の上にいたら邪魔だからね。

「凄い魔力量よね」

「クマの加護のおかげです」

秘技、クマの加護で済ませる。

言い訳が面倒なときは、これに限る。

橋も作ったので下にいるワームは無視をしてすすむことにする。

「カリーナ、下は見ちゃだめだよ」

「うう、遅いです。くまきゅうちゃんの上から見えてしまいました。落ちたらと思うと、怖いです」

わたしだって、あんなミミズの巣みたいにすし詰めになっているところに落ちたら、発狂する自信はある。絶対に落ちたくない。

「2人はお子様だな。あんな虫ごときが駄目なんて。俺は男だから大丈夫だぜ」

前を歩くトウヤがわたしたちをお子様扱いする。

突き落としていいかな? いいよね? あの背中をちょっと押していいよね。

わたしがそんなことを思っていると、

「えいっ」

セニアさんがトウヤの背中を押した。

「うわああああ」

バランスを崩して、ふらつくトウヤ。

「お、落ちる」

どうにか、バランスを保ち、橋の上から落ちずに済む。

下にいるワームは口を開けてトウヤを待っている。

う~ん、残念。

「残念」

セニアさんの言葉とわたしの心が一致する。

「なにが残念だ。落ちたらどうするんだ!」

「トウヤは男の子だから、ワームの群れに落ちても大丈夫」

「大丈夫じゃねえよ。落ちたら、死ぬだろう」

「てっきり、ワームが好きなのかと思って。わたしは女の子だから、あんな気持ち悪いのよりも、こっちのもふもふしたクマの方がいい」

セニアさんはくまゆるに抱き付く。

今回ばかりはセニアさんに賛同する。メルさんもカリーナも、セニアさんの言葉にうんうんと頷いている。

「ジェイド~」

トウヤは同じ男性のジェイドさんに助けを求める。

「俺もワームよりも、ユナのクマの方がいい」

ジェイドさんにも見捨てられるトウヤ。

そんな落ち込むトウヤを置いて、わたしたちは先に進む。

「ま、待てよ」

トウヤが泣きながら追いかけてくる。