軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

315 クマさん、サソリと戦う

下でワームがうごめく中、橋を渡ったわたしたちは先に進む。

「それにしても、思ったよりも広いな」

ゲームだとこのぐらいは当たり前だけど。現実だと違うのかな。さすがに地下100階とか言ったら、ぶち切れるけど。そしたら、間違いなく穴を掘る。

「でも、もうすぐです。近づいています」

たまに分かれ道があると、カリーナの指示に従って進む。

かなり下ってきた。

「ここは?」

砂地だ。降りてきているのに、砂がパラパラと落ちてきている。クマの地図で確認すると、真上はピラミッドではないみたいだ。少しずれている。砂漠から落ちてきているのかな?

「なにかいそうだな」

ジェイドさんが砂地を見る。

わたしもジェイドさんの言葉には同意だ。探知スキルを使って確認する。すると初めて見る魔物の名前がでた。名前はスコルピオン。つまり、サソリの魔物ってことになる。

「ユナちゃん、わかる?」

メルさんが尋ねる。正確にはわたしでなく、くまゆるにだけど。

わたしが魔物を見つけられることは、くまゆるのおかげだと思っている。

だから、わたしもそれっぽい振る舞いをしている。

「くまゆる、わかる?」

「くぅ~ん」

演技が得意なくまゆるは、鳴いてみせる。

わたしはスコルピオンの反応がある場所に空気弾を撃ちこむ。すると、砂の中から少し黒味がかかったウルフほどの大きなサソリが出てきた。

これだからファンタジーは。どうして、こんな大きなサソリがいるかな?

ジェイドさんたちはすぐに武器を構えるが、スコルピオンは砂の中に潜ってしまう。

「本当にユナのクマは凄いな」

「でも、スコルピオンは厄介ね」

「どうする。走り抜けるか?」

「いや、それは危険だ」

トウヤの意見にジェイドさんは首を横に振る。

スコルピオンは砂の中に隠れている。この世界だとわからないけど、ゲームだとワームよりも知能は高く、近くに来るまでジッとしていることが多い。近くに獲物がやってくると、尻尾の毒針で獲物を痺れさせたりして、動きを鈍らせて捕食する。

探知スキルで確認すると、スコルピオンはかなりの広範囲に広がっている。

ワームと同様に掘り起こすことはできるけど、ジェイドさんたちがワーム同様に簡単に倒せるかが問題だ。一匹に時間を取られると、他のスコルピオンが集まってくる可能性もある。

「ジェイドさん。わたしが掘り起こしたら、倒すのは簡単ですか?」

「すまない。スコルピオンとは一度しか戦ったことがないんだ。砂漠でも一部の場所しか生息していないから、滅多に遭遇しない。しかも、甲殻が硬いから、俺やセニアのミスリルの武器なら突き刺さるが、トウヤの剣では簡単には倒せない」

つまり、トウヤは戦闘の役にたたないと。

トウヤはなにか言いたそうにするが、口を閉じる。

「それにセニアのナイフが届く位置まで近づくとなると、毒針がある尻尾が怖い」

ナイフだと、ほとんど触れるほどの近くまで近寄らないと駄目だからね。それに、テレビで見たサソリの尻尾の動きは速かった。

「メルさんの魔法は?」

「ごめんなさい。使ったことが無いからわからないの」

メルさんの魔法はわからないと。つまり、戦力としてはジェイドさん以外は戦えないことになる。

「でも、弱点は水よね」

「そうなの?」

「ああ、水をかけると一瞬だが、硬直する。その隙にスコルピオンに攻撃をするのが倒し方の1つだな」

「あと、お腹が柔らかい」

セニアさんが弱点を追加する。

地面に這いずるサソリを裏返しにしないといけないわけか。

う~ん、どうしようかな?

「嬢ちゃんに橋を作ってもらえばいいじゃないか?」

「毒針を飛ばしてくるから、駄目ね」

トウヤのアイディアをメルさんが却下する。

そうなると、横壁がある橋を作ればいいことなんだけど。今回は、かなり距離がある。作っても良いけど。もしものことを考えると、倒しておきたい。進んだ先で挟まれる可能性だってある。

スコルピオンの特徴は水をかけると硬直をする。お腹が柔らかい。スコルピオンは砂の中に隠れている。毒針を飛ばしてくる。

う~ん、どうしようかな。

「わたし一人で行ってくるよ」

悩んだ結果、わたしはみんなにそう答える。

「ユナさん!」

「ユナちゃん!」

「無謀よ!」

わたしの言葉に全員が驚く。

「橋を作ってもいいんだけど、作っている最中に攻撃をされても面倒だしね」

「でも、一人って。わたしたちも手伝うわよ」

「ああ、別に倒せない魔物じゃないからな」

「ううん、いいよ。わたしがサクッと倒してくるから」

みんなの気持ちだけを受け取っておく。

ジェイドさんたちだ。社交辞令で言っているわけじゃないことはわかる。でも、危険なことには変わりない。目の前で死なれたら寝覚めが悪くなる。

「サクッとって、そんなに簡単に言うけど、大丈夫なのか?」

「試したいことがあるから、それが駄目だったら、別の方法を考えるよ」

素直に橋を作ってもいいし。

「ユナさん、気をつけてくださいね」

カリーナが心配そうにわたしを見る。

「大丈夫だよ。倒してすぐに戻ってくるよ」

わたしが砂地に一歩踏み込むと、スコルピオンが静かに動く。探知スキルで分かるぐらいだ。獲物を狩るように静かに移動する。

わたしは前に買った安物の鉄のナイフを取り出し、ナイフに魔力を通す。そして、砂の中に身を潜めているスコルピオンに向けて投げる。砂の中にいたスコルピオンが、ナイフが突き刺さったまま砂から出てくる。一本だけじゃ致命傷にならなかったみたいだ。わたしはもう一本のナイフを顔に向けて投げ込む。頭に命中したスコルピオンは息絶える。

「ユナちゃん、くまゆるちゃんと離れていてもわかるの?」

「心が繋がっていますから」

わたしがそう言うと、くまゆるとくまきゅうが同時に「くぅ~ん」と鳴く。

「もちろん、くまきゅうもね」

とりあえず、魔力を込めれば、安物のナイフでも硬い甲殻に突き刺さることが判明した。

水? お腹? 弱点? それはそれ、これはこれだよ。

倒せれば問題はないよ。

でも、スコルピオンに突き刺さったナイフを抜き取ると、刃はボロボロになっていた。一回だけの使い捨てになりそうだ。

まあ、もともと使い捨てで買ったナイフだから問題はない。

魔法でも倒せると思うけど、一発が大きい。クマの風の刃を使うものなら、他のスコルピオンを呼び寄せることになり、乱雑の戦闘になりかねない。そうなると、カリーナが心配するだろうし、ジェイドさんたちも戦いに参加して、さらに混沌とする可能性が高い。

それに魔法は土魔法で毒針が防げるようにするため、なるべく使用しない。

なので、今回は一匹、一匹、確実に倒せるナイフを使う。

「ジェイドさん、この魔物の素材って使えるの?」

「ああ、使える。甲殻部分は硬いから防具に使えるし、食材として食べることもできる」

食べるの?

まあ、サソリを食べている映像は見たことはあるけど。日本人のわたしとは馴染めなさそうだけど、あとで回収するかな 。もしかすると、美味しいかもしれないし。

わたしは歩きながら、身を潜めているスコルピオンに向けて、魔力を込めたナイフを投げていく。100本買ったから数は、大丈夫のはず。

ナイフを出す。魔力を込める。探知スキルで確認。スコルピオンめがけて投げる。これの繰り返しだ。

だいたい、2~3本で倒すことができる。スコルピオンの尻尾だけは気をつける。

ときおり、わたしに向けて毒針を放ってくるスコルピオンもいるが、前もって土魔法の準備をしているわたしに死角はない。

順調に倒していると、途中でナイフの在庫が無くなってしまう。ちょっと予定より多く使ってしまったみたいだ。仕方ないので、わたしはミスリルナイフを取り出す。魔力を込めて投げる。

スコルピオンが一撃で動かなくなる。

おお、威力アップ。さすが、ドワーフのガザルさんが作ったミスリルナイフだ。引き抜いても刃こぼれ1つない。綺麗な刀身のままだ。

安物ナイフと違って拾わないといけないけど、安物ナイフよりも効率よく倒すことができる。

これなら、初めからミスリルナイフを使っていれば良かった。

そして、無事にスコルピオンを全て倒し終わる。これでカリーナが歩いても安心だ。

わたしはスコルピオンを回収しながら、ジェイドさんたちのところに戻ってくる。

「終わったよ」

わたしが戻ってきたとき、トウヤとくまゆるがわたしに向かって駆け出してくる。

えっ、なに?

「あぶねえ」

わたしに掴み掛かろうとするトウヤを、サッと2、3歩横に避ける。

なんなの?

その疑問はすぐにわかった。

トウヤがわたしがいたところを駆け抜けた瞬間、上からスコルピオンが落ちてきた。

わたしは驚いたせいで反応が遅れる。でも、駆けつけたくまゆるが左足でスコルピオンの胴体を踏みつけ、右足で尻尾を踏みつける。

「くまゆる!」

わたしはすぐに正気に戻り、クマさんパペットに握ったミスリルナイフでスコルピオンの尻尾を切り、胴体に突き刺す。スコルピオンは動かなくなる。

冷や汗が出る。今のはさすがにあせって、嫌な汗が出てしまった。

トウヤを見ると砂地に顔を突っ込んで倒れていた。

「えっと、トウヤ。大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

わたしが心配そうに声をかけると、トウヤは顔に砂を付けながら立ち上がる。

「その、ありがとうね」

トウヤが声をかけてくれなかったら、スコルピオンに襲われていたかもしれない。

でも、くまゆるが「そんなことないよ。僕が守ったよ」って顔でわたしを見る。

「くまゆるもありがとうね」

助けてくれたくまゆるの頭を撫でてあげる。

くまゆるだけを撫でると、くまきゅうがイジケルので、くまきゅうも撫でる。

「くまきゅうもカリーナを守ってくれてありがとうね」

「ユナちゃん、大丈夫?」

メルさんが駆け寄ってくる。

「大丈夫だよ。トウヤが声をかけてくれたからね」

「でも、トウヤ。よく気付いたわね」

「ああ、嬢ちゃんを見ていたら、上で音がした気がしてな。そして、上を見たら落ちてくるところだったわけだ。決して、嬢ちゃんの持っているミスリルナイフが羨ましくて、見ていたわけじゃないぞ」

それって、全部答えているよね。

でも、そのおかげで助かったのは事実だ。

「ちなみに、俺の方がそのクマより早かったな」

トウヤが少し嬉しそうに言うと、くまゆるが悔しそうに鳴く。

たしかにそうだけど。本当に大人気ない。さっきまでの感謝の心が消えてしまう。

その一言がなければ、好感度が上がったのに。

「それでユナ。そのナイフは……」

トウヤだけでなく、セニアさんがわたしのミスリルナイフに興味を持ったようで尋ねてくる。

「前にセニアさんのナイフで戦うところを見て、ミスリルナイフを作ったんですよ」

そう言うと、セニアさんは少し頬を赤らめて嬉しそうにする。

セニアさんの二刀流。格好良いからね。

本当はフィナの解体のナイフだけを作るはずだった。でも、ミスリルが予想外に多く手に入ったから、武器用のナイフを作った。

「見させてもらってもいい?」

わたしはミスリルナイフをセニアさんに渡す。

セニアさんは刀身から柄まで、じっくり見る。

「とっても、綺麗。それにとっても良いナイフ」

「王都のガザルさんってドワーフに作ってもらったんですよ。良かったらセニアさんも作ってもらうといいですよ」

「ガザル……」

わたしがガザルさんの名前を出すと、なにかを探すようにミスリルナイフを凝視する。

「……あった」

「なにが、あったんですか?」

セニアさんは小さな指でナイフの柄に近い刀身の部分を指す。

そこには何かが彫られている。

「刀匠ガザルさんが本気で作った武器には銘がある。ガザルさんが滅多なことじゃ、銘記しないので有名。羨ましい」

そうなんだ。ガザルさん、そんなこと一言も言わなかったから、知らなかったよ。教えてくれてもよかったのに。

「しかも、クマの紋章まである」

「ガザルさんが暇だから彫ってくれたんだよ」

「ありえない」

そんなことを言われても、わたしがいつまでも取りに行かなかったから、暇だから彫ったと言っていた。

「くそ、俺もこの依頼が終わったら、王都でミスリルの剣を作るぞ」

トウヤ、その発言は死亡フラグだから……。

とりあえず、スコルピオンを倒したわたしたちは先を進む。

カリーナ曰く、もうすぐだそうだ。