軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

297 クマさん、くまゆるを入れ替える

う~ん、なにか寝苦しい。

なにかに体が押さえられているような感じがする。

わたしがゆっくりと目を開けると、ランがわたしとくまゆるを挟むように抱きついて寝ている。

「モフモフ……」

いや、モフモフじゃないから。

でも、なんでランがわたしのベッドで寝ているの?

くまゆるはわたしたちに挟まれながらも気持ち良さそうに寝ている。

反対側を見る。一瞬、ローザさんまでいるかと思ったけど、くまきゅうがわたしに抱きついて寝ている姿があるだけだった。

くまゆるたちには危険があったら起こしてと頼んだけど。どうやら、くまゆるとくまきゅうにとってはランがわたしのベッドに入り込んでくるのは危険とは認識しなかったみたいだ。

まあ、実際に寝るだけなら、危険はない。わたしが寝苦しくなるだけだ。

でも、この世には女の子が女の子を好きって人もいる。もし、ランがソッチ系だったら危険だった可能性もある。でも、ランの場合はブリッツがいるから、それはないけど。もしものときはちゃんと守ってね。わたしは寝ているくまゆるとくまきゅうの頭を撫でる。

とりあえず、ランの手から逃げることにする。ランが掴んでいる手を離し、ベッドから脱出する。

そして、無事なくまきゅうをもともとランが寝ていた隣のベッドに移動させる。次にくまゆるをランから救い出そうとするが抱きしめて離そうとしない。

どうしたものかと考えるが、すぐに思い付く。くまゆるを一度、送還させ、もう一度召喚すればいいだけだ。

わたしはくまゆるを送還して、すぐに召喚をする。無事にくまゆるをランから救い出すことができた。

うん、これで大丈夫だね。わたしはランが寝ていたベッドで寝ようとした瞬間、ランが寝言を言い出した。

「う~~~~、もふもふが……」

ランが悲しそうな寝言を言い、手が寂しそうになにかを探している。

「う~~、くまゆる~」

やっぱり、探し物はくまゆるだったらしい。手が一生懸命にくまゆるを探している。

だからと言ってくまゆるを戻すわけにはいかない。でも、すぐに良い方法が思い浮かぶ。

クマボックスからくまゆるぬいぐるみを取り出して、ランの手が届くところに置く。するとランの寂しそうにしていた手がくまゆるぬいぐるみを掴み。「モフモフだ~」と言って静かになる。

うん、大丈夫みたいだ。これで、全員が幸せになった。

わたしはもう一度寝ることにする。

早朝、くまゆるとくまきゅうに起こされる。

もう、朝なの。さっき、寝たばかりだと思ったんだけど。外はまだ、薄暗いが陽が昇りだしたみたいだ。今日は早めに出発するから、早めに起きることにしている。

上半身を起き上がらせ、隣のベッドを見る。ランが気持ち良さそうに、くまゆるぬいぐるみを抱きしめながら一人で寝ている。あのまま気づかずに一人で寝ていたらしい。

その反対側にはローザさん、ドア付近のベッドはグリモスが寝ている。

とりあえず、二人を起こさないようにくまゆるとくまきゅうを送還させる。

「ユナちゃん、起きたの?」

ローザさんが隣のベッドから起き上がる。

どうやら、起こしてしまったみたいだ。

「おはようございます」

「おはよう。でも、なんでユナちゃんが隣で寝ているの?」

わたしはランが寝ているベッドに視線を向ける。

元はわたしが寝ていたベッドだ。

「もふもふ……」

ランがくまゆるぬいぐるみを抱いて寝ている。

「ラン……」

ランの寝言にローザさんは呆れた顔になる。

わたしは昨夜あったことを簡単に説明する。

「ユナちゃん、ごめんなさいね。あの子も久しぶりにユナちゃんやくまゆるちゃんに会えて嬉しかったのよ。わたしたちはいろいろなところに行っているでしょう。だから、知り合いに会えると嬉しいの。まして、クリモニアから離れた、こんな場所で会えるなんて思ってもいなかったことだから余計にね」

確かに、ここはクリモニアからでは遠い。クマの転移門やくまゆるたちがいるから簡単に来られるけど、馬に乗れないわたしじゃ、来るとしたら大変だったはず。そんな遠い場所で出会えたんだから、たしかに嬉しいかもしれない。

なんだかんだで、わたしもローザさんたちに会えたのは嬉しかった。

「だから、ランのことは許してあげてね」

「別に怒っていませんよ。怒っているなら、夜中に叩き起こしてますから」

さらにぬいぐるみを渡すようなことはしない。

「ふふ、ありがとう。それじゃ、二人を起こして、食事に行きましょう」

ローザさんはグリモスを、わたしはランを起こす。

「くまゆる。おはよう……?」

ランがくまゆるぬいぐるみを見て固まっている。

「な、なにこれ?」

「くまゆるぬいぐるみだよ」

「ぬいぐるみ?」

ランが改めてくまゆるぬいぐるみを触る。

「本当だ。ぬいぐるみだ。なんで、わたしぬいぐるみなんて抱いているの? くまゆるを抱いていたはずだけど」

「くまゆるの身代わりですよ」

「いつのまに」

ランはくまゆるぬいぐるみをモフモフする。

「ユナちゃん、そんな物まで持っていたのね」

「子供たちに大人気なんですよ」

「それで、本物のくまゆるは?」

ランはぬいぐるみを抱きしめながら、キョロキョロとくまゆるを探す。

「もう、送還しましたよ」

「そ、そんな……」

落ち込むラン。

「あと、勝手にわたしのベッドに潜り込まないでください」

「だって、くまゆるがわたしを呼んでいたから」

そんな、すぐに分かる嘘を。わたしは子熊化したくまゆるを召喚する。

「くまゆる、ランを呼んだの?」

くまゆるは「くぅ~ん」と鳴いて、首を横に振る。

「否定していますよ」

「うう、くまゆる」

「初めて会ったときも思ったけど。人の言葉がわかるのね」

会話を聞いていたローザさんが不思議そうにくまゆるを見る。

「まあ、普通のクマとは違いますから」

神様にもらったクマだ。特別なクマだ。

もしかすると、神獣になるのかな?

くまゆるの顔を見る。可愛らしい顔だ。とてもじゃないが、神獣って顔はしていないね。

「あと、ぬいぐるみも返してください」

「え~~~~~、くれるんじゃないの?」

「あげませんよ」

そもそも子供のために作ったぬいぐるみだ。ランにあげるために作ったわけじゃない。

「くれてもいいじゃん」

ランがくまゆるぬいぐるみを離そうとしない。

まあ、たくさん持っているから、あげてもいいんだけど。

「それじゃ、差し上げますから、大事にしてくださいね」

「ユナ、ありがとう」

嬉しそうにくまゆるぬいぐるみを抱きしめる。

「ラン、いいわね」

ローザさんが羨ましそうにランを見ている。

「ローザさんもいりますか?」

「いいの?」

わたしの言葉に嬉しそうにする。わたしはくまきゅうぬいぐるみを取り出して、ローザさんに渡す。

「くまきゅうちゃんもあるのね」

「グリモスは?」

一応確認する。

「わたしはいい」

ですよね~。

ぬいぐるみ騒ぎも終わり、食事をするために一階に下りる。

ブリッツの姿はない。まだ、寝ているのかな?

三人も起こしに行くこともしないけど、いいのかな?

「そういえば聞き忘れたけど、砂漠ってどんな魔物が出るの?」

ゲームでも事前情報は大切だ。

前もって装備を整える必要がある。とは言っても、装備はクマ装備しかない。でも、どんな魔物がいるかは知っておいて損はない。

「話さなかったっけ。まあ、出会うことはないと思うけど。サンドウルフにサンドワームぐらいかな。でも、出会うとしてもサンドウルフぐらいだと思うわよ」

サンドウルフはウルフのお仲間だよね。毛皮が違うのかな?

サンドワームはワームのお仲間でいいんだよね。でも、前に倒したワームがたくさんいるのかな? 想像するだけで気持ち悪いんだけど。

ウルフは許せる。ワームは気持ち悪いから、見つけたら即討伐だね。

でも、フィナのお土産に持って帰った方がいいのかな?

「でも、ワームにも気をつけた方がいい」

黙っていたグリモスが口を開く。

「そうね。ワームは地面に潜っているから、気づくのが遅くなると、致命的になるから。まあ、話によれば、ワームが砂の中で動けば震動で分かるらしいから、それに気をつければ大丈夫よ」

まあ、スキルはあるし、くまゆるたちもいるから、大丈夫かな?

「あと、他にも目撃情報はあるみたいだけど、噂程度ね」

「噂って?」

「ごめんなさい。そこまでは聞いていないの。まあ、柱を目指して進めば会うことはないから、大丈夫よ」

ローザさん、知っていますか、それをわたしたちの世界じゃフラグが立ったって言うんですよ。

でも、フラグは折るものとも言う。

「まあ、ユナなら出会ったとしても、大丈夫よね」

「あの化け物を倒すぐらいだしね」

クラーケンのことを言ってるけど、口に出さないでくれている。

ミリーラの町で箝口令が敷かれているのを知っているので、黙ってくれている。

「でも、油断は禁物」

二人の楽観的な言葉にグリモスが注意する。たしかにそうだ。いくら、クマさん装備があるからと言っても気を付けないと、足を掬われるかもしれない。

「グリモス、ありがとう。気を付けるよ」

そして、食事も終え、魔物の情報も仕入れたので出発することにする。

「それじゃ、ブリッツによろしく言っておいてね」

結局、ブリッツはやってこなかった。

まさか、昨日の冒険者が言っていたように、女の人を連れ込んで……。

「なんだ。もう、出発するのか」

眠そうなブリッツがやってきて、空いている椅子に座る。

「ああ、眠い。こんなことなら、酒なんて飲むんじゃなかった」

「遅くまで飲んでいたの?」

「ああ、ドランが飲むから付き合えって言われてな」

なるほど、それで起きてこなかったわけか。

「ユナ、おまえなら大丈夫だと思うが、気をつけて行けよ」

「うん、ありがとう。危険な魔物でも現れたら、くまゆるとくまきゅうに乗って逃げるよ」

本当にピンチなら、クマの転移門で逃げ出すという荒技もある。

「くまゆるに怪我を負わせないでね」

ランも心配をしてくれるが、そこはわたしの心配をしようよ。

「今度、クリモニアに生存確認に行くからな、行方不明になっているなよ」

「ふふ、ブリッツは今度、クリモニアで会おうって言っているのよ」

「素直になればいいのに」

「黙れ」

ブリッツは隣に座るランの頬を引っ張る。

「い、いたいよ」

周りから笑いが起こる。

ブリッツとも挨拶が済んだので、わたしはあらためて出発することにする。

ローザさんたちと別れたわたしは町の出口に向かって歩く。早朝ってこともあるけど、トカゲに乗っている人たちが多くいる。これから出発するのかな?

ローザさんの話では気温のこともあるので、陽が出る前に出発する者もいるという。わたしの場合はクマ装備があるから大丈夫だけど、日中の移動は大変らしい。

町の出口にやってくると、入口を警備している男性が眠そうに立っている。そして、わたしのことに気付いた男性は目が覚めたのか目が大きく開き、わたしのことを見る。

普通ならギルドカードを水晶板に翳して出ていくだけだけど、男性に止められる。

「嬢ちゃん、その格好はなんだい?」

「クマの格好だけど」

開き直ってみる。

それ以外に答えようがないし。

「そうか、クマの格好か」

ジロジロと見られるが、気にしないで外に出ようとする。

「嬢ちゃん。こんなに早く、どこに行くんだ? 外は危ないぞ」

まあ、乗り物も無く、クマの格好をした女の子が外に出ようとすれば、止められるよね。

わたしが出ようとしている出口は王都から入ってきた反対側になる。

この先には村も無ければ砂漠しかないらしい。

「散歩しに?」

と言って誤魔化してみる。

「散歩? 一人で? そんな格好で?」

やっぱり、疑われるよね。

別に逃げるように駆け出してもいいんだけど。悪意がないから、捜索隊を作られても困る。

どうしたものか。わたしが困っていると、聞き覚えのある声がしてくる。

「ああ、やっぱり、捕まっている」

「思った通り」

「…………」

声がする方を見ると、先ほど別れたはずのローザさんとランの二人がいる。

二人が笑みを浮かべながらわたしを見ている。

「ローザさん?」

「ユナがやってきたときのことを思い出してね。もしかすると、出口のところで止められてるかと思って、様子を見に来たの」

はい、見事に止められていました。

「その女の子。冒険者だから、大丈夫ですよ」

ローザさんは警備をしている男性に説明をしてくれる。

「冒険者?」

信じられない表情でわたしのことを見る。

「ええ、だから通らせてあげて」

「確認をよろしいですか?」

わたしはギルドカードを男性に見せる。

「ランクC?」

カードとわたしを何度も見比べる。

でも、確認をしたのだから、カードを返してもらう。

「でも、この先は砂漠しかなく、ラガルートなしでは」

これはくまゆるを召喚しないといけないかな?

わたしはくまゆるを召喚させる。

「クマ!?」

それから、簡単に召喚獣のことを説明して、やっと通ることができた。

でも、これで今度一人で戻ってきても、怪しまれずに町の中に入れるようになった。

無事に町を出ることができたわたしは、くまゆるに乗ってデゼルトの街に向けて出発する。