軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

261 クマさん、お店を宣伝する

フローラ様に姉がいたのは驚いた。学園祭で会うとは思いもしなかった。

しかもシアとこんなに親しげにする間柄にも驚いたけど。国王とエレローラさんは親しい? 関係だし、シアもティリアも同年代だ。王族と貴族、親しくてもなにもおかしいことではない。

でも、この世界の王族って、こんなにフレンドリーなのかな?

まあ、性格が悪い王族よりはいいけど。

「それで、お店は順調なの? あまり売れているようには見えないけど?」

「それが、まだ0人です」

「これから来るさ。そこの子供たち、綿菓子をどうだい?」

マリクスがわたしのことを見ていた子供たちに声をかける。子供たちはお互いの顔を見たあと、顔を横に振り逃げてしまう。ああ、せっかくのお客様が。

「マリクス、怖い顔で言ったら駄目よ」

「なんだ。俺の顔が怖いって言うのか?」

「笑顔が足らないのよ」

まあ、シアの言う通りにマリクスの笑顔もそうだけど。いきなり、食べたことも聞いたことも無い食べ物を食べないかと言われても断るだろう。

今までわたしが作った物を食べた者は知り合いだし、お金を取ったりはしていない。だから、みんな食べてくれた。

それが知らない人から、訳が分からない食べ物を勧められ、お金を払ってまでは食べようとは思わないかもしれない。

う~ん、これは盲点だった。いくら、珍しくて美味しくても、美味しさが分からないなら綿菓子は売れない。

隣の店を見る。隣の店は少し離れている。お店が並んでいる間隔はお祭りの屋台みたいに隣同士がくっついてはいない。練習場は広いので、お店の間隔が少し開く感じで並んでいる。隣ではスープの販売、反対側は飲み物を販売しているようだ。

もう少し、お店の間隔が短ければ隣で買ったお客がうちに流れてくる可能性もあったけど、それを望むのは無理そうだ。

わたしは改めてお店を見る。

まず、綿菓子の価格を確認する。高ければ購入するものも減り、子供たちでは買えない可能性もある。でも、それは大丈夫そうだ。子供のお小遣いでも買える金額になっている。

なんで、子供のお小遣いの金額を知っているかって、それはティルミナさんから聞いたからだ。わたしがフィナとシュリにお小遣いをあげすぎると注意されたことがあった。

わたしはお礼であげたりしていたんだけど良くなかったみたいだ。

でも、2人はわたしがあげたお金はちゃんとティルミナさんに渡して、必要なときに貰っているらしい。

そして、今回も学園祭に行くってことで、お小遣いを渡されたらしい。だから、エレローラさんにお金を貰うことを断っていたけど、断れずに受け取ってしまっていた。

次にわたしは看板を確認する。看板には綿菓子と書いてあるだけだ。知らない人が見れば意味不明だ。さらにサンプルの綿菓子も無ければ、なにを作っているかも分からない。これじゃ、人が通りかかっても素通りする。

でも、ビニール袋があるわけでもないから、作り置きもできない。さらに普通の食べ物と違って匂いもしないから、匂いで呼び寄せることもできない。

価格は問題はないから、そうなると、やっぱりお店の見た目と宣伝が足らないってことになる。

本当は部外者のわたしが手伝うのは良くないと思うけど、綿菓子を作るのに一生懸命に練習しただろうし、やる気になっているのに売れなかったらシアたちが可哀想だ。

それにせっかく教えたのに売れなかったら、悲しいものがある。

「少し、お店を改築するけどいい?」

「改築ですか?」

「宣伝が足らないからね」

「いいですけど、あまり、大きなことは駄目ですよ」

「了解」

ここはやっぱり、綿菓子のサンプル食品が欲しいよね。でも、元の世界の職人みたいに精巧なサンプル食品は作れない。でも、似たような物を作ることにする。

わたしは魔力を集めると、2mほどのクマの置物を作り上げる。その瞬間、周りから驚きの声があがる。

クマは腰を下ろし、座っている感じだ。わたしはさらに、そのクマの手には土魔法で作った綿菓子を持たせて、クマが綿菓子を食べている感じにさせる。これで、何かの食べ物を売っていることが分かるはず。

「凄い」

「クマさんだ」

「クマがクマを作った」

誰? 今、バカなことを言ったのは?

周りを見渡すが誰が言ったか分からない。

「まあ、これで少しは目立つでしょう」

「そうですが、なんでクマなんですか?」

それはわたしのイメージがクマに偏っているからだ。もちろん、普通にイメージすれば、他の物も作り上げることはできるはず……。

でも、この世界に来て以来、強化攻撃魔法を使えばクマだし、ゴーレムを作ればクマだし、置物を作ればクマだし、召喚獣はクマだし、絵本もクマだし、自分の姿もクマ。そのせいもあって、頭の中がクマで固まり始めている。だから、どうしても、楽にイメージができるクマを作ってしまう。

そう考えると、わたしはもう駄目かもしれない。

人はクマに囲まれると、頭の中までクマに侵されることの科学的な証明がされることになった。

「クマが駄目なら、他のにしようか?」

たぶん、頑張れば作れるはず?

「いえ、大丈夫です。可愛らしいですし、ユナさんが作ってくれたんです。それにお店の宣伝にもなります」

みんなが問題がなければ良いけど。

「あと、このクマは強化はしてなくて、簡単に壊すことができるから、学園祭が終わったら壊してね。だから、触ると壊れるから気をつけてね」

「壊すんですか?」

「まあ、学園祭が終われば邪魔だし、いらないでしょう?」

わたしの代わりに客寄せパンダでなく、客寄せクマの設置が完成する。

後ろを見れば目を輝かせながらクマの置物を見ている子供たちがいる。たぶん、学園の入口にいた子供のグループだ。

なら、この子供たちに手伝ってもらうことにしよう。

「マリクス、綿菓子を3つ作って」

「うん? わかった」

子供たちの視線がわたしから綿菓子を作るマリクスに移動する。そして、綿ができるのを不思議そうに見始める。「おお」「変なのが出てきた」「なにこれ?」「食べ物なの?」不思議そうに綿菓子が出来上がる様子を見ている。

マリクスは練習の成果が出て、上手に綿菓子を作っていく。たぶん、かなり作って練習をしたのだろう。棒の回し方がプロっぽい。

次にフィナとシアを呼んで耳打ちをする。フィナは頷くとシュリとノアのところに移動する。シアも「分かりました」と頷いてくれる。

そして、綿菓子が完成すると、お金と引き換えに受け取る。マリクスが断ろうとしたが、「わたしはお客だからね」と言ってお金を渡す。

そして、綿菓子をフィナとシュリ、ノアの3人にあげる。

「ありがとうございます」

「ありがとう」

「ユナさん、ありがとうございます」

3人はお礼を言って、食べ始める。

「美味しいです」

「甘くて美味しい」

「美味しいね」

フィナたちが大きな声で綿菓子の感想を言い始める。

所謂(いわゆる) サクラってやつだ。まあ、関係者とばれているけど、美味しそうに食べてくれれば問題はない。

子供たちはフィナたちを興味深そうに見ている。さらに近くを歩いていた人たちの歩みも止まる。わたしのクマの格好、クマの置物、不思議な食べ物を食べるフィナたちに視線が集まる。

「綿を食べているのか?」

「なにあれ?」

段々と興味を持たれて、人が集まり始める。

わたしはシアの方に視線を移すとシアは頷く。

「今から、試食会をします。良かったら食べていってください。とっても、甘くて美味しいですよ」

シアが綿菓子に興味を持っている人たちに向かって叫ぶ。

マリクスはシアの言葉を聞いて綿菓子を作り出し始める。そして、興味を持った人たちがマリクスが作り上げる綿菓子に驚く。雲みたいな綿が出てきて、棒に巻き付かれていく様子を不思議そうに見ている。

そして、出来上がった綿菓子をシアが周辺にいる人たちに一口ずつ試食してもらう。

食べた者たちは驚きの表情を浮かべる。口に入れると一瞬で溶け、甘さに驚いているみたいだ。作る過程でも興味が出た人はマリクスの前に集まっていく。

親子連れも母親に食べたいと頼んでいる子供の姿もある。

徐々に行列が出来上がる。行列が人を呼び、さらにわたしの格好が人を呼ぶ。

わたしの仕事はここまでにして、お店の裏に移動する。あとは本人たちに任せないといけない。わたしはあくまで、部外者だからね。

わたしがお店の裏に移動すると、子供たちが「くまさん~」「くまさん」と呼ぶので、手を振ってあげる。悪い評判が立ったら困るからね。愛想を振り撒いていると、ゆるキャラになった気分になる。

でも、これでお客様がお客様を呼び、クマの置物が目立ち、食べてくれた人がクマの置物があるお店と広めてくれれば、聞いたお客様もお店を探しやすくなるはず。

購入してくれたお客様は初めて食べる綿菓子を美味しそうに食べている。

「あっ、そうだ。シア、分かっていると思うけど。時間が経つと溶けることは伝えた方がいいからね」

家に持ち帰ろうとして、溶けて小さくなってしまう可能性がある。そんなんで、クレームが来てもつまらないからね。

「はい、分かりました」

「それじゃ、シア、頑張ってね。わたしたちはそろそろ行くね」

「お姉様、頑張ってくださいね」

「本当は案内をしてあげたいんだけど」

「大丈夫だよ。ユナさんもいるし」

「それが、一番心配なんだけど」

失礼な。わたしはなにもしないよ。勝手に問題がやってくるんだよ。

まあ、その原因がクマの格好なのは否定はしないけど。

「それなら、わたしが案内しましょうか?」

「ティリア様?」

「クマさん、ティリアで良いですよ」

「いいの? それじゃ、わたしはクマさんじゃなく、ユナって呼んでもらえるかな」

「わかりました。ユナ、それじゃわたしが案内しますよ」

「お店の手伝いはいいの?」

わたしはティリアではなく、シアに尋ねる。

「まだ、大丈夫ですよ。ティリア様には二日目に手伝ってもらう約束になっていますから」

そんなわけでお姫さまのティリアと一緒に学園祭を見回ることになった。

フィナとノアは驚いた顔をしているけど、大丈夫だよね。