軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245 クマさん、絵本を見てもらう

試食も終わり、最後にプリンを食べて終了となる。

プリンも美味しく、問題はなかった。

これにフルーツなどのトッピングしたりして、豪華に見せると言う。

アイスクリームとかトッピングするのもいいかも。

「ユナ殿、本日はありがとうございました」

とりあえず、どこまで参考になったかは分からないけど、自分の好みで答えてあげた。

オリジナルケーキなどもあり、新鮮に感じられたケーキもあった。レシピを教えてもらったのでエレナさんに教えてあげることができる。

パンにも食べたことが無いものもあったので、モリンさんのおみやげにもなる。

「ううん、どれも美味しかったよ」

「そう、言ってもらえると我々も嬉しいです」

わたしの言葉に安堵する三人の姿がある。

そんなにかしこまらなくても、わたしそんな偉くないからね。

試食も終わったが、残った料理も多い。ケーキなどはホールで作ってあるから、多くが余っている。

どうするのかと尋ねると、お城に持っていき、兵士やメイドたちに配るそうだ。

そうなら始めに言ってほしかった。知ってれば無理に食べなかったのに。

お腹に軽く触れる。

着ぐるみのせいで分からないけど、きっと大丈夫だ。

お腹を擦りながら食べ物のことを考えていたら、茶碗蒸しのことを思い出す。

「あ、そうだ。ゼレフさん。これ新作の料理です」

そう言って、クマボックスから茶碗蒸しを1つ取り出す。

その瞬間、ゼレフさんの表情が変わり、わたしの言葉を聞いていた三人の料理人とエレローラさんがわたしの方を見る。

「あら、ユナちゃん。わたしの分はないの?」

エレローラさんが恐ろしいことを言い出す。

あれだけ試食をしておいて。まだ、食べるとか信じられないんだけど。

「まだ、食べるんですか?」

冗談かもしれないから尋ねてみる。

「それはもちろん、ユナちゃんの新しい料理と聞けば食べるわよ」

どうやら、本気で食べるようだ。

「太っても知りませんよ」

仕方ないので、もう1つ茶碗蒸しを出す。

すると、シャイラと男性料理人の2人も視線が茶碗蒸しに移る。

やっぱり、食べたいんだよね。

「えっと、食べますか?」

「いいんですか!?」

「食べさせてもらえるなら」

「はい」

追加で茶碗蒸しを3つ取り出す。

「プリンと似ているけど。温かいのね」

「同じ卵を使った料理ですから」

全員がスプーンを持ち、茶碗蒸しを試食する。

使っている材料は普通に手に入る食材を使用している。

松茸はあまり好評じゃなかったし、簡単に手に入るものでもない。レシピを教えることになった場合、店で売っている方が作りやすいからね。

「プリンみたいに柔らかいけど、全然違うわね」

「本当です」

「ユナさん、美味しいです!」

料理長も副料理長も美味しそうに食べている。

「中にいろいろと入っているのね」

「これはお菓子って感じがしませんな」

そこは自由にしてもらう。

わたしとしてはお米が欲しくなるからね。

「ゼレフさん、これレシピです」

クマさんパペットにくわえられた茶碗蒸しのレシピが書かれた紙をゼレフさんに渡す。

「いつも思うのですが、いいのですか?」

「ゼレフさんのためって言うか、フローラ様に作ってあげて」

「わかりました。でも、一番初めはユナ殿から、フローラ姫にお渡ししてください。自分が先に渡すと、自分が作ったと思われますから」

ゼレフさんの言葉に頷くと、レシピを受け取ってくれる。

「ユナちゃんって、小さい子に甘くない? フィナちゃんといい、わたしの娘に対しても甘いし」

「そうですか?」

「そうよ」

即答された。

そんなつもりないんだけど。素直な子は可愛いものだし。もし、我儘な子供なら近寄らないし、優しくもしない。

「たぶん、フィナもノアも良い子だからだと思いますよ。もちろん、孤児院の子供たちもフローラ様も。もし、我儘で横柄な子供だったら、近寄りもしませんよ」

「ふふ、娘を褒められると嬉しいわね」

わたしの返答が気に入ったのか笑顔になる。

そんな中、シャイラがゼレフさんの持つレシピに目が向いている。

「ゼレフ料理長!」

シャイラが勢いよく手を上げる。

「なんだ?」

「そのレシピを教えてもらうことは?」

「教えるわけがないだろう」

「そんな~」

ゼレフさんの即答にシャイラは床に手を突いて落ち込む。

落ち込む姿もリアクションが大きいな。

「叔父様だけ、ズルイです」

顔を上げて、目線をゼレフさんに向ける。

「料理長だ」

訂正を入れるゼレフさん。

どっちでもいいよ。と思うのはわたしだけかな?

身内とはいえ、一応上下関係はしっかりしないと駄目なのかな。

「ユナさん」

立ち上がったシャイラがわたしの方を見る。

目は教えてほしいと訴えている。

「わたしはフローラ様のために教えただけだから」

「わたしがフローラ様のために作ります!」

「王族の料理をおまえに任せるわけがないだろう」

シャイラは力強く返事をするがゼレフさんは却下する。

シャイラが落ち込み、わたしとゼレフさんの言葉を聞いていた料理長と副料理長も残念そうな表情を浮かべる。

ゼレフさんはそんな三人を気にせずにレシピを見る。

「やはり、こちらも卵を使うんですね」

最近、持ってくるレシピは卵を使ったものが多い。

「そういえば卵の方は大丈夫なんですか?」

どっちにしろ卵が無ければ作れない。

「大丈夫よ。王都の近隣の村で卵を扱っている場所があったの。そのほとんどは自分たちの村で食べる分ほどしかなかったんだけど、話し合った結果。その村で鳥を増やして、全ての卵は国で買い取ることになったのよ。だから、現在進行形で卵は増えているわ。初めは中々渋って了承してくれなくて大変だったのよ」

「よく、了承してくれましたね」

「プリンを食べさせたからね」

今、プリンを食べさせて交渉したって聞こえたけど、聞き間違いじゃないよね?

「卵で美味しい料理を作ったら、取り引きをする勝負をしたのよ」

「あのとき、いきなりプリンを大量に作るように言われたときは驚きました」

「村人全員が納得しないと駄目だからね」

村人全員にプリンを食べさせて契約を結ぶって、普通は取引を交渉するものじゃない? それがお金だったり、数量だったり、契約年数だったり、いろいろとあると思うんだけど。

でも、交渉としてはありなのかな?

相手も卵の使い道が分かり、無駄に使われることが無いと分かれば作る方も納得ができる。

わたしもモリンさんを勧誘するときにプリンとピザを使ったし。

プリン、恐るべし。

茶碗蒸しの試食も終わり、そろそろおいとまさせてもらうことにする。

「ユナさん、お待ちしてますから、お店にも来て下さいね」

シャイラの言葉に料理長と副料理長も頷いている。

「うん、そのときはお願いね」

「はい!」

シャイラとゼレフさんと別れて、エレローラさんとわたしは一緒にお店を出る。

お店を出て、入口に置いてある大きなクマの置物に気付く。

すっかり忘れていた。

結局、クマの置物を止めることができなかった。さらにケーキにクマの絵を描くお手伝いまでしてしまった。

このまま、王都にクマの店が開店することになりそうだ。

シャイラには来るとは言ったけど、クマの着ぐるみの格好じゃ近寄り難いよね。

「それで、ユナちゃんは王都までなにしに来たの? もしかしてフローラ様に会いに来てくれたのかしら」

目の前にあるクマを見に来たとは言えない。

知った理由がサーニャさんの召喚鳥だし、移動はクマの転移門だ。

「えっと、……そうです。新しい絵本を描いたので、フローラ様に持ってきました」

「そうなの? フローラ様も喜ぶわよ」

まあ、嘘ではない。フローラ様に絵本を渡す予定はあった。

ただ、今日の予定ではなかっただけだ。

わたしたちは歩きながら話し始める。

「それで、絵本はどうしたらいいですか?」

「どうしたらって? 渡さないの?」

「複写しますよね? フローラ様に渡すとできないかと思って」

「そんなことを考えていたの? 大丈夫よ。フローラ様はお願いをすれば、ちゃんと貸してくれるから。それに新しい絵本はユナちゃんからフローラ様に渡してあげて。その方がフローラ様も喜ぶから」

話した結果、フローラ様に渡してから複写することになった。

「でも、読んでみたいわ。見させてもらってもいいかしら?」

「別にいいですけど」

そんなわけで、エレローラさんのお屋敷に行くことになった。

お屋敷に入るとスリリナさんが出迎えてくれるので挨拶をする。

ゴーレムの事件のときに会っているけど、いろいろあって、しばらく振りの感じがする。

「ユナ様、いらっしゃいませ」

「スリリナさん、お邪魔します」

「スリリナ、お茶の用意をお願いね」

「はい、かしこまりました」

部屋に行くと、さっそくエレローラさんに絵本を渡す。

「相変わらず、可愛い絵ね」

絵本を捲っていく。

お茶を持ってきてくれたスリリナさんにお礼を言って、お茶を頂く。

「この子はシュリちゃんね」

絵本に出てくる女の子の絵を指す。

「シュリに会ったんですか?」

「ええ、フィナちゃんと一緒にいて、可愛い子だったわ。今度王都に連れてきたら、家に連れてきてね」

「えっと、わかりました」

今のところ、その予定はないけど、王都に来るようなことがあれば連れてきてあげよう。

ページを捲るエレローラさん。

「くまさんとお別れをするのね」

パラパラ

「魔物に襲われたところにくまさんが助けに。まるで、勇者のようね。しかも、くまゆるとくまきゅうの登場。ふふっ、可愛いわね」

パラパラ

「あら、小さくなって、一緒に暮らすのね。わたしもこんな小さいクマだったら欲しいわ」

最後のページを見て終わる。

「どうでした?」

「もちろん、良かったわよ。でも、1つ聞いていいかしら?」

「なんですか?」

「馬車に乗っていた人たちはどうなったの?」

フィナにも聞かれたけど、そこって気になるところなの?

「別に決まってませんけど、そこは自由に解釈してください」

「自由ね。ユナちゃんも難しいことをさせるわね。人によって解釈が変わってくるわ。女の子たちを見捨てて逃げたことで、死ぬ場合。どうにか、逃げ通せた場合。危険から逃げる判断も必要だし、見捨てて逃げ出したことで死んだかもしれない」

「もしかして、描き直した方がいいですか?」

「ううん、必要はないわ。ただ、フローラ様に尋ねられた場合の答えを考えてね。それで、ユナちゃん的に答えがあるなら聞いておこうと思ったのよ」

読み終わった絵本を返してくれる。

まあ、読み手の問題だろう。

勇敢に育ってほしいと思うなら、逃げ出さずに女の子を守るべきと教えるかもしれない。

商人なら、決断は早くして、逃げろと教えるかもしれない。

逃げ遅れれば女の子のようになると教えるかもしれない。

でも、王族の場合はどうやって教えるんだろう?

王族の立場なら、逃げるのも大事だ。

でも、国民を見捨てろとも言えないような気がする。

教育は難しいね。

エレローラさんと絵本の内容について会話をしていると、ドアの外が騒がしくなったと思ったら、ドアが開いた。

現れたのは学生服を着たシアだった。

「お母様、ユナさんがいるって本当!」

「本当よ。落ち着きなさい」

「シア、久しぶり」

「ユナさん!」

嬉しそうにわたしのところにやってくる。

そして、その後ろからも制服を着たカトレア、マリクス、ティモルの姿もあった。