軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

238 クマさん、クリモニアに戻ってくる

王都にあるクマハウスに転移して、サーニャさんと一緒に外に出る。

「未だに信じられないわ。さっきまで村にいたなんて」

サーニャさんは不思議そうに目の前の王都の風景を見ている。

「誰にも言わないでくださいよ」

「分かっているわよ。わたしだって笑い死にはしたくないからね。それに村を救ってくれたユナちゃんに恩を仇で返すことはしないわ。ユナちゃんも王都で困ったことがあったら冒険者ギルドに来てね」

サーニャさんは一応、王都の冒険者ギルドのギルドマスターだ。なにかあればお言葉に甘えることにする。権力者の力はいざってときは役に立つからね。

「それじゃ、サーニャさん。わたしも帰りますね。なにかあれば連絡をください」

「そうだ、ユナちゃん。これを、受け取ってもらえる」

帰ろうとしたわたしを引き止めて、羽根が付いたキーホルダーみたいな物を差し出してくる。

「これは?」

「わたしの召喚鳥、フォルグの羽根で作ったものよ」

そう言って、召喚鳥を召喚する。

サーニャさんの腕に鷲のような鳥が止まる。

「わたしの着替えを覗いた鳥、フォルグって名前だったんですね」

フォルグか。なんか格好いい名前だ。

わたしのくまゆるとくまきゅうと良い勝負だ。

「まだ、根に持っているの? あれはいきなり服を脱いだユナちゃんが悪いのよ」

「わかっています。それでこれはなんですか?」

羽根が付いたキーホルダーについて尋ねる。

キーホルダーには茶色の羽根が数枚、飾りとして付いている。

「それを身に付けてもいいけど、家の窓際にでも飾ってもらっても構わないわ。それを目印にこの子が飛んでいくから。なにかあれば、連絡をするわ」

ちょっと違うけど、伝書鳩みたいなものかな?

それにしてもサーニャさんの召喚鳥はそんなことができるんだ。

まあ、鳩も長距離飛ぶことはできるんだから、召喚鳥ができてもおかしくはない。

本当ならクマフォンを渡せば良いんだけど、渡すと仕事の連絡が来そうなので渡すつもりはない。

「これは部屋の中に飾ってもいいんですか?」

「大丈夫よ。自分の羽根があるところに向かって飛んでいくからね」

そうなるとクマボックスに入れるとダメかな。

クマボックスのシステムが分からないから、召喚鳥が来ない可能性の方が高い。素直に家のどこかに飾った方がいいかな。

「でも、こんなことができればエルフの村に飛ばすこともできるんじゃ」

話によれば10年も音信不通だったらしいからね。

召喚鳥がいるなら、手紙ぐらい送れただろうに。

「当時はそんなに長距離を飛ばしたことはなかったし、考えたことも無かったからね。それに村まで飛ぶかは分からないわ。今度、フォルグがちゃんと村まで向かえるかラビラタに手紙を送るつもりだけど。もし、駄目だったらユナちゃんに頼むからそのときはお願いね」

「まあ、手紙を渡すぐらいいいですけど」

毎日でなければ問題はない。

逆にサーニャさんの場合、年に一回って方が可能性が高い。

今度こそ用件を済ましたわたしはサーニャさんと別れ、クマの転移門を使ってクリモニアに戻ってくる。

忘れないうちにサーニャさんから貰った羽のキーホルダーを自分の部屋の窓際に飾る。

これで、大丈夫かな?

まあ、サーニャさんがわたしに連絡してくることなんて無いと思うけど、あっても困るものじゃない。

でも、何度もくだらない理由で呼び出されたら、叩き返すつもりだ。

羽のキーホルダーの飾り付けをしたわたしはクマハウスを出る。

う~ん、久しぶりのクリモニアだ。長い間離れていたから、目の前の景色に懐かしさが込み上げてくる。

帰ってきたという感覚になる。

もう、この街が故郷になりつつある。

本当は街の中を周りたいけど、戻って来たことをティルミナさんたちに報告をするために孤児院に向かう。この時間帯ならティルミナさんもフィナも孤児院にいるはずだ。

孤児院の前に着くと、外を元気に走り回る幼年組の子供たちの姿がある。もしかして、前に教えた鬼ごっこでもしているのかな?

そして、子供たちがわたしに気付く。

「くまのお姉ちゃん!」

「お姉ちゃん」

子供たちが駆け寄ってくる。

どの子も笑顔が見える。

「みんな、元気にしていた? 院長先生たちに迷惑かけていない? 喧嘩はしていない?」

「うん、元気だよ」

「ちゃんと、仕事もしているよ」

「喧嘩なんてしないよ」

子供たちが元気よく答えてくれる。

「良い子にしていたんだね」

子供たちの全員の頭を撫でてあげる。

平等に撫でてあげないとイジケル子もいるからね。

「それで、ティルミナさんとフィナはいる?」

「うん、いるよ。今は院長先生のところにいると思う」

教えてくれた子にお礼を言って孤児院の方に向かう。

卵の方は終わったのかな?

孤児院のドアを開けて中に入って行く。

食堂に向かうとティルミナさんと院長先生がおしゃべりしながらお茶を飲んでいる姿があった。

「ユ、ユナちゃん。帰ってきたの?」

「ユナちゃん、お帰り」

「ただいま。今日、戻ってきたよ」

2人が座っている近くの椅子に座らせてもらう。

「今回は長かったね」

「思ったよりも、エルフの村が遠くてね」

「わたしには想像もつかないわね」

「それで、なにか、変わったことはなかった?」

「変わったこと…………。そうよ! ユナちゃんがいなくて大変だったのよ!」

ティルミナさんがいきなり思い出したかのように声をあげて立ち上がる。

なんだ。なんだ。

「領主夫人のエレローラ様と宮廷料理人のゼレフさんって方が来て、大変だったのよ」

そういえば、そんなことがあったとフィナから聞いたっけ。

あれから、いろいろあって、すっかり忘れていた。

ティルミナさんの話ではいきなり、ミレーヌさんが二人を連れて孤児院にやってきて、エレローラさんが伯爵夫人、ゼレフさんが宮廷料理人の料理長だと知らされたそうだ。ティルミナさんは驚いて声も出なかったと言う。

でも、それって、わたし悪くないよね。怒られる理由にはならないよね。

アポ無しで来るエレローラさんが悪い。

まあ、わたしもアポ無しでお城に行くから人のことは言えないけど。

「ミレーヌさんとフィナがいなかったらと思うと胃が痛くなるわ」

「ミレーヌさんとフィナ?」

「ええ、ミレーヌさんが二人の案内をしてくれたおかげで、わたしは質問されたことに答えるだけですんだのよ。もし、ミレーヌさんがいなかったらまともに対応ができたか分からなかったわ」

ミレーヌさんはちゃんとギルドマスターらしく仕事をしてくれたみたいだ。

「でも、エレローラさんも前もって来ることを連絡をしてくれれば良かったのに」

まあ、エルフの村にも行きたかったから、なんとも言えないけど。

なにかしら方法があったかもしれない。

「エレローラ様の様子からすると、ユナちゃんを驚かすために、いきなり来た感じだったわよ」

エレローラさんなら十分にありえる。ゼレフさんはそれに付き合った感じなのかな?

そして、エレローラさんたちはわたしがいないことを知ると残念そうにしたそうだ。

絶対に驚かせる気まんまんだったね。

「それで二人は何しに来たんですか?」

「王都にユナちゃんのお店を出すから、参考にするためにユナちゃんのお店を視察に来たって言っていたわよ」

「わたしのお店じゃないですよ。確かにプリンとか、わたしが教えた料理は販売しますけど。あくまで経営はお城がしますよ」

「そうなの?」

「わたしは料理の作り方を教えただけだからね」

それから孤児院に来たエレローラさんたちは鳥小屋を見学したそうだ。

そのときに一生懸命に働く子供たちに驚き、子供たちと楽しそうに会話をしたそうだ。子供たちはエレローラさんが貴族ってことを知らないから、ティルミナさんは子供たちがエレローラさんを怒らせるのではないかと気が気ではなかったらしい。

でも、それは杞憂に終わり、子供たちと会話を終えたエレローラさんたちは『くまさんの憩いの店』に向かったそうだ。

「お二人をお店に案内したけど、大騒ぎして大変だったのよ」

なんでも店の前に立っているクマの石像で騒ぎ。お店の中に入れば、勝手に歩き回り、クマのフィギュアを自由気ままに見て回ったそうだ。

エレローラさんがお店の中を勝手に歩きまわる姿が頭に浮かぶ。でも、ゼレフさんも?

ゼレフさんは料理を食べると騒ぎそうだけど。

他のお客様の迷惑になるようなことはしていないよね。

「それで大丈夫だったんですか?」

「ええ、ミレーヌさんとフィナが注意してくれたからね」

ミレーヌさんは分かるけどフィナが?

「歩き回るエレローラ様にフィナが話しかけて席に座らせてくれたりしたの。それにエレローラ様とフィナが普通に会話をしているのを見たときは驚いたわ」

散々、貴族や王族がいる場所に連れまわしたからね。

それに最近ではノアとお出かけをする話も聞くし、エレローラさんにも何回か会っている。

今までは貴族の前では緊張してばかりだったフィナも成長したものだ。

嬉しいけどお姉ちゃんは少し寂しいよ。

それから、エレローラさんとゼレフさんはモリンさんの作る料理を食べれるだけ食べたそうだ。

二人ともなにをしているんだか。

その翌日にはアンズのお店『くまさん食堂』に行き、そこでも店内を見学をして料理を食べたそうだ。

そして、三日目は開店と同時に『くまさんの憩いの店』に突撃して、料理を食べると、お持ち帰りにパンを買って帰ったそうだ。

なんでも、その日に王都に帰るから急いでいたらしい。

「嵐のような数日だったわ。二人とも悪い人じゃないのは分かるけど疲れたわ」

当時の出来事を思い出すと溜め息を吐くティルミナさん。

「なんか、お疲れさまでした」

と 労(ねぎら) いの言葉をかける。

それから、わたしがいなかったときの話を聴いているとドアが開き、部屋にフィナが入ってきた。