軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

236 クマさん、秘密を話す

クマの転移門を否定するサーニャさんに証拠を見せるため、扉をクマさんパペットで開ける。

クマさんパペットによって開けられた扉の先は、王都にあるクマハウスの倉庫に繋がる。

扉の先に見知らぬ場所が現れて、三人は驚愕の表情を浮かべる。

「どうなっているの?」

「ドアの先が……」

「…………」

三人はクマの転移門の開いた扉の中を見て、目を見開いている。

「本当にこの先が王都に繫がっているの?」

サーニャさんはクマの転移門の裏を見たり、グルグルと周りを回ったりしている。

ルイミンは覗き込むようにクマの転移門の中を見るが、中に入ろうとはしない。

「繋がっているよ。通ればわかるよ」

先にわたしが扉をくぐり、王都にあるクマハウスの倉庫に移動する。

わたしが通ってみせるとサーニャさんも緊張しながらクマの転移門を通る。サーニャさんが通ると、ルイミンとムムルートさんも続く。

「ここは?」

ぐるりと倉庫を見渡す。

王都の倉庫は一度も使われていないので、綺麗なものだ。

もっともフィナは解体作業を終えると綺麗に掃除をしてくれるから、いつも綺麗になっている。

「王都にあるわたしの家の倉庫だよ。外に出ればサーニャさんも分かると思うよ」

倉庫の中では、ここが王都とは分からないので、皆を連れて倉庫を出る。

倉庫を出ると、目の前に広がるのはサーニャさんがよく知る王都の姿であり、ルイミンが倒れていたクマハウスの前だ。

そして、三人の見る先には、ここが王都である証拠がある。この王都で一番高い建物であり、同じ物が2つと無いもの。

国王がいるお城が建っている。

「……本当に王都だわ」

「信じられない」

「こんな一瞬で……」

サーニャさんは見知った風景に唖然とし、ルイミンはキョロキョロと周辺を見る。ムムルートさんは驚きの表情でお城を見ている。

そんな中、サーニャさんが歩き出そうとするので、クマさんパペットで腕を掴む。

「サーニャさん、どこに行くんですか!?」

「確認を……」

「駄目ですよ。確認なんてしなくても、ここが王都ってぐらいはサーニャさんには分かるでしょう?」

「そうだけど……」

王都だと分かるけど、心は受け入れられないみたいだ。

「それに、ここにいるはずがないサーニャさんが知り合いにでも見られでもしたら、面倒になるから戻りますよ」

いつまでもクマハウスの前に立っていて、知り合いに見られると面倒なことになるので、サーニャさんの腕を引っ張り、ルイミンの肩を叩き、ムムルートさんに声をかけて、皆を連れて倉庫の中に戻る。

そして、倉庫に戻るとクマの転移門を通ってムムルートさんの家に転移する。

戻ったら、忘れずに扉を閉める。

「信じられん」

ムムルートさんは床に腰を下ろして 胡座(あぐら) をかく。

「ユナちゃん、これはなんなの?」

サーニャさんはクマの転移門を見て尋ねる。

「わたしの持っている魔道具だよ」

説明が出来ないので、魔道具としておく。

まあ、正直に神様から貰った能力なんて言えないからね。

「魔道具?」

「うん、門と門を繋げて行き来出来る魔道具だよ」

「ユナちゃん、どこでそんなものを……」

「ごめん、話せるのはここまでだよ」

クマの転移門について、これ以上は教えることはできない。

「どうやって手に入れたとか、なんで持っているとか、教えることはできないから」

「でも……」

「サーニャ!」

サーニャさんが口を開こうとしたが、ムムルートさんが遮る。

「嬢ちゃんが話せないと言っておる。我々、エルフも話せないことがいくつもある。それと同じことだ。嬢ちゃんがここまで話してくれたんだ。それでよかろう。別にどうやって手に入れたかを聞いたとしても、わしらの嬢ちゃんに対する態度は変わらない」

「お爺ちゃん……」

サーニャさんは言葉を呑み込み、口を閉じる。

たぶん、いろいろと聞きたいのを我慢している感じだ。

まあ、サーニャさんの気持ちも分からなくもない。でも、これ以上は話すことはできない。

サーニャさんはムムルートさんとわたしを見て小さく溜め息を吐き、諦めた表情を浮かべる。

「わかったわ。これ以上は聞かないわ。それに聞いたら、怖くて寝られなくなりそうだわ。でも、どうして、こんな凄い秘密を教えてくれたの? 黙っていた方が良かったんじゃない?」

もっともな質問だ。

「わたしがエルフの村に自由に行き来したかったのが一番の理由かな。ルイミンやムムルートさんはわたしが王都から来たってことは知っているでしょう。そして、ルイミンは王都がどれくらい遠いかも知っている。そんなわたしがエルフの村に頻繁に来たらおかしく思うでしょう」

「はい。おかしいって思います」

王都に来るのに苦労したルイミンは大きく頷く。

「だから、村に行き来したいから、ルイミンやムムルートさんには知っておいてほしかったの。もし、おかしいと思った村の人がいたら、誤魔化してほしくてね」

それに話したのは契約魔法があるってことが大きい。

もし、契約魔法が無ければ話したりはしない。

「わたしは?」

「サーニャさんは王都に一緒に帰ることになるでしょう。教えないと王都への帰りが面倒だし。エルフの里に何かあれば、転移門を使うことになるし」

二度とあんなことにはなってほしくないけど。

「確かに、一瞬で帰ることができるのに、長旅をする必要はないわね」

サーニャさんはわたしの言葉に納得する。

あの長い道のりを一瞬で王都に戻れるんだ。誰だって、一瞬で移動ができる方法があれば、そっちの方がいい。

「はぁ、ユナちゃんの秘密って何かと思ったけど、とんでもなかったわね」

改めてサーニャさんはわたしの秘密にタメ息を吐く。

「あの契約の輝きも頷ける」

「ムムルートさん。聞きそびれたんですが、この中の一人だけに話して、その人物が他の二人に話したらどうなりますか」

「もちろん、契約は発動する。相手が知らないのだからな。あくまで発動しない条件はお互いに知っている場合だけじゃ」

それなら、クマフォンはルイミンだけに教えればいいかな。

ムムルートさんやサーニャさんに教える必要はないし。

秘密は少ない方が良い。

「それにしてもこの門は凄いわね」

サーニャさんはクマの転移門の扉に手を触れて開けようとする。

「門の扉はわたしじゃないと開けられないよ」

「そうなの?」

サーニャさんは扉を押す手に力をこめるが、びくともしない。

サーニャさんはルイミンを呼んで、一緒に押すが扉は開くことはない。

正確には開けるにはクマさんパペットが必要だ。

まあ、このクマさんパペットはわたしにしか使えないから同じことになる。

「本当に開かないわ」

「だから、サーニャさん一人で移動できたりしませんよ」

サーニャさんは扉を開けるのは諦めて腰を下ろす。

「残念。使えるなら、たまに借りようと思ったのに」

他人が使えるようだったら、いろいろとまずいからね。

そこの辺りは神様、グッジョブだ。

「それじゃどうやって、ユナさんと連絡を取るんですか?」

移動ができないと知ったルイミンが尋ねてくる。

ルイミンも移動ができて、わたしと連絡ができると思っていたらしい。

「それはあとで、ルイミンだけに教えるよ」

「わたしたちには教えてくれないの?」

「秘密を知る者は少ない方がいいからね」

「うぅ、ユナちゃん。ここまで教えてくれて意地悪ね。中途半端で気持ち悪いけど、我慢するしかないわね」

納得してくれたのでクマの転移門を片付ける。

「嬢ちゃんが言いたいことはわかった。この村の長として嬢ちゃんとの約束は守ろう。そして、嬢ちゃんがこの村に来ることをいつでも歓迎する」

ムムルートさんが改めて宣言をしてくれる。

「でも、未だに信じられないわ」

「わたしが苦労して王都まで行ったのに」

ルイミンが自分の苦労が無駄なように感じてうなだれている。

「これは設置した場所同士しか移動できないから、どっちにしろ一度は来ないと無理だよ」

「そうですが……」

ルイミンは納得がいかないようだ。

「でも、ユナちゃんがたまに王都に出没する理由が分かった気がするわ」

「黙っておいてくださいね」

「分かっているわよ。話そうとも思わないし、村を救ってくれたユナちゃんを裏切ったりしないわ。なによりも、あれは辛いわ」

あの笑い地獄が辛かったのか、自分の左右の肩を抱いて、少し震えるサーニャさん。

「それで、嬢ちゃんの願いは家の設置だけでよいのか? それだと礼になっておらん。逆にわしらのためにしてくれているように感じられる。嬢ちゃんにはコカトリスの件もある。他にあれば言ってくれ」

それじゃ、お言葉に甘えることにしよう。

「あと、森で採れる食材が欲しい。キノコとか他にも欲しい。それから、神聖樹の葉で作ったお茶が欲しい。神聖樹の枝も欲しいかな? それから、エルフの腕輪の作り方って教えてもらえることはできますか?」

第二希望から、全ての希望を言ってみる。

言うだけはタダだ。

「済まぬ。他のことに関しては大丈夫だが、腕輪に関することは教えることはできない」

ムムルートさんは頭を下げる。

いきなり頭を下げるので、慌てて返事を返す。

「気にしないで、無理を言っているのは分かっているから」

「いろいろと理由があるが、すまぬ」

まあ、腕輪があったら少し強化できたり、フィナたちにプレゼントができたらいいな程度だったから、エルフにとって秘密なら無理に聞き出すことでもない。

せっかく、良い関係になっているのに、お互いに嫌な気分になることもない。

それにクマハウスの設置、森で採れる食材、神聖樹の茶葉、神聖樹の枝の願いは聞き叶えられた。

これだけで十分だ。