軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

227 クマさん、コカトリスと戦う。その1

コカトリスの前を走るムムルートさんは速い。コカトリスも空を飛びながら追いかける。わたしはそのあとを追走する。

ときおり、ムムルートさんから攻撃があり、上手にコカトリスを誘いだしている。

でも、どの攻撃もダメージを与えられるほどの強さではない。

本当は無防備なコカトリスの後ろを攻撃をしたい気持ちもあるが、下手に攻撃をして村に逆戻りされても困る。そんなことになればムムルートさんが 誘(おび) き寄せているのを邪魔することになる。

今は邪魔せずに後を追いかけることにする。

コカトリスはムムルートさんに向けて、風攻撃や羽を飛ばしたりする。ムムルートさんは風で防壁を張り防ぐ。走る速度を落とさずに、村からどんどん離れる。

木々を活用して、攻撃の的を絞らせない。

そして、丘のような開けた場所に出る。ムムルートさんが歩みを止めるとコカトリスがゆっくりと降りてくる。

ムムルートさんはコカトリスと正面で対峙する。

確かにここなら、広くて戦うのに適している。でも障害物が無いため、姿を隠しながら戦うには不利な地形だ。

今回は誘き寄せるのが目的だから、仕方ないのかな。

コカトリスは動きを止めたムムルートさんに向けて翼を 羽(は) ばたかせると、無数の羽をムムルートさんに飛ばす。

ムムルートさんは風魔法で防壁を作り、さらに後方へジャンプして躱す。

後方に下がったムムルートさんは構えをとり、風魔法を放つ。

刃となった風がコカトリスを襲うが、コカトリスは飛び上がり躱す。地面には風の刃によって掘り起こされた数本の溝ができる。

飛び上がったコカトリスは大きく翼を羽ばたかせ、風を巻き起こす。ムムルートさんが風魔法を起こし相殺させる。

おお、互角な戦いをしている。

ムムルートさん、格好いい。

ムムルートさんとコカトリスとの攻防が続く。

って、見ている場合じゃないよね。互角ってことは負ける可能性もあるってことだ。

今のわたしの位置はコカトリスの後ろにいる。

コカトリスはムムルートさんと対峙しているため、後ろが 疎(おろそ) かになっている。

わたしは小熊の炎を作り出し、コカトリスの無防備な背中に向けて放つ。わたしの存在に気付いていないコカトリスは避けることもできず、小熊の炎が翼に命中する。

コカトリスは怒り狂った悲鳴のような叫び声をあげる。

「嬢ちゃん! なんで来た!」

ムムルートさんがわたしの存在に気付いて叫ぶ。

わたしは気にせずに小熊の炎を放ち続ける。

ダメージは与えられるうちに与えておくのが、ゲームでは常識だ。

でも、コカトリスも馬鹿ではない。いつまでも、わたしの攻撃を受け続けるわけもなく、すぐにわたしの存在に気付いて、振り返ると翼を大きく羽ばたかせ、赤黒い羽を飛ばす。

「嬢ちゃん!」

わたしはムムルートさんと同様に風の防壁を作って防ぐ。

ムムルートさんは防壁を解くと風の刃を放つ。

でも、コカトリスは翼を羽ばたかせ、空高くに舞い上がる。

「どうして来たんだ!」

ムムルートさんが、睨みつけながら駆け寄ってくる。

「手伝うよ」

「なにを言っておる! 逃げるんだ。あやつはわしがどうにかする」

「足手まといにはならないよ。自分の身は自分で守る。だから、ムムルートさんはわたしを気にしないで戦って」

コカトリスが上空を円を 描(えが) くように回っている。

ムムルートさんはコカトリスとわたしを交互に見る。

「1つだけ、約束をしてくれ。もしものときは絶対に逃げてくれ。子供が死ぬところは見たくない」

子供って、ムムルートさんから見たらそうなるのかな。

「お主が逃げる時間ぐらい、稼いでやる」

なに、この『俺の屍を乗り越えて生きていけ!』的な展開は。

わたしはもちろん、ムムルートさんを死なすつもりはない。

死なれでもしたら、サーニャさんやルイミンが悲しむ。

とりあえず、わたしはムムルートさんの言葉に頷いて、一緒に戦う許可をもらう。

そして、空にいるコカトリスを見上げる。

コカトリスは再度、ゆっくりと翼を羽ばたかせながら降りてくる。

そして、お腹が膨らみ始める。

「ムムルートさん、動かないで!」

わたしが叫んだ瞬間、コカトリスは嘴から紫色の息を吐く。わたしは叫ぶと同時にわたしを中心とした360度に風の防壁を張る。

毒だ。

ゲームでもコカトリスが吐く息でステータスが毒になったことがあった。

わたしはコカトリスが毒を吐き終わると、防壁を拡大させて、一緒に周辺の毒も吹き飛ばす。

「嬢ちゃん、助かった」

ムムルートさんはお礼を述べると、コカトリスに向かって駆け出し、至近距離から、風の刃を放つ。コカトリスの翼の一部を散らす。

コカトリスは怒り狂い、至近距離から毒を吐くが、ムムルートさんには同じ攻撃は通用しない。

強い突風が吹き、毒の息を反対方向に反らす。

さらに追い打ちをかけるように攻撃を仕掛けようとした瞬間、コカトリスは翼を広げたまま半回転した。その回転にムムルートさんは巻き込まれて弾き飛ばされる。

「ムムルートさん!」

「だ、大丈夫じゃ」

倒れたムムルートさんは返事をする。

でも、倒れているムムルートさんにコカトリスが襲いかかる。

わたしは左手でムムルートさんに風魔法の防壁を作り、右手で小熊の炎を作り出してコカトリスに向けて放つ。致命傷にはならないのは分かっている。注意をわたしに向けるためだ。

小熊の炎は一部の羽を焼いただけで、弾き飛ばされる。

う~ん、大熊の炎なら倒せるかな。

でも、そんなの出したらムムルートさんが蒸し焼きになっちゃうよね。

意外とムムルートさん、足手まとい?

さすがに本人に向かって、「足手まといだから、わたしに任せて逃げてください」とは言えない。

「嬢ちゃん、助かった」

「無理はしないでください。怪我をしたようなら、わたしが倒しますよ」

「ふふ、コカトリスを前にして、それだけの強気な言葉が言えるのはさすがだな」

ムムルートさんは立ち上がり、笑みをこぼす。

別に強気とかでなく、本気なんだけどね。

空を見るとコカトリスは空に舞い、こちらの様子をうかがっている。

「嬢ちゃんの力を見込んで頼みがある」

「なに?」

「あやつが降りてきたら、空に逃がさないようにしてくれるか」

「別にいいけど」

「大技を放つから、巻き込まれないように注意だけはしてくれ」

ムムルートさんはわたしから離れると構えをとって、魔力を両腕に集め出す。

左にしている腕輪が輝き出す。

どんどん、魔力が集まっているのが分かる。

そんなムムルートさんに気を取られていたら、空からコカトリスが羽を飛ばしてくる。

鬱陶しい。

そんな攻撃を何度しても同じこと。

風の防壁に弾かれて、羽は地面に突き刺さる。

でも、空からの攻撃って卑怯だよね。

叩き落としたい。

わたしは走りだし、勢いを付けて高く飛び上がる。

一瞬で、コカトリスを追い越してしまい、高く上がってしまう。

やばい、高く飛び過ぎた。

落下位置は風魔法で調整する。

狙いはコカトリス。

右足を突きだし、クマさんキックがコカトリスの背中に命中する。

クマさんキックを喰らったコカトリスは地面に向かって落ちていく。

おお、できるもんだね。

地面に落ちたコカトリスは立ち上がろうとするが、ムムルートさんが待ち構えていた。

「嬢ちゃん、巻き込まれるなよ!」

ムムルートさんの周りに渦巻状の風が集まっている。その風を手に収束させると、地面に倒れているコカトリスに放つ。

立ち上がろうとしたコカトリスの片翼を切り落とした。

おお、凄い。

わたしは地面に着地する。

「嬢ちゃん、止めを頼む」

ムムルートさんは片膝を突いて息が上がっている。

かなりの魔力を消耗したようだ。

わたしは右手に風を纏わり付かせ、無防備になっているコカトリスの首に放とうとしたとき、コカトリスの前に大きな影が落ちる。

わたしが上に視線を移したとき、もう一匹のコカトリスが翼を羽ばたかせながら降りてくるところだった。

しかも、攻撃を仕掛けてくる。

降りて来るコカトリスが、羽を飛ばしてくる。

右手に集めていた風を、倒れているコカトリスではなく、攻撃を防ぐために風魔法を放ち、相殺させる。

「嬢ちゃん、逃げろ!」

先ほどの魔法で消耗しているムムルートさんが叫ぶ。

逃げろって言われても、逃げる訳にはいかないよね。

わたしは心の中でくまゆるとくまきゅうを呼び寄せる。

そして、ムムルートさんのところまで下がる。

「動けますか?」

「村に行って、逃げるように伝えてくれ」

逃げろと言われても新しいコカトリスはわたしたちの方を睨みつけるように見ているような気がする。

ムムルートさんを殺したら、すぐにわたしを追いかけてくるかもしれない。そうなればコカトリスを村に連れていくことになる。

コカトリスは唸り声をあげ、翼を大きく広げる。

嘴から、紫色の毒が洩れている。

怒り狂っている感じだ。

大きく広げた羽を閉じると同時に羽が飛んでくる。

とっさに、防壁を作って防ぐ。でも、一匹目のコカトリスの攻撃よりも軌道を大きく逸らすことはできなかった。

「嬢ちゃん、わしのことはいい。行ってくれ」

「そうはいかないよ」

再度、コカトリスが翼を広げたとき、くまゆるとくまきゅうが飛び出してくる。

わたしはムムルートさん、くまゆる、くまきゅうを守るために大きな風を巻き起こして、コカトリスを吹き飛ばす。

くまゆるとくまきゅうは無事にわたしのところにやってくる。

「あとはわたしが戦いますね」

「嬢ちゃん?」

わたしはムムルートさんを持ち上げる。

さすが、クマさんパペット。簡単に持ち上がる。

重い? 物も簡単に持ち上げられる。

「なにをするんじゃ」

騒ぐムムルートさんを、くまきゅうの背中に乗せる。

ムムルートさんはくまきゅうから降りようとするので、電撃魔法を使って、痺れさせる。

「嬢ちゃん。なにを……」

「くまきゅう、ムムルートさんを村までお願い」

「な、なにを言っておる」

「行って」

くまきゅうはわたしの命令に従うと走り出す。

ムムルートさんが叫ぶが、気にしないでおく。

さて、戦いの2ラウンド目の開始だね。