軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

220 クマさん、エルフが長寿種族だと再認識する。その2

「それで、結界の方は大丈夫なの?」

サーニャさんは帰ってくることになった原因について尋ねる。

「たまに魔物が入り込んでくるけど、今のところは大丈夫よ」

「でも、結界が弱まっているのは本当なのね」

「ええ、半年ほど前から魔物が結界の中に入り込むようになったわ。まあ、入り込んだと言っても一匹や二匹程度なんだけど、最近は少しずつ増え始めているわ。だから、義父さんは結界の張り直しを決意して、あなたを呼び寄せたのよ」

結界が弱まっていると聞いて、大事になっている可能性も考えていたけど、それほど緊急性ではないみたいだ。

これなら、落ち着いてエルフの里の探索ができるかな。

「それじゃ、被害は出ていないのね」

「ええ、今のところは被害は無いわ。アルトゥルたちが交代で見回りをしているからね。ただ、子供たちには遠出は禁止にしているくらいね」

ルッカを見ながら言う。

確かに、魔物がいる危険性があるなら、子供を遊びに行かせられないのかな?

フィナなんて、魔物がいる森に1人で薬草を探しに行って、危険な目にあっている。それを考えれば身を守ることができない子供を危険な場所から遠ざける理由は理解できる。

「それじゃ、早めに結界を張りなおさないといけないわね。いつ頃やるか決まっているの?」

「それは明日、義父さんから話を聞いて。詳しいことは聞かされていないから」

結界はそんなに簡単に張り直せたりするものなのかな?

ゲームや漫画とかだと、苦労する場合が多いんだけど、話を聞いていると、そんな感じは受けない。

血縁者が三人いれば簡単に行えるものなのかな?

それなら、結界を行う儀式か、魔法か、わからないけど見学させてもらうことはできるかな。

せっかくここまで来たのだから、見てみたい。

でも、身内の秘術みたいなことを言っていたから駄目かな。

「それでユナちゃんだったかしら? 娘が二人ともお世話になったみたいね」

「いえ、そんなことは」

「そんなことはないわよ。ユナちゃんがいなかったら、こんなに早く戻ってくることはできなかったし、快適な移動にはならなかったわ」

「はい、ユナさんのクマさんは速かったです」

「あの、召喚獣のクマね」

あの場にいなかったルッカだけが意味が分からないので、ルイミンに尋ねている姿がある。

「ラビラタが報告に来たときは意味が分からなかったわ。いきなり、サーニャとルイミンがクマに乗って帰ってきたと言われても、義父さんと一緒に首を傾げたわ」

まあ、普通、娘がクマに乗って帰ってきたと聞けば、首の1つや2つは傾げるよね。

でも、やっぱり、あのわたしたちを尾行していたエルフが報告をしてくれたみたいだ。

「でも、実際にユナちゃんの姿とクマを見たときは驚いたわ。本当にクマなんですもの。でも、二人がクマに乗っているのを見て安心したけど、まさか召喚獣とは思わなかったわ」

ルッカがルイミンから話を聞いたのか、「僕も乗ってみたいです」「それじゃ、あとでユナさんにお願いしようね」って会話が聴こえる。

まあ、頼まれたら断る理由は無いから良いんだけど。

「たいしたお礼はできないけど、好きなだけ家に泊まっていってね」

それは嬉しい申し出だけど、できればクマハウスを建てたいところだ。

エルフの村なら、人の出入りも少ないみたいだし、目立たない場所に設置させてもらえれば見つからないはず。クマの転移門も設置できる。でも、クマの転移門を設置するなら、森の奥の方がいいかな?

「サーニャさん、クマハウスを建てることはできる? 村の端の方でもいいんだけど」

「クマハウスね……、たぶん、大丈夫だと思うけど、その辺りはお爺ちゃんに一応許可をもらわないと駄目ね」

お爺ちゃんってことはさっき会った、ムムルートさんだっけ。まあ、家を建てるなら、長の許可が必要だよね。

「それじゃ、ユナちゃん。明日は一緒にお爺ちゃんのところに行きましょう」

「いいの? 大事な話があるんじゃないの?」

「平気よ。尋ねるだけだから。だから、今日はわたしの部屋に泊まるといいわよ」

「あなたの部屋は無理よ」

タリアさんがサーニャさんの提案をいきなり却下する。

「どうして?」

「だって、物置き場になっているんですもの」

「……なんで、そんなことになっているのよ!」

「10年も帰ってこないんですもの。ああ、でも、ベッドはそのままになっているから大丈夫よ。あと、ふとんも新しくしておいたから、寝れるわよ」

サーニャさんは立ち上がると自分の部屋に向かう。

そして、奥の部屋から叫び声が上がる。

「えっと、狭いけど、ユナさんはわたしの部屋で寝てください」

たぶん、サーニャさんの部屋の状況を把握しているルイミンが申し出てくれる。

サーニャさんは戻ってくると、タリアさんに文句を言い始めるが、タリアさんは涼しい顔で言い訳をしている。

「それなら、一年に一回は戻ってくることね」

「そんなの無理に決まっているでしょう」

「それじゃ、このまま帰ってくるのもいいかもね。うん、いい考えね」

「お母さん……」

サーニャさんは肩を落として疲れた様子だ。

くまゆるたちがいれば可能だけど、馬とかの移動手段だと、簡単には行き来できる距離じゃない。

まあ、クマの転移門を使えば一瞬なんだけど。

それから、サーニャさんの王都での話をしているとドアが開く音がする。

部屋の中に入ってきたのは20代の細身の男性エルフだった。

「ルイミン、サーニャ」

「お父さん」

ルイミンが20歳過ぎの男性をお父さんと呼ぶ。

うん、知っていた。

ルッカが未来の長なら、兄はありえないもんね。

なんだろう、家族が全員集まったけど、この異様な家族風景は。全員が兄弟姉妹にしか見えない。

「サーニャ、久しぶりだな」

「うん、ただいま」

「ルイミンも無事にサーニャを連れて戻ってきてくれて良かった」

「だから、わたしは大丈夫だって言ったでしょう」

胸を張って答えるが、ルイミンが王都に来るまでのことを知っているわたしとしては突っ込みたくなる。

お腹空かして倒れていたとか、王都で迷子になっていたとか、大切な腕輪を売ってしまったとか、わたしが知っているだけで、こんなにある。たぶん、わたしが知らないルイミンの苦労話はまだあると思う。

まあ、必要とあればサーニャさんが話すだろうし、わたしは黙っておくことにする。

でも、ルイミンもよく胸を張って言えると感心する。

「サーニャも変わりないようだな」

「そう簡単に変わらないよ」

「でも、戻ってきてくれて助かった」

「さすがに結界が弱まっていると聞けばね」

父親は座っているサーニャさんの頭を撫でると、サーニャさんは恥ずかしそうに振り払う。

そして、父親はわたしの方に視線を向ける。

「それで、そちらが一緒に来たクマの格好をしたお嬢さんか。なんでも、ラビラタの尾行に気付いたとか。ラビラタが悔しそうにしていたぞ」

父親は笑い出す。

探知魔法のおかげとは言えない。

「わたしも気付いていたわよ」

「おまえは方角もか?」

「それは」

「なんでも、そっちのクマのお嬢ちゃんは人数に方角まで言い当てたそうじゃないか」

なんか、探知魔法のせいで、大事なことになっている。

口は災いの元だね。

「ユナちゃんは優秀な冒険者だからね」

「はい、ユナさんはとても凄いんですよ」

二人ともわたしを持ち上げないでもらえるかな。

クマの着ぐるみが無ければ普通の女の子以下だよ。

「それはわたしの召喚獣が気付いてくれたおかげです。わたしが凄いわけじゃないです」

「そういえばクマの召喚獣がいるって聞いたな」

「その召喚獣が教えてくれたんです」

とりあえず、いつも通り、探知関係はくまゆるたちのおかげとしておく。

「なるほど」

「そうだったのね。でも、本当にユナちゃんの召喚獣は凄いわね」

サーニャさんも納得してくれたみたいだ。

「でも、最近あいつも調子に乗っていたから、ちょうど良い薬になっただろう」

あの人に恨まれたりしないよね。

わたしはサーニャさんの父親と改めて挨拶を行う。

名前はアルトゥルさん。サーニャさん、ルイミン、ルッカの父親だ。兄と言われても違和感はない見た目だ。

「それにしても本当にクマの格好をしているんだな。ラビラタから聞いたときは、そんな馬鹿なと笑ったが」

はい、クマですよ。笑ってください。

実際にクマの格好だから反論することはできない。

「まあ、なにも無いところだが、ゆっくりしていってくれ」

その日はルイミンの部屋で寝ることになったが、なぜか、サーニャさんの部屋の片づけを手伝うことになった。

部屋に行ったら、ベッド以外の場所には荷物が山積みになっている。

「ベッドの上は片付けておいたのよ」

タリアさんは自慢げに言う。

たしかにベッドだけは綺麗になっている。

でも、他の場所は……。

「帰ってくるって分かっているんだから、全部片付けてよ」

「布団は新しくしてあげたわよ」

タリアさんは言うだけ言うと去っていく。

「ユナちゃん、ごめんね」

「別にいいですけど。タリアさんは変わっていますね」

今はサーニャさんのお部屋を片付け中だ。

サーニャさんの部屋にあった荷物はわたしが庭に作ってあげた倉庫に運ぶことになった。

わたしが倉庫を作るとタリアさんも自分の部屋からも荷物を運び出した。

まあ、荷物を入れるために作ったから良いんだけど。

これじゃ、この倉庫も近いうちにいっぱいになりそうだね。

その頃にはわたしはいないから関係はないけど。

「昔から、ああなのよ。もう少し、しっかりしてくれると嬉しいんだけど。ああ、その荷物はわたしのだから、置いておいて」

わたしはサーニャさんの指示でクマボックスに一時的に荷物を入れていく。

どうして、ここまで溜め込んだのか、木箱が山積みになっていた。中身が気になるが、クマボックスに入れる。

壷なんかも転がっている。

とりあえず、不要な物は適当にサーニャさんの部屋に押し込んだって感じだ。

部屋の中の不要な物を全てクマボックスに仕舞い、倉庫に運ぶ。

「ユナちゃん、片付けはお母さんにやってもらうから、適当に置いておいてくれればいいからね」

荷物を適当に出して、サーニャさんの部屋に戻ってくる。

サーニャさんの部屋にあった荷物は倉庫に運ばれて、部屋が広くなった。

「ユナちゃんありがとう。これで、やっと寝られるわ」

ベッドに倒れ込むサーニャさん。

わたしはルイミンのところで寝ようとしたが、ルッカに取られ、結局サーニャさんの部屋で寝ることになった。