軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219 クマさん、エルフが長寿種族だと再認識する。その1

エルフの里は村って感じの集落だった。

村に入ると数人のエルフが出迎えてくれる。

先ほどのエルフが連絡をしたから集まったのかな。

本当なら10年ぶりに帰ってきたサーニャさんに視線が行くはずなのに、視線の中心はわたしやくまゆるたちになっている。

子供も目を輝かせながらくまゆるたちを見ている。

その中から人間で言えば40歳ぐらいのエルフが歩み出てきた。

「サーニャ、久しぶりだな」

「お爺ちゃん、ただいま」

「ルイミンもよくサーニャを連れてきてくれた」

その言葉にルイミンは嬉しそうにする。

でも、お爺ちゃんって、そんな年に見えない。普通のちょっと年をとったおじさんぐらいだ。

お爺ちゃんがこんなに若いってことは、サーニャさんの両親はもっと若いってことだよね。

エルフ恐るべし。

「サーニャ、ルイミン!」

「お母さん!」

お母さんってことは二人の母親だよね。

綺麗な長い髪に体は細く、エルフって人類に喧嘩を売っている種族だね。

それにしても若い。二人に似ていて、お姉さんと言っても違和感はない。逆にお母さんって呼ぶ方が違和感があるぐらいだ。お爺さんのことをお父さんと呼んだ方がしっくりくる。

「義父さん、お話は明日でもいいですか? この子たちも遠くから戻ってきたばかりですから」

「構わないが、その前にそちらの客人の紹介だけはしてもらわないとな」

お爺ちゃん(長)がわたしとくまゆるたちを見る。だから、必然的に他のエルフの目もわたしに向けられる。

これは自己紹介をしろってことなのかな?

わたしが口を開こうとしたら、先にお爺さんが口を開いた。

「わしはこの村の 長(おさ) のムムルート。聞いているかもしれないがルイミン、サーニャの祖父だ」

先に挨拶をされてしまった。

「わたしはユナ。冒険者です。今回はサーニャさんにお願いをして連れてきてもらいました。迷惑にならないようにしますので、しばらくよろしくお願いします」

第一印象を良くするために、丁寧に挨拶をする。

クマの着ぐるみを着ているせいで、どのくらい第一印象がよくなるか分からないけど。

「そちらのクマはお嬢ちゃんのクマなのか?」

くまゆるとくまきゅうを見る。

「はい、わたしの召喚獣のクマです」

「召喚獣……」

「わたしやこの子たちに危害を与えなければ、なにもしませんから、危険はありません」

わたしは召喚獣を証明するように、くまゆるとくまきゅうを送還させる。

すると周りから驚きの声があがる。

子供たちからは「くまさん消えちゃった」と悲しむ声も聞こえてくる。

「わかった。だが、危険と感じたら対処はさせてもらう」

つまり、危害さえ与えなければ、なにもしないってことだよね。

それはわたしにも言えることだ。

相手が危害をくわえてくるなら、対処はする。

「サーニャ、しっかり客人の面倒をみるんじゃぞ」

「ええ、もちろんよ」

「ユナと言ったな。遠くからよく来てくれた。客人として迎えよう」

どうやら、無事にすみそうだ。

敵対心とかは 抱(いだ) かれていないみたいだ。

追い出されたり、されなくて良かった。

「サーニャは明日の朝、わしの家に来るように」

「わかったわ」

ムムルートさんは去っていく。

ムムルートさんと一緒に去る者。サーニャさんに話しかける者。

ルイミンは母親と会話をしている。

わたしは一人残される。

とりあえず、周辺を見渡していると、ルイミンが母親と一緒にやってくる。

「ユナさん、わたしのお母さんです」

「タリアです。娘がお世話になったようで」

近くで見ても綺麗な人だ。とてもではないが二児の母と思えないね。

「ユナです。冒険者をしています。サーニャさんにはお世話になっています」

「礼儀正しい子ね。でも、王都ではそのような服装が普通なの?」

タリアさんがわたしの服装について尋ねてくる。

ここは勘違いを解くため、正直に言った方がいいよね。

「そうです。王都ではみんな着ています」

「ユナさん! お母さんに嘘を教えないでください。エルフの里から出ないお母さんは信じちゃうじゃないですか。お母さんも信じないでくださいね。ユナさんのような格好をしている人は一人もいませんから」

わたしの渾身の冗談を一瞬で訂正されてしまった。

クリモニアならわたしの店で似たような服を着ているから、嘘じゃないのに。

だから、一人もいないは間違いだ。

「あら、そうなの。可愛らしいのに。ルイミンに作ってあげようと思ったのに残念」

「そんなのいらないよ。恥ずかしいよ」

今、そんなのいらないって言ったよ。しかも、恥ずかしいとも言ったね。やっぱり、そんな目でわたしのことを見ていたんだね。

「ユナさんだから可愛いんですよ」

褒められている気がしない。

「ふふ、サーニャも面白い 娘(こ) を連れてきたわね。詳しいお話は家で聞くわ。それに長旅で疲れたでしょう」

タリアさんと一緒にサーニャさんの家に向かう。

ルイミンは久しぶりに会えた母親の隣で嬉しそうにしている。

知り合いと話を終えたサーニャさんは一歩離れて歩いている。

母親と久しぶりに会ったんだから、ルイミンみたいにすればいいのに。年齢的に恥ずかしいのかな。

わたしは三人についていくと、周辺の家よりも少し大きい家に到着する。

「少し狭い家だけど、のんびりしていってね」

それは周りの家に対して失礼だよ。

周りの家と比べたら大きい。でも、住んでいる人数によるかな。

ルイミンはドアを開けて一番に家の中に入る。

「ただいま~」

「お姉ちゃん?」

家の中に入ると、奥の部屋からエルフの男の子が顔を出す。髪は短く、女の子ではないはず。

髪を伸ばせば美少女になるかもしれないけど。

「ルッカ、ただいま」

「お姉ちゃん!」

ルッカと呼ばれたエルフはルイミンに名前を呼ばれると小走りでやってくる。

「ちゃんと、良い子に留守番していた? お母さんに我が儘言っていない?」

「良い子にしていたよ」

ルッカは嬉しそうにルイミンに抱きつく。そして、ルイミンは頭を撫でてあげている。

年齢は7、8歳ぐらいかな。

ルイミンをお姉ちゃんと呼ぶってことはルイミンとサーニャさんの弟なんだね。たしかに似ているかも。

そう思っていると、サーニャさんから、予想外の言葉が出る。

「ルイミン、その子はだれ?」

サーニャさんは少年エルフを見て尋ねる。

「わたしたちの弟のルッカですよ」

「あなたはこの 子(ルッカ) が生まれてから一度も帰ってこなかったから、知らないのね」

生まれてから一度も帰っていなければ、そりゃ知らないよね。

帰らない方も悪いけど。連絡ぐらいしてあげればいいかなと思ったりしたけど、この場合はサーニャさんが悪いと思う。

「ちょっと、弟ができたんなら連絡ぐらい寄こしてよ」

「帰ってきたら教えればいいかなと思って。それに連絡先、分からないでしょう」

「冒険者ギルドだって教えたでしょう」

「そうだったかしら」

サーニャさんは諦めたようにため息を吐く。

どうやら、サーニャさんは知らないうちに家族が増えていたらしい。

ルッカはルイミンから離れるとわたしの方を見る。

「くまさんと知らない人がいる。お姉ちゃん、誰なの?」

くまさんは間違いなくわたしのことだよね。

すると、知らない人はサーニャさんになる。

サーニャさんは知らない人と言われて、少し悲しい顔をしていた。

こればかりは、10年も帰っていなかったサーニャさんが悪い。

「くまさんはユナさん。この人はわたしたちのお姉ちゃんだよ。もう一人お姉ちゃんがいるって話してあげたでしょう」

「お姉ちゃん?」

サーニャさんはルッカの前に行き、腰を下ろして目線を合わせる。

「えっと、ルッカ。初めましてかな? わたしはサーニャ。ルイミンのお姉ちゃんになるから、ルッカのお姉ちゃんでもあるわ。お姉ちゃんと呼んでくれると嬉しいかな」

説明を受けたルッカは少し悩んで、恥ずかしそうにサーニャさんの方を見て口を開く。

「サーニャお姉ちゃん?」

「うん」

お姉ちゃんと呼ばれて嬉しそうにする。

わたしだってクリモニアに帰ればお姉ちゃんって呼んでくれる妹や弟がたくさんいるから羨ましくはない。

孤児院の子供たちやフィナは元気にしているかな。

夜になったら、クマフォンを使ってフィナに到着したことを報告でもしよう。

サーニャさんはルッカの頭を撫でて家の中に入り、改めて部屋の方へ移動する。

「でも、まさか、弟が生まれているとは思わなかったわ。ルッカ、何歳になるの?」

「9歳」

「だから、お姉ちゃんは10年は戻っていないんだよ」

これはれっきとした家に帰っていない証拠だね。これほど、はっきりした証拠はない。

「でも、これで未来の 長(おさ) の誕生ね。良かったわ」

「お姉ちゃん、長になるのが嫌で、村を出ていっちゃったんだよね」

そんな理由で村を出たのか。

「別にそんな理由で出て行ったんじゃないわよ。外の世界を見たかっただけだよ」

「それで、10年も帰ってこなかった娘は、村に帰ってくるつもりはあるの?」

タリアさんがお盆に飲み物を載せてやってくる。

それを見たルイミンがお手伝いをして、みんなにコップを配る。

「お母さん……」

「どうなの? そろそろ、結婚でもして子供でも」

「結婚はまだ早いわよ。それに今は仕事が楽しいからね」

そうやって人は婚期を逃していくと聞くけど、長寿のエルフなら関係ないのかな。

「……これは、あと50年は待たないといけないかしら?」

長いよ。長すぎるよ。これだからエルフは。

「でも、ルッカがいるから、わたしが子供を生まなくても大丈夫でしょう」

「そうだけど。わたしも早く孫が見たいのよ。ルッカの子だとあと100年待たないといけないでしょう」

だから、長いよ。

「もっと、早くても大丈夫でしょう」

「いやよ。そんなに早くお嫁さんに渡すなんて」

もう、どこから突っ込んでいいか、わからないよ。

「それなら、ルイミンがいるでしょう」

「お姉ちゃん! わたしに振らないでよ」

「ルイミンは結婚できるかしら?」

「うぅ、お母さんも酷いよ」

「僕がお姉ちゃんと結婚してあげるよ」

「ルッカ~、ありがとう」

ルイミンは優しい弟を抱きしめる。

「姉弟じゃ結婚はできないわよ。だから、ルッカはお母さんと結婚を――」

「母親ともできないわよ!」

最後はサーニャさんが叫ぶ。

この家族、サーニャさんがいなかったら、突っ込み役が誰もいないんだけど。

ルイミンが一応突っ込み役になるはずだけど、ボケに回ると収拾が付かなくなる。