軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

210 クマさん、ラルーズの街に到着する

翌日、目が覚めると昨日の大雨が嘘のように晴れ渡っていた。

おお、今日は出発はできるね。

朝食を終えるとラルーズの街に向けて出発する。

昨日は雨が敵だったが、今日は地面が敵のようだ。

地面は場所によっては水溜りが酷い。馬車などなら通れないところもある。その点、くまゆるたちに乗っているわたしたちは進むことができるが、くまゆるたちの足が汚れる。

地面が酷い場所は歩き、走れるところは走る。

送還すれば、綺麗になるけど、少し可哀想だね。

とくにくまきゅうは白いから、余計に汚れが目立ってしまう。

もちろん、くまゆるだって汚れている。

そんな、くまゆるとくまきゅうを休憩のときに 労(ねぎら) うように頭を撫でてあげる。

「見えたわ」

サーニャさんの言葉にくまきゅうに体を預けていたわたしは体を起こして前を見る。

街を囲う壁が見える。……大きい。近寄るとクリモニアよりも大きいことが分かる。

「騒ぎになるから、ここから歩いていった方がいいかな?」

サーニャさんにくまゆるたちのまま街に近づくと驚かれるから、途中でくまゆるたちから降りて歩いていくことを相談したら、サーニャさんはわたしの意見に了承してくれた。

「そうね。これ以上近づくと、誰かに見られる可能性もあるわ」

わたしたちはくまゆるたちから降りる。

「ここまで乗せてくれてありがとうね」

ルイミンがくまゆるたちにお礼を言っている姿がある。サーニャさんも妹のルイミン同様にお礼を言って撫でてる。

くまゆるたちは返事をするようにクーンと鳴く。

わたしも感謝の言葉をかけてから送還させる。

「それじゃ、行きましょうか」

ここからは歩いてラルーズの街に向かう。

街は見えているからそれほどの距離ではないはず。街に近付くと、街から出ていく馬などが見える。今から出発する者もいるみたいだ。

でも、逆に街に入って行く姿はない。

サーニャさんとルイミンの話では街の出入りの数は多いと言う。

これも昨日の雨が原因みたいだ。わたしとしては並ばないで済むから助かる。

門に近付くと、誰も街の中に入る者はいなく。わたしたちは待つことも無く街の中に入ることができた。

そのときに対応してくれた門番の顔が驚いていた。

「なんだ。その格好は」

「クマだけど」

いつものことだけど、それしか答えようがない。

門番の人はそれで納得したのか、それ以上は聞いてくることは無く、ギルドカードを水晶板に翳すように言われる。

もちろん、水晶板は犯罪者を示す、赤色には変化しない。

門番は一言「入っていいぞ」と言うと、目を逸らす。まあ、門番をしていれば、わたしみたいなものもいるのだろう。だから、スルー技術も高いんだろう。

わたしとしては助かるので、無言のまま街の中に入る。

そして、街の中に入った瞬間、視線の的になる。

「見られてますね」

「見られているわね」

うん、見られているよ。

いきなり、街の外からクマの着ぐるみの格好した女の子が入ってくれば見るよね。

もう、いつものことだ。

でも、わたしにとってはいつものことでも、二人にとっては初めてのことだ。

「このまま冒険者ギルドに行こうと思ったんだけど。ユナちゃん、宿屋で待ってる?」

それって、翻訳すると「一緒にいると恥ずかしいから、宿屋で待ってて」と言っているのだろうか。

冒険者ギルドにはわたしだって行きたい。

元ゲーマーとしては、ここまで来て宿屋でじっとしているなんて断りたい。

それにルイミンが関わった冒険者も気になるし、そのまま商人のところに行くかもしれない。

ルイミンが知らない赤の他人なら気にしないけど。ここまで一緒に来て、仲良くなって、知らない仲ではない。

だから、できれば付いていきたい。

「迷惑じゃなければ、付いていきたいけど。サーニャさんが宿屋にいてほしいって言うなら宿屋にいるよ」

サーニャさんにとって、わたしの返答が思っていたものと違うものだったらしく、少し慌てて否定をする。

「ユナちゃん、ごめんなさい。そんな意味で言ったんじゃないの。みんな、ユナちゃんのこと奇異な目で見ているでしょう。だから、ユナちゃんがそんな目で見られるのは嫌だと思って。それなら、宿にいた方が良いかなと思ったの」

どうやら、わたしの勘違いだったみたいだ。気を使ってくれていたらしい。

「わたしはいつものことだから、大丈夫だよ。二人が嫌じゃなければ付いていくけど」

「わたしはいいですよ」

「ルイミン?」

「だって、ユナさん一人で宿屋で待っているなんて可哀想です」

ルイミンが優しい言葉をかけてくれる。

少し嬉しい。

「それじゃ、三人で冒険者ギルドに行きましょう」

二人の優しい言葉で冒険者ギルドに向かう。

でも、その数分後。

「見られてますね」

「見られているわね」

先ほどと同じ言葉を口にする二人。

すれ違う人、立ち止まる人。視線は全てわたしに向けられている。

わたしはクマさんフードを顔が見えなくなるほど深く被る。

「急ぐわよ」

「うん」

2人は視線から逃げ出すように早歩きで歩き出す。

ここは二人から距離をとってあげた方がいいのかな?

そう思って、二人から少し離れてあげる。

「ユナさん、なにやっているんですか、急ぎますよ」

わたしが離れたことに気付いたルイミンが、わたしのところに駆け寄ってくると、クマさんパペットを掴み、引っ張り始める。

どうやら、わたしの気遣いには気付いていないようだ。でも、このルイミンの行動は嬉しくもある。

手を引っ張られながら、冒険者ギルドに到着する。

王都にある冒険者ギルド並みに大きな建物だ。

「わたしはここのギルドマスターに挨拶をしてくるわ。ルイミンは冒険者がいないか探しておいて、ユナちゃんは…………」

サーニャさんはわたしを見て、黙りこむ。

なんですか、その沈黙は。

「トラブルにならないようにして」

難しい注文をしてくる。

わたしだって、好きでトラブルに巻き込まれているわけじゃない。トラブルの方から近寄ってくるんだ。

まあ、クマの格好のせいで、近寄ってくると言われたら、それまでだけど。

とりあえず、なるべく善処することを約束をする。そして、ギルドマスターに会いに行く、サーニャさんとは別れる。

わたしは冒険者を捜すルイミンに付いていくことにする。

もし、ルイミンが騙されているようなら、それなりの 報(むく) いを与えないといけない。

ギルドの中に入ると、外以上に視線が集まる。

「クマ?」「なんだ、あの格好は?」「あれ、クマよね」「女の子?」「どうして冒険者ギルドに?」「かわいい」「ルイミン?」「クマだな」

わたしに対する言葉の中に1つだけ違う言葉が混じる。

声の主を捜そうとしたら、相手の方から出てきた。

「ミランダさん」

「やっぱり、ルイミン」

ルイミンが見る先には20代前半の女性冒険者がいる。

「ルイミンがいるって本当?」

「本当にいる」

ルイミンがミランダと呼んだ人の後ろから二人の女性が出てくる。

「ミランダさん、お久しぶりです」

「久しぶりじゃないわよ。勝手にいなくなるから心配したのよ」

ミランダと呼ばれた女性冒険者はルイミンを力強く抱きしめる。

「く、苦しいです」

力強く抱きしめられたルイミンは苦しそうにする。でも、すぐに解放される。

「まったく、人を心配させておいて」

「ごめんなさい」

ルイミンがミランダっていう人に謝ると、20歳前後の女性がやってくる。

「そうだよ。それも勝手に大事な腕輪をドグルードさんに渡して」

女性はルイミンの頬を指で左右に引っ張る。

「ご、めんなしゃい。みんなに迷惑をかけたくなくて」

「だからと言って、わたしたちに相談もしないで、いなくなることはないでしょう」

「ごめんなしゃい」

頬の攻撃から解放される。

「でも、無事で良かったよ」

今度は優しく抱きしめる。

「王都には無事に着けたの?」

最後に魔法使いの格好をした女性が話しかけてくる。

「はい。どうにか」

「ミランダはね。追い掛けるって言っていたのよ」

「おまえだって、急がないとって言っていただろう」

「そんなの当たり前でしょう」

この人たちがルイミンがお世話になった冒険者たちか。

ルイミンとの会話を見る限り、騙して腕輪を取るような人たちには見えない。

どうやら、わたしの杞憂だったみたいだ。

「それで、ルイミン。そのクマさんの格好をした女の子はルイミンの知り合いなの?」

ルイミンと一緒にいた、わたしに視線が集まる。

「はい、お姉ちゃんと一緒に王都からここまで来ました」

「面白い格好をしている子ね」

その言葉にルイミンは肯定も否定もしない。

ただ、笑って誤魔化している。

ミランダさんはわたしを見るので挨拶をする。

「ユナです。ルイミンとはお姉さんとの関係でここに来ました」

「わたしはミランダ。ルイミンとは少しだけ仕事をしたわ」

「わたしはエリエール。可愛い格好をしているね」

わたしににじり寄ってくる。

わたしは一歩下がる。

「怯えているだろ。止さないか」

「だって、こんなに可愛い格好をしているんだよ。いま抱きしめないで、いつ抱きしめるのよ」

「そんな力説するな!」

ミランダさんはエリエールさんの頭を殴る。

「ごめんね。エリエールは可愛い女の子が好きなのよ」

魔法使いの格好をした女性が謝罪をする。

「勘違いしないでね。わたしはノーマルだから」

わたしは一歩下がる。

「うわーん、下がらないでよ。1回だけ、抱きしめるだけだよ。モフモフさせてくれればいいのよ」

周りから笑いが起こる。

「騒がしいと思ったら、やっぱりユナちゃんだったのね」

この人はいきなり現れて何を言うかな。

今回はわたしのせいじゃないよ。

「サーニャさんの方は話は終わったんですか?」

「ええ、話は終わったわ。もしかして、あなたたちがルイミンがお世話になった冒険者たち?」

わたしたちと一緒にいる女性冒険者たちを見る。

「妹がお世話になったみたいで、ありがとうね」

「いえ、ルイミンの腕輪を手離すことになってすみません」

サーニャさんとミランダさんはお互いに挨拶を始める。