軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

199 クマさん、クリモニアに帰って来る

それから数日後、王都から無事に検問官たちが来て、クリフの仕事はやってきた検問官に引き継がれる。あとはエレローラさんとグランさんが中心となって行われる。

そして、わたしたちは本日、クリモニアに帰る。

「ノア、ちゃんとクリフの言うことを聞くのよ。今度の休みには帰るから」

屋敷の前では見送りをしてくれる者が集まってくれる。

そのエレローラさんが娘に言葉をかけている。

「うん、お母様もシアお姉様によろしく言っておいてください」

エレローラさんたちは明日王都に出発するそうだ。王都にはグランさんも一緒に行くことになっている。もちろん、罪を犯したガマガエル親子とミサを誘拐した黒服も一緒に連れていかれ、王都で裁かれることになっている。

ガマガエル家にいた使用人は数人は一緒に王都に行くが、ほとんどの者は街で刑罰が科されることになっているそうだ。

人によるけど、罪状が重くなる者と軽くなる者と分かれるらしい。

気になるのは囚われていた子供の居場所を教えてくれたメイドさんだ。エレローラさんの話では素直に話しているそうだ。

罪状は軽くなるといいんだけど。なんだかんだで、優しそうな人だった。

でも、こればかりはわたしが口を挟むことはできない。

エレローラさんは娘の頭を撫でると、次にわたしとフィナの方を見る。

「二人とも娘のことをお願いね。少し、我侭なところもあるけど、良い子だから」

わたしたちは頷く。

ノアが良い子なのは知っている。平民であるフィナと仲良くしているのがいい証拠だ。

たまに、クマ関連で暴走することもあるけど、優しい良い子だ。

ノアは恥ずかしそうに「お母さま、止めてください」と言っている姿がある。

次にエレローラさんの隣にいるゼレフさんが声をかけてくる。

「ユナ殿、今回は貴重な経験をありがとうございました」

「なにか、大事になっちゃったけど」

「いえ、懐かしい友人にも会えることもできましたから、来て良かったですよ。それにユナ殿が謝ることではありませんよ」

そう言ってもらえると助かる。

今回はゼレフさんにはいろいろと迷惑をかけて、助けてもらった。

「ただ、残念なのは帰りはくまゆる殿とくまきゅう殿に乗れないことです。もう一度、あの乗り心地を経験をしたかったのですが」

ゼレフさんが本当に残念そうな顔をする。

ゼレフさんはエレローラさんと一緒に馬車で帰るらしい。それを聞いたゼレフさんは残念そうにしていた。今回はゼレフさんにお世話になったし、今度新しい料理を持っていってあげないといけないね。

ゼレフさんに挨拶を終えると、最後にファーレングラム家一同が集まる。

「ユナ、今回はお世話になった。ありがとう。おまえさんが居なかったら、わしたちの家が取り潰しになっていたかもしれない」

グランさんは頭を下げる。

「もう、何度も聞いたよ」

グランさんにもミサのご両親にも何度もお礼を言われた。

昨日も感謝とお礼を言われている。何度目の礼か分からない。

お礼をしたいから、なにかしてほしいこと。欲しい物はないかと聞かれたが。ミサを救って、その家族からお礼を貰うのはなにかが違うと思う。わたしがミサを助けたかっただけで、お礼が欲しいからとか、仕事だからとかで助けたわけじゃない。だから、ミサの家族から金銭類のお礼を貰うつもりはない。

もし金銭類のお礼を貰ったら、あの怒りが、ミサを助けた気持ちが嘘になるような感じがする。だから、お礼は言葉だけでいい。

「みんな、帰っちゃうんですね」

ミサが寂しそうにする。こればかりは仕方ない。

クリモニアがわたしたちの帰る場所だ。

そして、ミサは羨ましそうに横に立つ父親を見る。

「ウ~、お父様はズルいです。わたしも一緒に行きたいです」

ミサの父親であるレオナルドさんはわたしたちと一緒にクリモニアに来ることになっている。

それは今回の事件でフィナのご両親に謝罪するためだ。本当は領主であるグランさんが謝罪に行く予定だったが、王都に行かなければならないので、レオナルドさんが来ることになったのだ。

フィナは大丈夫ですと断っていたが、最終的に断れずにいた。

何度もわたしに助けを求める視線を向けられたが、こればかりはわたしが口を挟めることではない。

わたしもフィナを危険な目に遭わせたことをティルミナさんとゲンツさんに謝らないといけない。だから、グランさんやレオナルドさんの気持ちが分かる。だから、口は挟めなかった。

そんな理由で父親がクリモニアに行くので、ミサが羨ましがっている。

「フィナ殿の両親に謝罪しにいくだけだよ。すぐに戻ってくる。だから、今回は大人しく留守番をしててくれ」

レオナルドさんは娘を 宥(なだ) めるように頭に手を置く。

「今度はミサが遊びに来て、そしたらお店に案内するから」

ちなみに、お店のクマの制服は二人が欲しがったのでプレゼントすることになった。

あんなクマの制服をもらってどうするのかな。パジャマ代わりぐらいにしかならないけど。

帰ったら、フィナの制服を注文しないといけない。シェリーのところにはぬいぐるみも取りに行かないといけないし。問題はない。

「はい、かならず行きます」

クリモニアとこの街はそれほど離れていない。行き来できない距離ではない。会おうと思えばいつでも会える。クマイベントのおかげで次回来ても、狂気事件で騒がれることはないから、安心して来られる。でも、別の意味で騒がれそうだが、それは仕方ない。

一通りの挨拶を済まして、わたしたちはクリモニアに向けて出発する。

レオナルドさんとレオナルドさんの護衛が一緒のため、帰りはクマハウスの使用はしていない。クリフにも許可をもらっている。残念そうにしていたのはノアだったが、王都に行ったときの『くまさんと一緒』で寝ることを約束すると嬉しそうに了承してくれた。

そして、何事も無く、久しぶりにクリモニアに帰ってきた。かなりの期間を離れていた気がする。少し、懐かしく感じる。

街の中に入り、空を見ると、あと数時間で日が沈みそうだ。だから、今日は帰って風呂に入って寝たいところだけど、フィナを家に送り届けないといけない。それにティルミナさんにも、いろいろと報告もしないといけない。

ノアとクリフとは別れ、わたしとフィナ。そして、レオナルドさんの三人でフィナの家に向かう。

レオナルドさんは翌日の朝にフィナの家に謝罪の挨拶に行こうとしていたが、朝は忙しく逆に迷惑がかかるとわたしが助言したことで、このままフィナの家に向かうことになった。

嘘は言っていないが朝一だとわたしが付き合うのが面倒臭かった理由が一番高い。

あの件のことを説明するなら、当事者であるわたしも説明に付き合わないといけない。

もっとも、どの時間帯に行こうが、貴族が来れば驚かれるのは変わりない。なら、ティルミナさんたちには悪いけど、早々に終わらせて、のんびりとしたい。

「本当に来るのですか?」

フィナが気が重そうな顔で尋ねる。

ここまでレオナルドさんが来ているというのに往生際が悪い。

貴族のレオナルドさんが自分の家に謝罪に来るのが嫌らしい。

気持ちは分からなくもない。

わたしだって元の世界で、村長や町長ならまだしも、都知事クラスが家に謝罪に来たら、申し訳なく思うかもしれない。自分と身分が違う人が来ればそう思っても仕方ない。

さらにこの世界では、平民と貴族とでは開きがあるらしいからね。

でも、ここまで来てしまったんだ。諦めるしかない。

「ミサの大切な友人を大変な目に遭わせてしまいましたからね。しっかり謝罪をしないと父に叱られます」

「わたし、なんともないですよ」

「それとは別ですよ」

フィナも諦めて家に向かい、到着する。

「お母さんを呼んできます」

フィナが家のドアを開けて中に入る。中に向かって「お母さん! お母さん!」とティルミナさんを呼ぶ声が漏れてくる。ドアが開いているためティルミナさんの声も聞こえてくる。「フィナ帰ってきたの?」「フィナ帰ってきたのか」ゲンツさんの声も聞こえるね。「お母さん、外に来てくれる。お母さんに会いたいって人がいるの」

そして、フィナに連れてこられたティルミナさんとゲンツさんがやってくる。ゲンツさんは仕事は終わったのかな?

「あら、ユナちゃん。お帰り。少し予定よりも遅かったのね。わたしに会いたいってユナちゃんなの?」

「やっと、戻ってきたか、心配したぞ」

その割には心配そうにしている顔には見えない。

「違うよ。二人に会いたがっているのはこの人だよ」

レオナルドさんが一歩前にでる。

「ユナちゃん。そちらの方は?」

「シーリンの街の領主の息子さん。ミサのお父さんだよ」

「レオナルド・ファーレングラムです」

頭を下げるレオナルドさん。

「領主の息子? ってことは貴族様? どうして、ここに」

ティルミナさんとゲンツさんが驚いている。やっぱり、貴族が家に来たら普通は驚くよね。

「まさか、娘のフィナがなにか失礼なことをしましたか?」

不安そうに尋ねる。まあ、貴族が家に来たら、そう思うのかな。

「いえ、このたびは娘さんにご迷惑をかけたことに謝罪に来ました」

ティルミナさんがどういうこと? って感じでわたしの方を見る。

わたしが説明しようとしたが、レオナルドさんが説明をする。

たまにわたしが補足をする。

「娘が攫われるときに、守ろうとしてくれまして」

娘を見るティルミナさん。

「そうですか。それで、わざわざ、シーリンの街から。申し訳ありません」

どう、対応していいかティルミナさんとゲンツさんは困っている。

二人は家に上げていいものなのか。おもてなしに何をしたらいいか悩んでいる顔だ。

たまに、わたしの方を見るがわたしもどうしたら良いか分からない。家に上がらせるべきなのか、このままでいいのか。

それにレオナルドさんも謝罪をしたらすぐに帰ると言っていた。

でも、ティルミナさんでも困ることあるんだね。テキパキと仕事をするイメージがあったから、こんなに困っているティルミナさんは珍しい。もっとも、ゲンツさんはティルミナさん以上に困り顔をしている。

一家の大黒柱がなさけない。

レオナルドさんから謝罪の言葉が終わり、最後に品物を渡している。

「今回はこのようなことがありましたが、今後とも娘の友人としてよろしくお願いします」

頭を下げるレオナルドさん。それに釣られてティルミナさんとゲンツさんも頭を下げる。

「では、わたしはこれで失礼します」

レオナルドさんはわたしの方を見る。

「ユナさんも今回はありがとうございました」

「レオナルドさんは明日には戻るんですよね」

「はい。父も王都に向かったと思いますから、早めに戻らないといけませんからね」

再び頭を下げて離れていく。今日はクリフの屋敷に泊まって、明日には帰るそうだ。本当はゆっくりしたかったらしいけど。さすがにあれだけのことがあったので、領主であるグランさんがいないから戻らないといけないらしい。

「フ~」

レオナルドさんが居なくなるとティルミナさんが息を吐く。

「驚いたわ。まさか、シーリンの街の貴族様が家に来るとは思わなかったわ」

「そうだな」

「お母さん、お父さん、ごめんなさい」

フィナが謝る。

「別に謝ることじゃないわ。あなたは友達を守ろうとしたんでしょう。でも、あまり心配させないでね」

怒らずにフィナの頭を優しく撫でてあげる。

「ユナちゃんもありがとうね。いろいろと娘がお世話になったみたいね」

「わたしもゴメン。フィナのことを預かっていたのに」

「気にしないでいいわよ。ユナちゃんが娘のことを大切に思ってくれているのは知っているから。こうやって無事にいるんだし」

フィナを自分の方に寄せて抱きしめる。

「お母さん、苦しいよ」

「久しぶりに娘に会えたんだからいいでしょう」

「恥ずかしいよ」

微笑ましい光景だね。ゲンツさんは自分も混じりたそうにしているが我慢している姿がある。

そして、わたしは帰る 旨(むね) を伝えると。

「それなら、一緒に食べましょう。話を詳しく聞きたいし」

「久しぶりの親子の……」

団欒と言葉を続けようとしたがティルミナさんに塞がれる。

「なに言っているのよ。そんなの気にしないでいいのよ。早く上がって」

わたしはティルミナさんに腕を引っ張られ、反対の手をフィナが掴む。わたしは抵抗もせずに家の中に連れていかれた。