軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

163 クマさん、試作のぬいぐるみを受け取る

シェリーにぬいぐるみを頼んだ翌日。すっかり忘れていた 黒虎(ブラックタイガー) の解体を、フィナにお願いをした。

さすが、ミスリルナイフと言うべきなのか、鉄のナイフで切れなかった 黒虎(ブラックタイガー) の解体をすることができた。もちろん、フィナの解体技術が高いのは確かだ。わたしがミスリルナイフを使ったとしてもできるわけがない。

そして、そのフィナが解体する横ではシュリが解体の仕方を熱心に教わっている。

毎回思うが子供に解体させるわたしってどうなんだろう。今さらではあるし、考えても仕方ないと思うし。異世界だと割り切ることにする。

フィナのおかげで 黒虎(ブラックタイガー) の敷物が手に入った。フィナにはお礼として 黒虎(ブラックタイガー) の肉などをあげる。

話によると 黒虎(ブラックタイガー) の肉は高級食材らしい。まあ、そう簡単に出会える魔物じゃないしね。フィナは貰えないと断るが、高級食材と言われてもピンと来ないわたしは、無理やりに押し付ける。

美味しいなら食べるべき。

でも、そんなに美味しいなら。今度、アンズのところに持って行って調理してもらおうかな。

次の日は冒険者ギルドに顔を出す。

鉱山の依頼の件だ。すでに、一週間以上過ぎているため。依頼も完了しているはず。

受付のヘレンさんに王都で受けた依頼のことを報告する。

「ユナさん、王都で依頼を受けたんですか?」

ギルドカードを受け取ると、調べてくれる。

「鉱山のゴーレム調査、および討伐ですね。はい、ちゃんと完了してます」

ガザルさんの聞いた通りだね。

もう、鉱山ではゴーレムは現れなくなり、通常通りに採掘が始まっていると言っていた。やっぱり、ミスリルゴーレムかクマモナイトが原因だったのかな?

手に入れたクマモナイトも気になるけど、ドワーフの街は遠いし、面倒だ。

スキルで好きな場所に転移できれば楽なんだけど。でも、クマ門でも十分に便利だから、文句は言えない。

ヘレンさんにギルドカードを返してもらい、依頼達成料を貰う。

「ところで、ユナさん」

「なに?」

「なんでも、お店を新しくしたらしいですね」

「うん、それがどうしたの?」

「女性冒険者たちが言うには、とっても美味しい物を販売し始めたって聞いたんですけど」

「ああ、ケーキね」

「その、予約とかできませんか? 仕事終わりだと売り切れてるし、休みはしばらく先なんです。噂だと、とっても美味しいって聞いてます。だから、食べたいと思っているんですが……」

ヘレンさんの言葉に受付にいるギルド孃が皆、頷いている。

確かにケーキは人気があり、ギルドの仕事終わりでは間違いなく売り切れている。

「こないだ、お店の子に予約はできないか尋ねたら、ダメって言われちゃって」

ティルミナさんの話では予約の申し込みが多いと聞いている。でも、全て断っているって聞いたっけ。そのときは聞き流してティルミナさんに任せるよ。と、言った記憶が 微(かす) かにある。

「ねっ、お願いできないかな?」

ヘレンさんは手を合わせてお願いをしてくる。

「ヘレン、自分だけズルいわよ」

「そうですよ。自分だけ、お願いするなんて」

隣の受付に座っていたギルド孃の2人が抗議する。

「わたしとユナさんは友達なんです」

いつ、友達になったの? とか言うボケはしない。

確かに友達かどうかは別にして、ヘレンさんにはギルドに入ったときから、お世話になっているのは事実だ。

それに予約なんかしなくても、クマボックスにはケーキが入っている。

「予約はちょっと無理だけど」

「やっぱり、ダメですか……」

悲しい表情を浮かべるギルド孃のみなさん。人の話は最後まで聞こうよ。

「今、持っているから、ギルドのみんなで食べて」

わたしはクマボックスからイチゴのショートケーキのホールを出す。すると、ギルド孃たちの顔色が変わる。

「これが、噂のケーキですか」

「うん、みんなで切り分けて食べてね」

「えっと。お代は?」

「いいよ。わたしたち友達なんでしょう。今回は奢りでいいよ」

「ユナさん!」

ヘレンさんは立ち上がるとわたしのクマさんパペットを強く握る。

「あ、ありがとうございます」

「大袈裟だよ」

「だって、女性冒険者さんの皆さんが美味しいって、自慢するんですよ。とっても悔しかったんですよ」

「もし、食べて美味しかったら休日にはお店に食べに来てね」

「もちろんです。食べに行かせてもらいます」

ヘレンさんの横にいたギルド孃の2人にもお礼を言われる。

わたしは冒険者ギルドから帰ってくると、午後は何処にも行かずにクマハウスに引き篭って、くまゆるとくまきゅうと遊ぶことにする。構ってあげないといじけちゃうからね。

それに先日は2匹ともお城では頑張ったから、その褒美もしないといけない。

「くまゆる、くまきゅう、おいで」

トコトコと歩いてくるので抱き抱える。もし、クマの服を着てなかったら2匹同時は無理だよね。どっかの黄色い生物みたいに、肩に乗せるのは不可能だ。

寝転がってくまゆるたちと遊んだりして過ごした。

くまゆる、くまきゅうと遊んだ翌日。本日の予定を考えているとクマハウスに誰かがやってきた。

ドアを開けるとそこには大きな袋を地面に下ろしたシェリーの姿があった。

「ユナお姉ちゃん。おはようございます」

「うん、おはよう。もしかして、その大きな袋は……」

小さなシェリーでは大きい袋が一層に大きく見える。

そして、シェリーが来たってことは、中身は必然的に決まってくる。

「はい。ぬいぐるみが出来上がったので持ってきました。もし、これで良かったら、残りも作るつもりです」

「それじゃ、あがって」

シェリーは大きな袋を持ち上げてクマハウスに入ろうとする。でも、袋が大きく。大変そうだったので運ぶのを手伝う。よく、ここまで持ってこられたね。

クマハウスに入るとシェリーはくまゆるとくまきゅうを見つける。

「くまゆるちゃん! くまきゅうちゃん!」

部屋のソファーにくまゆるとくまきゅうが座っているのに気付き、駆け寄る。

わたしは大きな袋をクマハウスまで運んできたシェリーに冷たい飲み物を出してあげる。

「その大きな袋にぬいぐるみが入っているの?」

子熊化した、くまゆるとくまきゅうが入るほどの袋の大きさだ。間違いなく、ぬいぐるみが入っていると思う。さすがに、2つだと大きくなるね。

これはアイテム袋を渡した方がいいかな。

5セットは頼むつもりだし。

「はい。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみが入ってます。ちょっと大きくて運ぶのが大変でした」

笑いながら言うがこれだけ大きければ大変に決まっている。あとでアイテム袋を用意してあげないとダメだね。

シェリーが袋を開けると、中からくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみが出てきた。

わたしはくまゆるのぬいぐるみを持ち上げる。

おお、出来がいい。

かわいく出来上がっている。

大きさも本物と変わりない。

くまきゅうが自分のぬいぐるみのところに向かう。くまゆるもわたしが持っているぬいぐるみのところにやってくる。持っていたくまゆるのぬいぐるみを床に置くと。くまゆるとくまきゅうはそれぞれの自分のぬいぐるみのところに移動して、ぬいぐるみを見ている。

「う~ん、やっぱり。ちょっと違うな」

シェリーはくまゆるたちとぬいぐるみを見比べてる。

「そう? そっくりだと思うけど」

十分に似ていると思うんだけど。

「顔がやっぱり、難しいです。頭に残っている記憶と少し違っちゃいます」

少しと言っても少しだ。

もしかして、シェリーって几帳面? 完璧主義者?

「くまゆるちゃんをお持ち帰りさせてもらえれば、もっと上手くできるんですけど」

「さすがに、貸し出せないね」

「ですよね」

落ち込むシェリー。そんなに落ち込むような出来かな?

何度見ても上手だと思うけど。

落ち込むシェリーを見てなんとかしてあげたいと思い。良いアイディアを思い付く。

確か、先日シェリーはくまゆるのデータを書いたときは、走り書きで、簡単なくまゆるの絵を描いて、そこに腕の長さなどを記入をしていた。

あの絵ではイメージが湧かないよね。こう言うとき、写真があると便利なんだけど。無い物ねだりをしても仕方無い。

なら、わたしが描けばいい。

これでも、絵本作家(仮)だ。一応、デフォルメ以外の絵だって描ける。

わたしは紙と書く物を用意する。

「ユナお姉ちゃん?」

「わたしがくまゆるの絵を描いてあげるから、それを参考にしてみて」

「ユナお姉ちゃん、絵も描けるの?」

「まあ、少しはね。孤児院でクマの絵本を見なかった?」

「ああ! もしかして、あのクマさんの絵本はユナお姉ちゃんが描いたんですか!? 絵がなんとなくフィナちゃんに似てましたけど」

「うん。だから、絵は一応描けるよ」

わたしはくまゆるとくまきゅうを並ばせるとスケッチを始める。体部分は問題は無いので、顔の表情を大きく描くことにする。

くまゆるとくまきゅうを描いて思ったこと。これって、くまゆるとくまきゅうを描く必要あるのかな?

モノクロだと区別付かないよね。カラーで描くべきだったかな。まあ、カラーで描いても色が違うだけだけど。

「ユナお姉ちゃん。上手です」

横から見ていたシェリーが褒めてくれる。

「ありがとう」

くまゆるとくまきゅうのスケッチを終えるとシェリーに渡す。

「これで、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにそっくりなぬいぐるみが作れます」

「そこまで、頑張らなくてもいいよ。これも十分似ているよ」

くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを持ち上げてみる。

「いえ、もっと。そっくりに作ります」

シェリーの意気込みが凄い。

「そこまで、頑張らなくてもいいよ。4、5歳の女の子にあげるだけだから」

「プレゼントなら、余計に頑張ります」

「でも、無理はしないでね」

「はい!」

「それで、このぬいぐるみは貰っていいのかな?」

「それはまだ、試作段階で……」

「あの子たちも喜んでいるしね」

スケッチが終わったくまゆるたちは自分たちのぬいぐるみと遊んでいる。

「喜んでもらえたみたいで嬉しいです。でも、今度はもっとそっくりに作ります」

シェリーはお礼を言って帰っていった。もちろん、アイテム袋を渡すのは忘れない。

その日の夕方、夕飯をどうしようかなと考えていると、フィナが息を切らせてクマハウスにやってきた。