軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

145 クマさん、鉱山に潜る その5 アイアンゴーレム編

食堂では酒盛りが始まったので、早々と部屋に逃げてきた。

酔っぱらいほど、 質(たち) が悪いものはない。

酔っぱらいは言葉は通じないし、絡んでくるからウザイ。

宿屋に泊まると、そのような風景を何度も見てきた。

どこの世界でも共通なことだけど、酔っぱらいから身を守る方法は、酔っぱらいに近寄らないことだ。

部屋に逃げてきたわたしは酔っぱらいが入ってこないように、しっかりと部屋の鍵を締める。

部屋に誰も入ってこられないことを確認すると、ベッドに腰をかけて今後のことを考える。

ジェイドさんとバカレッドは、どうやらミスリルゴーレムを倒すのは諦めたみたいだ。ジェイドさんたちが冒険者ギルドにゴーレム討伐の不可の連絡をすれば兵士が来ることになる。

ギルドが連絡をもらって、すぐに兵士が動くとは思えないけど、ミスリルゴーレムを倒すなら早めに行動をした方がいいよね。

あのミスリルゴーレムは国に渡したくない。

どうにかミスリルゴーレムを倒して、独り占めにしたいところだ。そのためには早く倒すしかない。

ミスリルゴーレムを倒すと言っても、バカレンジャーの戦いの様子を見る限りでは、簡単に倒せそうもない。

その前にはアイアンゴーレムの存在もある。

戦わない選択肢もあるけど、それでは解決にはならない。

討伐の方法は、坑道から出てくる間にいろいろ考えてみた。

アイディアは複数思いつき。実際にできれば有効的だと思った。

ただ、可能かどうかは実際のところ、やってみないと分からないところだ。

わたしは、その考えの確認、及び実験をするために部屋の中にクマの転移門を設置する。

クマの転移門が開く場所は…………。

ペチペチ。

頬を叩かれる。

眠い。

ペチペチ。

昨夜はゴーレムの対処方法の実験などをして、寝るのが遅くなってしまったため、眠い。

だから、もう少し寝ていたい。

ペチペチ。

そんな遅く寝たのにもかかわらず、ジェイドさんたちは食堂で騒いでいた。

ペチペチ。

昼間、あんなに戦っていたのに疲れていないのかな。さすが、冒険者と言うべきか、無尽蔵な体力だ。

ペチペチ。

ランクCになるとそのぐらいの体力もあるのかな。

ペチペチ。

「起きるよ」

くまゆるとくまきゅうの手を掴む。先程から左右から顔をペチペチと叩かれていた。

白クマの服のおかげで、疲れはないけど、眠い。でも、白クマの服で眠気も取れたら最悪だ。寝るのが好きなわたしにとって、睡魔が無くなるのは困る。この惰眠の時間帯が気持ちいいんだから。

でも、今日はいつまでも、惰眠を味わっているわけにもいかないので、起き上がる。

「おはよう。くまゆる、くまきゅう」

背中を伸ばしてから、くまゆるたちの頭を撫でる。

眠いけど仕事に行かないといけない。15歳で仕事とか、わたしもこの世界に染まってきたのかな。

ベッドから降りて、黒クマの服に着替える。

食堂に行くと、うっ、お酒臭い。食堂にお酒の臭いが漂っている。

「おや、クマの嬢ちゃん。早いね」

宿屋の女将さんがキッチンから出てくる。

「おはようございます。お酒臭いですね」

少しクマさんパペットで鼻を押さえながら尋ねる。

「どうやら、バカ共が朝方まで飲んでいたらしいね。わたしも夫に任せて寝たけど。夫が部屋に戻ってきたのは朝方だったよ。夫も最後まで付き合ったみたいだね」

「旦那さんは?」

「寝てるよ。今回は許すけど、次回もしたら、お仕置きが必要だね」

女将さんは笑いながら窓を開けていく。

心地よい風が入ってくる。

「今、空気を入れ替えるから、しばらく我慢しておくれ。その代わり朝食は多めにサービスするから座って待ってておくれ」

欠伸(あくび) をしながら席に座る。

まだ、早いためか食堂には誰もいない。

ジェイドさんやバカレッドたちの冒険者以外にも、鉱石を買いに来た商人たちも泊まっている。でも、食堂にはわたししかいない。

話しかけてくる者もいないので、のんびりと朝食を待つ。

時間が経つにつれて、空気も徐々に入れ替わり、お酒の匂いも消えていく。

しばらくすると、女将さんが食事を持ってきてくれた。

「あいよ。待たせたね」

「ありがとうございます」

「今日はどうするんだい。クマの嬢ちゃんも冒険者らしいけど、ジェイドたちはしばらくは起きてこないと思うよ」

「う~ん、とりあえず、1人で鉱山に行ってみようと思います」

「1人でかい!?」

女将さんは驚いたように少し、大きめの声を出す。

「うん。早く、終わらせて帰りたいからね」

「終わらせるって……、ジェイドやバーボルドでも無理なんだよ」

まあ、普通、こんなクマの格好をした女の子が強いとは思わないよね。

でも、純粋に心配してくれているんだから、素直に受け止めておく。

「女将さんも、いつまでも鉱山がこのままじゃ、困るんですよね」

「まあ、それはね。このままじゃ、坑夫も商人も来なくなってしまうからね」

「別に無理をするつもりはないよ。無理なら、逃げてくるし」

「約束だよ。危なかったら逃げてくるんだよ。でも、こんな小さな女の子が冒険者なんて世も末だね」

わたしは心配してくれる女将さんにお礼を言って、少し多めの朝食を食べ終わると1人で鉱山に向かう。

さて、昨日の夜、睡眠を削ってまで準備したことが役にたてばいいけど。

朝も早かったおかげで、外を歩いている者も少なく、誰にも絡まれないで、鉱山に到着する。

さっそく、1人で坑道の中に入る。

今回はジェイドさんたちの案内は無いけど、クマの地図にはミスリルゴーレムまでの道のりは表示されるので、迷子になることはない。

坑道を進むとさっそく土ゴーレムが出てくるが、風魔法で刻んで先に進む。

1人で進む坑道は物静かで少し寂しいね。バカなことを言うトウヤさんはいないし、毒舌のセニアさんはいない。指示を出すジェイドさんの声もない。わたしに話しかけてくれたメルさんもいない。

1人だとこんなに坑道が静かだと思わなかった。

うん、音楽とは言わないけど、なにか安心感が欲しくなるね。

なので、両手から、くまゆるとくまきゅうを召喚する。

召喚されたくまゆるたちはわたしに擦り寄ってくる。

これで、寂しくないね。

わたしが歩き出すと、左右にくまゆるとくまきゅうが一緒に歩いてくれる。

なんか、嬉しいね。くまゆるとくまきゅうを召喚獣としてくれた神様にはここだけは感謝だね。

くまゆるたちと一緒に進み、出てくる土ゴーレムは全て風魔法で処理していく。

でも、本当に復活しているんだね。

探知魔法にはしっかりと、土ゴーレムの反応がある。

いつ、復活したのかな?

昨日のバカレンジャーが進んできた道で帰ったけど、ゴーレムはいなかった。

倒してから、数時間後に復活するのか、決まった時間に復活するのか、分からないけど。これじゃ、坑夫は仕事はできないね。

土ゴーレムの階層を終え、岩石ゴーレムの階層に 下(くだ) っていく。

現れる岩石ゴーレムはクマさんパンチで破壊する。

その隣ではくまゆるとくまきゅうが出番を欲しそうにしている。

「それじゃ、次はお願いね」

2体の岩石ゴーレムが現れるので、くまゆるとくまきゅうに任せる。

くまゆるたちはそれぞれの岩石ゴーレムに襲いかかると、本物のクマパンチで岩石ゴーレムを倒してしまう。

うん、可愛いし、強いし、柔らかいし、温かいし、移動も便利、一家にクマ1つだね。

岩石ゴーレムの階層はくまゆるたちが倒してしまうので、今度はわたしの出番が無くなった。

でも、この下り坂を進むとアイアンゴーレムが出る階層になる。

さすがに、アイアンゴーレムはくまゆるたちに任せるわけにはいかない。倒せると思うけど、周りが、かなり酷い状況になる可能性がある。坑道の中でなければ任せてもいいけど、今回のアイアンゴーレムの相手はわたしがすることにする。

昨夜の特訓の成果がでればアイアンゴーレムは楽に倒せるはずだ。

まあ、できなかったら、力ずくになるけど。貴重な睡眠時間を削ってまで、特訓したんだから上手くいってほしい。

坑道を進み、もうすぐアイアンゴーレムに遭遇する。

くまゆるたちには動かないように指示を出して、わたし1人でアイアンゴーレムに向かう。

さて、 上手(うま) くいくかな。

わたしはイメージをする。

すると、黒クマさんパペットに黄色や蒼白い光がパチパチと音を鳴りながら纏わりつく。

黒クマさんパペットに纏わりついているのは電撃魔法。

鉄には電気が一番。

アイアンゴーレムに流せば、体全体に流れ、体内にある魔石を破壊してくれると考えたのだ。

この世界に電撃魔法があるかは分からない。わたしが前に買った初心者用の魔法の本には書いてなかった。

これは、わたしの想像だけど。この世界には電気の概念はないかもしれない。あるとしたら、雷ぐらいかもしれない。それだって、どうして雷が起きるかも分からないし、雷がどんな性質を持っているかも分からないはず。だから、この世界には電撃魔法は無いと考えている。

まあ、あくまでわたしの想像だけど。

そのことを思いついたわたしは、昨夜、宿屋を抜け出して電撃魔法の練習をした。

初めは電撃魔法のイメージは悩んだ。

ゲームやアニメだと、電撃魔法は空から降ってくるものが多かった。

ライ○インとかサンダーと呪文を唱えると空から電撃が落ちてくるイメージがある。でも、この世界の魔法はあくまで、自分の魔力を変化させて放つ魔法である。

なにも無いところから電撃を落とすことはできない。

だから、わたしはクマさんパペットに電撃を流すことを考えた。

魔力がわたし自身にあるから、魔力を電撃に変化させるイメージは容易かった。クマさんパペットに電撃が纏わりつき、パチパチと放電させていた。

そのクマさんパペットに纏わりついた電撃を飛ばそうとしたが、どうも、上手に電撃を飛ばすことはできなかった。

どうも、電撃イメージが空から落とすイメージに固定されているようだ。

クマさんパペットから、電撃が放たれるイメージがしにくく、放つことはできなかった。

まあ、とりあえずは、夜も遅かったが、電撃魔法は使えるようになったので良しとした。

ライ○インとかサンダーはできなかったけど、電撃クマさんパンチと言ったところだろう。

そんな特訓のもとで完成した電撃を纏ったクマさんパペットはパチパチと音を立ててる。

これがどのくらいの威力があるか分からない。

実は痺れるだけぐらいかもしれないし、雷以上の電撃かもしれない。

電撃を作り出すところまではしたが、魔物相手には試していない。

この魔法が使えるようになれば、狭い場所でも魔法が使えて便利になる。

わたしはアイアンゴーレムに向けて駆け出す。電撃を纏っているクマさんパペットで軽くクマさんパンチをする。触れるような優しいパンチだ。

わたしが知りたいのはクマさんパンチの威力ではなく、電撃の威力だ。

電撃クマさんパンチ弱を受けたアイアンゴーレムはバチッと大きな音を立てる。一瞬でアイアンゴーレムの体に電流が走った。

わたしに向けて腕を振り落とそうとしていたアイアンゴーレムの動きは止まる。わたしがそのまま軽くクマパンチを押すように力を込めると、アイアンゴーレムは後ろに倒れる。

倒れたアイアンゴーレムは動かない。

足で蹴ったりするが反応はない。

どうやら、上手くいったみたいだ。

ちゃんと、アイアンゴーレムの体の中を電流が流れて魔石を破壊してくれたらしい。

わたしはアイアンゴーレムをクマボックスにしまい、次のアイアンゴーレムを求めて先に進むことにする。