軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120 クマさん、村に到着する

わたしたちが村に到着すると、それに気づいた村人が歓迎してくれる。

だんだんとその数は増えていき、数十人の村人が集まってくる。

出迎えの人数、多くない?

「ようこそ、お待ちしてました。この村の村長のカボスといいます」

村長が一歩前に出て、出迎えてくれる。

前もって連絡があったのだろう。

仮にも王都の坊っちゃん、嬢ちゃんが通う学園から来るんだ。そのぐらいはあって当たり前かな。

村長はわたしたちを見回す。わたしを見た瞬間、一瞬止まるが、すぐに視線を逸らす。

マリクスが一歩踏み出して村長の前に出る。

「学園から来た。マリクスです。運んできた荷物は馬車の中にあります」

マリクスが代表として受け答えをする。

そういえば、このパーティーのリーダーってマリクスになるのかな?

こないだの戦いの指示もマリクスがしていたし、見張り番の指示もマリクスだったし。

シアには悪いけど、能力的にはカトレアが一歩出ている感じがあるけど。

ゲームのときもそうだったけど、男女のパーティーだとほとんどのパーティーリーダーは男になっちゃうんだよね。

「はい、ありがとうございます。では、馬車はこちらでお預かりします」

その言葉で手綱を握っていたティモルが馬車から降りる。

村長はティモルが馬車から降りた後も、馬車を見つめている。

時折り、首を傾げている。

「どうかしましたか?」

「いえ、馬車の中に冒険者の方がいると思いまして。もしかして、学生の皆さんだけで来られたのですか?」

もしかして、学生ってわたしも入っている?

制服は着てないよ。クマさんだよ。

「護衛に冒険者の方がいると伺っていたのですが」

なるほど、村長さんは冒険者を捜していたわけか。

その村長さんの言葉でシアたち生徒がわたしの方を見る。

「冒険者なら、こちらに」

マリクスが微妙な顔でわたしの方を見る。

なんだ、その苦笑いをしたような顔は。

「えーと、こちらのお嬢さんが、冒険者とでも?」

「はい、一応」

その言葉を聞いた瞬間、村長の顔が崩れていく。

それは村長だけでなく、後ろにいる村人も落胆の顔が見える。

「他の冒険者の方は?」

辺りを見渡す村長。

「彼女1人です」

マリクスの返答に村長はわたしの顔をみる。

すると、今にも倒れそうにフラフラとする。

なに!?

失礼じゃない?

人の顔を見て、ショックを受けてふらつくって。

これって冒険者がわたしみたいな小娘だからショックを受けているんだよね。

わたしの顔を見たからってわけじゃないよね?

どっちにしても失礼だけど。

「村長!」

周りの村人が村長に駆け寄り、体を支える。

「大丈夫じゃ」

村長は再度、わたしを見る。

「お嬢さんが冒険者なのかい」

「そうだけど」

「そうか」

わたしをじっくり見て、小さくため息を吐く。

「なによ。言いたいことがあれば言えば」

さっきから、村長の態度がイラつくんだけど。

人の顔を見て、ため息ばかり。

「先程から様子が変ですけど。どうかなさったのですか?」

シアが村長に尋ねる。

「いえ、学生のあなたたちに話すようなことではありませんので」

「そんなの聞いてみないと分からないだろう」

マリクスが煮えきらない村長の態度に口調が元に戻る。

「村長、話してもいいのでは?」

村長を支えていた男性が口を開く。

「だが、学生の皆さんでは……」

「そうですわよ。話してみないと分かりませんわよ」

カトレアもマリクスの言葉に賛同する。

村長は少し悩み、周りにいる村人たちの顔を見る。

「そうですね。話だけでも聞いてもらえますか?」

わたしたちは村長の家で話を聞くことになった。

村長や村人の様子を見れば、冒険者が必要な事態が起きたので、冒険者に話を聞いてもらおうとしたら、冒険者がわたしだったから、ショックを受けているってことだよね?

そこは、冒険者ギルドカードを見たり、わたしの実力を聞いたりするところじゃないかな。

人を見かけだけで判断しちゃ駄目って教わらなかったのかな。

でも、ほとんどの人間は見た目で判断するよね。

わたしだってするし。だから、文句の一つも言えない。

村長の家に案内されると、村長は暗い表情で話し始める。

「実は村の周辺にゴブリンが現れるようになったのです」

「ゴブリンが?」

なにかと思えばゴブリンですか。

「本来、ゴブリンは森の奥の方にいて、こちらまで来るようなことはないんです」

「そのゴブリンが、村まで来ていると」

「ゴブリンが住む場所と村の間には 蚕(かいこ) の巣があるんです。ゴブリンはこちらに来ようとすると蚕のエサになります。だから、この村は蚕によって身の安全を保証されていました」

「でも、ゴブリンが現れたと」

「はい。なので冒険者の方にゴブリン退治をお願いできないかと思っていました。実習訓練には冒険者の方が護衛に付くのは知ってましたから。もちろん、無理を言っているのは分かります。でも、安全に森の中に入れないと村の存続に関わります」

今の会話に変なところがあったんだけど。

蚕がゴブリンをエサ? 桑の葉じゃないの? 肉食?

それ以前にゴブリンをエサにするって、大きさはどうなっているのよ。

「どういうことですの?」

「村にはその蚕の繭で生計を立てている者が多いです。だから、森に入れなくなると困るんです」

だから、出迎えにあんなに人がいたわけだ。

生徒たちを待っていたのではなく。冒険者を待っていたんだね。

それで、村長だけじゃなく、村人も落胆の顔をしていたわけだ。

「ゴブリンの数はどのくらいなんですか」

「ハッキリした数は分かりませんが、見かけた者が言うには数匹だったと聞いてます。ただ、いろんな場所で見かけてますので、正確な数は分かっていません」

もしかして、ここに来るときに出会ったゴブリンもそのゴブリンなのかな?

それなら、あんなところにいた理由がわかる。

「わかった。俺たちがゴブリンを倒してきてやる」

「マリクス!?」

この場にいる全員がマリクスの言葉に驚く。

「だって、困っているんだろう? それにゴブリンぐらい、俺たちでも倒せるだろう」

「そうですけど。ハッキリした数が分からないのだから危険ではなくて? シアもティモルもそう思いませんこと?」

カトレアが黙って聞いている二人に尋ねる。

「う~ん、マリクスの気持ちも分かるし、カトレアが言っていることも分かるよ」

「僕は反対ですね。僕たちが危険なことをする必要性はありません」

「ティモル、おまえも反対なのか」

「僕だって、村の人を助けたいと思うけど。危険だと言っているんです。ゴブリン退治は専門の冒険者に任せるべきですよ」

「専門の冒険者……」

マリクスとティモルがわたしを見る。

はい、冒険者ですが、なにか?

「任せるのか?」

「……、そうですね。村長さん、冒険者ギルドには依頼は?」

目の前にゴブリンぐらい楽に倒せる冒険者がいるのに、別の冒険者に依頼をだすんですか?

「いえ、出しておりません。現れたのも最近で、近いうちにあなた方が来ることが分かっておりましたので。来られる冒険者の方にお願いしようと考えていました。もし、断られたら、冒険者ギルドに依頼を出すつもりでした」

村長がわたしの方を見る。

さっきから、冒険者って言葉が出る度にわたしを見るの止めてほしいんだけど。

「それで、その間、森に入れなくて大丈夫ですの?」

「冒険者がすぐに来てくれれば大丈夫です」

「依頼を受けるも受けないのも冒険者次第ってことか」

「まあ、冒険者は依頼料で決めますからね」

「村の人が亡くならないと冒険者ギルドも緊急性が無いと判断して、通常依頼で出しますからね」

みんな、学生なのに冒険者ギルドについて詳しいね。

常識なのかな。

部屋の中に沈黙が流れる。

「シア、おまえはどうなんだ。さっきから黙っているけど」

「わたしですか。どちらでもいいですよ。みんなが決めたら、それに従いますよ」

「なら、戦うことになってもいいんだな」

「いいですよ」

シアはわたしの方を見て微笑む。

シアはわたしの力のこと知っているから、危険は無いと思っているのかな。

「シア。もし、僕が反対して、マリクスがゴブリン討伐に行ったらどうするんだい」

「わたしの役目はユナさんの面倒をみることですから。ユナさんがマリクスの護衛のために付いていくなら、わたしも付いていきますよ」

「俺じゃなくて、その女にかよ」

マリクスが悪態をつく。

「当たり前です」

「分かったよ。マリクス。僕もゴブリン退治するよ。でも、条件がある。無理はしない。もし、危険と思ったら帰ること。その条件を飲んでくれるなら、僕もいいよ」

「ああ、もちろんだ。俺だって、無理をして死にたくないからな」

マリクスがカトレアを見る。

「よろしいですわ。わたくしもお手伝いしますわ」

「なら、決まりだな。明日の朝一でゴブリン退治だ」

マリクスがみんなを纏め上げる。

「よろしいのですか? 学生のあなたがたに危険なことを」

「これも実習訓練だ。それに俺たちだって、できないことはしない。無理だったら戻ってくる」

「ありがとうございます。でも、無理はなさらないようにお願いします」

これって教師だったら、どう採点するんだろうね。

見捨てずに村のために行動する。プラス。

冒険者でもないのに、危険なことをする。マイナス。

それ以前に、護衛役として、止めるべきだったのかな?

でも、危険と思わない限り自由にさせてほしいと言われているし。ゴブリンぐらい平気だよね。