軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106 クマさん、蜂の木に向かう

くまゆるに乗って、蜂の木がある森にやってきた。ヘレンさんの話によれば、この森の中心部にあるそうだ。見ればすぐに分かると言う。景色が感動すると言われた。どういうことかな?

巨大な蜂の巣なんて気持ち悪いだけだと思うけど。

森に入る前に探知魔法で魔物の確認をする。オークが十五体ほどいる。さらに、少し離れたところにゴブリンの反応もある。どうやら、どちらの情報も間違っていなかったらしい。

とりあえず、オークのいる場所に向かう。ここが蜂の木がある場所だと思うためだ。

くまゆるに乗って迷わずに進む。しばらく進むと、わたしの前を花びらが舞う。そのまま進み続け、森を抜けると、辺り一面に色とりどりな花が広がる景色が開放された。

息を吸い込んで吐くことを忘れるほど綺麗な光景だった。赤、青、黄色、オレンジ、いろんな色の花が咲いている。

その広さは限りなく広く。どこまでも広がっている。森の中にこんな場所があるなんて信じられない光景だった。その花が咲く中心に大きな巨木が立っている。

あれが蜂の木?

「おおきい……」

だが、その綺麗な光景を壊す存在が巨木の下にいた。涎を垂らし、醜い顔のオークがハチミツを食べている。

あいつらね、わたしのハチミツを食べているのは。

討伐しようと森から出ようとした瞬間、右の森からゴブリンが飛び出してきた。そのまま、走り出してオークに向かう。ゴブリンは木の棒や、どこで拾ったのか分からないナイフを持ちオークに襲いかかる。

もしかして、縄張り争い?

まあ、探知魔法で発見したときから、両方とも倒すつもりだったから面倒がなくていいけど。

数ではゴブリンが勝っているが、力量差がありすぎる。オークの重い一撃を喰らうとゴブリンは沈んでしまう。でも、ゴブリンも数にいわせて数体がかりでオークを襲う。意外と均衡している。

勝負の行方を見てから漁夫の利を手に入れようと思い、様子を見ることにする。だが、その考えは数秒で却下される。オークとゴブリンが暴れるたびに、綺麗な花が潰されていく。ハチミツの巣が。このままでは、戦いが終わる頃には、戦闘が行われた場所の花が潰されてしまう。

あらためて動こうとした瞬間、くまゆるがわたしを止める。今度は左の森から、二つの黒い物が飛び出す。飛び出した黒い物体はゴブリンとオークの群れに真っ直ぐに向かう。

あれは間違いなく。

「クマ!?」

そう、二つの戦いに乱入したのは二頭の熊だった。

大きな熊と一回り小さな熊の二頭。

熊はゴブリンとオークに襲いかかる。クマの奇襲にゴブリンとオークは戸惑う。

ゴブリンは熊の乱入で数で押しきれなくなり、逃げ出し始める。

それを見たオークと熊はターゲットをお互いに変えて戦い始める。

でも、オークの数は十五体。熊は二頭。数に差がありすぎる。

熊が一体のオークを攻撃をしていると、横から攻撃をしてくるオーク。オークの持つ棍棒が熊を襲う。熊は防ぐことも出来ずに無抵抗な体に攻撃を受ける。別の熊が助けようとするが、オークに囲まれて動けない。

「えーと、これって、どうしたらいいの?」

つまり、ハチミツを争って三つ巴の争いだったわけだ。

順番は分からないけど。

だから、わたしはどうしたらいいの。

まあ、ゴブリン、オーク、熊を全て倒せば良いと思うけど。

でも、熊を倒すことには抵抗がある。まして、殺すことなんてできようがない。くまゆるたちの仲間を殺すようなものだ。

どうしようと悩んでいると熊がどんどん劣勢になっていく。でも、熊も負けていない。熊が目の前のオークを張り倒し、オークの首筋を噛み殺す。

熊、強い。

一対一ならオーク相手でも負けてはいない。でも、相手の数が多い。

熊が次のターゲットに向かおうとした瞬間、熊の動きが鈍る。巨木の後ろから赤いオークが現れたのだ。オークの亜種。ゲームではオークの色違いで出てきた魔物。攻撃力、耐久性がオークよりも数段強い。

熊はレッドオークに攻撃を仕掛けるが、レッドオークが持つ棍棒で叩きつけられる。もし、剣だったら致命傷だった。だからと言って危険な状態には変わりない。

もう一匹の熊がレッドオークに体当たりをする。だが、レッドオークはビクともしない。そのまま棍棒を振り落とそうとする。その瞬間、わたしは動いていた。

スナイパーのように遠くから水球弾を放っていた。水球弾はレッドオークに命中して、よろめく。

倒れている熊はおぼつかない足取りで、森の中に逃げ出す。そのあとをもう一頭も追う。

残されたレッドオークはわたしからの攻撃だとは気付かず。八つ当たりをするように仲間であるオークに棍棒を振り落とす。棍棒で殴られたオークはミンチになる。

見ていて気持ち良いものではないので、くまゆるに乗って静かにその場を離れる。

あの熊大丈夫かな?

棍棒で叩きつけられていた。

仲間のオークがミンチになるほどの強さだ。

心配になってくる。

くまゆるに目的先も伝えずに歩かせていると、二頭の熊がいた。いや、正確には四頭。先程の二頭の熊と子熊が二頭いた。親子ってことは二頭は夫婦だったんだね。

大きい方が父熊で小さい方が母熊かな。

親熊の一頭は倒れ、もう一頭はわたしたちを見ると威嚇しはじめる。

くまゆるはわたしを下ろし、熊たちのところに歩き出す。

会話できるの?

そんなことを思っていると、双方が頷きあって意思疎通をしているように見える。

なにが起きているの?

くまゆるが戻ってきて、わたしの体を鼻で押すようにして、倒れている熊のところに連れてくる。

「もしかして、傷を治せってこと?」

くまゆるは小さく鳴く。

「わかったわよ」

くまゆるのお願いだ。断ることはしたくない。それに傷付いている熊を見捨てることもできない。

わたしは倒れている熊に治療魔法をかけてあげる。すると、熊はゆっくりと立ち上がり、それを見た小熊が嬉しそうに体を親熊に擦り付けている。

これで、わたしにはハチミツが手に入らなくなったとしても、この熊の家族を討伐することはできなくなった。

くまゆるは熊たちの輪に入って何か会話をしている。

もちろん、熊語をマスターしてないわたしには理解はできない。クマたちは仲良く会話?をしている。くまきゅうだけのけ者にすると、また、いじけると困るので、くまきゅうを召喚する。

くまきゅうを召喚すると、すぐに仲間の輪に入り会話?をしている。

しばらくすると会話が終わったのか、くまゆるとくまきゅうがわたしのところにやってくる。まるで、お願いするかのように擦り寄ってきて甘い声で鳴く。

「なに? どうしたの。もしかして、わたしにレッドオークを倒してほしいってこと?」

クーンと鳴く。

別に倒すのはいいけど。問題はその後だよね。魔物は倒したけど、熊がいたらハチミツ採取できないよね。

子熊を置いて親熊が動き出す。

もしかして、またレッドオークと戦いに行くつもりなの?

どうしたものかと悩んでいると、くまゆるとくまきゅうが寄り添ってくる。

「わかった。行くよ。後のことは後に考えることにしよう。とりあえずはレッドオークを倒しましょう」

わたしの返事が嬉しいのかくまゆるたちは嬉しそうに鳴く。

親熊たちの後ろを付いて行き、花が一面に広がる蜂の木がある場所にでる。

巨木の周りにはオークが陣取っている。その中にはレッドオークの姿も見える。

親熊たちがゆっくりとオークたちに向かって歩き出す。それに気づいたオークたちも武器を握り締め、こちらの方を見る。

レッドオークが頭に響くほどの叫び声を上げると、オークたちがこちらに向けて走り出す。

親熊たちが立ち上がり迎え撃つ。

えーと、両方とも戦う気満々だけど、倒していいんだよね。

ベアーカッターを放ち、四体のオークの首を切り落とす。その姿を見たレッドオークがさらに唸り声をあげる。

「うるさい!」

うるささに一瞬目を閉じてしまった。その瞬間にレッドオークと他のオークが一斉に走り出していた。

親熊、くまゆる、くまきゅうは動き出す。

えっ、二人ともいっちゃうの?

別にわたしの護衛をしないつもりではないらしい。ちゃんとわたしに向かってくるオークはくまゆるとくまきゅうが対処している。

問題はレッドオークが向かった先。

父熊の方だ。

棍棒を握り締め、父熊に向けて振り落とす。横から、母熊がレッドオークに体当たりをするために駆ける。混戦状態になっているのでわたしの魔法が使えない。

父熊は棍棒を躱す。

レッドオークの棍棒が花を散らし地面に突き刺さる。その横から母熊がレッドオークに襲いかかる。体当たりをするが、レッドオークは微動だにしない。レッドオークが棍棒を再度、振り上げる。父熊が襲いかかる。棍棒の行き先は母熊。父熊が襲いかかる前に振り下ろされ、母熊の背中に当たる。

ぷち。

母熊はうめき声を上げて倒れる。そこに父熊がレッドオークに襲いかかる。レッドオークは振り落とした棍棒をそのまま、父熊に向けて下から振り上げる。その棍棒が横っ腹に当たる。

ぷちぷち。

親熊はレッドオークの足元でうめき声を上げながら倒れている。

レッドオークは涎を流しながら、再度棍棒を振り落とそうとする。

棍棒が振り上がった瞬間、わたしは動いていた。

レッドオークの横っ腹に熊パンチを打ち込んだ。オークは花を潰しながら、地面に転がる。

久しぶりに切れました。

熊が殴られているのを見て気分が悪くなった。

今後、熊が人間を襲えば戦える気持ちはある。熊は凶暴で肉食だ。

でも、今はこの熊を守りたいと思う。

今後、この熊たちが人を襲うかもしれない。でも、この瞬間、わたしはこの熊たちを守りたいと思う。未来のことは分からない。今は無性にこのレッドオークを倒したい衝動に駆られる。

レッドオークは立ち上がり、わたしの方を見る。

その喧嘩、熊の代わりにわたしが買った。熊たちが味わった痛みは味わってもらう。

わたしはステップを刻み、レッドオークに向かう。レッドオークは棍棒をわたしに向けて振り落とす。

力勝負をしたいなら、受けてあげる。

わたしは白クマの手で棍棒を受け止める。衝撃は小さい。楽に受け止められる。

これは母熊の分。がら空きの横っ腹に黒クマのクマパンチを入れる。反動と苦しみで、手から棍棒が離れる。棍棒は白クマの口に咥えられている。それを黒クマの口にしっかりと咥え換える。

体勢を整えたレッドオークは初めてわたしの方を睨みつける。餌としてでなく、敵として見た。

敵として見るのが遅い。

どっちが上か、教えてあげる。知ったときには生きていないけどね。

わたしは棍棒を振り上げて、レッドオークに振り落とす。レッドオークはわたしと同じように棍棒を受け止めようとする。

同じことができると思っているの?

レッドオークの腕を粉砕する。

これが父熊の分。

レッドオークは声にならない叫び声をあげる。

おまえが何度もしてきたことだ。

レッドオークはわたしに背を向けて逃げ出す。

逃がすわけがない。土魔法で壁を作り、逃げ場を無くす。レッドオークは最後にわたしを恐怖の目で見る。レッドオークには戦う意志はない。最後は首を切り落として戦いは終わった。

わたしが後ろを振り向けば、くまゆるたちのオークの殲滅が終わっているところだった。わたしは倒れている熊に近づき、治療魔法をかける。これで、確実にこの熊たちを殺せない。

熊は起き上がり、感謝の気持ちなのか体を擦り付けてくる。

「ねえ、人間がハチミツを取りに来ても襲わないでいてくれる?」

言葉が通じないと分かっていても、そう尋ねてしまう。今日ほど熊の言葉が分かればと思った日はない。

熊を安全なところに移動させるしかないのかな。

そんなことを考えているとくまゆるとくまきゅうが親熊に近づき、会話?みたいなことをしている。

親熊は回り込みわたしの体を押し始める。押した先には蜂の木がある。

「ハチミツを採りに行けってこと?」

わたしのその疑問にくまゆるが代わりに返事をしてくれる。

わたしは蜂の木に近付く。木の周りには蜂が飛び回っているが襲ってくることはない。わたしはクマボックスから壷を取り出して、気を付けながらハチミツを採取した。