軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-13.四十九日(3)

翌日。

セレモニーを開催した。

レオニスさんが骨壺を持って、師匠のお墓に運ぶ。私は先導役。

師匠を弔うために集まった人達も、門を開けて、自由に中に入れるようにしている。

ちなみに、普段は解放する気がないこともあって、分骨して、迎賓館の一部に師匠のお骨を安置する。

流石に仏壇はないからね。

師匠のお墓参りしたい人達のために、用意することにした。

それとは別に、命日の日くらいは、解放するつもりでいる。

「まったく、こんな辺鄙な場所にしおって」

「申し訳ありません。でも、師匠と私には宝の山です。師匠がここを望んだので」

師匠の古い知り合いを名乗る方たちからは、山間であり、坂の多い場所であり、色々と不評だった。ただ、私のことは手紙で聞いているらしい。

何かあれば訪ねて来るようにとまで言うのには驚いた。

師匠のお墓は、西側の奥にある大樹の近く。

数多くの野生の薬草が茂っている場所で、師匠のお気に入りだった場所。

その横には、グラノス・メディシーアの墓もある。

当然ではあるけど、王弟殿下から調書は貰っているけど、遺骨などはないため、生前愛用していたものを詰めて、お墓に埋めてある。

穴に埋めた後、少しずつ土をかぶせて、師匠に挨拶をしていく。一部の冒険者は兄さんの墓にも同じようにしている。

終わった人達は迎賓館の方で、軽い食事を用意していると言って、場所を移動してもらう。

私とレオニスさん、ナーガ君はこちらで最後の人が終わるまでともに見送る。

迎賓館の方は、ディアナさんにお任せしつつ、ラズ様やフォルさんがフォローに入ってくれている。

「……あれはいい師匠だったか?」

「私にとっては最高の師匠ですよ」

一言二言、私に声をかけてくる人がいる。

厳しい目つきであったり、逆に孫を見る目であったりと様々である。

レオニスさんは、腹パンされたりと、髪をぐしゃぐしゃにされたりと、可愛がられている。

昔からの知り合いも多いようだ。

なお、貴族の人達については、並ばせる訳にもいかないから、最初に爵位の順番で参加してもらい速攻で終わらせた。聖教国の方たちも同じ。

今、迎賓館でくつろいでいるのか、帰ったのかは知らない。

「儂が最後でよかったのかのう」

「ゆっくり師匠に言いたいことがあるかなと思ったので……席外した方がいいですか?」

「お嬢ちゃん。そこまでの気遣いは不要じゃ。懐かしい顔ぶれも多かったので、食事でもしながら語り合う」

最後にギルド長ヨーゼフが師匠のお墓に土をかけて終わった。

……まあ、すでに何百人がかけているので、すでに穴は塞がっているけどね。

「お疲れさん」

「……ああ」

「レオニスさんもお疲れ様です。ナーガ君も……まだ、迎賓館の方があるんですけどね」

「圧倒的に冒険者連中が多いから、食事は無くなってるかもな。貴族連中も諦めて帰ったんじゃないか?」

「……良心的な奴らはな」

師匠に命を救われた貴族の人達は良心的……いや、多少は裏もあるのだろうけど。

何もせずに帰ってくれたとレウスが知らせてくれた。

何だかんだと、全員で給仕したりと、忙しいようだった。

「あとは、適当に帰らせつつ、お開きにしよう」

そう思ったのだけど、ビュッフェを行うホールに入る前に、呼び出されてしまった。

「顔を上げよ」

ちょっとトイレに行ってから向かうと、レオニスさんとナーガ君と離れたのが失敗だった。

ソロル侯爵の従者を名乗る青年により、トイレから出たところで待ち伏せされた。

仕方なくついていき、宿屋の一室にて頭を下げていた。

ゆっくりと顔を上げて、侯爵の顔を見る。

おそらく、50歳くらいだろう。威厳のある表情でこちらを見ている。

ラズ様とかカイア様とかは、表情を読ませないように笑顔を浮かべていることが多いけど、この人は厳しい表情をして感情を読ませないタイプらしい。

「よいセレモニーだった。あまり知られていない手法だったがね」

「……」

無言で頷いておく。

面倒だけど、無礼なことをするわけにもいかない。

「昨日もだが、口をきけないのかね?」

「いいえ。ですが、無礼があってはいけないと愚考いたしましたので」

余計なことを言わないために黙ってるだけ。

そもそもが、ラズ様がいない場で呼び出さないでほしい。

「ラズライト様にすり寄り、上手くやった異邦人の小娘が。なぜ重要視するのか、理解に苦しむな」

「その通り、上手くやったからですよ」

神から与えられた能力だろうと、それを使って、上手く居場所を作った。

否定することでもないから、肯定したのに、大きく眉間に皺がよった。

「何をしたか、答えよ」

「王弟殿下もカイアナイト様も、恩義を大切にされる方です。師匠と共に、薬を開発し、カイアナイト様の病状を快癒させました」

実際には、呪いだったけど。

薬を作ったことは事実。代替素材も含め、それなり功績があることも。

「貴族からの依頼は受けないそうだな」

「ラズライト様経由でお受けいたしますよ」

「師は分け隔てなく、誰の依頼でも受けていたようだが?」

「兄がそうなる予定でした。私はラズライト様の薬師となり、メディシーアは兄が継ぐ……妨害し、殺したのは貴方方お貴族様でしょう?」

貴族連中が妨害したから、グラノス・メディシーアは爵位を継げず、王により殺された。

爵位については王弟派の中でも、反対があったらしいしね。

多分、この人も反対したのだろう。

「貴族の学園を卒業していない人は貴族として認められない。それはそちらの理屈であって、私には関係がないですから」

「なぜ、ラズライト様に仕える?」

「命を脅かすような脅迫も受けましたけど、救ってくれたのも彼だからですよ。しかも、お人好しで、私の身内なら見逃してくれたので」

恋愛ではなく、恩義を感じているから仕えている。

まあ、指示に従っているかというと絶対ではないけど。

「子を産まれては困るのだが、どうかね?」

「その予定はありませんよ」

「口では何とも言える」

「私よりも、セルフィス女伯爵を何とかしてはいかがですか? 私よりもよほど、ラズライト様の子を必要としているようですよ」

私の言葉に、眉間の皺が悪化した。

兄さんと違って、貴族の関係図を知らないのだけど。もしかして、セルフィス伯爵家とも縁があるのかな。

いや、どちらかと言えば、セレスタイト様に継いでもらう必要あるから、ラズライト様を利用しようとする家とは敵対すると思うんだけど。

「どういうことだね?」

「かつての元婚約者が復縁要請をしており、私とも話があるとか? 対応に困っていまして。愛人がいることが気に入らないということなのでしょうか? ご自身は、ラズ様の子は産むけど、愛人と育てるとおっしゃった方なのに。どう思われます? 平民ではどうしてそのような思考回路になるのか、理解できませんから貴族のお考えをご教示いただきたいです」

「ふむ……こちらで対処してやってもいいが、君が薬を作ることが条件だ」

私、対処して欲しいって言ってないけどね! なんでそう考えるのかを教えてほしいだけ。

しかし、やっぱり、薬の調合が目的なのか。

「私と同等の製作者がおりますので、そちらでも構わないのであれば。私が作るとなるとラズ様の許可が必要ですから」

「では、後ほど手紙を送ろう」

「クロウ宛の依頼として出してくださいね。それと、領民の方々にはうがいと手洗いだけでも、習慣とするように指導をお願いします。石鹸とうがい薬は明日の出立前までに用意しておきます」

病が広がる前から、予防しておくように頼んでおく。

頷いたので、そちらも考えていたらしい。

難しい薬については、内容を確認してからだけど。多分、問題はないだろう。

「噂や報告とは違うな」

「師匠がいないから、王国で流行り病が蔓延した。そんな事実を作ったら、面倒事が増えそうなので協力はしますよ」

師匠もゆっくりと安心して休めないだろう。しっかりする必要がある。

「それならば、薬師としての領分を超えることのないのであれば見逃そう」

無言で頭を下げて、部屋を出る。

どうするのかは知らないけど、対処をすると言ったのだから任せよう。

貴族のやり方は貴族で。王族であるラズ様達がやるわけにもいかないだろう。多分。

「……無事か?」

「ナーガ君。うん、平気」

探しに来てくれたナーガ君とともに、迎賓館の方へ向かう。

すでに、酔い潰れた人とかいるくらいのカオスな状態になっている。

「問題起きたりした?」

「……酔い潰れた奴らは別室に運んでいるが、部屋でごろ寝状態だ……」

なるほど。ベッドもないしね。

そんなに酔い潰れるまで飲まないで欲しいけど。

基本的には平民の人達ばかりということで問題は起きていないらしい。

先輩冒険者達は飲みなれているせいか、潰れるほどは飲んでいない。

ホールにて様子を確認していたら、つかつかと場に似つかわしくない派手なドレスを着た女性が近付いてきた。

「漸く顔が見れましたわね、クレイン・メディシーア」

「……」

面倒事がわざわざ寄ってきた。

どう見ても場違いなこの女性。

仕方ないので、カーテシーをして頭を下げる。

横にいたナーガ君も頭を下げて、礼をしている。

「身の程がわかっているようね。話があるわ、ついていらっしゃい」

「お断り申し上げます」

頭を上げる許可も無く、ついて来いという相手に、頭を下げたまま断りを入れる。

気配を窺うと周囲はがやがやとこちらの騒動に気付いて、近付いてきている。

奥の方にいるラズ様やカイア様も騒ぎにはすぐに気づくだろう。

「わたくしに逆らうというの?」

「私はこの場の責任者ですから。師匠の納骨が終わり、漸くこちらに顔を出せたのに、なぜ、この場を離れなくてはいけないのでしょうか? 皆と、師匠の死を悼み、語り合うための場を辞し、なぜ、師匠と縁もゆかりもない方と話さなくてはいけないのでしょうか?」

「平民が貴族の命令に逆らうなど、許されることではなくってよ」

「何をしている……メディシーア嬢、顔を上げるといい」

許可がでたので、頭を上げる。

許可を出したのは先ほどまで話をしていたソロル侯爵だった。

「侯爵様。ありがとうございます」

「よい。そんなことよりも、セルフィス女伯爵。君は何様のつもりだね。この場は身分に関係なく、救国の薬師であるパメラ殿を悼むための場。貴族であることを理由にぶち壊そうとするなど、恥を知りなさい」

さっき呼び出して、妨害していた人の言う台詞かな。

自分を棚に上げて、やりたい放題だなと思いつつ、顔を真っ赤にしている彼女にはいいお灸になったようだ。

この場でラズ様とカイア様に続いて身分が高い侯爵が言うことには逆らえない。

さらに、師匠と縁がないといったことで、彼女に非難の視線が集中している。

「わたくしは何度も話があると場を持とうとしているのに、全て断りを入れてくるから仕方なかったのですわ」

「彼女は君の領民ではないだろう。ラズライト様の薬師であることも公開しており、依頼は全てかの方を通すとしている。関わりのない貴族と接触をしないなど当然のことだ。ましてや、このセレモニーで忙しくしているのは誰でもわかることだ」

ここまで庇ってくれるとは思わなかった。

ラズ様達が庇うと角が立つので助かった。

分が悪いと思ったのか、この場から女伯爵が出ていく。

彼女を追い払うまで納めてくれた侯爵に、頭を下げておく。

若干、ラズ様とツルギさんからの視線が痛い。にんまりと笑っているネビアさんは楽しそうだ。

カイア様が「あ・と・で」と声には出さずに口を開いた。あとで報告しろということだろう。

「おチビ! こっちこい、飲むぞ!」

女伯爵が退場し、騒ぎが終わったところでジュードさんから声がかかった。

先輩冒険者達が集まる方に顔を出して、労われた。

その後も、師匠の知り合いたちから声をかけられたが、貴族からはガードされて、何もなく、セレモニーは終了した。

疲れたので、もう、何もしたくないなと思いつつ、寝床に付いた。