軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5-39.起死回生(3)〈グラノス視点〉

〈グラノス視点〉

王弟殿下の別邸に協力を求めに行くと、意外なことに執事は俺のことをあっさりと信じた。

カイアと王弟殿下しか知らないと思っていたが、自身に何かあった時のためにと謁見の前に執事には俺のことを伝えていたらしい。

こちらの計画を伝えると協力をしてくれることになり、身元保証書を作成してもらい、随分と楽に貴族達と交渉できる事になった。

大量の手紙を用意して、ネビアの情報を頼りに貴族の家を訪ねていく。本来であれば、先に使者を立ててから訪ねるところだが、そんな余裕はない。

門前払いをされれば手紙を渡すだけにすまし、話を聞いてもらえる場合には状況を説明する。

王弟殿下を助ける計画があるだけで、詳細は説明しない。王家に報告せずに傍観することだけをお願いする。

王弟殿下が俺のために用意していた紋章のお陰で、俺がカイアの騎士であることは思ったよりもあっさりと受け入れられた。

「カイアナイト殿下に騎士がいるなど知らなかったな」

「それはそうでしょう。カイアナイト様がご病気から快癒したため、ご自身で動くこともあるだろうと王弟殿下が秘密裏に用意していたのですから。正直に申し上げますと、カイアナイト殿下と直接お会いしたこともありませんよ」

この姿では、だがな。

そもそも、謁見前に王弟殿下とは話をしたが、長旅で体力がないカイアは不参加だった。俺のことは知らないだろう。

「おや、そうなのか?」

「ええ。王弟殿下が夜遅くに王都に到着だったため、謁見後に紹介すると言われており……ですが、このような事態になると存在が知られていないというのは動きやすくもありまして」

「ははっ……シュヴェルト殿。今の王にはついていけない。どうか、計画の成功を」

「ありがとうございます」

俺を値踏みしつつも、損が無いように傍観を決め込む家が多い。こちらの動きに同調しようという貴族がいないわけではなかったが、様子見がほとんどだった。

俺が目覚めてから5日後。

シュトルツが王都の外を囲った。兵の数はおよそ3,000人くらいだろう。各城門付近に1,000人ずつ配置している。さらに見えない位置には暗部も配置しているようだ。シュトルツらしい、手堅い配置だな。

しっかりと王都を出入りする人間を確認しつつ、手紙やらの連絡手段は断つ。攻め込むこともなく、見える位置でプレッシャーを与えている。

「予想通りだな」

王は動かない。蹴散らすことが出来るだけの戦力はある。それをすれば王宮が手薄になる。貴族を解放することもなく、現状維持……王宮に閉じこもることを選んだ。

だが、国王派であったはずのクヴェレ家の動きを見て、ここで貴族が動き出した。たかが、一人の騎士の戯言の救出行動がクヴェレの動きにより、真実味を増す。

各家が情報を知りたいと王弟殿下の家を訪ねるようになり、当事者である俺も別邸に控えることになってしまい、動きが取れなくなった。

できれば、シュトルツと話し合いの場を設けたかったんだが、難しい。ネビアを派遣して、簡単に伝えるだけしかできなかった。

翌日の夜。

「彼女が王都に到着したようですが、伝言はありますか?」

「……会いに行ける状態じゃないことはわかるだろう」

「ええ、では、そのように伝えます」

ネビアもわかっていて、聞いたのだろう。特に気にせず、出掛けて行った。

俺自身、クレインが到着したのであれば、話し合いの場を持ちたいところではある。しかし、カイアの騎士を名乗る俺と、注目されているメディシーアが接触するのは勘ぐりを起こさせる要因になる可能性が高い。

さらに、貴族との面会が延々と続いており、王弟殿下の別邸から出ることもできない。

会いに行くなら、先にラズの方だろう。

予定では明日。ラズが到着したら、何を置いても会いに行く。その場にいるようなら、状況を説明できるだろう。

それにネビアの方で気を使って、クレインの方の世話を焼いてくれるらしい。宿屋の手配やら細かいことをしてくれたようだ。

翌日。ラズが到着したため、王都を抜け出してラズの元へと向かう。そして、ラズライトの名で作戦会議が開かれる。

俺はラズとシュトルツ、スペルが揃う本陣にて、王都内での状況を説明する。攻めた場合に全ての門が内側から開くこと、王都内にいる貴族達から借り受けた兵を使い、王宮制圧をすることは可能であることを報告した。

「状況はわかったよ。ご苦労様」

「はっ……」

「父上達の救出、本当に任せられるの?」

「カイアナイト殿下の騎士として、私はカイアナイト殿下の救出に向かいます。王弟殿下の救出は別邸に待機する殿下の騎士達が参加することになっております」

すでに、門はラズ達の軍が動けば、王都の民を不安にさせないように進軍するだけだ。実際に攻め落とすのは内部でする。また、クレインが兵舎からの増援を防ぐために動くと聞いている。

戦力に関しても、問題はない。貴族達から多少の裏切りがあっても問題は起きない。一通りの報告は終わった。

この場にいる隊を率いる長たちも作戦は理解しただろう。軍事行動についての報告は終わった。

「……人払いをお願いいたします」

「なぜ? まだ話すことがある?」

ラズは怪訝な表情をしながらこちらを見てくる。俺を信用していない、話すことはないと態度で言っている。

「ラズライト殿下……顔合わせをしたことがなかったことは事実ですが、王弟殿下より命じられた騎士です。どうか……殿下にだけ伝えることがあります」

この場には護衛として、一応、フォルとレオのおっさんもラズの近くにいるんだが……俺に気付いていない。

何よりも、キュアノエイデスから連れてきた連中は忠誠心があるからこそ、勝手にカイアの騎士を名乗っているように見える俺に敵意を抱いている。

カイアの騎士を選ぶなら、当然自分達が候補に入るはずだからこそ、許せないのだろう。

「ラズ。いいんじゃない? 他家の僕らに話せないこともあるでしょ。君に仕えている者たちだけでも、その騎士くらいなら抑え込めるだろうし、聞いてあげたら~? いくよ」

「あ、兄君? で、では、失礼する」

ひらひらっと手を振って、通り過ぎる瞬間に「次は僕の要望きいてね~」と言いながら去っていった。スペルにはバレたらしいな。

スペルの言葉に、ラズは考えた後、人払いをしてくれた。

「はぁ……それで、話ってなに?」

人払いをして、おっさんとフォルだけになったのを確認する。クレインも他で活動しているらしく、ここにはいないようだ。ナーガだけでも呼んでほしいところではあるが……。

「色々起きて、知らせられなくてすまなかった。ナーガにも心配をかけてすまないと伝えてくれ。クレインには……」

「は? え? ぐっ」

「グラノスは死んだ。その事実を疑う奴がいないくらいには壮絶な死に方だったそうだ」

俺の名前を出す前に、知られている事実だけを伝える。騎士らしく上げていた前髪を手で崩して、以前の髪型に近い状態にする。

ぐっと唇を噛んだおっさんと、微笑ましく笑うフォル。ラズもこくりと頷いて、わずかに涙を浮かべている。

「はぁ……フォル。ナーガとアルスを呼んできて。クレインは夕方には顔を出すらしいけど、どうする?」

「他家の晩餐に招待されていてな。その時間までここにいるのは難しい。全く……貴族連中は動くなと要請しても、出来る限り、計画を聞きだしたいらしいな。できれば、抜け駆けして手柄を挙げたいということだろう」

「僕が助けた方がそういう点では面倒事はないんだろうけどね」

「君の評価を上げるなら、王都を囲った時点で十分だろう。セレスタイトに継がせるなら、手柄を挙げすぎない。クレインの判断なら、従った方が後々楽できると思うが?」

なんだかんだと、クレインの直感に頼るのがまずいとはわかっていても、その方が先々が良いと考えてしまう。

「クレインも師と兄の死から、随分と無理をしているからね。クレインの判断でも結構悩んだけどね」

「ああ、おっさん、どうし…………てぇっ」

ラズと話をしていたら、おっさんが近付いてきて、拳骨を落とされた。

心配をかけたらしい。思いきり力を込めての一撃が、頭に響いた。

「よく生きてたな」

「殺される可能性は考えていたからな。お師匠さんに用意したのと同じように、ドラゴン素材の薬を用意していた。それでも、1週間も寝過ごしたけどな」

「ばあさんは……」

「ああ……落ち着いたら、墓参りに行かせてくれ。この姿だと部外者なんだが」

「自分でやったことでしょ。何とかしなよ」

カイアと王弟殿下に頼んで、開拓地の監査官になるつもりではいるが……お師匠さんの墓参りに行くのはいつになるだろうな。

ラズとおっさんと話をしていると、ナーガとアルスが姿を現した。

「……歯、食いしばれ」

ナーガは開口一番に、俺の頬を拳で殴ってきた。

しっかりと歯を食いしばったが、本気で力がこもった一撃だった。

「すまん」

ナーガが俺を殴った後、俺の胸に自分の頭をおいて、震え始める。

泣いているナーガの背中を軽く撫でながら、アルスの方に視線を送ると、アルスも涙ぐんでいる。心配をかけてしまった。

「にゃあ~」

肩にずっしりと重さを感じた。モモが俺の肩に飛び乗ってきていた。

「また大きくなったか、モモ?」

「にゃん!」

撫でているとのっそりとシマオウも近づいてきたので、迷惑をかけたことを詫びておく。

「……あいつを悲しませるな」

「ああ。泣かせるつもりはなかったんだが」

「……泣いてない。あんたの訃報には……」

「は?」

「えっと……クレインさん、その、お婆様が亡くなってからずっと涙止まらないくらい泣いてたんだけど……グラノスさんの訃報聞いてからは全く……」

アルスが視線を反らし、言いにくそうに泣いてないという。

ちらっとラズとおっさんとフォルの方を見るが、3人も頷いている。

「いや、隠れて泣いていたとか」

「ない……あんたの普段の行いが悪いからだろ」

「いや、まて、少しは悲しんでくれていただろ? なあ?」

「えっと、やるべきことがあるって感じで、動き出しちゃったかな……でも、生きてるって信じてたよ、ずっと……ナーガ君も……その、泣いてないだけで……」

クレインとナーガだけは、俺が生きていると信じて動いていたらしい。

ラズは情報が入れば入るほど、生存は絶望的と判断していた。おっさんも、同様。

ただ、クレインだけはしっかりと動き出してしまったらしく、悲しむ素振りはまったく見せなかったらしい。

俺としては、悲しんで引き籠るという予想だったんだが、まるっきり外れた。

「ナーガ、心配かけて悪かったな」

「……あんたはグラノスじゃない。知らない奴だ」

「ああ、そうだな。俺はツルギ・シュヴェルトだ」

「……手放した場所、後悔するなよ…………」

「しないさ……半座を分かつなら、兄妹ではなく男と女がいいんでな」

俺から離れたナーガはキッと俺を睨んだ。目が赤くなっているが、それよりも俺であろうと譲らないという意思がこもっている。

もう、俺らを繋ぐ家族という立場は無くなった。だが、これから、新しい関係を作ればいい。もう一度。

「さて、俺は行く。会えてよかった……またな」

「……ああ」

「気を付けてね、ぐ……ツルギさん」

「ああ、君達も無理はするなよ」

クレインが率いるなら、ナーガ達に危険が及ぶとは思わない。ラズやおっさん達にも見送られ、ネビアのアジトに戻る。

「おや。どうしました? 忙しいのにこちらに戻るなんて」

「ラズのとこに顔出してきたんだが、王弟殿下を救出する本隊を指揮するには良い奴がいなくてな」

「おや。そちらから借りる予定だったのでは?」

「ああ。無理だった……頼んでいいかい?」

「ふっ……んふふふふっ……正気ですか?」

俺の提案に笑いつつ、蔑むような目線をこちらに向けてくる。

王弟殿下を助けるのは第一の手柄。それをネビアに頼んだことで怒らせたようだ。

「君が適任だろう。俺の補佐として、計画の全てを知っている。どの家が参加し、どの家が傍観するか……王宮内の警備も含め、説明せずともわかっている。君以上の適任はいるかい?」

「王弟を救い出すのは第一の手柄。それを僕にさせると?」

「あの人なら爵位の一つや二つを用意できるだろうからな……むしろ、君は知り過ぎている。表に出ないなら狙われるぞ?」

「……やってくれましたね。自分は表舞台からおりる予定のくせに、その場所に僕を立たせるつもりですか」

「俺のために新しい家も用意できるような口ぶりだったからな。俺がここまで出来たのは君が協力してくれたからだ。本当の功績者が恩恵を受けられる。良いことじゃないか」

俺がこれまでうまくやってこれたのは、ネビアからの情報も大きい。もちろん、情報をうまく活用したからこそ、出来たことでもある。

その情報力と貴族のやり方に精通していることから、元貴族か、貴族に仕えていたその手の者だろう。おそらく、元貴族と踏んでいる。

「君が恨んでいる国王が消えれば、貴族に戻ることも悪いことじゃないだろう?」

「……今更ですよ。それにあなたの妹を見てると、貴族なんてどうでも良いと言う気持ちもわかります」

「まあ、嫌なら手柄だけもらっておいたらどうだ? カイアとラズなら部下が足りてないからな。俺が君を雇い続けることは出来なくなったんだから、次の雇い主は必要だろう?」

「十年分をぽんっと渡してくる雇い主がいますよ」

俺の言葉にネビアはにやっと笑う。金が大量に入っている袋は見覚えがある。

クレインから報酬をもらったらしい。俺が足りない分もしっかりと払い、さらに手付金としては10年分あるらしい。むしろ、払い過ぎだろう。

「まあ、クレインとの取引を続けるなら構わないがな」

「んふふっ……まあ、あなたとは長い付き合いになりそうですしね。王弟を助け出すのは僕がやりましょう。同僚というのも悪くない、ふふっ」

翌朝、スペル、シュトルツ、ラズが城門を開門させると同時に王宮内に攻め入った。ちょうど手隙になる時間を狙ったこともあり、あっさりと侵入が出来た。

事前に調べていた通り、カイアの捕らわれている部屋に向かう。

「騒がしいな。扱いは丁重にせよ」

「そいつはすまん。謁見の間に向かうんだが、構わないかい?」

「なっ……生きておったのか」

部屋の前に立っていた騎士は階下での騒ぎで口論をしていて隙だらけだったため、軽く当身を食らわせて、気絶させて部屋に入った。

部屋に入った俺を見て、カイアは不快そうに顔を歪めていたのが、俺がいつものように声をかけると、目を見開いた。

ラズ達は気付かなったが、カイアはすぐに俺がわかったらしい。

ラズの時には口調が違ったのもあるんだろうが……それなりに印象が変わったようだ。

「遅くなってすまない。君の騎士だ」

「父上の方に行くべきだろう。何をしておる」

「自分の主君を助けるのが普通だろ。だいたい、無駄に手柄を上げれば目立って、今後が困るだろう? 俺は数年後には退職するんだ。まあ、面倒ごとになるんでな。任せた方がいいと……君もそう思うだろう?」

「本当に、生きていたのだな……死んだと思ったぞ」

「俺もまずいなとは思った。流石に首を切られるとな」

「首の代わりに顔に一閃か……随分と男らしい顔になった」

カイアが俺の傷に触れる。痛みはもうないが、それでも気持ちがいいものでもない。

だが、俺が殺される現場を見せてしまったため、文句も言いにくい。カイアにしては珍しく、大声を上げて、感情を出していたからな。

「そろそろいいだろう? 謁見の間に向かうぞ」

「う~む。俺は行かなくてもいいだろう。兄上とラズがいればスペアの心配もない」

「残念ながら、ラズをそうさせないためにクレインが動いているんでな。俺はそちらの意思を優先する」

「俺の騎士ではなかったか?」

「君を助けにきた、君だけの騎士だ。ほら、さっさと働いてくれ。2週間も王都が停滞していたんだ、仕事はいくらでもあるだろう」

渋るカイアを着替えさせ、謁見の間へと向かう。

その後は、救出された王弟殿下により、王の弾劾裁判が行われることになり、王都にいる貴族が揃う。救出から5時間後には王位の譲渡が決められた。

王は王妃とともに離宮に軟禁。第二王子も別々の離宮へと送られることが決まった。

だが、予定外も起きた。第一王子が殺された。犯人は不明だが、随分と体を切り刻まれていたらしい。恨みを買っているのはわからんでもないが、殺した奴が調べてもわからない。

「王と王妃、第二王子は軟禁か。今後の費用が大変そうだな」

「仕方ない。各国が混乱している中で、殺して禍根を残すことも厳しい。旗頭にしようとする者もいないだろう。面倒だから、第二王子はいずれ帝国側に逃げるように耳打ちして亡命させることも考えている」

「既定路線か」

「準備不足というのは、あくまでも貴族の取り込みのことだ。方針は決まっていたからな。第一王子の死は予想外だがな。俺としては奴だけは、文句を言ってやりたかった」

カイアの体の不調は全てそいつのせいだからな。

文句は言いたいだろう。俺なら切り刻んだ犯人と同じ行動をとるだろうが。

だが、俺が手配した貴族達には第一王子を殺しに行ける奴はいなかった。俺らの動きを知りつつ、バレずに殺した手腕。誰だか、想像も出来ない。

「他は上手くやってくれたおかげで、クヴェレ家以外の功績も何とでもできるからな」

クヴェレの功績が大きいのは間違いないだろう。

さらにネビアが王弟殿下を救出しているので、ネビアを雇えば、そこの功績を他家にとられないのは大きい。

「メディシーアはどうなる?」

「それなんだが……明日、妹御を謁見に呼ぶ。監禁される切っ掛けがグラノス・メディシーアであるため、彼女を呼ばない訳にもいかないだろう」

「だよな……まあ、うまく切り抜けることに期待するしかないか」

「どうする? その場にいることもできるが」

「……ラズが参加するなら、君は事後処理を進めた方がいいんじゃないか? 王都の混乱、セレスタイトもだが、君たちの手腕にかかっているだろ」

仮の執務室が与えられ、机には所狭しとばかりに大量の書類が置かれている。同じようにセレスタイトも処理をしているはずだ。

寝る間も惜しんで働かないと追いつかないだろう。事務処理は、カイアとセレスタイトで処理をしている。

王弟殿下は書類とは別に王として面談を申し込まれており、さらに忙しいだろう。

いくつかの貴族が蜂起したのも、国王が変わったことですぐに鎮静化した。被害状況の確認をしつつ、今後についての話し合い。

その中でも、メディシーアを呼び出して、話し合いの場を設けるか。

破格の待遇にも映るだろう。

「ラズも苦労はしているようだがな」

「今回の戦後処理はあいつがやるんだろう。俺とネビアが仕組んだ動きも含め、渡してある。ヴィジェアの爺さんが事前フォローもしているからな。大丈夫だろう」

「会いに行かぬのか?」

「明日が終わってからだな。俺と会って、方針がぶれても困るだろう」

クレインに会いに行きたいが、その余裕はない。

カイアの護衛ではなく、今も書類を確認しながら、順番に並べる作業をしたり、カイアの指示通りに文書の書き取りなどをさせられている。

「だいたい、俺が死んだことも含め、メディシーアに詫びるだけにしても、わざわざ忙しい今やることかい? 注目させるだけだ」

「帝国の民の一部が、メディシーアの治める土地に住みたいと希望している。返答次第では、民を預けることになるからな」

「貴族にはならないから、民を統治する権限はないだろ。だいたい、あの土地に部外者を住ませる気はないと思うぞ」

「わかっている。ラズに管理させるが、マーレの近くに新たな町を作ることになるだろう」

「そんなに多いのか?」

「スタンピードで町一つ救った者がいてな。その町の6割ほどが移住を希望しておる。ついでに、王都に残された者達を救ったらしい少女も報告が上がっていて、頭が痛い。疫病を防ぎ、寄る辺ない者達はその少女を頼って移住。……どちらの民達も移住の希望がメディシーアの元へと言っている」

他の難民と同じように組み込むのも面倒になる。町規模の住人がすでに同じ目的で集まっている。それなら、近くに町を作るのか……色々と帝国との問題もあるんだろう。

しかし、クレインも何をやっているんだか。

「食料をほいほいと譲るのも大概にするべきだな。最終的にはラズに任せるが、メディシーアの名声を上げておく必要もあるからもみ消しはしない。諦めよ」

貴族にしない方向で進めるが、功績はあることにするのか。

「マーレとキュアノエイデスの中間あたりに町を作ったらどうだ? あそこらへんなら街道もあるし、土地の開拓も苦労しない。帝国の人間が何か問題が起こしても、マーレの冒険者やキュアノエイデスの騎士で制圧可能だ」

「計画、頼んでよいか?」

「おいっ、俺の仕事は君の護衛だ」

「うむ。期待している。俺は手が回らない」

短期間で俺らの開発をしているのを見れば、厄介な難民の一部を任せるというのもわからない訳じゃないが……これ、ちゃんと契約通りに毎月休暇もらえるんだろうな。

不安になってきたな。やることが多すぎてめまいがしてきた。