作品タイトル不明
ある竜の独白
間違いじゃあ、なかった。
私の永遠にも及ぶ探究は、あの苦行は間違いではなかった。
彼の背中を見つめて、溢れる吐息を抑える、彼の言葉を聞いて火照る身体を沈める。
その姿は私に未知をもたらしてくれる、その言葉は私に新たなる知見をもたらしてくれる。
理性はそう告げる、お前が彼を好むのは、彼に執着するのはその為だと。
全知竜、空席となっていた知識の眷属を継ぐ為に産み落とされた"未知"を担当する存在、それが私。
この世の未知を全て解き明かし、全てを知る。それが私の竜としての本質。人が食って、寝て、犯すのと同じ。私は食べて殺して知るのが本質の存在。
だからだ。彼、遠山鳴人が私にとっての未知だから惹かれている、興味を持っている。
理性は、そう告げている。
な、わけないじゃあないかい。
すぷぷ、違う、違うよ。この身を蕩けさせるような感覚はそんなものでは決してない。
継承した歯抜けの記憶、私じゃないボク、ボクでもない我、我でもない彼女の記憶が、この身体に熱を灯らせる。
全知の竜を、人知の竜に変えた彼への記憶は瞬く間にこの身をおかしつくした。
ああ、これまで散っていった多くの全知の竜たちよ、安心しなよ、君たちの妄執は私が引き継ごう。
ああ、これまで滅んでいった多くの人知の竜たちよ、喜ぶといい。君たちの願いは私が叶えよう。
そして、あの恐ろしき人間と相対し、全てを揃えてくれた最後の人知竜よ。
永遠の探究者として外道に身を堕としてなお、この時のために最善にして最前の男を"前進"させた最も強き人知の竜よ。
君に敬意を。
例え全ての世界で君のことを覚えているものがいなくても、この私だけは君を讃えよう。
よくぞ、この力とこの記憶を私へと届けてくれた。
よくぞ、彼の存在を私に教えてくれた。
安心するといい、安心して消えるといい。
今回の人知竜、つまりこの私が全てを引き継ごう。君たちが存在を歪め、個を捨ててまでもたどり着きたかった光景へ、今度こそたどり着こう。
すぷぷ、私はただ、冷たい水の中、竜と対等であろうとする彼の背中を見つめる。
恐れてもいる、強がってもいる。膝は笑いかけ、心臓は高鳴っている。
ああ、でも、なんと美しい姿だろう。恐れていてなお揺らがぬその心から生まれる衝動に従うその姿勢。
欲望のままに、彼は恐怖すらも踏み越える。
その身に抱くちっぽけな夢ととめどなき欲望を抱えて遠山鳴人は進むのだ。竜が怒ろうと、人が立ち塞がろうと、悪意が迫ろうと。
彼はきっと、殺すだろう。その欲望の邪魔になるもの全てを滅ぼし前へ進むのだ。
ああ、ああ、良い、とても良い。ずっと見ていたい、推せる、ああ、目の前の竜の巫女に怯えているのにしかし、その聡明な頭脳はそれが悪手であると理解している、その壊れた心はそれを許さない。
なんて、よわくて、なんておろかで、なんといじらしいんだろう。
すぷぷ、身体の奥、下腹が熱い。彼を見てるだけで自分が雌の竜であることを認識させられる。
その愚かさも、その歪さも全てが愛おしく、耐え難い。
欲望のままに進むその姿、欠けた心に穴の空いた人格。欠陥だらけで満たされない哀れなその姿。
なんて痛ましく、なんて尊い……
すぴ、すぷ。
この身に宿る悪性が囁く。その力をもって彼を手に入れろと。その知を用いて彼を虜にせよと。
この身に宿る竜としての本質がささやく。孤独を埋める存在がいる、魂を奪ってでも番とせよ、と。
護ってあげなくちゃ、永遠にしてあげなくちゃ、ああ、私の力を使えば彼を永遠にしてあげられる。肉の人形、魂だけは私のものに。
これがわたし、私達人知竜の本質ーー
ああ、すぷぷ。
うるさい、うるさい、馬鹿が。
こんなうつくしくて、きれいで、かわいいものに誰がそんなことするもんか。
ほしい、ほしい、とおやまなるひとがほしい。全ての人知竜の願いが私をおかしくさせていく。
でもね、でもね、意味がないんだ。無理矢理に彼を手に入れてもいみはない。そんなのいやだ。
わたしが彼を選ぶんじゃあない、わたしが彼に選んでほしいんだ。
どいつもこいつも全ての人知竜め、処女を拗らせすぎた、だからいつもしくじるんだよ。
わたしは違う、純情だから、これは拗らせているわけではないんだ。
私は彼に好かれたい、彼に見つめられたい、彼に褒めてもらいたい。
遠山鳴人に好きだといってほしいんだ。それがわたしにとっての彼を手に入れると言う答えなんだ。
ありがとう、全ての全知の竜たちよ。
さようなら、全ての人知の竜たちよ。
今ここに、このわたし、この全知竜が人知竜に変わった時点で君たちは全て報われる。
私がこの永遠の探究を終わらせよう。私がハッピーエンド、いいや、 あ(・) り(・) ふ(・) れ(・) た(・) ご(・) 都(・) 合(・) 主(・) 義(・) 最(・) 高(・) の(・) 、(・) ト(・) ゥ(・) ル(・) ー(・) ハ(・) ッ(・) ピ(・) ー(・) グ(・) ラ(・) ン(・) ド(・) エ(・) ン(・) ド(・) ル(・) ー(・) ト(・) を目指そうじゃあないかい。
問題だ、欲しいものが目の前にあるとしてそれを手に入れるためにはどうすればいいと思う?
答えは簡単ーー
努力だよ。
さあ、IQ3000、いいや、IQ30000の超天才的な脳みそによる最高に無敵の計画ーー
プランC. :||のはじまりだ。