軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

点は、二つ三つと解けて線になる

北部旧領主軍——進軍開始。

「前進!!」

領主の号令は、決して叫ぶ様なものではなかった。だが——その一声だけで。止まっていた軍が、動く。

ドッドドッドッ——……

重い足音。再編された歩兵。

再接続された補給車。騎兵。伝令。

守る為に固められていた軍勢が今。

“解放する為に進む軍”

へ変わる。

「……」

領主は、馬上から地図を見た。

一点目——北部防御村。解放済。

なら、次。

「第二監視砦」

副官。

「敵小規模包囲、推定百五十」

「……少ないな」

当然だ。主力は、まだ前へ意識が強い。

横腹。補給。後方。崩れ始めた今。

全包囲へ、均等維持は難しい。

「……踏み潰す」

「はっ!!」

速度を、緩めない。

「敵襲!!」

監視砦包囲兵。

「正面より!!」

「ま、待て!!」

「何故本隊が来る!?」

「クラウス隊ではないのか!?」

違う。今度は——“父”

「……」

領主は、無駄を嫌う。

「左右へ広がるな」

「……!」

「中央を割れ」

「……!」

百五十。防御砦包囲には足りる。

だが——“押し返して来た本隊”

には、足りない。

ガァン!!

正面衝突。

「ぐぁっ!!」

「押し返された!?」

「砦側も出て来たぞ!!」

当然だ。

「第二監視砦へ伝令!!」

「……!」

「門を開け!!」

「……!?」

包囲され続けた砦側。

最初は、罠かと思った。

「領旗!!」

「……!」

「本隊だ!!」

「門前部隊!!」

「押し返せぇぇぇ!!」

二つ目。点、解放。

「……」

領主は、止まらない。

「負傷兵処理は後続」

「……!」

「砦兵へ最低補給」

「……!」

「継続前進」

「……!」

側近ですら、一瞬だけ驚く。

「……休まれぬのですか?」

「……点を救うだけなら、休む」

短い。

「……線にするなら、止まらん」

「……!」

理解した。

孤立点救援は、一箇所なら英雄譚。

だが——複数同時なら。

“戦線そのものが戻る”

「第三農村防衛線」

別伝令。

「敵散発包囲、推定八十以下!!」

「……」

もう、崩れ始めている。二つ目が落ちた。

なら。

三つ目は——

「逃がすな」

「……!」

「だが、深追いもするな」

「……!」

「散らせ」

「はっ!!」

つまり。包囲兵へ、理解させる。

“もう、囲えない”

「……」

第三農村。

そこでは、敵兵の方が先に揺れていた。

「第二砦が落ちた!?」

「防御村も!?」

「何故だ!?」

「本隊が来ている!!」

「何処から!?」

答えは、単純。

“押し返して来た”

だが、侵攻側にとって。その単純こそ、最悪。

「撤退!!」

「維持不能!!」

「後退!!」

農村側。

「……」

まだ、半信半疑。

本当に?また、持ち直されるのでは?

だが。丘を越えて見えた。領旗。本隊。

「……」

老農兵が、膝から崩れた。

「……本当に」

震える声。

「……来た」

三つ目を解放。

「……」

領主は、そこでようやく。

地図へ、新しい線を引かせた。

防御村——第二監視砦——第三農村。

点。点。点が繋がる。

「……」

副官の声も、僅かに変わる。

「……北部線」

一拍。

「……再接続、です」

「……ああ」

まだ、全域ではないが戻った。

確かに。

「伝令」

「……!」

「各解放点へ」

「……!」

「補給再開」

「……!」

「伝令路再整備」

「……!」

「防壁修繕開始」

「……!」

救っただけではない。戻す。使える様にする。

“次へ繋ぐ”

「……」

領主は、北風の中。静かに前を見る。

クラウスは、一点を裂いた。

なら——父は。

それを、止まらず、連続させる。

春。

その日。

北部で起きたのは、一つの村の救援ではない。

点が、二つ。三つ。連続して解け。

孤立していた領地そのものが。

再び、“線”として呼吸を始めた日だった。