軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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闇ギルド” 覇王樹(サボテン) ”からの刺客、黒い巨馬に跨る同じく巨躯の黒騎士からの襲撃を受けた。想像以上の黒馬の運動性能に驚かされたが、それ以上に驚かされたのが黒騎士の着る魔鎧” 混沌の大地(テロカオッソ) ”だ。

スミス&ウェッソン E&E トマホークの直撃も、M67破砕手榴弾の炸裂にも傷一つ付かない堅固な守り、それをどうやって破るか。

黒騎士の黒馬は斃した、あの全身鎧と巨躯だ。俺が全力で逃げを選択すれば、逃げ切る事は難しくないだろう。

しかし、ここでそれをしても意味があるとは思えない。これほどの装備を持つ騎士を向けてきたのだ、逃げても追われるだけ。ここはきっちり黒騎士を殺し、俺を追うことを諦めさせるほどの衝撃を与えた方がいい。

衝撃……衝撃か……。

黒騎士が巨大な漆黒の槍斧を片手に一歩ずつ近づいてい来る。

「”黒面のシャフト”、いくぞ」

紅く染まる空の下で、黒騎士の静かな一言が響く。

槍斧を腰に構え不自然な滑るような加速で黒騎士が迫る。スキル『ダッシュ』だろう、俺もそれに合わせ右手に握るトマホークを、パワードスーツのアシストを全開に利かせて投擲。そして、それを追うように前方へのダッシュからスライドジャンプへと移行した。

黒騎士は俺の投擲したトマホークに対して、防御も回避も選択せずに、その魔鎧で弾く事を選択していた。

激しい金属製の衝突音が鳴る。そして、それをかき消すかのような空気を打ち貫く槍斧の突きが繰り出された。

俺はその突きを横に躱すことなく、スライドジャンプから黒騎士を飛び越すように上へと回避し、体を捻りながらウェルロッドver.VMBを抜いた。

狙いは頭部、首、背、腰と空中から連続で狙い撃っていく。空気の抜けるような極小の発砲音と共に、9×19mmパラベラム弾が黒騎士に着弾していくが、魔鎧の防御力の前に傷つける事もできずに弾かれていた。

予想通りの結果に舌打ちが出そうになるが、俺の着地を狙い、黒騎士が振り返る動きを槍斧に乗せ、遠心力と黒騎士の膂力の乗った斧部が薙ぎ払われる。

俺の足が地につく直前を狙った薙ぎ払いに、左手の人差し指の付け根を押し込む。瞬時に展開された CBS(サークルバリアシールド) が斧部を受け止め、その衝撃で俺は吹き飛ばされるように空中を泳いだ。

「”黒面のシャフト”……貴様は何者だ? 軽戦士系だと思っていたが――今の攻撃、それにその守り、魔法戦士か?」

再び開いた距離で向かい合う、俺は何も答えなかった。勝手に勘違いしてくれた方が虚を突ける。

「いや、魔法ではないな……攻撃に魔力の波動を感じない。魔道具使いか――」

右手にウェルロッドをトンファーとして構え、左手でトマホークを握る。魔鎧の防御力は高い、適当に狙ってもだめだ。よりピンポイントで、より防御力の低い場所を狙う必要がある。

9×19mmパラベラム弾が効かない以上、武器のリーチは黒騎士の方が広い。ここは俺から前に出る必要があるか――正面からダッシュし、一気に距離を詰める。

突き出される槍斧を僅かに右へ避けて脇を切らせる。

そして、その踏み込んだ右足に乗るように飛び込み、トマホークのグリップエンドで黒騎士の右側頭部を叩き、挟み込むように左側頭部をトンファーの短手で打ち抜く。

ほぼ同時に等しい打撃音が鳴り、黒騎士の頭を揺らす――着地すると同時に姿勢を低くし、黒騎士の足を後ろから回転蹴りで刈取った。

「ぐぉっ」

黒騎士から見れば、俺の一連の動きは予想外だったのだろう。強力なスキルや魔法によって構成されるこの世界の戦闘方法は、その威力や攻撃範囲ばかりが発展し、逆にCQC(近接格闘)の発展が遅れていると感じていた。

更には治癒魔法によって行なわれる肉体の構造を無視した治癒行為が、人体の構造上の弱点を突くといった動きに対する警戒を弱め、脳を揺らす、関節を決める、重心の移動を利用すると言った近接格闘術に、全く追いついてこれてなかった。

仰向けに倒れた黒騎士のフルフェイスの兜と魔鎧の切れ目、首下を狙いトマホークを振り下ろす。

しかし、魔鎧の一部とは思っていなかった魔鎧の下に着ている鎖帷子に弾かれ、切断する事はできなかった。

仰向けの状態から、槍斧の石突が突き出される。それを後方へのスライドジャンプで回避し、再び黒騎士との距離が開いた。

「魔鎧以外の場所も堅いのか」

「くぅ……惜しかったな。しかし、この”混沌の大地”は兜から鎖帷子に至る全てがセットよ、故に堅固! 故に無敵! この護りを突き破るには、それ相応の大魔法を放つ事だな」

確かに、目の前の外装を避けても、下に着る物まで同様に堅いとなると、隙間を狙う事も無意味か……しかし、頭部への衝撃はしっかりと内部に伝わっているようだ。黒騎士は起き上がりはしたが、頭部を若干気にしている。

「先ほどの動き、見たことのない体捌きだったが、二度はないと思え」

「ふっ、どうだかなっ!」

腰のポーチから取り出していたM84フラッシュバンを黒騎士の前に放り投げる。最初よりも近い位置だ、その魔鎧でも閃光と爆音は防げないのは判っている!

M84を投げた直後、俺の予想と反し黒騎士が前に出る、放物線を描くM84に迫る勢いでダッシュし――

「二度はないと言ったぁ!」

槍斧を払うように振り、穂先の斧部でM84を叩き飛ばした。

「なっ!」

叩き飛ばされた先でM84が炸裂する、あの距離では全く効果がないはずだ。そして黒騎士の動きは止まらず、払いの流れで舞うように回転し、スキルを打ってくる!

「『旋武斬』!」

ただの回転斬りに見えるモーションだが、迫り来る斧部に何かが纏わりついている。スキルの効果か判らないが、分厚い旋風を纏った斧部が急展開したCBSに直撃した。

直接体には受けなかったものの、CBSごと押し込まれ、たたらを踏むように横へと体が泳ぐ、そこへ追撃の突きが放たれる。

一突き目はトマホークでぎりぎり逸らした、二突き目で逸らしきれずにトマホークが飛ばされる。そして三突き目を防ごうとしたウェルロッドが弾き飛ばされた。

いや、正確にはウェルロッドを弾き飛ばしにきた右手をホールドする為に、力の流れに逆らうことなくウェルロッドから手を離したのだ。

突き出された右手首を掴み、相手の股に足を入れ、俺の体を支点にして右肘の関節を極める。実際には魔鎧によって極まっていなかったかもしれないが、ゼロ距離で相手の動きを一瞬止められればそれでいい。

流れるように軍服の内ポケットに隠し持つナイフを左手に抜き、逆手持ちでフルフェイスの兜に僅かに開く、細いスリットへと刺し込む。その先にあるのは、当然ながら眼球だ。

「ぐぁぁぁぁ!」

ナイフによって兜越しに眼を刺された痛みに、黒騎士が槍斧を手放す。すかさず拾い上げて後方へ投げ飛ばし、腰の左側に差していた特殊電磁警棒を抜く。

そろそろ終わりにしよう――激痛に倒れ込む黒騎士の喉へと電磁警棒の先端をあて、グリップに付いているスイッチを押し込む。

「ぐぉぉぉぉぉ」

特殊電磁警棒の先端から放たれる高圧電流が、間違いなく黒騎士の体に届いている。

たっぷりと高圧電流を流し、黒騎士の動きが鈍ってきたところで解除する。

「ぐぅぅ、貴様な、なにを……」

まだ意識はあるか、魔鎧に幾ばくかの雷耐性でもあるのかもしれない。

「次で終わりにしてやろう」

「ふっ、ふはっ、この”混沌の大地”を甘く見るな、この堅牢を突破しない限り、我は死なぬ。この傷も、じきに魔鎧が癒してくれるわっ!」

そう言いながら左目に刺さるナイフを抜き、鈍い動きながらも僅かな手首のスナップだけで、俺に向けて投げつける。

俺はそのナイフを後方へと振り返りながら躱し、まだ立ち上がれもしない黒騎士から距離をとっていく。

見せつけねばならない。あの魔鎧”混沌の大地”を突き破るほどの破壊力を、隙間を狙って小手先で排除しました、では駄目だ。あの魔鎧を以ってしても防げないというメッセージを残す。

すでに周囲は日が落ち、星明りのみが俺と黒騎士を照らしていた。そう、この星空を再び紅くするほどの一撃を――。

30mほど離れただろうか、黒騎士はまだ立ち上がれていない。俺は TSS(タクティカルサポートシステム) を起動し、準備を整え、一気に黒騎士に向かい走り出す。そしてパワードスーツの脚力全開で上空へと飛び上がった。

10m、20mと高度が上がり、黒騎士の真上でそれを召喚する。

大量の光の粒子が現れ、空中で形作りながら収束していく。出現したのはオシュコシュ M978 タンクトレイラーだ! 俺より遥かに重量のある車体が、先に真下にいる黒騎士へと落下していく。

重心の関係からか、タンク部分が下になって垂直に落ちていく。そう、このM978は間違って購入してしまった燃料満載の――

「喰らえぇぇぇぇ!」

自然落下していくM978のフロントを、更に下方向へと蹴り込み、その反動を利用して俺は後方へとジャンプし直し距離をとる。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

直上より落下してくる大質量のM978に対し、黒騎士は両腕を上げ、受け止める態勢をとっていた。その胸の土色の魔石が一段と輝き、闇色の粒子が魔鎧の周囲に浮かんでは収束するのを繰り返している。

それを見ながら、俺も空中で態勢を整え、背に回してあったAS_VALを構える。魔鎧と激突するM978が、轟音を立てながら黒騎士を押しつぶしていく。それが見えた瞬間からトリガーを引き、装弾数20発の9×39mm弾がタンクを撃ち抜き、燃料をぶちまけ、そしてM978の装甲ゲージがゼロになり、ぶちまけていた燃料とタンク内に残る燃料を巻き込んで大爆発を起こした。

噴き上がる爆炎が火柱となって星空を焼き、周囲が再び燃える紅色へと変わった。